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その最期、お手伝い致します。  作者: みぎきき
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はじまり

よろしくお願いします。


異世界転生。


昔からあるジャンルだったが、小説投稿サイトの認知により大ブームとなったいわゆる「なろう系」である。

かく言う私もそれにハマった1人であり、色々な作品を読み漁っていた。


死後どうなるのか。

そんな事は分からない。でも、もし異世界転生があって、生前の何も取り柄の無い自分が特別な力を手に入れて、誰を救ったり、自由気ままに生きる。

どんなに辛い場面があったとしても、現実世界とは違って努力は報われるし、何より周りがどうであれ物語の主人公は必ずパッピーエンドを迎える。

だから私は憧れたんだ。その”主人公”に。


朝日の眩しさに目が覚める。

ベッドから起きて部屋のドアを開けると朝食のいい匂いがした。


「あら、ラルムおはよう」


朝食を作っていた女性が私に気づき、目線を合わせると頬に触れた。


「…大丈夫?少し顔色が悪いわ。どこか具合が悪い?」


女性の美しい緑色の瞳に私が映る。

そこには疲れ切った顔をする子供がいた。

(うぁ、本当だ。今朝は夢見が悪かったからなぁ)


「大丈夫だよお母さん。少し眠かっただけだよ」

「そう?それならいいけど。具合が悪い時は隠さず直ぐに言ってね。約束よ?」

「うん。ちゃんとお母さんに言うよ!やくそく‼︎」

「ふふ、いい子。…じゃあ朝ごはんにするからお父さん呼んできてね」

「はーい!」


外へ出ると家の近くで男性が剣を振っていた。

(毎回思うけどあの剣私の身長と同じくらいだよね?すごすぎない?)


「ラルムおはよう」


私に気が付いた男性は剣を鞘に収める。

私は男性に向かって走り出し、子供のように抱きついた。


「お父さんおはよう‼︎お母さんが朝ごはんだって!」


男性が私を抱き上げると目線が同じくらいになり、その青色の美しい瞳に映る私は普通の子供だった。



--------------------------------------



「いただきまーす‼︎」


暖かいスープとパン。

優しい両親。そして”私”。

よくある普通の家庭。

しかし一つだけ私にとっては普通では無いことがある。


「誰かしら?」


母の声に顔を上げると、青白く光っている鳥が部屋を飛んでいた。

父が鳥に手を伸ばすと鳥は父の手に収まり、その姿を紙へと変えた。


そう。私にとって普通では無いことそれはこの世界が”剣と魔法の世界”であることなのだ。

(まさにハイファンタジー…)


そして率直に言う。

私、ラルム・テイラーは異世界転生者だと思う。


私は元々科学が発展した世界で生きていた。

剣を使っていた時代はあれど魔法は存在しない世界。

そんな世界で私は30年間生き、気が付いたらここにいた。

実を言うと、私は自分がいつ死んだのか分からない。だから転生者とは言い切れないのだが…


そんな私は初めから自分が転生者だと分かっていたわけでは無い。

4歳のとき原因不明の高熱を出し、そこで私は前世を思い出したのだ。

(初めて魔法を見た時は、私も"主人公"になれるんだって喜んでたっけ。…でもよくよく考えると異世界転生ができるのならそれが1人とは限らない。そうなれば主人公と"それ以外"に分かれるのは当然のことだよね。はぁ…しかも今の私は現実世界となんら変わりない。これが現実と理想の乖離ってやつか…)


「ラルム?お話聞いてた?」

「あっ…ごめんなさい。ご飯に夢中で聞いてなかった…」

「ふふ、あのねお父さん来月から2ヶ月ぐらいお仕事だって」

「いやー、本当今の6番団長様は俺の扱いが雑だよ」


”私”の両親は優種な分類に入る人達だ。

父、レオ・テイラーは、元王国騎士団の6番団長だった。6番団隊は主に首都郊外の街を管轄する部隊だが、団長までなった父はどう考えても優秀な人物だ。今は騎士団を辞めて傭兵として騎士団の手伝いをしている。

そして母、マレーラ・テイラーは、数少ない加護を行える針子だ。守りの加護を行える母は、王国騎士団直属の針子だったが、今は定期的な納品を約束して、首都を離れ私達と暮らしている。


そんな父が騎士団長を辞めたのも母が首都からかなり離れたこの村にいるのも全て私が原因だった。


元々は6番団隊の拠点である街に私達は住んでいたが、私が4歳の頃原因不明の高熱を出したとき、私の身体が平均以下なことが分かった。

しかし、これには少し語弊があり、元の世界であれば私のこの身体は平均的なものだが、この世界の平均が高いせいで、低く見えてしまった。

それでも最初は街に住んでいたが、私は他の子供より圧倒的に体調を崩すことが多いことを心配して両親がこの村に引っ越すことを決意したのだ。…まぁそのおかげで、体調を崩す回数が減ったのだが。


つまり優秀な両親から生まれた私は、出来損ないなのだ。


母のように加護なんて出来ないし、そもそも針子としての才能もない。しかも、身体能力が普通の人より低いことも相まって父のように鉄の塊である剣なんて振るうことすらできない。極め付けに私は魔法の素質が全く無い。

あまりにも2人が優秀過ぎて自分出来の悪さが逆に目立ってしまうのだ。


それでもありがたいことに私の顔は2人似ていた。

2人譲り整った顔に母に似た赤みが強い茶髪とグレーがかった青緑の瞳。

どこから見ても美人だと思うし、私もこの顔を気に入っている。


私は仲睦まじく話す2人を見た。

(2人は物語の主人公ぽいよね。いや、主人公までは行かなくとも絶対メインキャラだよね。

考えれば考えるほど私は2人の子に見合わないなのに、どうして2人は何も出来ない私を優しくしてくれるんだろう。どうして私に何も求めないのだろう。

…もう諦められているのかなぁ。それはほんの少しだけ、本当に少しだけ…)


「ラルムさっきから俺たちを見つめてどうした?」


だから優秀でなければならない。


「お母さんとお父さんの子供に生まれて幸せだなぁって思っていたの‼︎」


理想のこの人達の理想に近づくために。


「お母さんもあなたが産まれてくれて幸せよ」

「うちの娘は世界一だな‼︎」


愛してもらえるように___

ありがとうございました。

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