第44話:怒り心頭のハンダル側妃。しかし王女は静かに諭す
そしてポルモアの王妃からハンダルの第三側妃、キャロルに返事の手紙が届く。
「なんと…!我が自領の特産品〝絹〟と交換だと?!」
「お母様……………?」
「こんな条件、飲めぬに決まっておる!何故足元を見るような返答を寄越すのだ!?」
側妃は手紙を読んで怒りのあまりに手紙を床に投げつけた。
「お母様、いけませんわ。お相手様は隣国の王妃様ですのよ?」
そう言って床に落ちた手紙を拾い上げて、内容を読む。
「………………、確かに、わが自領にとってはかなり不利な条件ではありますね。」
「だろう?」
それでもまだ側妃は怒りが収まらないようだ。が、娘のフィリアはどうやら違ったようだ。
「ええ、しかし、この方法ならポルモアは我が国の選挙に関して関与しておりませんわ。流石ですわね。」
「ハッ!しかし絹を無償で寄越せとはな!」
「お母様、一見、こちらが不利に見えますが、長く見るとあちらの医療技術を獲得すること、それまでの人員不足も解消されるのでしょう?こちらの方が得になりますわ。それに、第一、後ろ盾のない私にとって何とも力強いこと。私がお母様の実家の取引を利用する形になるんですのよ?これ以上ない方法ですわ!ぜひ受けて下さい!」
キャロルはそういうフィリアを見て徐々に落ち着きを取り戻していった。
「確かに、私の実家がそなたを助ける形となるのか。それならポルモアにも被害は行かず、私も顔が立つ。わかった。すぐさま返信しよう。」
こうしてフィリアの「医療」に関する不安は解消するための光の道筋が見えてきた。
ハンダル王国の話はすぐさまクラウドにも共有された。クラウドは一つ返事でハンダルに向かうことを決意する。
そしてラナベルにもハンダルに向かうことを告げる為に会いに行った。
「………………、そう。それは仕方ないわね、暫く会えないのは残念だけど、それはクラウドにとってはとても大切な成長の一つだからしっかりと任務をこなしてきてね。身体を大切にするのよ。」
ラナベルからは寂しさと不安と心配が入り混じった感情が表情に出ていた。
「ああ、ありがとう。ハハ、何だかラナベルって時々母親みたいなことを言うんだね。」
「あら、仕方ないわよ?あなたが10歳の子供の時から見てるのだから…。私にとってはあなたは子供みたいなものだもの。」
ラナベルは〝母親みたい〟と言われて少しムッとしたので、あえて突っかかるように言った。
「もう、また子供扱いする!僕はもうすぐ15歳になるんだ!16歳で大人認定なんだよ?」
「ふふっ、そうね。もう男の子じゃなくなってきてるわね。」
そうしてラナベルは優しい瞳でクラウドを見る。その瞳の中に移る自分の姿は揺らいでいた…。
クラウドはその瞳が映すのは自分ではなくラナベルにとっては父なんだと思った。自分を通してラナベルは今もまだ忘れられない父の面影を追っているのだと気付いていた瞬間、その切ない気持ちが言葉に出ていた。
「ラナベル…、」
クラウドがラナベルの名前を呟いた時、「はっ」として視線を逸らそうとしたその時、クラウドはラナベルの手をとって軽く口づけをして
「いつか、ちゃんと僕だけを見て欲しい。」
とラナベルに告げた。
ラナベルは驚いて思わず手をひっこめた。
そしてクラウドの方を見ると一瞬傷付いたような表情をしていたが、すぐにニッコリと笑って
「驚かせてごめん、けど、謝らない。僕の気持ちは変わらないから。」
「…………クラウド…。」
ラナベルは戸惑いの声でクラウドの名前を呼んだ。クラウドの気持ちを知りながら、今のままでよいのだろうか………。そう思いながら…。
そんな戸惑っているラナベルを察してか、クラウドは明るくいつものように振舞った。
「じゃあ、今度はハンダルから戻ったら、また来るね!」
そう言ってラナベルの元を去って行った。
ラナベルはその後ろ姿を静かに見送った。
クラウドに口づけされた手が熱い……………。
ラナベルの気持ちは揺れ始めていた。
だけどクラウドはあの人の子供であって、自分が思っているのはクラウド自身じゃない…。
なのに、嬉しいような、恥ずかしいような、この気持ちは何なんだろう……………。
〝クラウドが去った百合の園は寂しいわね……………。〟
ポツリと…
ラナベルは呟いた…………。
ご覧下さりありがとうございます。ハンダル王国への派遣にクラウドが選抜されました。クラウドもどんどん色んな仕事を任されて成長していきます。そして時間が許す限りラナベルの元を訪れますが…。
今後もお楽しみに!




