第49話:依頼主の王女に面会!その時初めてラナベルの年齢に疑問を抱く
翌朝、食事を終えたあとでポンド伯爵を始めとして使節団とで打ち合わせが始まった。
団員達のハンダルでの暮らしを約束する為に拠点をどこにするか、衣食住の問題について話合われた。
まず、基本はポンド伯爵のアテリア伯爵邸となり、王都より北部エリアに関してはキャロル側妃(妹)が居住地を用意してくれることになった。
医療に関しては地元で医療に携わりたいと思っている若者を募集していたようだ。その者たちにはまず、基本知識を身に付けるために医者見習いが講師を買って出た。医療見習いも自身が覚えていることの復習となるからだ。
その後、基本的知識を身に付けたあと、診療所を終えた医者達によって更に体験による学習を得ることとなる。講師となる医者は交代制だ。そうでないと勤務を終えた医者の負担が大きすぎるからだ。
その医者達は医者がいない地域に派遣されていく。診療所もその地域で用意してくれる所がほとんどだ。貧しい地域は王女が私財を投じて準備した。
クラウドは施設団員の代表として、王女に挨拶をしに王城へ登城する事となった。
その頃、
〝もう先方に無事に到着したのだろうか…。〟
祖国ポルモアのアルクレゼ侯爵家では父母がクラウドを心配していた。
◆ ◆ ◆
王室より王女から専用の馬車がアテリア伯爵家へと送られた。その馬車にアテリア伯爵と共にクラウドは乗車する。
アテリア伯爵は馬車の中で堂々としているクラウドを見て驚いた。
〝まだ14歳であるのに、この堂々たる姿!流石使節団を任されるだけのことはあるな。〟
そんな伯爵とは別にクラウドは態度は堂々とはしていたが、やはり他国の王族と会うのだから緊張はしていた。
〝今日は王女様に会うだけだから、落ち着け。ただ、挨拶をするだけだ。〟
確かにクラウドはポルモア王国ではアルクレゼ侯爵家の一員として、父に同行する事もあった。そして、以前も奴隷商のことで国王に報告したほどだ。「場慣れ」はしている方だ。
だが、「女性」とは「不慣れ」だから少し緊張している。心を許したジャポスカや憧れのラナベル以外は、どちらかというと敬遠していたからだ。
そうこうしているうちに馬車は王城へと着いた。
「お待ちしておりました、アルクレゼ様。王女様がお待ちです、どうぞこちらへ。」
王女付の侍女に案内されてクラウドは庭園に通された。色取り取りの薔薇の花が咲き乱れている。とても丁寧に管理されているようだ。どうやらこの庭園は王女専用の庭園になっているそうだ。
席に案内されてそこに着席して王女を待っていた。
付き添いのアテリア伯爵は別室に案内されてそこでクラウドが終わるまで待機して共に戻ることになる。が、どうやらその間は側妃が久しぶりの兄妹として会うらしい。
「お待たせしてすみません、アルクレゼ様。」
か細い声だがとても澄んで優しい口調で声をかけられた。
クラウドは慌てて席を立ち、
「いえ、お招き頂き、ありがとうございます、王女様。」
と挨拶をしてお辞儀をした。
フィリア王女はクラウドを見て驚いた。
〝もっと年配の方が来られたのかと思っていたわ。え、この方ってもしかして私よりも年下?!〟そう思ったフィリア王女は思わず
「アルクレゼ様は、今お幾つなんですか?」
と聞いていた。
〝ハッ、いけない。〟
「す、すみません、いきなりで不躾でしたよね、」
「いいえ、大丈夫ですよ。僕はもうすぐ15歳になります。」
そう言ってクラウドはにっこりとほほ笑んだ。
「エッ!?もうすぐ15歳?!??」
「ハハハ…、皆、年齢よりも大人びて見えるらしくて…、」
「いえ、あまりにもしっかりとなさってるので驚きはしましたが…、」
「ご安心を!僕は使節団長を選任されたからには精一杯務めさせて頂きます。」
「まぁ!本当にしっかりなさってるのね。あなたを信頼しますね。今回、私たちを助けて下さるためにご協力頂いてありがとうございます。」
フィリア王女はそう言ってほほ笑んだ。
〝儚げな女性だ。本当に王位争いに参加しているのか?〟
クラウドはジッと王女を見た。
「ふふ、他の王族に比べると私って頼りなく見えますよね、」
王女の言葉にハッとしたクラウド。
「いえ、そういうつもりでは…」
「いいのです。私自身、王位など、どうでもよいのです。ただ、民たちの暮らしだけが心配なのです。」
そう言い、王女は話を続けた。
「私、あまり人との距離感が苦手で社交界にも出ておらず、最初は嫌々民たちの暮らしを見に外に出ました。しかし、そこで私はお金がなくて医者にもかかれない子供たちがいることを知りました。あまりにも多くの物事を知らなくてショックを受けたのです。そこで、姉が食料を用意するなら私は医療を充実させようと思ったのです。しかし、この国だけでは限度があり、そこであなた方ポルモア王国は目を見張るほどの医療の充実さを耳にしておりましたのでお母様を通じて要請を出しました。」
クラウドは王女が語るのをずっと静かに聞いていた。
話を聞いてクラウドは王女に会う前にジャポスカとした会話の内容を恥じた。王女は本心からこの医療の充実に挑んでいるのだとわかったからだ。
「ええ、そうですね。そのように聞いております。しかし、僕はそちらの内情をある程度知っておりましたので、王族のどなたかに肩入れするのは危険だと国王も判断しておりましたので、お断りの方向で話は進んでいたのです。」
クラウドが包み隠さずに話した。
「そうですか…、そのように事情をご存知なのに手を貸して下さったのですね。」
「ええ、僕の父上たちが直接手を貸した形にならないようにするにはどうするのが良いのか、それを考えて今回に至りました。そちらの〝絹〟の価値を思えばそちらは負担に思われるかもしれませんが、長い目で見るとその価値の何倍にもなると思いますよ。」
「そうですね。〝絹〟の価値はこれ以上、上がることはないかもしれませんが、あなた方が提供して下さる〝知識〟は増える一方ですものね、それも次世代へと継がれていくものですから…。」
「はい。ですが、〝絹〟もとても貴重な物です。丁寧にその産業を無くさないように、そちらも継いでいって欲しいものです。」
「まあ!ふふっ、あなた様はとても素晴らしいお考えをお持ちですね。ぜひ、滞在中はこちらに頻繁にお顔を出してお話相手になって下さいませんか?」
「わかりました。また時間がありましたら、訪問させて頂きます。」
そうしてクラウドはフィリア王女ととても良い時間を過ごしました。
〝ジャポスカやラナベルとはまた違う気品溢れる女性だな、ラナベルよりも若い…んだよな???ん?ラナベルって何歳なんだろ?ずっと変わらないけど…。〟
なんと!
ここに来て、初めてクラウドはラナベルが何歳なのかという疑問に辿り着いた。そして、初めて会った時から変わらない姿に気付いたのだった。
ご覧下さりありがとうございます。登場人物が増えると細かい設定が多くなってきます。前作は少なかったので、今作はその延長線上ではありますが、それ以上に他国の人間が多く登場します。まだライトノベルは2作品目ですが、少しは上達していたら嬉しいです。
今回からフィリア王女の登場で、お話がハンダル王国中心に進んでいきます。
今後もお楽しみに!




