第47話:医療使節団、出発!改めて父の思いを知ったクラウド。
そして二日はあっという間に過ぎた。
〝ラナベルは今頃、どうしてるかな…。君もこの星空を眺めているだろうか…。〟
クラウドはあの日以来、今日まで準備が忙しくてラナベルに会えていない。急にハンダル行が決まったのだから、この先当分会えないことに不安と寂しさがあったが、これも任務だから仕方ない、と気持ちを切り替えることにした。
〝そっか、父上もこういう気持ちだったんだな…。〟
父も婚約後に急に王命により出立したと聞いている。きっとこういう思いを背負って出たのだろうとクラウドは思った。いや、実際父の方が命掛けか……………。
とりあえずハンダルへ派遣される話はしているからきっともう旅立ったと思っているだろ。あとは一刻も早く帰国することに努めるのみだ。16歳には一度帰国するのだ、その時は必ずラナベルに会いに行こう!
そう胸に誓って父母を始めとする家族たちも見守る中、クラウドは邸を出発した。護衛騎士にはいつものルルドだ。そしてクラウドの参謀として共にするのは父の秘書であるルドルフだった。父がクラウドを案じて自身の側近を同行させた。
クラウドとルルドは馬に乗り、ルドルフや医者、医者を目指す若者や薬師たちは馬車での移動だ。あとは使節団を守るアルクレゼ騎士団たちだ。騎士団のうち数名はハンダル王国内で使節団を守るために残るが残りは帰国することになっている。
慣れた者での馬車の移動であればハンダルまでは1日から1日半で行けるが、今回の移動は大勢であることと、馬車での移動に不慣れな人間が多いため、ゆっくり走行することにしていた。途中、シタレン領で一泊することにしており、その際の費用はシタレン公爵が負担している。この大勢の人数分を負担することをサラッと申し出てくれたそうだ。流石公爵家だ。
「それでは医療使節団、今より任務の為にハンダル王国へ出立致します!」
クラウドがルクセブルに向かってそう宣言をした。
「ああ、みんな、長い期間だがよろしく頼む。」
全員深くお辞儀をした。
そして静かにアルクレゼ侯爵邸を出発した。
ガラガラガラ……………
馬車はゆっくりと進み、王都に近付いてくると窓からは王都の中央の高台にある王城が見えてくる。
一行はほとんど王城を見ることもなかったので皆、感動していた。王都内には入らずに脇道を通り抜けるが、それでも高台にある為、その姿はしっかりと目にすることが出来る。脇道を通るのはその方がハンダルに近いからだ。
そしてシタレン領に入り、シタレン公爵邸に着くと当主のカルア・シタレン公爵が待機しており、使節団一行を歓迎した。
「ようこそ、シタレン公爵家へ。皆様がポルモア王国の為にハンダル王国へ医療使節団として派遣なさることは存じております。我々はこのような形でしか応援出来ませんがどうか今宵は我が邸でおくつろぎ下さい。そして、私共々皆で皆様方の勇気ある行動に感謝し、応援しております。」
そうシタレン公爵家当主カルア公爵が挨拶をした。
そしてクラウドを見た公爵は
「クラウド、責任感が伴う役目だがしっかりな。」
「はい、大伯父様。僕の全力を尽くして参ります。」
「うむ、期待しておる。が、何かあれば私を頼るがよい。」
「はい。ありがとうございます。」
数年に一度しか会うこともない大伯父だが、それなりにクラウドのことを気にしているようだった。
使節団一行は公爵から手厚いもてなしを受ける。
クラウドは上位貴族なのでこれらのもてなしにはそれなりに慣れていたが、ルルドを始めとする使節団一行は初めてのことだ。目の前に広がる沢山の料理に皆、目を丸くして驚いていた。
流石に秘書のルドルフは見た事があるので平然とはしていたが、実際に食べるのは今日が初めてであろう。
皆でワイワイと食事を楽しんだ。
「ところでクラウド、君がこの前学園パーティーで連れてきた令嬢だが、もう婚約の話まで出ているのかい?」
カルア公爵がクラウドに聞いてきた。
〝ヤバッ!〟クラウドは焦った。あの時だけ何とかすればいいと思っていたので、その後の設定については何も考えていなかったからだ。
「ええ、彼女とそろそろ正式に婚約をしようかという話をしていた矢先の出来事でして………。」
と、咄嗟にごまかした。
「ほほぉ~。やはりそんな話が進んでいたのだな、ラモニアからは何もないからな。私も君に合う令嬢を探そうかと思っていたところなんだ。てっきりあの令嬢はカムフラージュだったんだと思っていたよ。ハハハ……!」
「ハハッ、まさか……。」
そう返すも内心では〝大伯父様はするどいっ!!!〟と、焦っていた。
「団長、そんな素敵な方がいらっしゃるのですね。ぜひ一度お目にかかりたいですよ。」
同行している医者の一人がそう言った。彼は本当に心の底からそう思ったのだろう。
「いやいや…。またの機会に~。」
「そうですな、このような状況ですから…。私もせかしすぎましたな。」
「そうですよ~、5年は離れてしまうんですから、団長はきっと寂しい思いをされてるはずです!」
と、別の者まで参戦してきた。
「そう言えば、君の父君も似たような状況だったな、確か…。」
と、カルア公爵が言い出した。
「ああ、婚約してすぐに王室命令を受けたと聞いております。」
「そうだよ。だが、君のようにまだ成人前なのに使節団長を任されたりというのはあまり例がないがな、よっぽどルクセブルは君なら大丈夫だと思っているのだな。」
「そうですね、ですがやはり不安もあるようで側近であるルドルフ殿を付けて下さいました。」
「ほほぉ~、確かに彼はルクセブルの側近ではないか。ハハ、やはり父親だな。」
〝この人、父上を怪物か何かだとでも思ってるのだろうか…?〟クラウドは大伯父に向かって思った。
「ルクセブルも君のようにしっかりした人間ではあったが…、本当にアルクレゼは剣の家門なだけあって家門を継ぐ者は皆、格別な資質を持っているようだ。君もこれからどんどん開花していくのだろう、楽しみだよ。」
「ありがとうございます。大伯父様。」
「さあ、食事が済んだなら明日に備えて早めに休むといい。」
クラウドはお辞儀をしてその場を後にした。
ご覧下さりありがとうございました。とうとうハンダル王国へ出発する日が来ました。これから先、ハンダル王国での生活はどうなっていくのでしょうか。
次回をお楽しみに!




