第35話:2つの幼い影
そしてクラウドが14歳になって変わったのは彼だけではなかった。妹のフランディーヌも8歳になって益々お転婆に磨きがかかっていた。
弟のアラン(アドルフ)は4歳だ。クラウドもその頃からしっかり者の片鱗は見え隠れしていたが、アランも負けてはいなかった。
特に剣術に関しては本来5歳から訓練を始めるのだが、アランが興味を持ってしまって木刀を持たせた所、離さなくなってしまったので、前倒しで訓練を受けさせる事にした。
同時にフランも習いたいと言い出したので、ルクセブルは2人を一緒に訓練させることにした。
〝これも剣の家門が故の事かもしれないな。〟
フランは女の子ながら、自分から言い出しただけあってかなり頑張り屋だった。そして飲み込みも早いようだ。ただ、どうしても筋力での男女差が出てしまい、いつも対戦となると負けてばかりだった。
4歳のアランとだと互角のようだ。しかし、それもきっとすぐに差が出てくるだろう…。
それでもフランの剣術に対する姿勢は真剣そのものだった。
時々、クラウドも2人の対戦を見たり、指導したりしていた。
そのクラウドも今はニコルの指導から卒業して、ニコルの父、テルに指導を受けている。
そう、クラウドの父、ルクセブルの師匠でもあったテルだ。
「テル師匠は本当に凄いお方だ。おじい様と変わらない年齢なのに、何の加護もなくてあれだけの実力をお持ちなのだから。」
クラウドはテルを凄く尊敬していた。
そんなテルと共にいるからか、アルクレゼの聖剣の話を気にせぬまま成長する事が出来た。
クラウドは「聖剣の力ではなく、テル師匠のように自分の力で強くなりたい」という思いが強かったから、気にならなかったのだ。
ルクセブルもこれにはテル師匠に感謝していた。
そして、クラウドがいつものように領地の街中に出ようと邸を出たあとのことだった。
〝なんか…気配がする。〟
振り向いたが、特に変わった様子はなかった。
そしてそのまま歩いていると、やはり先程の気配がするのだった。
そこでクラウドはその先の曲がり角を利用して誰なのか暴いてやろうと思った。
クラウドが角を曲がった
2つの影がクラウドの前に現れた!
「うわぁーっ!」
「…………………やっぱり…。」
そう、その2つの影はクラウドの妹のフランと弟のアランだった。
「見つかっちゃった…。」
「残念だわ…。」
「はぁ~~~~~~~~~~~~っ!!」
クラウドは大きくため息をついた。
何せ相手は8歳と4歳。
「2人だけで出てきたら駄目じゃないかっ!」
そう、クラウドが初めてひとりで外に出た時ですら10歳だったのに…。
「だって!お兄様がどこに行くのか気になったんですもの!」
「だからと言って、アランまで…!ダメだろ?変な人に攫われたりしたら…!?」
「そんなことありませんわ。私もアランも剣術を習ってますもの!」
流石アレクサンドラの血を引いてるだけあって勝気な所がそっくりだ。
「はぁ~~~~~~っ、いいかい?フラン。いくら2人が剣術を習っていたとして、君たちを誘拐しようとするような奴らなんだよ?絶対に失敗しないように武術にも長けた人間がくる可能性が高い。特に我らアルクレゼは剣の家門だからね、間違いないだろう。」
クラウドは2回目の大きなため息を付いたあと、ゆっくりと、しっかりとした口調でフランに説明した。
フランの表情は勝気な顔から徐々に青ざめていった。きっと理解したのだろう。
「お兄様、ごめんなさい。そこまで考えてなかったわ。」
「うん、そうだね。だけど、今、こうしてわかったのだから次はキチンと考えて行動すること。わかった?」
「うん、わかったわ。」
クラウドはコクンと頷いてから、今度はアランの方を見た。
「アラン、今の話、アランには難しいと思うけど、邸の外は危険だらけなんだ。ひとりで出てはいけないし、例え二人でも護衛騎士と一緒じゃなきゃダメだからな。」
「はい…。おにーさま。」
クラウドはアランがどこまで理解したのかわからないが、フランが理解してくれたからきっとフォローしてくれるだろうと安心した。
そう、こうしてひとりで出歩いているクラウドだが、キチンと護衛騎士が離れて付いているのだ。
〝唯一騎士と離れて行動出来るのがジャポスカとの冒険だったなぁ…。今は安全地域だと騎士なしでも出れるからいいけど…。〟
そしてふと、ふたりに目をやって
「仕方ないな、街の中を楽しむか?」
と言ってにっこり笑った。
「わーい!」素直に喜ぶアラン。そして
「お兄様、なんて素敵なのかしら!」と、興奮気味に喜ぶフランだった。
ご覧下さりありがとうございます。クラウドはなんだかんだと言って弟妹には弱いのです。特にフランにはタジタジです。
次のお話もお楽しみに!




