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星の子と音の国のお話

作者: 五線紙太郎

夜空には無数の星々が輝き、静寂の中で彼らは互いに語り合っていました。その中にひときわ明るく輝く星がありました。しかし、その星はある日、突如として光を失い、夜空からふわりと落ちてしまいました。


星が落ちた先は「音の国」という、あらゆるものが音楽でできた不思議な世界でした。この国では、木々がそよぐたびに葉が奏でるハープのような音が響き、石畳の道を歩けば、靴の底から軽やかなリズムが生まれます。


星は地上に触れると、小さな子どもの姿に変わりました。周囲の人々はその子を見つけ、「音の子」と名付けました。音の子は話すことはできませんでしたが、彼の存在そのものが美しいメロディを放っていました。その音色を聞く者の心は安らぎ、悲しみや怒りはたちまち消えてしまいます。


音の子は音の国の人々に大切に育てられましたが、彼の心にはある一つの願いが宿っていました。それは、再び夜空に戻り、星として輝くことでした。しかし、それを実現するためには、音の国に隠された「永遠の旋律」を見つけなければならないという伝説がありました。この旋律を奏でることで、どんな願いも叶うと言われていました。


音の子は自分の運命を受け入れ、ある日、旅立ちを決意します。村の人々は彼に楽器を一つずつ手渡しました。風を纏うように軽やかなフルート、力強さを秘めたドラム、小川のせせらぎのようなリュート。そのすべてが、音の子の旅を支える大切な仲間となるのです。


【風の森の試練】

旅の最初の目的地は、風が絶え間なく吹き抜ける「風の森」でした。この森には、風の精霊が住んでおり、旅人に試練を与えると言われていました。音の子が森の奥深くに足を踏み入れると、笛のような風の音が耳元で囁きます。


「試練を受ける者よ、この風の中で私の音に調和する旋律を奏でなさい。」


音の子はフルートを取り出し、風の流れに耳を傾けました。風が高く鳴くときには、彼も高い音を、風が低く唸るときには、深い音を吹きます。精霊の旋律と音の子の旋律が次第に絡み合い、一つの美しい調べとなりました。


「よくやった。君の心には自然のリズムが宿っている。」


精霊は微笑みながら、音の子に一つの音符を授けました。それは「永遠の旋律」の最初の欠片でした。


【雷の山のドラゴン】

次に音の子が向かったのは、天空に突き抜ける「雷の山」でした。この山の頂には、雷のドラゴンが住んでおり、旅人を試すと言われています。


険しい山道を登る音の子の前に、突然、稲妻とともに巨大なドラゴンが現れました。その瞳には威厳と力が宿っており、山全体がその存在に震えていました。


「試練を受ける者よ、私のリズムに合わせ、太鼓を叩け。」


音の子はドラムを構え、ドラゴンの雷鳴に耳を澄ませました。稲妻が轟くたびに、音の子は力強く太鼓を打ちます。雷のリズムに応じたその演奏は、山の空気を震わせ、ドラゴンも思わずうなるほどの迫力を持っていました。


「見事だ。お前の鼓動には雷の力が宿っている。」


ドラゴンはその翼を広げ、もう一つの音符を音の子に授けました。それは「永遠の旋律」の二つ目の欠片でした。


【月の湖の調べ】

最後に音の子がたどり着いたのは、「月の湖」と呼ばれる静寂の場所でした。この湖は、夜になると月の光を受けて神秘的な光を放ちます。その中央には水の女神が住んでいると言われていました。


音の子が湖畔に立つと、湖面から美しい女性が現れました。その姿は透き通るようで、まるで月そのものが人の形を取ったかのようでした。


「試練を受ける者よ、私の調べに応じ、この湖に響く旋律を奏でなさい。」


音の子はリュートを手に取りました。湖の静寂を破らぬよう、そっと弦に触れます。その音は女神の琴の音色と交わり、夜空にまで届くような静謐な音楽が生まれました。


「素晴らしい。お前の心には水のような柔らかさと深さがある。」


女神は最後の音符を音の子に授けました。これで「永遠の旋律」のすべての欠片が揃いました。


【星への帰還】

音の子は旅の成果を胸に抱え、再び音の国の村へと戻りました。村の人々が見守る中、彼は三つの音符を一つに繋ぎ、永遠の旋律を奏でました。その旋律は、音の国全体を包み込み、夜空に輝く星々までもが共鳴しました。


その瞬間、音の子の体が光り始め、再び星の姿へと戻りました。村の人々に見送られながら、音の子は空高く舞い上がり、夜空の一部となりました。


人々はその星を「響き星」と呼び、その光を見るたびに音の子の奏でた旋律を思い出しました。そして、その旋律を胸に刻みながら、音の国で平和な日々を送ったのです。



音楽と星が織りなす物語は、永遠に音の国で語り継がれました。

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― 新着の感想 ―
長すぎず童話のような雰囲気でとても良い
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