最終章 第3話 僅かな穴
「なかなか
やりますな女王」
サラスが漆黒のアルナイルの斬撃をミアプラの杖で受け止めて言う。
サラスの力はメビウスが抑えきれなかった漆黒のアルナイルと対等に渡り合っているように見えた、それはメビウスと戦う事も極力避け続け、仲間であると演じ続けサラスが溜め続けたセプテントリオの力を惜しみなく発揮し戦っていた。
漆黒のアルナイルが手に漆黒のオーラを纏い、サラスに掴み掛かろうとした時、サラスはそのオーラを素手で受け止めた。
(お父さんっ‼︎‼︎)
ステラが焦りアル・スハイルの心の中で叫ぶが、サラスはニタリと笑いその受け止めた手に力を込めると、そのオーラを貫く様に岩の槍が現れそのオーラを消し去ってしまう。
漆黒のアルナイルは直ぐに手を離すが、手のひらはその槍に貫かれ真っ黒な血が流れ出している。
「心配ないわよ
大大星セプテントリオ……
この百億年もの間
彼は争いから極力離れていたわ
その間に星の力を蓄え続けていたのよ
あの程度のブラックホールなら
消し去るくらいの力を持ってるはずよ」
メビウスがそう言った、その力は星が健在なメビウスの力を遥かに超えていたのだ。
「それならっ!」
ステラがアル・スハイルの体を借りてメビウスに聞こうとしたが、アル・スハイルが言った。
「だが勝負は付かぬ……
漆黒のアルナイルの力は負の感情じゃ
恨み憎しみ
憤怒そして悲嘆に憎悪
感情に物理的な力は遠く及ばぬ
実態が無いのだからな
あれらを斬り裂き貫く剣を
余は一つしか知らぬ……」
アル・スハイルがそう言いステラはそれに気付いた。
「ガイアの阿呆が……
早く来ぬかっ‼︎‼︎」
アル・スハイルが言った。
その時、漆黒のアルナイルがサラスの杖を躱し大地に手をついた、そして一瞬で黒いオーラを大地に放った。
それに合わせてサラスも大地に手をつき、エメラルドグリーンの輝きを放つ。
漆黒のアルナイルがサラスが生み出した大地をブラックホールで飲み込もうとしたのだ。
二人はまるで力比べをする様にサラスはエメラルドグリーンの輝きを放ち、漆黒のアルナイルは黒いオーラを放ち続ける。
大地を砕き飲み込もうとする力と、大地を繋ぎ止める力がぶつかりあっている時、漆黒のアルナイルの背後にまた円形の漆黒のオーラが現れた。
そしてそのオーラの中心が白く輝き始める。
「これは……
二人ともこっちへっ‼︎‼︎」
メビウスがアル・スハイルに叫んだ。
その時、その輝きが放たれた。
美しい銀色に輝く様な白い光線が放たれた、その光線は次第に大きくなりアル・スハイルを飲み込もうとしていた。
素早くアル・スハイルは躱すが、僅かに着ているコートに触れその部分が焼け焦げている。
それは光だった、アルナイルが操る光であったが殺意に満ち溢れていた。
(なに今の
アルナイルの光だったはず……)
ステラがアル・スハイルの中で呟き戸惑っているが、真っ暗なのに気付いた、今はアル・スハイルから体を借りていない、生きているがまるでなにも見てない様であった。
(おねえ…ちゃん……?)
ステラは優しくアル・スハイルを呼んだ
そしてアル・スハイルが目を瞑っているのに気付いた。
(お姉ちゃんっ目がっ‼︎‼︎)
ステラが心で叫んだが、すぐにメビウスが二人を強く引っ張ってくれた、そのすぐ横、アル・スハイルがいた場所に再び黒いオーラから放たれた光線が走る。
メビウスが引っ張ってくれなければ直撃していた。
「迂闊であった……」
アル・スハイルが言った、アル・スハイルはアルナイルの力だと最初は感じていたが、あまりの眩しさに気づいた時には遅かった、網膜を焼かれてしまったのだ。
漆黒のアルナイルが放った光はアルナイルの光と違い優しさなど微塵も無かったのだ。
その直後に無邪気だが凄まじい殺気が、アル・スハイルの前に現れた、目の前に僅かな闇が現れ、それが広がり漆黒のアルナイルが素早く現れアル・スハイルに斬りかかった。
「キャハハハハハハハハ
これでおわりね」
漆黒のアルナイルの声からアル・スハイルは正確に距離を感じ、サーベルを使いその放たれた斬撃をそらした。
「余を甘く見るでないっ!
