人外の鳴き声
「トレインビュー、ヨシ!」
しまった。今のムーブは不審者だったかもしれない。中山は変な目をしてないだろうか。
中山に目をやると、普通ではない目をしていた。身体も震えている。
やはり不審がられたか。
中山の震えは治まる気配が無く、プルプルしながら机の下に沈んでいく。
そしてついに、虚構の生物の鳴き声のような声を出し始めた。
少々キモい挙動をしてしまったことは認めるが、そこまでの反応をすることはないだろう。
泣きそうな気持ちになりながら状況を見守っていると、その声はじわじわと音量を増していく。
架空の生物の鳴き声⋯⋯というか人間の泣き声!?
音量が大きくなるに従って、中山の声は次第に号泣へと変わった。
まてまて。お前が泣くんかい!
さて、この瞬間俺は難問に見舞われた。
人が涙に暮れるに至った場合、慰める言葉をかけてあげるのが一般的だ。それはもちろん分かってる。
だが今回は、そもそも号泣するに至った事情が皆目想像できない。なにしろ情報量がゼロなのだ。
その時点で難しいのだが更に、俺はどちらかといえば、友達を作ってワイワイというよりは一人で粛々と趣味に励んできた人間だ。会話の経験値は低い。
悪いな中山。できるだけ頑張るけど、俺はたぶん適切な言葉を見つけられない。
心の中で詫びながら、俺は渾身の言葉を口に出した。