エルフの街
此処を旅して、二月になる。
あちこちの村や町を6つほど回った。それぞれの街は隣り合っていたが、お互いの距離が非常に離れていた。どこを見て回っても初めに見た村や街と同じだった。代わり映えがしない。マリアは、
「どこに行っても同じなのね。人族の国だったら、皆違っていて特徴があるのに、大概飽きてきました。」
確かに飽きてきた。初めは未知の国を見て回るのが面白かったが、多様性があるのは住んでいる種族だけで、植生も地域性もすべて同じだった。これ以上見ても同じだろう。まだまだ見ていない村や町がありそうだが、そろそろこの国の中心に行ってみよう。
村人に聞いた通りに歩いて行く。
僕達は皆緊張していた。国の中心にはエルフが沢山いる。エルフは長命種だと聞いた。普通のエルフで五百年。祝福があれば,千五百年も生きるというのだ。当然人族の事も知っているだろう。
余り偉そうなエルフで無く、普通のエルフにまず逢いたい。そして、つなぎを付けて、詳しい話を知っているエルフに聞いてみたい。僕達はその国の中心、エレウシアにゆっくり近づいた。
エレウシアは、街とは言わず、ただエレウシアと呼ばれ、すべての中心だった。
精霊族の宗教の中心であり、政治の中心でもあり、富の集中する処でもあった。
多くのエルフに祝福が有り、祝福が無いとエレウシアの端に追いやられる。この端にはドワーフもどきが多く住んでいたがエルフもいた。ここで暫く話を聞こう。
端は、ビットと呼ばれていた。
ビットの住居は、茅葺きのような建物だ。広い平屋建てで家族や仲間達と住んでいる。人口は2万人くらいか。
彼等はエレウシアの、様々な雑事をして報酬を得ていた。
彼等にとってはビットに住んでいることは、余り言いたくない事のようだった。
だったら村や他の街に行けば良いのに、此処に居ることに執着している。
この感覚はチョット理解できない。
「あんた達はどこの種族?」
未だ若いエルフの女の子が聞いてきた。僕は人族だ、と正直に言った。
「じんぞく?知らない種族だわ。どこから来たの?」
「精霊樹のあるところから来ました。」マリアが機転を利かせて嘘でも無い本当でも無い答え方をした。
「まあ、精霊の道を通ってきたの。そう言えば貴方たち、祝福持ちなのね。」
と羨ましそうに見ている。
この子から、話を聞き出したところ、此処では不定期に、エルフの役人から精霊樹の木の実をもらえるという。その中には妖精が生れることがある。そうすればエレウシアの住人になれると言う。でも滅多に無いことだと言っていた。
「貴方たちはエレウシアに行けば、どこにでも住めるわ。お金?そんな物はいらないの。」
と言った。
エルフの女の子から、年取ったエルフがビットにいると聞いて、僕達は早速会いに行った。