黒き光よっ‼︎‼︎」
アル・スハイルが言った、目が見えなくても今まで積み重ねた戦いの中で磨き続けられたアル・スハイルの技量ならば容易い事であった。
アル・スハイルはそのまま漆黒のアルナイルを蹴り飛ばし、サラスが作った大地に叩き落とし、アル・スハイルもその大地に向かった。
(黒き光
たしかにその通りね……
アルナイルは照らし与え続けた
でも……
漆黒のアルナイルは奪おうとしている
光と闇か……)
メビウスはアル・スハイルの言葉を聞いてそう思っていた。
アル・スハイルは視界を失ったが、漆黒のアルナイルが放つ殺気からその位置も姿も手に取る様に解っていた、感覚が研ぎ澄まされまるで見えているかの様にその様子が解った。
漆黒のアルナイルは小さく笑って言った。
「これならどお?」
すると再び同じ光線が黒いオーラから放たれた。
全てを飲み込もうとする殺意だけをアル・スハイルは感じた、それは何処までも遠くまでも殺戮の為に星海を切り裂く様な殺意にアル・スハイルは感じた。
アル・スハイルは簡単に躱した、アル・スハイルの研ぎ澄まされた感覚の前ではそれは容易い事だったが漆黒のアルナイルは言った。
「きゃはははっ!
よけちゃったねぇ
どうするのかなぁ?」
漆黒のアルナイルが笑いながら言い、サラスが杖を振り襲いかかるが、その打撃を漆黒のアルナイルは受け止める。
「女王……
なんと酷いことをっ‼︎」
サラスが漆黒のアルナイルに言った。
そのやり取りを聞いてアル・スハイルは叫んだ。
「しまったっ‼︎‼︎」
アル・スハイルは気付いたが遅かった、その光線はアトリアロフに向かっていた、漆黒のアルナイルはアトリアロフの街とアル・スハイルが重なった時に放っていたのだ。
漆黒のアルナイルはアル・スハイルが最初のガスの塊を、無理して切り裂いたのを覚えていた、その先に何かあると観察もしていたのだ。
「アトリアロフがっ!」
アル・スハイルは急いで戻ろうとした、間に合うはずが無い、だがアトリアロフを救おうとした。
「逃がさないよっ」
漆黒のアルナイルの声がした、漆黒のアルナイルはサラスとの力比べを負けるように見せかけ距離を取り、手から黒いオーラをロープの様に操りアル・スハイルの足をからめとり思いっきり大地に叩きつけた。
「くはっ!」
アル・スハイルは血を吐き、すぐには動けなかった。
(そんな……
アルナイルッ助けてっ!)
ステラはアル・スハイルが一撃で重傷を負ってしまい、追撃しようと迫る漆黒のアルナイルをどうする事も出来なくそう言い、直ぐに魂の姿をアルナイルに見せようと霊体の様に姿を表した。
だが漆黒のアルナイルは構わず距離を詰めてきてしまう。
だがサラスがトドメを刺そうとする漆黒のアルナイルに襲いかかり、それを阻止し二人の攻防が繰り返される。
「女王よっ!
あなたのお子ですぞっ!
あなたのお子ですぞっ‼︎」
大大星セプテントリオとして、ステラの父としてサラスは必死に訴えている。
アル・スハイルは立ち上がろうとするが、全身の骨にまでダメージが及び、赤が必死に癒しているが動くこともままならない、それでも腕だけで体を起こし、アトリアロフ目掛け巨大化しながら飛んで行く光線に手を向けた。
「赤っ!」
アル・スハイルがそう叫んだ、血を吐きながら叫ぶ。
「赤よっ!
