第40話:ジャポスカの初めての舞踏会
〝さっきからドキドキ胸がウルサイ…〟
ジャポスカは今、自分が置かれてる立場に戸惑うばかりだった。人間の邸の中に入る機会はそうそうない。
ここは学園だから貴族の建物に比べたら物寂しい造りだが、それでも舞踏会を精一杯演出したかったのだろう、どこも煌びやかに飾っていて、初めて目にするジャポスカにとっては目が回るんじゃないかってくらいにキラキラしていた。
「学生の皆さん、準備は宜しいですか?本日のメインイベント、ダンスパーティーを只今より開始いたします。まずは、王室舞踏会の予行を兼ねているため、わざわざ開始のための〝始まりのダンス〟を皇太子ご夫婦にお願い致しました!」
「お────!!」と、会場にどよめきが走った。
そして皇太子夫婦がダンスホール中央に出て、音楽が始まる。
これもこのパーティーの魅力の一つだ。普段目にする事が出来ない高い地位の皇太子夫婦だ。学生の中には一般市民もいるからだ。
みんなが見つめる中、優雅にダンスをする2人。学生たちは必死に2人のステップを見て自分のものにしようとしていた。
そんな中、クラウドはジッとジャポスカだけを見ていた。ジャポスカはクラウドの視線を感じながら
「な…、なに見てんだよ…。」
と、小さな声で言った。
「ん?君があんまり綺麗だから。ラナベルや君のママンにも見せたいね。」
クラウドもコソコソとジャポスカの耳元で返した。その言葉には半分は本音で半分はジャポスカを揶揄う意図があった。
「だ…っ、だからソレもだなっ…!」
ジャポスカは真っ赤になってクラウドから少し離れた。どうやら恥ずかしくて堪らないらしい。そんなジャポスカの普段見れない様子が堪らなく面白いのか、調子に乗るクラウド。
遠くから見ればふたりでイチャついてるようにしか見えない。ク結果的にラウドの思惑通りとなったようだ。
ヒソヒソ…
〝なんて羨ましいんでしょ…〟ヒソヒソ…
女性陣は皆、静かに羨ましがっていた。そして男性陣は〝クラウドなんて、選り取りみどりだろうに…〟と、こちらも羨ましがっていた。
そして皇太子夫婦のダンスが終わった。
広間の中央から退出したあとは緩やかに次の曲が流れてきて、少しずつ学生達が2人がいた場所を埋めていく。
勿論、その中にはクラウド達もいた。
去り際に皇太子ダナジーはクラウドにウィンクをした。クラウドはニッコリと笑った。
「さあ、ジャポスカ!練習の成果をみんなに見せてやろう!」
「ハハッ、クラウドったら、」
そして2人も優雅に踊り始めた。
ジャポスカにとっては夢のような時間だった。
ダンススペースは特に見るもの全てがキラキラ輝いていて見た事が無いものが多い。とても興味を惹かれる。
「ジャポスカ、ダメだよ?ダンス中はよそ見しちゃ。こっち、みて。」
クラウドに耳元で言われた。
〝ハッ!!〟
とても恥ずかしくなってジャポスカは俯いた。
すかさずクラウドはジャポスカを抱き寄せた。
驚くジャポスカは〝バッ〟とクラウドを見た!!
「やっと、こっちを見たね!」
そう言ってとびきりの笑顔をクラウドはジャポスカに見せた。
────────ドキッ────!!!!!
〝な…なんだ?!心臓がバクバクいってる!!〟
「き…今日は変だぞ?クラウド!」
その言葉を発するのがやっとだった。
そしてクラウドの方を見ると
「…………………………。」
────────察し────
「プハッ!」
ジャポスカは笑いだした。そして何やら嬉しくなっていた。
〝なんだ…。随分余裕があると思ってたらクラウドも緊張してるじゃん!くすっ。〟
────そう
クラウドは周りからの求愛を交わすためにジャポスカに頼み込んだのだから、キチンとそれらしい関係に見せるためにジャポスカを揶揄いながらも必死でお芝居していたのだった。
だから自分から声を掛けるのは大丈夫だが、ジャポスカから予想外の言葉をかけられるとボロが出るのだった。だから咄嗟に返答が出来なかったのだ。
それを見てギチギチに緊張していたジャポスカは安心した。ずっとクラウドに振り回されて緊張がピークに達していたからだ。
ラナベルに強い憧れを抱いてる人間の男の子。彼が赤ん坊の頃から見てきたんだ。彼への気持ちは簡単な言葉では言い表せない。しかも種族が違うのだから…。賢いジャポスカはその辺も考えて一線引いて行動する事にしているのだ。
だが、そんな事は……………今日だけは忘れてパーティーを楽しもうと思った。
ご覧下さりありがとうございます。このお話の主人公はクラウドとラナベルなのですが、私個人としてはジャポスカとの仲を応援したいんですよね。異種族ではありますが、彼が赤ん坊の頃からずっと見てきた相手に対しての気持ちの変化を通してジャポスカのいじらしい姿をもっと沢山描ければいいなと思っております。
今後もお楽しみに!




