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【完結】シラユリシリーズ②片影のシラユリ-あの日の君へ-  作者: 慧依琉:えいる


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第22話:父が語る遭難した時の話



そして気付けばクラウドは自分の部屋にいた。目の前には見慣れた天井が広がっていた。






「え…。どうして?僕はあの泉の場所にいたのに…。それにあの人に挨拶もしないままで…。」




そう呟いた。


そして ハッと横を見るとそこには父、ルクセブルが座っていた。






「目が覚めたかい?クラウド。」






ルクセブルはいつもの穏やかな表情でクラウドを心配して静かな口調で声をかけた。






「お父様…。」




ルクセブルは静かにうなずいて話をする。




「ジャポスカから聞いているよ、シラユリの園に行ってきたんだって?」




「はい、ジャポスカに教えてもらって、どうしてもお父様の恩人さんにご挨拶をしたいと思ったのです。」




ルクセブルは大きくため息をついて




「お前がそんなことをしたり、気にしたりしなくていいんだよ。御礼ならもう私がその時にして終わっているからね。だからもう二度と行くんじゃないぞ?他の場所ならどこだって大目に見てあげるから。」




ルクセブルのその言葉にクラウドは〝ガバッ〟と起き上がってルクセブルに問う。




「どうして…。どうしてあの場所は駄目なんですか?」




まっすぐな目でルクセブルを見つめてくるクラウド。


大人の事情に子供は関係ないのだからクラウドの行動に制限をかける必要はないのだろうが、やはり大切な息子なのだから慎重になるのは仕方のないことだ。


それをクラウドに理解させるのは少し難しいだろう。




「どうしてもだよ。現にお前はあの場所で倒れたんだからな。」




「ただの眠りなんですよね?」




「同じだよ。見ず知らずの場所で眠ってしまう事は騎士にとっては命取りになることもあるんだ。まだ幼いけど、それでも騎士を目指す家門の子なのだから、それくらいの気持ちでないと駄目だ。」




ルクセブルの説明は道理が通っているようでいないようにも思えた。が、ここで反論しても何一ついいことはないということをクラウドは理解していた。


危険な場所ならジャポスカは連れていかないのだ、つまり、父ルクセブルの気持ちの中の問題なだけなのだ。だったらこっそり行けばいい。という思考になるのは見て取れる。




流石のルクセブルもそこまで強制は出来ない。本当に危ない場所なら強制するが、そうでないことはわかっている。


繰り返しになるが、ただの自分の気持ちの問題だからだ。






「……………それで…。」




ルクセブルが言葉を発した。






「それで、彼女は、……ラナベルは元気だったかい?」




クラウドにはもう二度と行くなとは言うのに、心配はするんだ…。とクラウドは不思議な気持ちだった。






「ええ、元気でしたよ?とても素敵な美しい女性でしたね。お父様の恩人というからお母様よりも年配の方だと勝手に想像してました。だけどとても若い方でした。お父様がお世話になった時は子供だったのですか?」






「………………?!若い?子供?そんなはずは…。アレンと変わらないくらいのはずだが?」




「いえいえ、お母様も若く見えますが、そういうのではなくて、本当に若い方でした。」




「不思議なことがあるもんだ。ラナベルの娘…にしたら大きいのか。親戚か何かかな?」




不思議がる父を横目に見てクラウドは続けた。




「ジャポスカがその女性のことを〝ラナベル〟って呼んでましたよ?それに僕を見て〝あの人の面影が〟とも…。」






それを聞いてルクセブルは驚いた。間違いない、クラウドが会った女性はラナベルだ。






何事もなかったが彼女の自分に対する思いを知っているからこそ、クラウドを近付けたくないのだった。








「クラウド、私の話を聞いてくれるかい?」




突然、父が神妙な面持ちでクラウドに話かけた。クラウドは静かにうなずいた。






「私がまだ若い頃、アレンと正式に婚約して間もない頃なのだが、王室命令によって南隣国のナダルテ王国より魔物統制のために応援要請が入ったんだ。その時に恥ずかしながら私は遭難してしまって、その時にラナベルに看護してもらったんだよ。」




「そうなんですね…。大変なケガだったんですか?」




「ああ。聖剣の加護がなければ私は今こうしていなかっただろう。それくらい大きなケガをしたんだよ。肋骨を数本骨折してたしね。」




「えっつ!肋骨を骨折ですか?しかも数本?」




「シーッツ!お母様はそこまで知らないのだから内緒だぞ?済んだ事とはいえ、心配するからな。」




「はい、わかりました。」




クラウドの礼儀正しい返事にルクセブルはコクンとうなずいた。






「それでその時に身体のケガだけならよかったのだが、記憶をな…。」




そう言って自身の頭をトントンと指さした。






「え?記憶もですか?」






「ああ。すっかり抜け落ちて、自分が何者なのか全くわからなかったよ。しかもアレンのことすら忘れてたんだ。」




「それは大変でしたね。どうやって戻ったんですか?」




ルクセブルは大きく深呼吸をして続けて話をし出した。






「身体が治ってきた頃、私は見ず知らずの私に一生懸命看病してくれるその女性のことが好きになりつつあったんだ。今思えばあの状況なら誰だってそういう気持ちになっていくだろう。そして彼女も私のことを…。」




「お父様は昔からモテたと聞いてます。」




ルクセブルはピクリとした。






「誰がそんなことを言ってたんだい?」




「もちろん、お母様です。」




なるほど、アレンが言ってたのならいいや。ホッとした。






「そして、彼女のことを意識しだした頃から変な夢を見るようになったんだ。」




「どんな夢なんですか?」




「うん、誰かが私の名前を呼んでる、しかも泣きながら呼んでるという夢だったよ。」




「それは奇妙な夢ですね。」




ルクセブルはクラウドの顔を見て続けた。






「そのうち、その夢の泣いてる人物が少女だとわかったけど、誰かまではわからなかったんだ。何せ記憶がないからね。」




クラウドは黙って聞いていた。




「そんなある日、夜目覚めた時に水を飲みに行ったら月夜で明るくてね、窓に見慣れない光を感じてそこに行ったんだ。倉庫だったよ。」




「………………。」




「その光の正体は私の聖剣だったよ。彼女の物とも思えなくて、他に使うような人物の出入りもなかったからね、違和感しかなくて、手に取った瞬間全ての記憶が蘇ったんだ。」






「なるほど!聖剣は持ち主を守るって聞きましたけど、そういう意味でも守るんですね!」








「ああ、おかげで今があるんだけどな。」




「ところでお父様、僕の聖剣はいつ対面出来るのでしょうか?僕のもあるとは聞いてますが、楽しみで…。」




ルクセブルは言葉に詰まった。そしてクラウドの顔をじっくり見て




「お前がもう少し大きくなったら自然とお前の手元に届くよ、だからそれまで楽しみにしているといい。」




そう言って胡麻化した。


まさか、聖剣の宝飾が「黄色」だなんて見せられるわけがない。もう少し大きくなって色々理解が出来るようになったら、その時はきちんと説明をすべきだと判断したのだった。




ご覧下さりありがとうございます。

ルクセブルは照れくさかったと思いますが自身の過去の話を、自身の気持ちも含めてクラウドに話しました。

クラウドはそれを聞いて今後どういう気持ちで父を見ていくのでしょうか、また、ラナベルへの気持ちはどう変化していくのでしょうか。

お楽しみに!


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