森の向こう
僕達は,精霊樹が在った森を抜けて、向こう側へ抜けようとしていた。
森を抜けたら、天眼を使って広い範囲をみてみよう。僕の天眼は、5㎞ほどは診る事が出来る。それ以上はピントを絞るように見る対象を限定すると、見える様になる。望遠鏡みたいだな。
神眼は鑑定眼の上位版だった。天眼になってから、転移の距離が伸びた。でも広い範囲を見ようとするとぼんやりしか分からない。何となくあっちに何かあると言う風に見えるだけだ。だから普段は進行方向を見るだけに使っているが、今回は全方向を見ながら、進んでいこう。
何があるか分からない未知の国なのだから。
先頭はヨウゼフ。その後ろにフランとマリア。僕がしんがりを歩いて、何かあれば皆に伝える。
やっと森を抜けた。かなり大きい森だった。マリアがいるので早く進めない事もあるが、野宿もし無ければならないほど、時間が掛かった。此処には魔物がいないから、不安は無かったが、もし此が魔物の居る土地だったら、こんなのんびりした旅は出来なかっただろう。
森にいる間、黄色スライムの試食会をした。黄色は白スライムとは違った旨みがあった。カレーのようなスパイシーさがあり美味しかった。少ししか採れないのが、悔しい。もっとあれば、乾燥して食べてみたかった。「意外と美味しいのね。」マリアが、人生初挑戦のスライムの感想だった。
「兄貴。何かありますか?」「いや、村があるだけだな」
ヨウゼフと話し合って、村には泊まらずに野営しながら進むことにした。
この国には、通貨の制度がないようだ。宿に泊まって、対価に何を出せば良いか悩むのはもう面倒になってしまった。マリアは不満そうだったが、多数決で決めた。
「ヌポっ!お腹すいた!」ヌポポが僕のマナを要求する。他の皆のヌポポは頭の上で眠っていた。
そう言えば皆の妖精には名前があるのだろうか。
「ヨウゼフ、お前のには,名前、付けたのか?」
「まだっす。」
「え?この芋虫に名付けるのですか?」マリアがまた、可哀想なことを言っている。
「私は付けました。意思の疎通が出来るなんて,素晴らしいです。歩きながらポポロとお話しています。」フランは、初め引き気味だったが、馴染んだようだった。
「な、何ですって!虫と話が出来るですって。」
と言う事は、名付け無いと,お互いの意思が通じないのか。ヨウゼフは早速名前を付けた。
皆、名前を付け終わったが、似たような名前になってしまった。ヌポポ、ポポロ、ヌヌポ。
マリアだけが,虫さんと名付けた。良いのか其れで。マリアの虫さんが一番先に蛹になった。