第2話:幸せすぎるふたり
こちらのお話は「永遠に咲くシラユリをあなたに…」の新章としてスタートしております。
このお花からでもお楽しみ頂けますが、前作をご覧下さる方がお楽しみ頂けると思っておすすめです。
王都へと向かう馬車の中、ルクセブルは突然、自身の持つ聖剣に異変を感じた。
それは今までにないもので聖剣が振動し始めたのだ。
ルクセブルは聖剣を自身の膝の上に載せてその様子を伺った。
暫くの間ブルブル……と震え、そして振動が止まったかと思うと聖剣に付いている宝石が光を帯び、ブルーから一瞬黄色へと変化し、元のブルーに戻った。
〝なんだ?今のは…何だったのか?〟
その日はそのまま、それ以上何も起こらず、ルクセブルは予定通り王城での勤めを果たしていた。
そして帰宅後、ルクセブルはアレクサンドラから懐妊の話を聞いたのだ。
「え!?」
最初は信じられないようでルクセブルは大きく瞳を見開いたまま、その場で固まっていた。
そして恐る恐るアレクサンドラの元に近付いて
「それは……本当なのかい?」
と聞く。
アレクサンドラははにかみながら、コクンと静かにうなずいた。
ルクセブルは全身が身震いし、歓喜に溢れた!
「ありがとう!アレン!!僕はとっても嬉しいよ!!」
大喜びでアレクサンドラに抱きついた!
「ルク様…!」
ルクセブルはバツと顔を上げ、アレクサンドラの口元に人差し指を立てて
「ル・ク!」
と一言だけ言った。
「もう僕たちは夫婦なんだし、これから家族が増えていくんだ。例え僕らが父や母になろうともお互いに愛称で、ずっとルクって呼んで。」
アレクサンドラは思った。〝そうだわ。ルク様は私のこと、アレンって呼ぶわ。〟
「わかったわ。ルク…。」
アレクサンドラの口からとうとう呼び捨てしてもらえたことにルクセブルは更に喜びが増した。
「ああ!アレン!僕はこんな幸せな日を一生忘れないよ。」
ふたりは感激の夜を過ごした。
そして ふたりが………、いや、邸宅の住人たちが寝静まった夜中に、またもや聖剣に異変が起こっていた。それを目の当たりにするのは朝が来てからだった。
チュン チュン………
鳥たちのさえずりが静かに聞こえて朝を告げる。
アレクサンドラよりも少し早くに目覚めたルクセブルは静かにアレクサンドラを見つめていた。
ふと、アレクサンドラが目を覚ました。
「おはよう、今朝の気分はどうだい?」
「ん…、ルク。大丈夫っぽいかも。」
「ふふっ、それなら良かった。この部屋で一緒に朝食を食べよう。」
そして部屋に食事が並べられたが、いざ、その席につくとアレクサンドラは気分が悪くなってしまった。
「アレン、少しでも何か食べないと…..。」
「無理…。ルクは気にしないで食べて?私は後で何か食べれそうだったら頂きますわ…。」
そう、ルクセブルは今日も王城へ勤務だ。
「ごめん、アレンが辛い時に…。
「何言ってますの?お仕事なのですから、気にしないで。」
「ん…、用意してくるよ。リラを呼ぼうか?」
「大丈夫、横になってますわ。」
「わかった。」
そしてルクセブルはクローゼットへ向かって用意し始めた。
暫くして自身の聖剣を手にした時ルクセブルは異変に気付いた!
「え?!」
そこには小さな剣がそばにあったのだ。
その時ルクセブルは〝ハッ〟と気付いた。
もしや、これは次世代の為の聖剣か?!
だが、その剣に付いている宝石はブルーではなかった。
〝勝手にブルーだと思い込んでたけど違う場合もあるんだな…。アレンのお腹の中の子は男の子か!〟
ルクセブルはワクワクが止まらなかった。
着替えが終わり、アレクサンドラに声をかける。
「どうだい?少しは落ち着いてきた?」
「ん…、ルク、ありがとう。治まってきましたわ。」
「ならよかった。あのさ、これを見て。」
そう言ってルクセブルは小さな剣をアレクサンドラに見せた。
「これは………?」
「うん、聖剣が新しい聖剣を生んだんだ。」
「えっ?」
「その子はきっと男の子だよ。」
「まあ!そうなの?だったらより一層頑張って産まなきゃいけませんわね!」
「ハハハ!まだかなり先だよ。」
「ふふっ、そうですわね。」
こうして幸せなふたりの時間が流れていった。
「そうだ、父上にも報告せねば!」
「お義母様から伝わっているのでは?」
「うん、それもそうなんだけど、ほら。この剣の事もあるからね。」
「男の子だとわかるときっとお喜びになりますわね。」
「ああ。だけど僕も、僕の家族もみんな女の子であっても大喜びだよ。」
「嬉しいですわ!」
「母上に言って食べれそうなモノを選んでもらうよ。それじゃ、行ってくる。」
「ありがとう。気を付けて行ってらっしゃい。」
ふたりは軽く口付けを交わした。
「ああ…、それと、その言葉遣い、子供が大きくなる前に改めてね!」
「あ…、それもそうですわね。あ…いえ、そうね。」
ルクセブルはニッコリ笑って部屋を後にした。
そのあとラモニアの指示でリラがフルーツを持ってきた。
「大奥様が、酸っぱものか、フルーツあたりだと食べれるかもしれないと用意して下さいました。」
「そうね、それだと口に出来そうだわ。流石お義母様ですわね。あ、…お義母様だわ。早速少し頂くわね。」
そうしてアレクサンドラはオレンジから口にした。
「甘くて美味しいわ。少し酸味があって、食べやすい…。」
アレクサンドラはラモニアの気遣いに感謝した。
〝私はみんなに良くしてもらって幸せ者ね。ここにいるアナタもきっと幸せになるに違いないわ。〟
そう心の中で呟きながらお腹に触れてみた。
優しさが自身の内側から溢れてくるように感じた。
幸せが込みげてくる…。
ご覧下さりありがとうございます。
アレクサンドラの懐妊で浮き足立つアルクレゼ侯爵家。聖剣を誇る剣の一族。剣の導きによりお腹の子供の性別すらわかるようです。
次回もお楽しみに!