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第5章:お風呂での夜遅い電話

仕事での一日は長くて忙しかった。やっと夜遅くに家に帰り着くと、ソファにどさっと倒れ込む。靴を脱いで足を伸ばし、半分暗闇に包まれた静かな部屋で、この一瞬の平穏を味わいながら一日のストレスが消えるのを待つ。


目を閉じたその瞬間、テーブルの上に置いていたスマホが振動する。画面を見ると「ハルカさん」と表示されている。こんな時間に?彼氏のことで相談でもあるのかもしれない。疲れを隠しつつ、電話を取る。


「もしもし?」


彼女の明るい声が電話越しに響く。「佐藤さん!こんな遅くにごめんなさい。ちょっとお話ししたくて!」


「全然気にしないよ。それで、どうしたの?」少し体を起こし、恋愛相談が来るだろうと予測する。


「ううん、ただ、佐藤さんのこともっと知りたくてさ!」ハルカは楽しそうで、好奇心が伝わってくる。


僕は少し驚きながらも笑ってしまう。「へぇ、そうなんだ。何を知りたいの?」


「例えば、佐藤さんって普段どんな仕事してるの?」ハルカは相変わらず元気いっぱいだ。


僕は深呼吸する。「えっとね、俺はゲーム会社で働いてるんだ。主にアダルト向けのビジュアルノベルを作ってるんだけどね。」彼女がどう反応するか、少し気になる。


「えっ、本当に!?アダルトゲーム!?面白そう!」ハルカは驚いたようだけど、すぐにクスクスと笑い始める。「そういう仕事って、なんかいろんなネタがありそう!」


僕も笑って返す。「まあ、時々シナリオが予想外の方向に進むことがあるね。」


「ふふっ、確かに!そういうのって想像力がめっちゃ必要そうだね!」彼女は楽しそうに言う。


その時、電話越しに水の音が聞こえた。僕は眉をひそめる。「ん?なんか、水の音しない?」


「ああ、これ?今お風呂に入ってるんです!」ハルカはケラケラと笑いながら答える。水音がさらに鮮明に聞こえてくる。


僕は驚いて、どう反応すればいいのか戸惑う。「お風呂の中なの?」


「そうですよー!一日の疲れを取るにはやっぱりお風呂が一番ですから!」彼女は笑いながら、水をパシャパシャさせている音がする。「電話越しにお風呂の音聞くの、なんか変わってるでしょ?」


彼女が何かをいじっている音が聞こえ、また声が響く。「ねえねえ、佐藤さん!今からアヒルちゃんで水をかけちゃいますよ~!」


僕は吹き出してしまう。「えっ?本当に電話越しにそれやるの?」


彼女は水をはじく音を真似しながら、「ジャバーン!ほら、濡れちゃいましたよー!」と楽しそうに笑い続ける。


「電話でそんなことされるのは初めてだな!」


「ちょっとでも楽しい時間にしたかったんです!」ハルカは息を整えながら、まだ笑顔で言う。「びっくりしました?」


「いや、全然。むしろ楽しかったよ。」僕はその奇妙だけど面白いやり取りを思い返して、つい微笑んでしまう。「こんな軽い気持ちになれる瞬間をありがとう。おかげで疲れが取れたよ。」


「ふふっ、喜んでもらえてよかったです!じゃあ、そろそろ切りますね。おやすみなさい、佐藤さん!」


「おやすみ、ハルカさん!」そう言って電話を切ると、まだ微笑んでいる自分がいた。


その後、僕もお風呂に入りながら、さっきのハルカとのやり取りを思い返す。頭に浮かぶのは、彼女が遊んでいたアヒルちゃんと水の音。このちょっと不思議なやり取りが、疲れた一日の終わりに温かみをもたらしてくれた。


シンプルな会話が、日常に特別な彩りを添えることがあるなんて、なんだか不思議だけど心地いい発見だ。

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