アトリアロフを……
救ってくれっ‼︎‼︎頼むっ!」
やっとアル・スハイルの目を癒し、身体を癒し始めていた赤がアトリアロフを救う為にはアル・スハイルから離れなければならない、そんなことをすればアル・スハイルは間違いなく死んでしまう。
もし赤が救おうとアル・スハイルから離れても、救えるかなんて赤には解らなかった。
「出来ないよっ!
あなたが……
あなたが……」
赤は離れなかった、大切なアル・スハイルを救うことを赤は選んだ、赤はそう言ったがアル・スハイルが再び言った。
「余の命はどうでもいいっ!
赤よ頼む……
余のアトリアロフを救ってくれ‼︎‼︎」
アル・スハイルは必死で手を伸ばしている、その深い傷では出せるはずの無い声を出しその光線を掴み取ろうとする様に手を伸ばしている。
赤はその姿を見て悲しく思えていた時、何かが未来を否定した気がした。
「わたしは認めない……」
メビウスがそう呟いた、そしてアトリアロフの方から凄まじい風が吹いた。
太陽風である、セプテントリオの方からアトリアロフの方に向かう太陽風が逆に吹いたのだ。
「わたしが任されたんだ……」
大星ヴィーナスが、そう呟き通り越していく太陽風を操りその光線の射線を変えようとしている様に見えた。
ヴィーナスの全身が金色の輝きを放ち始める、全身に星の力を溢れさせその右手を全力で振った。
その時、再び凄まじい風が吹いた、太陽が放つ太陽風を真横からその光の塊にぶつけた、アル・スハイルは切り裂く事を選ぶだろう、だがヴィーナスにその様な手段は思いつかない、あくまでも押しつぶす様な力を込めて引っ叩く、ヴィーナスにとってシンプルかつ最も力を発揮出来る方法であった。
だが相手は光線であり実態は無い、全く効果がない様に突き進んでくる。
それでもヴィーナスは再び力強く手を振った。
(地上の風より操りにくい
あの炎の星は私より力強いから……
だけど星海の風は
地上の風より速い
上手くすれば……)
その度に風をぶつけて行くが全く効果が見えない。
(ヴィーナス……)
アル・スハイルがヴィーナスの姿を赤の力を使って見て呟いた、アル・スハイルの瞳には今までに見たこともない程に美しく、そして力強い女性の姿が見えていた。
それは星海で最もと言える程に明るく輝く美しい星、ヴィーナスの様であった。
(まだ…動かない……
でもやらなきゃっ!
私が任されたんだから……)
ヴィーナスは必死である、アトリアロフを救う為にアルタイルが全力で星を輝かせ全身を輝かせる様に、その力を全て振り絞り風を起こしている。
(まともにやったら
きっと気づかれる……
アルナイルのあの技を使われたら
意味がなくなっちゃうから……)
ヴィーナスはアルナイルが本当は、とてつも無い戦闘能力を持っている事に気付いていた、それは何度もアルナイルに遠くに飛ばされたからである。
その時にアルナイルの技を一つ見抜いていた、それをさせない為に無意味に見える行動をヴィーナスは全力で行っていた。
「お願いだからっ
動きなさいっアトリアロフッ‼︎」
ヴィーナスが叫び光線を睨み思いっきり手を振った、今までよりも強烈な風が星海に吹いた。
「いま……
アトリアロフが……
えっ?
