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【完結】シラユリシリーズ②片影のシラユリ-あの日の君へ-  作者: 慧依琉:えいる


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第51話:姉の嫌味の中にすべきことを見出したフィリア。



その日以降、クラウドは忙しくアチコチと駆け巡り、医者達の診療所を回る日々を過ごす。問題点はないか、足りないものはないかなども含め、安全面での調査も怠らなかった。そして、巡回が済むと今度は基本知識を教えている所に向かう。ハンダルの若者がちゃんと講師の話についていけてるかなどのサポート面も欠かせない。団長としてせっせと毎日動いていた。






そんな時、フィリア王女はあの日以来、一向に現れないクラウドにヤキモキしていた。




〝確かに軌道に乗せるまでは忙しいとは思うけど、定期報告って必要なんじゃないかしら?〟




そう呟くも、あの日、また会いにくると約束したのにもうひと月以上、音沙汰なしな状態にヤキモキしていたのだった。




〝そうだわ、だったらこっちから会いに行けばいいんだわ!〟




と、まるで名案でも浮かんだかのように表情が明るくなった。


フィリア王女の侍女たちは密かに王女は例の使節団の者を気に入ってるのではないかと、こちらはこちらでヤキモキしていた。


まだ婚約者すら決めていない王女に悪い噂は厳禁だ。


そんな侍女たちの心境なんておかまいなしに王女は侍女に命令する。




「町に視察に行きます。用意をお願い。」




確かに視察は大切な公務だ。が、本当に目的は民のための視察なんだろうか…。例えそう思ったとしても侍女たちは王女の命令に従うのみ。






そうして準備したのち、王女は数名の侍女と護衛騎士を連れて町へと繰り出した。ふと足を止めたのは姉のティアリア王女の配給所だった。








〝相変わらずお姉さまの配給は大繁盛ね。〟




姉のティアリアは民にパンを毎日配給している。時々、穀物も配給するのだった。それに比べて二人の兄たちは武力を強めることに頭が一杯なのだろう。町への視察で出会ったことがない。




「あら。フィリアじゃないの?こんなところで何をしているの?」




声を掛けて来たのは姉のティアリア王女だった。




「お姉さま…。」






ティアリア王女はフィリア王女をジロジロと見て怪訝そうな顔で尋ねる。




「その姿…。あなたも視察?」




「はい、お姉さま。」




そう答えるフィリアにティアリアは鼻で笑ってフィリアに言い放つ。




「ふふ、あなたは何を民のためにするの?何が出来るの?今までずっと城から出た事もないのに、民たちの何がわかるの?少なくとも私は毎日ここに来て、侍女たちと共に民に配給しているのよ?」




フィリアは姉、ティアリアにそう責め立てられて言葉に詰まってしまった。


そう、医者たちが派遣されてからもフィリアはずっとお城にいただけで、自身は何もしていなかったことに今、姉の言葉で気付いたのだった。




〝そうだわ、民たちのためにって医者を派遣したまではよかったけど、そのあとはあの人に任せっきりだった私の責任だわ。お姉さまの言葉に何一つ言い返す事が出来ない…。〟






そうしてフィリアはその場に突っ立ってしまっていた。そんな時、






「フィリア王女様ではありませんか?」




と男性の声がした。






「あなたは…。」




振り返るとそこにはクラウドがいた。医者達の診療所を回っている途中だったようだ。






「今から王女様の所に行って報告しようと思っていた所です。それにしても何か問題でもあったのでしょうか?」




クラウドはその場の雰囲気からフィリア王女が相手をしていたのが第一王女のティアリア王女であることを察知した。そして、フィリアを助けるためにそのように答えたのだ。




フィリアは驚きつつも、自分を咄嗟に助けた言い回しに気付き、答える。




「いえ、大丈夫です。姉と会ったので少し話をしていただけです。危うく行き違いになる所でしたね、まずは報告を頂くためにお城に戻りましょう。」




クラウドにそう言った。




クラウドは






「おっ…!王女様!!知らずとは言え、失礼致しました!!」




そうわざとらしく言ってクラウドは深くお辞儀をしてみせた。






ティアリアは目の前の男が誰なのか、フィリアとどういう関係の者なのかわからず困惑していた。が、自身に挨拶をしてきたので、




「いえ、許します。」




と返事をするしかなかった。










フィリアはこれ以上姉に捕まらないようにと思いさっさと




「お姉さま、そういう事ですので、失礼しますね。」




そう言ってその場を退散した。






フィリアが去って行く姿をティアリアは暫くじっと見ていた。














無事に王城まで戻ってきたフィリアとクラウド。


王城の王女の部屋の応接間にて―






「さっきは助けて下さってありがとうございました。」




王女が部屋に着くなり、クラウドに頭を下げて御礼を言った。






「おっ、王女様っ!どうか頭を上げて下さい!咄嗟のことでしたが、お役に立てたようでよかったです。」




「ええ、本当に…。あなたには驚かされました。よくあの状況で全てを察知しましたね。」




「あの場で王女様と対等に話が出来る同年代位の女性は姉君しかいらっしゃらないですからね。」




「ふふ、それもそうね。」




その時、王女は今日初めてクラウドの前で微笑んだ。






「そういえば、先ほどはあまり元気がなさそうでしたが…。」




「ええ、私、今回のことで使節団を手配してもらったら、もう何もしなくてもいいと思っていたの。でもそれは間違いだったわ。アルクレゼ様からの報告を待つだけじゃなく、自分でも見て回らないと現状がわからないということをさっき姉の発言で知りました。私は理想を求めるだけで、その後の行動が伴っていなかった。」




「それは仕方ないのでは?このような事は初めてですよね?誰かが相談に乗ってくれるわけでもなければ、王女様のための手足となる人物がいるわけでもないのですから…。経験豊富な方ならまだしも、初めての方で、先ほどの事に気付いただけ王女様はちゃんと考えられる方だとお見受けしました。」




フィリアは自身をまっすぐに見て、このように言ってくるクラウドに対して心がホッとした。




「ふふ、そんな風に言って頂けて少し気持ちが楽になりました。国王になるということは、こういう事の連続なのでしょうね。」




「そうですね。ですが、国王にはブレーンが付いてます。それもそれぞれの専門家たちが、です。しばらくの間、僕が王女様を支えましょう。どんなに忙しくとも3日に一度は報告に参ります。王女様には現状を知る権利と義務がある。」




「ええ、お願いしますね。」






こうして二人は握手をした。




フィリア王女はクラウドに任せっきりにしようとした自分を恥じて、これからは自分もちゃんと民のために向き合おうと決意した。


そしてクラウドは自身も初めてのことだが、将来家門を継ぐなら、こういう補佐の仕事もこなさなければならないだろう、今から訓練だと思ってしっかりと勤めようと決意した。


二人は互いに同志としての決意表明をした記念すべき日であった。




ご覧下さりありがとうございました。クラウドも初めてのことではありますが、彼には父が付けてくれた側近のルドルフがいます。しかし、フィリアには誰もいません。

今後の展開をお楽しみに!


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