第27話:それが「好き」という感情だと覚えた日
暫くして ジャポスカが現れた。が、黒猫の姿だった。
〝ゴメン、クラウド。マタセタネ。サア、カエロウカ。〟
「いや…、いいけど、何で猫の姿なの?」
クラウドはストレートに、疑問に思った事をジャポスカにぶつけた。
〝エ…、ナンカ ニンゲンノスガタ、ツカレルトキガアルンダ。マア、キニスルナ。カエルゾ。〟
何故かジャホスカはソワソワしていた。
そしてジャポスカは今度は本来の姿に戻った。
「ジャポスカ、いつもクラウド君を乗せて来てくれてありがとう。」
ラナベルが言った。
「今度はラナベルも一緒にルクセブルに会いに行かない?」
ジャポスカの言葉にラナベルはドキッとした。
彼に会いたい。でも、それは彼の今の幸せを壊しかねない。
ラナベルは静かに首を横に振った。そして口角を上げて
「私はもう彼とは会わないわ。その代わり彼が元気かどうか、幸せかどうか、あなたが教えてくれると嬉しいわ。」
そしてクラウドに向かって
「今はクラウド君も遊びに来てくれるんだもの。それで充分よ。」
ラナベルの少し寂しそうで、でも満足そうな顔を見てジャポスカは何かを悟ったように
「そっか。」
と一言呟いた。
そして
「ほら、帰るよ、早く背中乗って!クラウド!」
ジャポスカはクラウドに余計な事を考えないように早く背中に乗れと言った。
「ハイハイ。よっと、」
「じゃあ、また来るね~~~」
そう言ってジャポスカは空へと飛び立った。
大きく羽ばたくため、一瞬もの凄い風が発生する。
「キャッ、相変わらず凄いわね、ジャポスカ。気を付けてね。」
そうして大空へと舞って登っていく二人を見送った。
「2人がいないと静かになり過ぎて、それも困りものね…。」
そう呟きながら自分の家へと戻って行った。
クラウドがいつも冒険の出発点に選んだ森は、ラナベルのいる百合の薗まで魔物達が飛ぶと15分もかからないのだ。
「やっぱりジャポスカの背中から見下ろす風景がカッコよくて僕は好きだな!」
クラウドが何を思ったのか、そんな言葉を呟いた。
「へっ?!」
〝好き〟の言葉だけが独り歩きしてジャポスカは急に緊張してしまった。
〝私ってまだまだ魔物として未熟なんだわ、これしきの事で緊張しちゃうなんて……,〟
大切なクラウドを背に乗せているのだ。どれだけ驚こうが安全を保たなければならない。
そしていつもの森へたどり着いた。ジャポスカは失敗しないようにゆっくり着地する。
「ありがとう、ジャポスカ!いつも乗せてくれて!楽しかったね。」
「何言ってんの、私が連れ回してるんだからね!」
「はははっ!」
クラウドは楽しかった。こんなにも気が合う気軽に話しが出来る事が何よりも嬉しくて楽しかったのだ。
「また来週も楽しみにしてるよ!」
「そうだね、また来週ねっ!じゃ!」
そうしてジャポスカは消えた。相変わらず早い。
そしてクラウドも家族達に見つからないようにそっと邸に戻るのだった。
〝お父様はきっと気付いてるかもしれない。でも敢えて何も言わないんだな。ラナベルのこと、気にしてたもんな…。会いたいんじゃないよな?〟
クラウドはふと、そんな考えがよぎった。
だが、すぐに落ち着いて
〝ダメだ、そんな事したらお母様が可哀想だ。〟
そしてふと、ラナベルが言った言葉を思い出した。
〝会わない方がいい〟
クラウドは今初めてその言葉の意味を知った。
〝会いたくないんじゃないんだ、ラナベルは。お母様の為にも会わない方がいいと思ってるんだ。〟
クラウドは10歳ながらも胸の奥がギュッと痛くなる、切ない感情を覚えたのだった。
ご覧下さりありがとうございます。
クラウドは自分自身の中の感情にもまだ気付いてませんが、違和感を覚えたようです。
そして、憧れのラナベルはもしかしたら父であるルクセブルを好きなんじゃないかと気付き始めました。
今後の展開をお楽しみに!




