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春の街



「すっごーい!人がいっぱい!建物もこんなに!きれい……!」

「はいはい。感動してるとこ悪いが、早く侯爵の邸へ向かうぞ。ここに来るまでに寄り道しまくったせいで、もう夕方になっちまう。」

「あぅ……。ごめんなさい。」


最初の目的地であるプランタンという街へやってきた私たちは、聖女としての役目を果たすために、この街周辺の管理者であるオーウェン侯爵の邸へと向かっていた。


「ねぇ。イクス。」

「ん?なんだ。」

「あのね?聖女として()()()()をしないといけないのはわかってるんだけど、

なんでわざわざ侯爵のところに行かなくちゃいけないの?別に儀式をするのは聖殿のにある四季の泉なわけだし。私としてはささっと儀式をして観光したいなー……なんて思ったり?」


(なんでか泊まる場所も侯爵の邸って決まってるし。せっかく宿屋に行けるんだーって色々調べてたのに。それは絶対ダメだって怒られちゃうし。)


聖殿を出ると聞いて以来、いろいろな本を読んで調べていた場所は、ここに来る前にほとんど却下されてしまった。行きたかった観光名所は人が多いからダメだ。

体験してみたかったギルドは危険だからダメだ。酒場だって旅の醍醐味と書いて

あったのにそんなところ一番ダメだと叱られてしまったのだ。


だからせめて、行ってもいいと許可が出た場所は何が何でも滞在中に行きたいのだ。

侯爵への挨拶なんていうのは、ぶっちゃけ時間がもったいないのである。


「お前……。あのなぁ、この旅の目的は祝福だけじゃねぇんだぞ。侯爵をはじめ、この国で暮らしてる人間に対するお披露目でもあるんだ。16年間全く世間に姿を見せない聖女を拝見できるなんて、王族に会うより光栄なことなんだから、おとなしく挨拶だけでもしてやれ。」


「……聖女って言ったって、普通の人間と変わらないのにね。今まさに観衆の中にいるわけだし。誰も私が聖女だって気づいてないじゃない。」


「まぁ。たしかに今は気づかれてないけどな。それはここにいる大多数が魔力を持ってないからだ。ちょっとでも魔力がある人間なら、お前が聖女だってすぐに気づくと思うぞ。」


「……そうなのかなぁ。まぁ、それも聖女の役目なんだったらしょうがない。

たしかに社交界になんて行ったことないからねぇ。はぁ……。おとなしく侯爵の

ところに行きますかぁ。」


隣にいるイクスから、「お前なぁ……。」といいたげな視線がやってきたが、

気づかないふりをしながら先に進む。

聖女としてのお披露目なんて、くだらない。なんて思ったのは内緒だけど。




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