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第一章 第5話 紫




「ステラ様っ!

赤い騎士の情報は

我がリオー国内には有りませんっ!」


「ステラ様

隣国にも赤い騎士の情報は

有りませんっ‼︎」


 翌日、ステラは西部砦にいた次々と報告が入ってくるが、まったくサルガスがどこの騎士なのか掴めないでいた、ガイアを一度でもあそこまで追い詰めた、そして衛兵部隊にも死者は出なかったが重症者は出ている、もう剣も持てない者も居たのだ。

 ステラは前世がアル・ムーリフであり、その記憶も表面には出ないが、その気質がただでは済まさないと思っていた。



「そんなはずは無いわっ!

あれだけの腕を持つ騎士を

誰も知らないなんてあり得ないのよっ!


何としてもどこの国の者か

探し出しなさいっ‼︎」


 ステラが指示をそう出したが、そこにアルナイルが来て静かに言った。



「無駄です……

どんなに探しても

地の果ての国まで探しても

あの騎士を知っている人は居ません」


「え……

アルナイル何か知っているの?」


ステラはそう聞いて思い出した。



「お前が逃げても仕方ないな

お前は攻撃よりも守ることを好むからな

いや……失礼……

手段が無いと言うべきだな


それよりも……

こいつはなんだ?

星鉄塊の剣を持つようだが

お前の連れか?」


 あの赤い騎士が言った言葉、風に乗り小さな声で聞こえていたのだ、まるでアルナイルを知っているかの様に言っていたことを……。


「アルナイル……」


ステラが言い、他の兵達もアルナイルを見ていた。



「これは北域にある伝承です

その伝承の言葉から

星を数えて計算したんですが……」


アルナイルが静かに巻物を取り出し、広げステラもそれに手を貸しアルナイルは話続ける。



「一億年くらい前のことです


かつて人々は星から降りる人を

星神と呼んで祀っていました」


広げられた巻物は絵巻物になっていて、その絵の物語に沿って指差しながらアルナイルは話続けた。



「星神は信じられない力を使い

そして多くの知識で建物の建て方や

作物の作り方を人々に教え


多くの国々を豊かにして行きました


ですが星神は

人々が精霊と話すことを禁じました


人々はそれを守り星神を崇め

人と星神は共に暮しました


それから二千年が経ったとき


一人の人が星の力に気づき

魔法を生み出しました………


魔法は精霊を通して得る力で

星神はそれに怒り

遥か彼方の空よりも

遥かに高い星の海から


多くの魔物を呼び

世界に解き放ってしまいました」


アルナイルがそう言った時には、絵巻物の地獄絵図のような凄惨な絵が描かれている場面に来ていた。


「それって……

まさか先史の野獣のこと?」


ステラが呟くように聞いた。


 アルナイルは静かに頷き、その絵に描かれている赤い騎士を指差した。


「これっあの騎士じゃないっ‼︎‼︎」


ステラがその騎士の絵が持つ鞭を見て叫んだ。


「じゃぁ……

あれは星神なの

それじゃ私達は……」


 ステラが暗い顔をして絵を見つめる、ステラも知っていたのだ、そしてそれはステラだけじゃ無くその場にいた全ての兵達も同じであった。

 皆が先史の野獣がその昔世界を滅ぼそうとした事がある事を学んでいたのだ。


 だがアルナイルは話続ける。



「十年が経ち

人々は抵抗し続けていました

多くの国が滅び

星の数ほどの人々が死に

それでも戦い続けました……



そして十年目が終わろうとしたとき

星々の王セプテントリオが輝きを放ち


その輝きのもとに紫の星が現れ

紫の流星を無数に放ち


多くの先史の野獣を貫き焼き払い

そして紫の翼を持つ

美しい星神が現れ剣を振り

全ての野獣の命を奪い


人々はその星神を崇め

全ての魔法を封印しました


ですがその星神は何も言わずに


星の海に

静かに帰ってしまったそうです……」



アルナイルは語り終え、ステラを強い眼差しで見つめていた。


 アルナイルは気付いていた、その星神がアル・ムーリフだと言うことに、それだけの星海の魔物を一掃出来る紫の星、それは紫の輝きを放つ誓いの一星を持つアル・ムーリフしか考えられなかった。


(この星は一度あなたが

救っているのです……


あなたは忘れてしまっている



ねぇあなたは

どおして旅に出たの?



本当にハダルを追いかけただけなの?)



 アルナイルは心からそう思っていた、そしてアル・ムーリフがこの地で、セプテントを名乗る家の娘として生まれたことに、何か意味があるのかも知れないと言うことも頭の片隅に置いていた。



「アルナイル

なんでその話を知ってるの?

