第46話:さようなら、ジャポスカ
クラウドが自分の部屋に戻って扉を開ける。
〝ガチャリ…〟
「よっ!クラウド!」
「………………!!!?」
突然の来客に驚くクラウド。その来客とは、ジャポスカだった。クラウドに対して「よっ!」なんて挨拶するのはジャポスカしかいない。
クラウドが来るまでに侍女に頼んで適当にお茶菓子を出してもらったのだろうか、テーブルの上は沢山の茶菓子で一杯だ。
「びっくりした~~~~!どうしたの、突然!?いつもの約束の日はまだ3日先だけど?」
「もう、クラウドはつれないなぁー。私だって情報網くらい持ってるんだから!行くんでしょ?ハンダルへ。」
「あ…、ああ。知ってたんだ……………。」
「私は優秀な諜報員なんだから。アハハッ!」
「それは認める!ハハッ!」
二人して笑っていたが、クラウドもイスに座って真顔でジャポスカに問う。
「で?まさか、ついてくる………、とか?」
「まっさかぁ~~~!暇になったら様子くらい見に行ってあげるけどさ、旅立つ前に顔を見に来たってわけ。」
「そか、僕も気になってたから来てくれて嬉しいよ。ありがと。」
その場はしんみりとなりそうだった。
何故かそこにあった茶器を使ってジャポスカがクラウドにお茶を入れた。ちょっとクラウドはびっくりしたが、ニッコリ笑ってお茶を口に含んで、一息ついた。
そして言葉を発したのはジャポスカだ。いつもムードメイカーなのは彼女の方だった。
「なに?5年もアッチに行ってるの?」
「そうだね、最低…5年、かな?だけど僕は一刻も早く引き継いで戻ってきたいし…。」
「そんなにハンダルって医療が整ってなかったんだね、それでよく国が保てたんだ…。」
「運がよかったのか?それとも更に充実させたいとか?何せ〝王位継承権〟がかかってるんだからな、色々実績になりそうなこと探してるんじゃないかな?」
「なんだか、国民の為の選挙っぽいのに国民を利用してるみたいで嫌だね。」
「ジャポスカもそう思うか?僕もだよ。僕らの国がこれ以上巻き込まれないために仕方ないから行くけど、僕も本当は不本意なんだ。国民第一で考えてくれてないならちょっと引くよね…。」
「だけどハンダルの第二王女って普段人前に出て来ないから、どんな人かあまり情報がないんだよね、約に立てなくてごめんね、クラウド。」
「いいよ、アッチに行けばわかるだろう。それよりも留守の間、フランやアランのこと、ラナベルのこと、頼んだよ。」
「おっけー。って、なんでそこにラナベルまで出てくるの?ラナベルのことならクラウドに頼まれなくても私がしっかり様子見たりするんだからネッ!」
「ハハハッ。やっぱりジャポスカは頼もしいや。」
「ふっ。」
ジャポスカは元気なく笑った。きっとクラウドと離れてしまうことに寂しさを感じているのだろう。会いたければ数時間あれば会えるのだが、正式な任務で他国へ行ってしまうのだから、ただ遊びに行くってわけにもいかないだろう。その辺りは魔物であってもわきまえているようだ。
「それじゃ、そろそろ帰るわ。」
そう言ってジャポスカが席を立った。
「元気でな、ジャポスカ。いつだって訪ねてきてくれていいから。ただ、任務で会えないことがあるかもしれないが…。」
「ああ、そっちに用事があって行ったら覗きにくらい行くよ。わざわざ行って会えないのはやっぱちょっと嫌だからな。」
そう言ってニッと笑った。すかさずクラウドは突っ込んだ。
「今みたいに突然来るのにか?」
「ははっ、今みたいなのは〝絶対会える〟って確信があるからだよ。」
「そか、ジャポスカには確信があったんだな。」
「そだよ、さて、そろそろ行くわ。またね、クラウド!」
「ああ、またな。」
そう言ってジャポスカは猫の姿になってクラウドの部屋のベランダから出て行った。母が大切にしている庭園を通って行ってるのだろうか、花々や木々が所々揺れている…。
「ハハッ、あれじゃあ、ジャポスカが通ってるのが感じ取れるな。」
クラウドは何だかジャポスカがいじらしく見えた。
魔物だからすっ飛んで来れるけど、結構住処からは距離があるはずなのに、会いに来てくれたんだなと。
ジャポスカにも会えたからこれで思い残すことなく出発出来る。そう思った。
ご覧下さりありがとうございます。ジャポスカともこれから簡単に会えなくなります。異国での任務は今回が初めてのクラウド。うまくこなして少しでも早く帰国出来るといいですね。
次回もお楽しみに!




