魔境の真実
僕達は皆の名前の呼び方に、敬称をを付けないことにした。
僕はカムイ。ヨウゼフはヨウゼフ。マリア魔導師はマリア。フランチェスカはフラン。ヌポポはヌポポだ。
敬称はマリア魔導師だけだが、兎に角長い名前は短縮、と言う事でこうなったわけだ。
主に女性陣に対しての対策だ。前もって言っておかないと、おっかない仕返しがあるかも知れない。
本当に、行くんですか?マリア。もう60歳くらいだろ。皆で守りを固めるしかないな。
ヌポポが言うには魔境は、精霊族の道の一部だ、ということだ。本来精霊の道はこのようではなかった。
精霊達が、このように作り替えて仕舞った。精霊王を通さない為に。語り部の話は正しく伝えていたのだ。
精霊樹が張り巡らした道を利用して一部分を,反転したのだとか。以前は闇に隠れてこの世界には現れていなかった。
「反転しているのなら、通れないのか?」
「大丈夫。闇はどこでもある。影を渡っていくから早いんだ。カムイの影魔法と同じだよ。転移程じゃあ無いけどね。」
僕達は魔境の縁を歩きなからヌポポに付いていく。ヌポポが
「ここから入れそうだヌポ」と行って皆を影の中に導く。恐る恐る足を踏み出す。途端に浮遊感に襲われた。30分くらいだろうか。地面に足が地いた感覚がある。
此処はどこ?この大陸のどこに位置している?そもそも僕達と同じ大陸なのか?ヌポポは知らないと言う。彼は地理のことには興味が無いらしい。だろうな。精霊の道で移動するのなら地理は意味が無いかも知れない。確かあの古い歴史の本には、精霊の国と人族の国は地続きだったはずだ。精霊王の最後っ屁で消滅したことになっていたが、分断されただけだとしたら、未だ、同じ処に在るかも知れない。
「こんにちは。」マリアが第一精霊族発見。大きな牛頭の人?に話しかけた。度胸あるな。
「おめたち,何処からきたずら。」僕には酷くなまって聞こえる。
「あっちから。」随分いい加減な言い方だが、相手には其れで良かったのか、納得してくれた。
「そうか。どこいくんだ?」
「未だ、決めていないの。どこか、休める処、在るかしら。」
「ほんだら、タコの宿が良いずら。此処をまっすぐ行くとええ。」
「ありがとう」
凄いな。牛頭と普通に会話している。マリアを連れてきて良かった。
僕達は周りを見まわしながら、ゆっくりその一本道を歩いて行った。
後ろを振り返り牛頭を見てみると、手を合わせてお辞儀をしている。なんでだ?
あと、この国にはお辞儀がある!色々おもしろい。
とてもマナが澄んでいる。農地には麦に似ている穂が、風に揺れて、金色の海のようにサワサワと動いていた。魔物の気配はみじんも無い。試しに天眼をを開いてみる。
此処は小さな農村だ。少し行けば牛頭の言っていたタコの宿屋がある村がある。
もっと範囲を広げて見ても,小さな農村が点在しているだけだ。広い農地の外側に深い森がありずっと森が広がっていた。
「いらっしゃい。!っあ。これはこれは、ようこそ、こんな田舎に、ようおいでなさいました。どうぞ此方に・・」
なんだ?この平身低頭は一体。此処はどういうことになっているんだ?
僕達は不安な気持ちを押し隠し,言われるままに通された部屋に入った。