うそ……」
プルートが驚きながら呟いた、プルートは既に指示された配置についていて漆黒のアルナイルが放った光線を観察し、それがアトリアロフに向かっている事に気付いていたが、遠すぎて何も出来ずにいた。
それはアルデバランも同じであったが、アルデバランもプルートが見て感じた事と同じ事を感じて驚いて言った。
「僅かだが
確かに動いた
アトリアロフが……」
(まだよ……
まだ軌道から外れてないっ‼︎‼︎)
ヴィーナスはそう心で叫び、何度も全力で風を起こしている。
星海の街は星海にあるガスを集めて固め、それを大地の様にして作られている、元はガスで非常に軽い、ただ街の建物などでの重量があるが、浮島の様なものなのだ。
ヴィーナスはその光線を確認した時に、直ぐに判断していた。
(あんなの止められない
私じゃアル・スハイルみたいに
切り裂く事なんて出来ない……
なら…避けるしかないじゃないっ‼︎‼︎)
ヴィーナスは強烈な風を何度も起こし、回転させ渦の様な流れを作り出していた、漆黒のアルナイルに悟られない様に気流を作り出していたのだ。
「もっと速く!強くっ‼︎‼︎」
ヴィーナスが必死になり風を操り少しづつアトリアロフが加速して行く。
(ヴィーナスあなた……)
ステラがアル・スハイルの心で呟いたがアル・スハイルが無理して叫んだ。
「ヴィーナスッ‼︎死ぬぞっ‼︎‼︎」
アル・スハイルにはヴィーナスがその光線を躱せなくなる距離になるのが解ったのだ、それでもヴィーナスは躱そうとはしなかった。
アル・スハイルの叫びはヴィーナスに届くはずが無かった、だがヴィーナスは言った。
「守れなかったら
あんたに応えられなかったら
わたしってなんなのよ……」
ヴィーナスは目の前に迫る光線に怯まずに、右手に渾身の力を込めて振った。
その時微かにフルートの音がヴィーナスの耳に入った気がしたが、ヴィーナスは全ての神経を集中しその手を振っていた。
その最後に巻き起こした風は、僅かにその光線の軌道をずらした、そしてアトリアロフがより速く動いた。
漆黒のアルナイルが放った光線はアトリアロフを目指し、ヴィーナスを巻き込み直進してしまう。
「ヴィーナスッ!‼︎」
アル・スハイルが叫ぶ、だがステラはアル・スハイルの目を使い、遠距離でヴィーナスを探していた。
紫がステラに「案ずるでない大丈夫じゃ」と言って来たのだ。
そしてヴィーナスの行いは無駄では無かった、その光線はアトリアロフの端に直撃し被害は出すが、街の大部分は被害を免れた。
「アトリアロフ……」
アル・スハイルはヴィーナスがアトリアロフを守ってくれたのを見て、そう呟いた時ステラが言った。
(お姉ちゃんっ!)
その時、アル・スハイルの目にヴィーナスの姿を捉えた、着ていたドレスはぼろぼろで左腕を肩口から失い、その傷からは金色の粒子の様なものが漏れ出ている。
ふらふらとし明らかに重傷ではあるが、それでも気を失わずに何とか立っていた。
「つぎは無理かな……」
ヴィーナスが呟き、アル・スハイルはその唇の動きを見て言った。
「おっかしいなぁ
でも今度は外さないよぉぉ!」
漆黒のアルナイルが言いサラスの攻撃を躱し、素早く黒いオーラを出してその中央が光輝く。
「次は撃たせぬっ‼︎」
アル・スハイルが大きな声で言い、まだ身体は癒えきって無いが立ち上がり、サラスと攻防を繰り返す漆黒のアルナイルに襲い掛かった。
漆黒のアルナイルは直ぐにアル・スハイルの斬撃を剣で受け止め、サラスが杖で凄まじい突きを放ちそれが漆黒のアルナイルの腹部にめり込み、そのオーラが消えた。
漆黒のアルナイルは黒い血を吐き飛ばされ体勢を立て直し、着地して再び襲い掛かってくる二人を睨みつけた。
(アル・スハイル
光に気をつけなさい
アルナイルの操る光は
捕らえた光なの
ブラックホールに飲み込まれたら
光すら逃げられない
あの子はその光を
優しく使っていたのよ)
メビウスがアルナイルの秘密をアル・スハイルに伝えた。
(待てっそれでは……
あれがアルナイルの本当の姿なのか?)
アル・スハイルが剣を振りながら聞き返した。
(えぇ…でも……
光も漆黒も本当のスピカよ
漆黒はスピカの裁きの力
星海自体を裁く力なのよ……
だけどその漆黒が
負の意識に乗っ取られてるだけ
普段なら漆黒になっても
あのままの優しいスピカでいられるのよ)
(やはりあの剣を折らねば……
じゃが今はどうやって
あの光を捕らえているのだっ‼︎‼︎)
アル・スハイルは聞いた、その力の源がどこから来ているのか、漆黒のアルナイルはダメージを与えても弱る気配が無い、アル・スハイルの様に星が傷を癒してる気配も無い、星海人と全く違う原理で傷を癒している様に感じていた。
(星の輝き……)
メビウスは少し考えて言った。
(っ!)
