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【完結】シラユリシリーズ②片影のシラユリ-あの日の君へ-  作者: 慧依琉:えいる


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第26話:クラウドとラナベルの小さな約束



タタタ…ッ……




幻想的な空間の百合の薗の中を軽快に駆け抜けるのは人間の姿のジャポスカだった。




〝なんなんだ?時々、鼓動が早くなって、私、絶対おかしいぞ?あんな変な想像をしそうになるなんて…!!〟






考え事をしていたジャポスカはラナベルの近くに来ていることにも気付かずにそのまま突っ走って行った。






「……、?ジャポスカ?」




ラナベルがジャポスカに気付いた。が、小さく呟くような声だったのもあってジャポスカの耳には届いていなかった。




〝まあいいか、あの子はこの辺を熟知してるんだし、迷う事も怪我するような事もないはずだから…。でも変ね、どうしたのかしら?〟






いつものジャポスカとは違うと思いながらもそっと様子を見守ることにしたラナベルだった。










その頃、ポツンと残ったクラウドは、そんなジャポスカの事にも気付いておらず、作りかけのジャポスカの花冠をせっせと作っていた。


こういう所もクラウドの子供らしくて無邪気な純粋さが出ていた。










「静かだ….。」クラウドがポツリと呟く。




どれだけ時間が経過したのだろうか。


ジャポスカが戻ってこない。




クラウドもここには何度か来たものの、いつも同じような場所にしかいないからあまりに不用意に動けなかったのだ。




〝僕が考えなく行動すると周りに迷惑をかけてしまうから、こういう時はじっと待ってるのが一番だ。それにジャポスカは待ってろって言ってたもんな。〟




と、ひたすらそこで待ち続けた。






すると暫くしてからラナベルが現れた。






「あら、まだジャポスカ戻ってきてないの?」




「そうみたいです…。」




「もう、仕方ないなぁ…。クラウド君、お腹空かない?何か食べる?」




「ありがとうございます。頂きたいのはやまやまなんですが、食べてしまうと僕が外出してる事がバレてしまうので、我慢します。」




ラナベルは驚いた。10歳なのになんてキッチリとした態度なんだろう…と。






「そう、じゃあ、もう暫く私もここで一緒に待つわね、クラウド君。」




クラウドはラナベルの方を向いてじっと見た。






「………?どうしたの?」




「あ、あの、。」






「……なあに?」






モジモジしながらクラウドは思い切って口を開いた。






「な、名前、名前だけで呼んでくれませんか?」




「えっ?名前?クラウド君でしょ?」




「違…っ。」




ラナベルは首を傾げる。






「〝君〟はいりません!あなたは呼び捨てて下さって構いません!あなたは父の恩人でもありますし、こんな子供の僕に丁寧に接する必要なんてないです。」




ラナベルはびっくりした。


彼が子供の頃はこんな感じだったのかしら?と思いながら、そんな相手からは〝君〟をつけずに呼び捨てで呼んで欲しいと言われたのだ。


しかも接し方も丁寧にしないで欲しいと…。






「ダメだわ、クラウド君。あなたは隣国の侯爵家の跡取りでしょ?私はこれでもあなたが子供だから親しげにしてるつもりだけど、コレ以上は不敬罪になってしまうわ。」




「不敬罪?」




ラナベルは一般人なのだ。爵位のある家門の人間とは身分がそもそも違いすぎて本来子供らしくといえどこんなふうに会うことはタブーなのだ。




ただ、百合の薗はラナベルの管理下なので、誰もラナベルの許しなく立ち入ることが出来ないのだ。だからジャポスカとクラウドが来ている時は他の人間は森の中で暫く眠ってもらっているのだ。






「だったら、私からもお願いがあるわ。」




「何ですか?」




「私に対して呼び捨てにしてもらって、話し言葉も普通にして欲しいの。」




「えっ!」




クラウドは顔が一瞬で真っ赤になった。






が、




「うん、わかった!ラナベル!これでいい?」




そう言って笑った。






その姿を見てラナベルは不覚にもドキッとした。そう、ルクセブルと重ねてしまったのだ。




〝だめね、私。彼と重ねてしまうなんて…….。〟






「じゃあ、クラウド君、君が大人になったら呼び捨てで呼んであげるわ。それでいい?ただし、この百合の薗だけよ?」




「わかったよ、ラナベル!それで充分だ!」




クラウドはとても嬉しそうだ。




ご覧下さりありがとうございます。

ラナベルに対して淡い憧れを抱くクラウド。

そしてラナベルは目の前の10歳の男の子が微笑ましくも可愛らしいとさえ感じているのだ。

なのに時々、ふとした仕草や表情から〝彼 〟の面影を探してしまう…。そんな事に悩んでいた。


今後の展開をお楽しみに!


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