私達も先史の野獣のことは学んだけど


でもその神話は初めて聞いたわ


どこで知ったのかしら

北域って言ってだけど……

この巻物も北域で手に入れたの?」



 アルナイルは静かに頷いた、昔から僅かではあるが、この星から星海まで伝わって来るアルナイルの星、輝きの一星を祀る人達の祈りを感じていたのだ、アルナイルはまずその人達の所に行き、捧げ物であったこの巻物を貰い、アルナイルの知らなかったその昔の出来事を学んで来ていたのだ。



「詳しく教えて欲しいけど……

無理ならいいわ


でもこの巻物は貸してくれない?

調べないといけないかも知れないから

みんなのために……」


ステラがそうアルナイルに聞くと、アルナイルは静かに頷いた。


「ありがとう……


この巻物をすぐに模写して下さい

そして模写をフランシスに送り

秘密裏に調査して下さい


原本はアルナイルさんに

必ず返してあげて下さい」


ステラはそう言いアルナイルとその部屋を後にしガイアの部屋に向かった、ガイアはあの戦い以来疲れが出たのか、熱を出して寝続けていたのだ、たまに起きるが直ぐにまた寝てしまっている。


 ステラの風の魔法の力を剣に送り支援したが、体の負担が大きかったようだ。


「アルナイル元気出して

助けてくれた星神様もいたんでしょ?

大丈夫よ」


ステラが優しく言ってくれるが、アルナイルは自分が人間の言う星神で星海人だと言うことを考えていた、ステラは生まれ変わり記憶をなくしてしまっていて、その方が気持ちは絶対に楽なはずで、もし自分が星海人であると知れてしまったらと不安になっていた。


「うん

そうだよね……」


アルナイルはステラに眠るアル・ムーリフの意思が目覚めてくれればそれ以上に心強い事はないとそう思っていた。


「ガイア?

寝てるかな入るわよ」


 ステラがそう言いガイアの部屋に入って行った、静かに眠っているガイアを見てアルナイルが優しい顔でそのベッドに座る。


 ステラはアルナイルがガイアにやけに慣れているように見えた、それは昔から仲がいいように見えそのまま聞いて見ることにした。



「二人ってまるで兄妹みたいね

昔から仲がいいみたいじゃない」



「えっ⁈

そ、そ、そ、そ、そうですか⁈⁈」


アルナイルは普通に動揺し、ステラは普通に思った。


(なに…それ……

本当にそうなの?

そんな訳ないわよね?)


(マズイわ

兄妹って気付かれたら

私のその先計画が

なくなっちゃうじゃないっ‼︎


どんなことをしても

隠し通すのよっ!

お兄ちゃんが記憶を取り戻しても


その状況にして

それが現実にしちゃえば


………


きゃぁぁぁぁぁぁぁぁきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎)


アルナイルが顔を赤くし妄想の果てにクネクネしだし、ステラは思った。


(気のせい?

でもアルナイルちゃんって

そこはわかりやすいわね……)


 そう思いながらアルナイルの隣に座った、ガイアは二人の後ろでスヤスヤと寝ている。


「ねぇ

ガイアが寝てる間に二人で

キスしちゃおっか?」


ステラがアルナイルをからかうつもりで言った、無論アルナイルが乗って来たらするつもりであった。


(えっぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!

チュウ……

チュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ‼︎‼︎‼︎)


アルナイルは高速でクネクネクネクネしだし、それをステラは楽しそうに見ていた。


(カワイイ

でも良かった

元気になってくれて)


 ステラはアルナイルがあの話をした後から、元気がない気がしていたのだ。


(アルナイルちゃんって

星神様なのかな……

あの話もそうだし

赤い騎士もアルナイルちゃんのこと

知ってるみたいだったし……)


 ステラは微笑みながらそう考えもしていた。


「で?

