精霊族の国に行く為に
僕は今、オレオ州長の処に来ている。
「精霊族の国にいけるだと!」
オレオにヌポポを見せて説明をして見たが、オレオはビックリしすぎて、叫んでばかりだ。話がなかなか先に進まない。
「行ってどうするんだ?何になるんだ。精霊族に捕まって、殺されて仕舞うかも知れないんだぞ。この間来た精霊族達は、俺たちをまるで格下扱いだった。汚い物でも見ているみたいだった。そんなところに行ってお前は何をしたいんだ?」
何をしたいかなんて、無い。只行ってみたいだけだ。知らないことが多すぎて気持ちが悪いだけだ。行ってあの種族達の考え方や、生き方を見たい。只それだけだった。昔、何があったのか、本当に人族と諍いがあったのか。魔物の、ダンジョンの成り立ちを知りたいだけだ。光と闇はこの世界ではどういう理で動くのか知りたいだけだ。
「俺たちは精霊や妖精なんかは、信用するなと言われて育った。こいつは本当の事を言っているといえるのか?」ヌポポをぎろりと睨み付けている。
「ヌポっ!]
ヌポポは僕の後ろに逃げて仕舞った。
「行くにしても、お前一人行かせる訳にはいかない。せめて、ヨウゼフやこの間の弟子の一人でも連れて行け。そうしないと,俺は許可しないからな。」
許可がなくても行こうと思えば行けるけど、此処はきちんとしたい。
「分かりました。でも、今ヨウゼフはチョット色々取り込んでいて。獣人族の誰か、行きたい人がいれば、連れて行きますが。」
「そんなもん、いるか!だーれが,好き好んで行きたがる。俺がついて行ければ良いが、此処を任せられちまってるからな・・・」それに、これから行くところは未知の国だ。帰ってこられないかも知れない。
そんな、副音声が聞こえた。
☆
この事はオレオから、ヨウゼフに伝わってしまった。
「俺を、置いていく気だったんですか!」ヨウゼフが怒ってる。滅多に無いことだな。
「ミミと離れたく無いだろうと思って、言えなかった。若しかして帰ってこれないかも知れないんだぞ。」
「ミミとは、終わりました。」
「え!」終わったの?
「見解の相違って奴です。俺はきちんと結婚したいのに、ミミは子供を作ってくれれば後はいらないそうです。どういうことか、僕には理解できないんっす。」
まあ、そうだろうな。ミミは自由な道を選んだってことさ、ヨウゼフ。
僕と二人、いやヌポポも一緒か。3人で精霊族の国を目指すことに決まった。
☆
これから準備することが沢山ある。
ギルド総括長にも、報告しなければならない。この国の登録魔法士はここ数年で増えたので、僕がいなくなっても問題は無いだろう。でも、挨拶はしておかないと。
「精霊族の国に行くのか。」「はい」
「実は、この間の精霊族の訪問を受けて、国の方でも危惧があった。彼等は一体何の為に来たのか、何を見ていたのか。何も要求するでも無く、只見る物はもう見た、と言って帰って行ったのだ。不気味だ。本当は、君に、行ってくれ。調べて欲しいと此方から言いたいほどなのだ。分断された他の世界の事もあるしな。」
「其れでは、此方に、ご迷惑を掛ける訳ではないのですね。」
「当たり前だ。申し訳ないのは私の方だ。君を,死地に追いやるのだからな。」
「とんでもない。自分が行きたいのです。」
「それでだ。此方から、一人付けようと思う。」
「え?だれか、行きたい獣人がいるんですか?」
入ってきたのは、僕の弟子の一人フランチェスカだった。