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豊かで貧しい村

ここの宿屋の一番良い部屋なのだろう。2階建ての上の階の角部屋に,僕達は通された。

二間続きで小さな客間が付いている。僕達、男達はこの客間を使う事にして、女性陣には、寝室を明け渡した。フランは恐縮していたが,マリアは当然です。と言う顔で寝室に入っていった。

それぞれ身支度が終わり客間に集まった。

「此はどういう事なのかしら。」

「さっぱり分から無いっす」

「ヌポっ!」

「何か分かっているのか?ヌポポ」

「多分、ヌポポが、居るからヌポ」

ヌポポが言うには、彼は精霊族達にとって,精霊樹からの祝福なんだそうだ。滅多に祝福はもらえない。

この国では祝福をもらえない者は,蔑まれる。不思議な国だ。殆どがもらえないのに,蔑まれるとは。

祝福を持っている者だけが幅をきかせているのか。貴族のようなものなのか?

人族も精霊族も同じだな。嫌な仕組みだ。でも、これでこの国を調べるのに不安は減った。

あの、遠くに在る森には、若しかしたら精霊樹があるのでは無いか。これから暫く此処に滞在して様子を見てみよう。

          ☆

僕達は二手に分かれることにした。僕とマリアとヌポポ、ヨウゼフとフランだ。ヨウゼフは、魔法言語が未だ、たどたどしいのでマリアとも組ませようとしたが、彼は

「俺は、フランと組みたいっす。二人で良いっす」

と言った。どちらも苦手だが,どちらかと言えばフランがまし。なのだろう。

確かに,我が道を行くマリアは、時々ハラハラする。何をし出すか分からないところがあるのだ。

勇ましい,おばさんと言えば、怒られるかな。


道々、出会う異形の村人達に,声がけしながら、僕達は森を目指した。

此処の住人達は多種多様の姿形をしている。牛、馬、犬、ウサギ、ネズミ、イノシシ、・・・兎に角動物の種類すべてが居るのでは無いかと言うほど二足歩行の動物がいる。いや、にんげんか?

その中で、僕達は目立つはずなのだが、皆普通に接してくれる。

深く考えても、今は答えを知る術が無い。思考を放棄して先に進む。


森に入り,植物と動物の頒布を見て歩く。此処には普通の動物がいた。植生も普通だ。と言うか前世のと変わらない。変わった植物は少しはあるが、まるで、地球の森にいるようだった。

川がある。僕はわくわくしながら,川の中を見た。矢張りいた!スライムだ。此処のスライムは種類が豊富だ。白、赤、緑、青、偶に,黄色も居る。これらの生態が知りたい。僕は初めて見るスライムを嬉々として捕獲して回った。マリアはそばで、呆れていた。

「貴男、一体何しているの?此処で遊んでて良いのかしら。」

遊んでいるわけでは無いのだが。此は調査だ。この、黄色や青や緑は、食べる事が出来るのかどうか。若しくは他の何かに役立つのかどうか。という調査だ。

「マリアはスライムはみたことないの?」

「そんなのご不浄にいる物でしょう。」

そうだけど、それだけでは無く,食べることも出来る、と教えてやると、「こんなのを食べるの。」と気味悪がっていた。貴族はスライムを食べないらしい。


そんなことをしながら森の奥深くまで,進んだ。矢張り精霊樹は在った。

僕は闇魔法の隠密を使って、近づいてみる。

いけた!そばに行き、木の肌に手を当て天眼を開く。すると精霊樹の感情が伝わってきた。

この精霊樹は未だ若い。一千二百年だ。この木は、今祝福を僕にくれると言って、それから沢山の木の実を落としてきた。

なんだ、簡単にくれるじゃあないか。どうなっているのか。木の実を拾い収納に入れる。全部で100個程在った。皆に分けてやろう。虫食いがあれば妖精が生れるかも。


村に帰って、皆と合流しヨウゼフの報告を聞く。彼等には,村の中を見て貰った。

「俺たちが色々聞いても、みな優しくしてくれたっす。」

そうか、ヌポポが原因というわけでも無いのか?若しかして人型なのか?

人型の魔物は悪賢いと言う話を思い出した。村人達は僕達を,恐れているのか?


僕は皆に木の実を、見せた。ヌポポは、ひとつひとつ確認して、5個ほど取り分けた。

其れらは虫食いだ。皆に木の実を持って貰う。2個余ったが収納に入れておく。

マリアは怪訝な顔をし受取った。

暫くして、皆の見ている前で、虫がそれぞれ出てきた。フランはかなりビックリして、今にも叫び出しそうだった。ヨウゼフは知っていたのでわくわくしながら見ていた。虫が、ヌポ、ヌポ、ポと言っている。

皆同じ泣き方なのか。じゃあ、名前の付け方は、自由だったのだろうか。僕はてっきり名前がヌポポだと

言ったのかと思っていた。まあ、今更変えられない。


「どうしろというのですか。これを」

「妖精の幼虫です。」

「こんな気持ち悪いのが妖精ですって?」おい、マリアの妖精が傷ついているぞ。可愛そうに。

「俺、嬉しいっす。此をずっと、頭にのせておけばいいんですよね」

その話を聞いていたフランが、ギョッとした。

僕は皆に妖精が居れば、この国では蔑まれない、だから、大事に育ててくれと言い残し、木の実をこの宿の主人にあげることにした。100個も有るのだ。喜んで食べてくれるだろう。


この村にはお金が存在しなかった。ここは、物々交換で成り立っていた。僕達の宿賃はどうすれば良いか悩んでいたのだ。宿の主人は、恐れ多いと言って、なかなか受取らない。

暫くやりとりをしながら、5個だけ受取って貰った。


それぞれ頭に芋虫を乗せこの村を後にした。








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