俺が寝てる間に

何するって?」


ガイアが肘を立て、ステラ達の方を向いて横になり起きていた。


「きゃっ!」


アルナイルが驚いて立ち上がり、ステラは微笑んだまま、ガイアの方に背中からの倒れ込んで言った。


「おいっなんだよっ」


ガイアが言うが、ステラは気にせずに聞く。


「いいのいいのっ

いつから起きてたの?」


「あっ!ステラさんズルイっ‼︎‼︎」


アルナイルがそう言うが、ステラはそのままガイアの頬にチュッと軽くキスした。


「なっ!」


ガイアが驚いたが、アルナイルが飛びかかるように二人に抱きついてガイアの口に軽くチュッっとキスをして固まった。


「何してんだよ二人とも!」

ガイアは起き上がるが、ステラは抱きついたままキャッとしてるが、アルナイルは動かない……。


「アルナイル?」


 ステラがアルナイルを呼んで離れ、ベッドにうつ伏せになって動かないアルナイルを仰向けにすると、顔を真っ赤ににして気絶していた。


「なんだよ…これ……

飛びかかって来て気絶するって

どう言うことだよ……」


ガイアが頭をかきながら呟く。


「ふふっカワイイ」


 ステラがそう言いアルナイルの頭を優しく撫でている。


(星神様かも知れないけど

絶対にいい子よ……


こんな子が悪いこと

出来るはずないもの……)


 ステラはそう優しく微笑んでいた。




「なるほどな

星神かも知れないってことか……」


 ガイアが砦の食堂で食事を取りながら、ステラから話を聞いていた、骨つきの鶏肉にかぶりつきガイアは話を聞きながらでも手を止めずに食べ続けていた。


「そんなにお腹減ってたの?」


ステラが聞く。


「あれだけ魔法で強化しましたから

体力的には疲れ果てるはずです

仕方ないですよ」


アルナイルが明るく言う。


「あぁすげぇ腹減ってんだ

まだパン貰えるか?」


ガイアがそう言うと、ステラが手を振って言った。


「パンのおかわりお願いします」


「あいよっ!」

食堂を担当してる兵が笑いながら言ってくれ、すぐに運んで来てくれた。


「わりぃなっ」


ガイアがその兵に言うと笑顔で言ってくれる。


「あんたのおかげで

戦友が助かったんだ

沢山食ってくれよっ」


 その兵は気持ちよく言ってくれ仕事に戻って行く。



「でもあいつ

また来るかも知れねぇな……

魔物じゃないのが


ほんとうに面倒だな……」


ガイアが言う。


「そうね……

村の人達も帰してあげられないのよ」


 ステラが言い辺りを見回す、クラストの村は小さく人口も少ないので、村人の食事もこの食堂で取ってもらっている、ステラの計らいで、少しでも侘しい思いをさせないようにそうして貰っている。


 セプテント領は豊かでそれくらいどうと言う事はないのだ、ステラにとって父のサラス・セプテントはメイド好きと言うこと以外は全て尊敬に値いする父であった。


 ステラが衛兵部隊の隊長を務めるのも、サラス・セプテントが民を守る大変さと、大切さを学ばさせるためにそうしているのだ。


 ステラは優しい眼差しで、同じ食堂で食べているクラストの村人を見ていた、すると二人の子供が走りよって来てステラ言った。



「お姉ちゃんこれあげるっ!」

小さい子供が一輪の白い花をステラに差し出して来た。


「お姉ちゃんにもっ!」

もう一人の子がアルナイルにも白い花をくれた。


「あら

ありがとう

でもどうして私にくれるの?」


ステラが聞いた。


「だって悪い動物を

退治してくれたんでしょ?

兵隊さんが教えてくれたよっ!」


ステラに花をくれた子供が言った。


「ふふっ

それはこっちのお兄ちゃんが

やっつけてくれたんだよ」


ステラがそう優しく子供に言った。


「えーそうなの?」


もう一人の子供が言う。


「お姉ちゃん達は応援してたんだよぉ

つよぉいお兄ちゃんが

頑張れるようにたっくさん

応援してたんだよ」


アルナイルが元気に子供達に言う。


「じゃあ僕たちも応援するねっ

頑張ってねっ!

お兄ちゃんっ!」


子供達はそう元気に言って走って行った。



「おうっ!

お兄ちゃんに任せときなっ!

