第20話:父の恩人がいる「シラユリの園」へ!
毎週、同じ曜日におやつを食べてからクラウドの行方がわからないことにアレクサンドラは気付き始めた。
夕食の時間には戻ってくるし、男の子だから少しくらいは元気に走りまわったり、親に干渉されたくないのだろうと思って見守ることにした。
クラウドはそれ以外の日は下の子たちの面倒をしっかりと見たり、勉学も武術も抜かりなくこなすからだ。少しくらい一人の時間があってもいいと、いや、あった方がいいと考えたからだ。それにクラウド自身には特に変化があったわけでもないからだ。
「ご馳走様!」
そう言って ささっと自分の部屋に戻ろうとするクラウド。
しかし、今日はすかざす声がかかる…。
「お兄様!どこに行くの?フランも一緒行きたい」
突然フランがクラウドを呼び止めた。
クラウドが焦って振り向くと泣き出しそうな顔をしている。
「あ…、フラン。……………ごめん、またあとで遊ぼう!」
そう言って振り返らずにダイニングを出た。
「おかあさま。お兄様が……………!」
フランが泣き出していたのが扉越しに聞えた。だが、ここでフランに構うとジャポスカとの待ち合わせ時間に遅れることになる。下手をすると中止だ。連絡手段がないから最悪の場合ジャポスカに呆れられたら今後の冒険は無くなるだろう。そう考えてフランのことは気になる気持ちをグッと堪えていつものように用意した。
〝お母様はきっとフランをあやしているのだろうな。ごめんなさい。お母様、フラン。〟
心の中で呟いた。
フランのおにいさま大好きは時々悩みの種でもある。
当然、アレクサンドラがフランをあやしてなだめていた。
「フラン、お兄様が大好きでずっと一緒にいたい気持ちはわかるわ。でもね、お兄様にはお兄様だけの時間も必要なの。ちょっとフランには難しいかもしれないけど、お兄様が大好きならフランもお兄様を応援してあげられる?」
するとフランは泣き止んだ。
「うん……………。フラン、お兄様を応援できるよ。」
アレクサンドラはにっこりと笑って
「そうね、フラン。偉いわね。お母様と一緒にお兄様を応援しましょうね。さあ、まだオヤツが残っているわよ。食べましょうね。」
そう言うとフランはゆっくりとオヤツを食べ始めた。
◆ ◆ ◆
いつもの森に到着したクラウド。そしていつもの……………
「ジャポスカ~~~ッ!来たよッツ!」
そうするとジャポスカがどこからともなく現れるのだ。
〝クラウド!よく来れたね。出る時、大変だったんじゃない?〟
声の方向を見ると今日は猫の姿でも本来の魔物の姿でもなく、そこには可愛い人間の女の子が立っていた。
「わお、びっくりした!……………けど、その恰好も見慣れてきたね!」
そう言ってクラウドはニッコリと笑った。
ジャポスカはちょっとムッとしていた。
〝こっちの気もしらないで……………。魔物の姿だと驚かれるし、猫の姿だと変な動物に狙われるし……………。この姿が一番安全なんだよ。〟と思っていた。
〝さて、今日はルクセブルの恩人の所に行くのだったね。山越えてちょっとした所だから行こうか!〟
そうクラウドに言ってから魔物の姿に変わった。
クラウドはジャポスカの背中に乗っていつものように二人は大空へと飛び立った。
広い空を軽々と飛んでいくジャポスカ。少し飛行した時、
〝ほら、ここが南隣国ナダルテ王国との境界だよ。もう少しで「シラユリの園」に着くからね!〟
「シラユリの園?」
〝そう!ルクセブルの恩人が管理している不思議な百合の園なんだよ。その花は永遠に咲き続けるんだよ。そしてその花は私たち魔物にとっては癒しの花。どんな傷も治してしまうし、寿命だって延びるんだ。〟
「え?じゃぁ、その花は人間にとってはただ長く咲き続けるだけの花で、魔物にとっては価値のある花なんだ!」
〝身もふたもないことを言う。まぁ、人間にとって、どんな効果があるのかは、正直私ではわからないよ。だけどあの村の一族がずっとラナベルを出来損ない扱いして虐めてたにも等しいからね、きっと人間にとっても何かしらの価値があるんだろう。〟
そんなジャポスカの言葉を聞いてるのか聞いてないのか、クラウドは恩人の名前が気になった。
「恩人さん、ラナベルっていうのか。」
〝そうだよ、すごく美人でと~~~~~~っても優しいんだから!〟
「なんでジャポスカがそんなに張り切るの?」
〝だって、ラナベルのことが大好きなんだもの!クラウドだって会うとわかるよ!〟
「ふぅ~~ん、まぁ、楽しみにしてるよ。もうすぐ会えるじゃん。」
そして段々「シラユリの園」に近づいてきたのだろう。ジャポスカが森に入るために低空飛行に切り替えた。
そして森に突入してからというもの、進めば進むだけ独特な雰囲気を感じてきた。
〝ゴクリ……………〟
思わずクラウドは息を飲む。たった10歳であったとしても聖剣を受け継ぐ家門の人間、その不思議な雰囲気は感じるのだろう…。勝手に身体が身構えて生唾を飲んだ。
それは徐々にこの先にどんな景色が広がっているのかという期待で胸が高鳴っていくのだった。
そんなクラウドの気持ちとは関係なく、ジャポスカは進むスピードを落とす気配がない。
〝もっとゆっくり飛んでくれたらこの景色や雰囲気をたっぷりと味わえるのになぁ…。〟
と、少し残念な気持ちだった。だが、乗せてもらってる手前、文句は言えない。
〝クラウド!もうすぐだよ。心の準備はいいかい?〟
急にジャポスカが声をかけてきた。
「うん!」
その瞬間!クラウドは眩しさを感じた!
だがしかし、不思議だ。眩しさを感じたが辺り一面はどちらかというと薄暗いのだ。
「……………?」
不思議な状況に少しポカンとしていたクラウドだった。
ご覧下さりありがとうございます。
いよいよラナベルのいるシラユリの園へたどり着きました。
ここからが今回のお話のスタートとなります。
お楽しみに!




