クリア報酬1
「決まってるでしょ。旭ケ丘先生にクリア報酬を要求するの」
そういうことか。報酬は確かに欲しいが、アタマが下校するモードになっていた俺には正直、面倒な話に思えた。
「貰えたとしてもジュース一本だろ? わざわざ時間をかけて取りに行くほどでも」
「分かってないなあ。そのジュース一本が嬉しいんじゃないの。行くよ」
結構グイグイ来るなこいつ。断る方が労力を消費しそうだから、ここは素直に従おう。
玄関に向かうルートを外れて、俺と中山は保健室へと入る。
「旭ケ丘先生。仕事、終わりました」
中山がそう言ったのを聞いて、保健室の奥から旭ケ丘先生が現れる。
「ありがとう。私一人でやるのは地味に大変な作業量だったから、助かったよ。お礼の品をあげるから、ちょっと待っててね」
そう言いながら旭ケ丘先生は、自分の席に座って事務机の引き出しを解錠する。あれ? ジュースを買いに行くのでは?
直後、旭ケ丘先生が中山に渡した物は何故か、一枚のペーパーと鍵だった。中山も意味が分からない顔をしている。
「これは何ですか?」
当然中山は尋ねる。
「空き教室の鍵だよ。4階の一番端の。中山さん、部活のことで相談してくれたでしょう? この鍵がその答えだよ」