悪いやつは

みんなやっつけてやるからなっ‼︎」


ガイアが子供達に大きな声で言い手を振っていた、子供達も元気に手を振って走り去って行く。

 ステラもアルナイルも、ガイアが意外にも子供達に優しい一面を見て優しく微笑んでいた。


「ガイアって

意外といいパパになりそうね」


ステラが言いアルナイルが続く。


「うん

意外ですね……」


「って意外ってなんだよ

俺は子供は嫌いじゃないぜ」


ガイアが言い返した。


「ふ~ん」


ステラとアルナイルが怪しい目つきでガイアを見ていた。


「なっなんだよお前ら

なんかこぇぇぞ……」


ガイアはそう言い僅かにひいていた。



 そして数日が過ぎ、砦から斥候が20名放たれ周辺を詳しく徹底的に調べ上げさせた、そして20名全てが無事に帰って来て、人の目ではあるが周辺に安全が確認された。


 無論クラスト村の安全も確認された。


 クラスト村の村人も帰って行った、ステラは村に駐留する兵を倍以上に増やし、そして村の守りを堅めるために、そう高くは無いが城壁の様な壁の建設も計画させた。


「ステラ大丈夫なのかよ

結構金かかってるんじゃないのか?」


ガイアがその計画を見て聞いた。



「問題ないわよ

セプテント家はリオー国の中で

最も富を築いてるのよ


他の領主にもお金をだいぶ貸してるわ

王宮ですらセプテント家の財力を

当てにするくらいなのよ」


ステラが胸を張って言うがガイアが言った。


「のわりには

依頼報酬はケチなんだな……」



 ステラはそれをスルーしたが、アルナイルは何かに気付いた。


(まって……

セプテントは

王の星をあやかった名前よね


それとも本当に

セプテントリオーと関係あるの?


もしセプテント家がこのリオー国の……

王族より力を持ったら

ステラのお父さんがもし……)


 アルナイルは冷静に考えているとガイアが声をかけて来た。


「ほらっアルナイル

フランシスに帰るぞっ


それともここに残りたいのか?」


「もうっ!

ガイアさん意地悪言わないで下さいっ!」


アルナイルはそう言い、ガイアについて行った。



 フランシスの街についてステラ達は、セプテント家の屋敷にすぐに呼び出され、ガイアの家に行く前にセプテント家に寄った。



「おぉ

素晴らしい我が娘よっ!

よくぞ無事に帰って来た」


 そう言い、ステラの父サラス・セプテントが屋敷に着いたとたんに声をかけて来た、門から玄関までメイド達が等間隔で並び美しく礼をしている。


「おかえりなさいませ

ステラさま」

メイド達が声を揃えて言う。




(あぁ

ステラが嫌がる親父の趣味か


男として悪くない趣味だが……


このメイド達……

ただのメイドじゃねぇ)


 ステラがサラスと話している間に、ガイアはメイド達からほのかな戦意を感じていた、数名のメイドからは人だろうか、魔物だろうか僅かな血の臭いを感じた、それはアルナイルも感じ取っていた。


(こいつら

全員その辺の冒険者よりつぇぇな……

メイドの教育

間違ってんじゃねぇの?)


 ガイアはそう思いながら屋敷に入って行った。


「さっお嬢様こちらへ」


 ステラが着替えのためにメイドに案内され、別の部屋に入って行った。



「さぁガイア殿くつろいで下され

クラスト村の一件

ご活躍本当に感謝しております


ささっどうぞお飲み下され」


 サラス・セプテントは応接室でそう言い、ガイアにお酒を進めて来た、応接室の入り口に二人のメイドが立ち、サラス・セプテントの横に一人、その背後に二人のメイドが品よく立っている。



「あぁわりぃ

ありがたくいただくぜ」


ガイアはそう言いながら、お酒の香りを嗅いでから静かにのんだ。


 アルナイルはその様子を見てから静かに、飲み物の香りを嗅いでから同じ様に飲んだ、これはこの兄妹の能力で、香りで毒を見分けている、星海人で大地の力を操るガイアは例え無味無臭の毒でも、その大地の恵みから齎される食べ物や飲み物にもられた毒を嗅ぎ分けることが出来る。

 アルナイルはそのガイアと同じ血を持ち、分け与えられたように、同じ能力を持っていた。


 二人の様子を見たサラス・セプテントは微笑み、自らも同じ酒を口にした。



「ところで聞きたいんだが……」



 ガイアが改まって言った。



「なんでおたくのメイドは


血の臭いがするやつが居るんだ?

魔物の血の臭いか人の血の臭いか

解らねぇが……」


ガイアがそう言った時、サラス・セプテントの横にいたメイドが僅かに殺気を放ち前に出たが、ガイアは構わず言った。



「教育間違ってねぇか?

せっかくの美人が台無しだぜ‼︎‼︎


気が強くて剣振り回すのは

ステラだけで十分だって!

そう思うのは俺だけかぁ⁈」



 それを聞いたそのメイドは、えっ?と言う顔をしサラス・セプテントは笑って手を叩き、メイドはサラス・セプテントの横に微笑んで戻った。


「はははっ

わるく思わないでくれ


もう気付いておるかも知れぬが

我が屋敷に衛兵はおらぬ

全て彼女達に任せておる


ステラに剣を教えたのも

このユーファだ」


 そうサラス・セプテントが言うと、先程のメイドがスカートを広げ、丁寧にメイドとして礼をする。


「ステラも彼女には頭が上がらぬ

剣の師として見ておるからのぉ……」


サラス・セプテントがそう言うと、ステラの声がガイアの背後からした。


「なんの話をしているのかしら


お父様?

