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イヤ〜な感じの悪役令嬢は婚約破棄される

作者: ヘチマチ

夢も希望もない話




「エリザベス!お前との婚約を破…」


「あーはいはい、婚約破棄ですね。婚約を破棄すると書いて婚・約・破・棄。ええ、ええ、分かりました、りょーかいデッス」


「なっ…!私の話を最後まで聞け!」


「いやいやあってるでしょ?言いたいことあってるでしょ?普通に。何?違いました?えーじゃあ聞くんで言ってくださいドウゾー」


「いや、確かにそうだが」


「いやいやあってたのかーい!何このやり取り無駄やないかーい!」


「な…!お前どうしたんだ!こんな性格じゃなかっただろう!」


「そこ?気にするところ、そこ?もう要件済んだなら帰らせていただきますねー。これでも貴方の尻拭いで忙しいんでー」


「ま、待て!私の愛するミリアをいじめたそうだな!謝ってもら…」


「えー!いじめたって私が?私なの?全然心当たりないんですけどー!それどこ情報?」


「ミリアがそう言っ…」


「いや本人ー!それ証拠にならないからー!はい却下ー!」


「エリザベス様!それですよそれ!みなさん騙されています!淑女の中の淑女、とても優秀なエリザベス様の半分は優しさで出来ていると言われていますが私の前でだけ、このようなイヤ〜な感じで素っ気ない返事しか…」


「で?」


「えっ?」


「だから、で?それが何か?」


「だから謝って欲し…」


「いやいや何でそういう話になるかなー。そもそもよ?貴女が私に

“彼を解放してあげてください!”

だの

“私たちは真実の愛で結ばれているのです!”

だの訳のわからないことを言うからでは?私にどうしろと?毎回時間を無駄にされて

“そうですか”

と返すだけでも褒めて欲しいですけどー?それとも何か?

“そうなんだー!すごぉーい!(棒読み)”

って返せばよかった?」


「違っ!そうじゃなく…」


「いやいやいや何なの?あれも違うこれも違うって何がしたいの?婚約破棄でしょ?するって言ってんじゃん。これ以上何があるの?はい、じゃあ殿下、十秒で言ってみてください、せーの!」


「…う、煩い煩い煩い!なんなのださっきから腹の立つ言い方ばかりしやがって!ああ婚約破棄だよ!お前の顔も見たくないっ!」


-----


「はぁぁぁぁー…疲れたわ。イヤ〜な感じの同僚を真似してみたけれど本当に疲れたわ…」


「エリザベス、ものすごくイヤ〜な感じで完璧でしたわよ」


「そうそう、君のイヤ〜な同僚にそっくりで笑ってしまったよ」


「笑い事ではないですわ殿下方」


「そもそも第一王子だからって結婚前から堂々と浮気をする浅はかな兄にエリザベスは勿体なかったのですわ」


「同感だな。兄が婚約破棄をするという噂を聞いて妹の陣営の者たちしかいないパーティーを企てたのにそれにも気が付かない兄は全く王に向いていない。父も兄を廃嫡すると言ってくれたよ」


「エリザベス、必ずや私が女王となってみせますからその時は優秀な方の兄とともに私を支えてくださいな」


「お心のままに」


「それはそうと政務部の部長に配置換えは頼んだのかい?イヤ〜な感じの同僚の側で耐えられるのは君しかいないとずっとペアを組まされているのだろう?君もそろそろ限界だと思うが」


「もちろん部長には言いましたよ。でも君にしか頼めないと泣きつかれて…彼の作る資料は確かに素晴らしいですし言うことも間違ってはいないから…上司には向いていないですが、かといって左遷させるほどでもない、と」


「うーんそうか…仕事で一番困るのは人間関係だよね」


「ええ、本当に」


「私たちもそこに関しては介入できないから心苦しいよ」


「お気持ちだけでもありがたいです」


「そうだわ!エリザベスもそのイヤ〜な同僚の真似をしたらいいのでは?今日も上手でしたし。エリザベスがそうしないのはもちろん元々の性格もあるけれど、周りから彼のような面倒な人だと思われたくないという気持ちもあるでしょう?でもこのままではエリザベスの心が壊れてしまうわ。変人だと思われてもいいからやってしまいなさいよ。どうせ私が女王になったら私付きになるのだから」


-----


「あー!来た来た!昨日はよく休めましたか?おかげでこちらは忙しかったですー」


「お世話かけまし…」


「いやはや聞きましたよ。婚約破棄!婚約を破棄すると書いて婚・約・破・棄!凄いことをなさりますねぇ!」


「いえ私からでなく…」


「いやいや、この際どっちからとか関係あります?ないでしょ。普通に。そういう一方的な考えよくないと思いますよー?」


「いや、私の話を聞い…」


「えー!何何?詳細話したい感じですか?いや話したいんかーい!でも十秒でお願いしますー。こう見えても貴女が休んでいた分、忙しいので。はい!ではどう…」


「う、うるせェェェ!!!」


「えっ…何」


「煩い煩い煩いー!!!なんなのですかいつも腹の立つ言い方ばかりして!ああ無理です!貴方の顔も見たくないっ!部長ー!もうこれ以上無理です、無理デーッス!」


「そんな言い方しなくても…」


「いやいや自覚ないんかーい!貴方がこれまでイヤ〜な感じの言い方で一体何人の方が配置換えを希望したと?貴方が優秀なのは分かりますが人格破綻してますよ?気付けよ。普通に」


-----


「苦労かけてごめんね、彼も反省しているみたいだし彼にはペアを付けず書類作成だけに没頭してもらうことにしたよ」


「部長、もっと早くこうすべきでしたね」


「君が言ってくれたこと、皆感謝していたよ。彼はやっと自分の物言いが人を遠ざけていたことに気がついて辞職しようと考えているようだが…」


「そうですか、では私は辞めますので失礼します」


「えっ!なぜ!?」


「最後にひとつ。組織というものは複雑で上司という立場は大変だとお察しします。ですが今回は彼の問題を知っていながらいつも誰かに彼を押し付けてきた。そのせいで何人もの人の心を傷付けましたね。それは間違っていたと言わざるを得ません。私も今後は王女の補佐として、上に立つ者として今回のことを教訓にいたします。お世話になりました」


「ちょっと待ってくれ!彼も君も辞めてしまったら困ってしまうよ!」


「部長ならご存知でしょう?組織では良くも悪くも代わりはいる、と。一時的には困るでしょうけれどきちんと引き継ぎしますから後任の手配をお願いしますね。そうそう、部長もそろそろ交代なさっては?…なーんて、私、イヤ〜な感じでした?まぁ本音ですけどね!」





最後まで読んでいただきありがとうございます。

人間関係に悩んでいる人へ。相手は変えられません。自分を守れるのは自分だけ。逃げるが勝ち。良くも悪くも代わりはいる。逃げましょう。

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