第5話:スクスク成長のクラウド
ルクセブルとアレクサンドラは息子の名前を「クラウド」と名付けました。
洗礼式を行ったり、分からない事は母ラモニアに聞いてみたり、手探りの育児をこなしていった。
少しずつ大きくなっていくクラウドは何にでも興味を持つ好奇心旺盛な男の子になっていった。
「クラウド坊ちゃま─────!」
庭でクラウドを探す声が聞こえている。
「あぁ…、またか。」
窓を眺めていたルクセブルは軽くため息をついて言葉を漏らした。
「まあ、ルク!クラウドは元気一杯なのだからとってもいいことよ?」
「アレン、もちろんわかってはいるさ。けど、使用人たちを撒いて行方をくらますのは勘弁してもらわなきゃ、皆の手がとまるではないか。」
「ハハハ!」
「父上?!」
「何を言うのか?お前があれくらいの頃も同じで私たち皆、困り果てておったものだ。」
「ふふふっ、ルク、諦めて下さいな。あなたに似たようですわ、ふふっ。」
そんな頃の記憶がないルクセブルは顔が赤くなっていった。
「ぽ、僕がですか?!」
「もう、あなた。ルクセブルをからかわないで下さいね。」
ラモニアがグラナスに言った。
クラウドを皆で見ながら談笑するアルクレゼ侯爵家はみんなが仲良しなのだ。
「あ、ほら。クラウドがもうすぐ見つかりそうですね。」
アレクサンドラが窓の外を指さすとクラウドが隠れている場所に執事長が辿り着きそうだった。
そしてクラウドの所まで辿り着いた執事長はクラウドに何やらお小言を言っているかのようだ。
「クラウドは偉いわね。泣かなくてよ。」
ラモニアは褒めた。
「ええ、お義母様。」
「確か次は歴史の授業のはずだな。」
ルクセブルが言った。なんだかんだと息子の予定を把握しているあたり、ルクセブルも父親なのだ。
「クラウドはあまり歴史を好きじゃなさそうですの…。」
少し心配そうにアレクサンドラは言った。
「大丈夫さ、嫌でも大人になるまでには覚えるさ。」
自身の経験からか、あまり深刻には捉えていないルクセブルであった。
更に月日は流れてクラウドが7歳になった頃、またもやアレクサンドラに異変があった。
流石に2度目はアレクサンドラ自身も気付いたようだ。医者に診て貰う前にルクセブルにその可能性があると話をした。
ルクセブルの持つ聖剣には何も変化は見られなかった。
そして医者を呼んで診察を受けて、やはり懐妊していた事が確定した。
ルクセブルは父に聖剣に何も変化が起きないことを相談した。
「ああ、変化が起きるのは男児のみだからね。」
と、あっさりと言われてしまった。
「そか…、今度は女の子なんだ。」
そう呟いては顔がニヤけてしまうのを抑えきれないルクセブル。
〝どんな子が産まれるのかな。アレンに似てるのかな。それとも僕か?兄妹だからクラウドに似るかもしれないな〟
ニマニマが絶えそうになかった。
そうしてクラウドにも赤ちゃんが産まれることを話した。
「ほんとうですか?おとうさま!」
「もちろんだよ。僕が君に嘘を言った事があったかい?」
「いいえ!でも、あまりにもうれしすぎて!!」
クラウドは誰が見てもわかるくらい興奮していた!
「まあまあ、クラウド、落ち着いなさいな。」
「そんなおちついてなんていられません、おかあさま!ぼくにおとうとかいもうとがうまれるんですよ?!」
「ふふふっ。そんなに嬉しいのね。」
「はいっ!!」
「じゃあ、赤ちゃんが産まれたら大切に可愛がってくれる?」
「もちろんです!ぼくがまもります!」
「まあ、頼もしいわ!!」
「頼んだそ?クラウド。」
「はいっ!」
クラウドはニッコリと笑ってその場で嬉しそうにはしゃいでいた。
それからというもの、クラウドは使用人たちに会う度に「ぼくにおとうとかいもうとができるんだよ!」と話していた。
もうあの時のように皆を困らせるようなクラウドはそこにはいなかった。
「早く産まれないかなぁ~~~。」
クラウドはすっかり赤ちゃんに夢中だ。ヒマが出来ればアレクサンドラのお腹に手をあてたり、耳をあてたりして楽しみにしていた。
アレクサンドラもルクセブルもその様子を見てとても微笑ましく幸せでいっぱいだった。
聖剣は相変わらず反応がないので、やはり女の子なのだろう。
だが、二人は敢えてクラウドには伝えなかった。
ご覧下さりありがとうございます。
ちょっと展開が早くてすみません。
もっとじっくりと幼少期を書きたい気持ちもあるのですが、トントンと進んでいきます。
今後の展開をお楽しみに!