新しい私の服なんですけど

メイド服じゃないのも

たまには用意してくれませんか?」


「ステラ様

よくお似合いですよ」


ユーファが微笑んで言う。



 ガイアが、あん?と言うように振り返りガイアは衝撃を受けた……。



 ステラは他のメイド達とは違い、明らかに上質の布でしつらえた、紫のメイド服を着ていた、ところどころにあまりフリフリし過ぎずに可愛さを引き立てるように、白いフリフリがバランスよく施され、紫を引き立てていた、ステラが紫の誓いの星を持つ、アル・ムーリフの生まれ変わりだからだろうか……。



 紫のメイド服が非常に似合っていた。



 僅かにそのメイド服を恥ずかしく思うのか、ステラが頬を赤くしている姿にアルナイルは目を奪われた……。




「かっ…かわいい……」




ガイアは無意識に言っていた。



「えっ……」



ステラは初めて本心でガイアに言われた気がして、嬉しくなっていた。


「ガイアがそう言うなら……

少しくらい着てあげてもいいわよ」


ステラが頬を赤くして言う。



 その言葉にサラス・セプテントは、ステラが本当にガイアを愛していることを知る。


(あの我が娘が

メイド服を受け入れるとはな……


それ程の男なのか……)


 サラス・セプテントは優しい瞳でガイアを見つめていた。


「私も着て見たいです‼︎」


 ガイアが言った言葉にアルナイルが強く反応して言い、ガイアとステラの間の空気にヒビを入れた。



「さようかっ

ユーファ着させてあげなさい」


 サラス・セプテントがそう微笑んで言い、ユーファは静かに礼をし、アルナイルを連れて行くときに、ステラはユーファに小さく礼をした、やはりサラス・セプテントが言う通りステラはユーファを師として見ている様だった。


 そしてステラはガイアの隣に静かに座った。


「ユーファさんって

そんなに強いのか?」


ガイアがステラに聞いた。


「うん……

でも私はユーファさんの剣に

似てないって言われるのよ


教えて貰ったんだけど

剣線も剣気も全然違うって

なんでだろ?」


ステラがそう言ったがガイアが自然に言った。



「いいんじゃねぇの?

それで……


誰に教わったって

ステラの剣には変わりないんだし

ステラの色で剣を振ればいいじゃん


剣の握りや力の入れ方だけを

いい先生に教わったと思って

お前だけの剣なら


それでいいじゃねぇか」



 ガイアはそう答えた、ガイアはステラを認めている、誰が師であろうと自分の剣と言いステラが思っていた僅かな劣等感を、跳ね除けてくれていた。


 ステラはそれを聞いて優しい笑顔になり、紅茶を口にするが、微笑んでサラス・セプテントに言った。



「お父様こんな話をして

急に話は変わりますが


クラスト村の件がありまして


領内にある全ての街に

城壁を作りたいと思うのですが

お許しを頂けますか?


ここ最近は魔物の巨大化も目立ちます

赤い騎士は防げなくとも


魔物は防げると私は思いますので

お許しを頂けないでしょうか?」



「良かろう

全てとなると相応に時間が掛かる

領地外からも人を雇い

魔導士達も使うが良い


魔法の助けを使えば


それなりに早く出来よう」


サラス・セプテントは快諾してくれた。


 巨大な財力を誇るセプテント家からすれば、費用は容易い物であった、そして城壁を全ての街に作ることはセプテント家の力を見せつけることにも繋がる、それに気づいているのは、サラス・セプテントだけであり、それを後から知り、それに気づくのはアルナイルだけであった。


 ステラとしては、ガイアが言ってくれたことがとても嬉しかったが、今はセプテント家を離れガイアの家で暮らしている、そのため何もしない訳にはいかない、ステラは家に呼び戻されたく無いので、ちゃんと領民を心配して考えてることを伝えなくてはならないので、提案をしたのだ。


「ガイアッ似合う?」


 アルナイルがガイアにメイド姿を見せたくて、走って部屋に入って来た、アルナイルには白が似合うのをユーファは気づき、黒主体だが白が際立って見える可愛らしいメイド服を着ていた。


「アルナイル様?

メイド服は作法で

より可愛らしくなるのですよ」


ユーファが微笑んでアルナイルに言っている。


アルナイルは可愛らしくお辞儀をしてガイアに見せた。


 それもまた、とても似合っていてガイアは優しくアルナイルに言った。



「あぁ……

よく似合ってるぜ」

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