アル・スハイルは気付いた、星海には多くの星があり、自ら光を放つ星も無数にある、それらの光に触れるだけで自らの力にしている事に気付いた。
そして漆黒のアルナイルは触れている闇からも力を得ている、そう考えた時、その力の膨大さにアル・スハイルは気付いた。
それはまさに、星の女王と呼ばれるに相応しい能力であった。
「狼狽えるなっ!
以前のそなたなら
手も足も出なかったであろう
だが今は食い付いておるっ!
あの星の女王になっ‼︎」
サラスが共に漆黒のアルナイルと戦うアル・スハイルとステラを支えようとしている。
ステラはあの尊敬できる父と共に戦える事に喜びを感じそうになるが、相手がアルナイルだと言うことに寂しさと悲しさを覚える、だがアル・スハイルが言った。
「サラスッ!
余を誰だと思ってるのだっ‼︎‼︎
今まで余を謀り続けたぬしが
偉そうにぬかすでないっ‼︎‼︎‼︎
これは我が友を救う戦いっ
ステラも同じであろうっ!」
アル・スハイルが小さな小さな笑みをこぼし言った、まるで親に喧嘩を売る様に言いつつもステラを支えようとしていた。
「すっかり親子喧嘩じゃない……
あのサラスと親戚なんて
考えたくも無いけど
セプテントリオだったなんて
ほんとに
仕方ないわね……」
メビウスが苦笑しつつそう呟いた。
アルナイル、アル・スハイル、ステラ、そして大大星セプテントリオ、メビウスが既にスピカが描いた様になっている、ただ違うことは肝心な大大星スピカが負の意識に乗っ取られていると言うことである。
メビウスは今の現実を見てスピカがそれを描いて無かったら、何も抵抗出来ずに星海が無くなってしまったのではないかと思い、そう呟いたのだ。
(大大星は淘汰されるべきか……
それはあなたのことと
大大星が星を失った時
漆黒の星になる可能性がある
それを心配していたのね……
それを自らの身で制御しようとした
あなたは立派よ
失敗した時のことも考えたんだもの……)
メビウスは今までスピカが、星海の外の銀河の話を持ち出したのも全て嘘だと気付いていた、なんとかしてこうなってしまった時に、星海の力でそれを抑え込むその手段を作るための茶番であったと全て理解していた。
その時、白く強い輝きがメビウスの星の方に現れた。
シーリスとメビウスの星の軍隊が配置に着いた合図であった、既にセプテントリオから出た精霊達は星海術を使い配置に着いている、エルナトとエリスとザウラクが合流し星海術を使うことが出来たのだ。
「二人ともっ気をつけてっ‼︎‼︎
始まるわよっ‼︎‼︎」
メビウスが叫んだ。
アル・スハイルとサラスがそれを聞き、最後の時間稼ぎをする様に、より一層激しく漆黒のアルナイルを攻め立てる。
「どぉしたの?
頑張っちゃって
無理すると続かないよぉっ‼︎」
急に激しさを増した連続攻撃を躱す為に、漆黒のアルナイルが飛び上がりそう言った。
アル・スハイルは追撃する様に襲いかかるが、サラスが力強く手を上から下に振り下ろした。
すると凄まじい衝撃波が生まれ、漆黒のアルナイルを逃がさない様に大地に叩きつける、大星ヴィーナスの技だった。
大大星セプテントリオ、彼はスピカが考えた様に自らの力を直系の星に分け与えていたのだ。
(いける……)
アル・スハイルはそう思った。
アル・スハイルはそのまま追撃し、落下した漆黒のアルナイルに斬りかかる、明らかに斬り裂けると言う時に漆黒のアルナイルは笑った。
「キャハハハッ!
たっのしいねっ‼︎‼︎
騙すのって……」
漆黒のアルナイルが言い、アル・スハイルは真後ろから凄まじい殺気を感じた時、漆黒のアルナイルを右肩から斬り裂いたが、ふわっとし手応えが全く無かった、大地に叩きつけられた漆黒のアルナイルは幻であった。
光の力で幻を生み出していたのだ。
その直後に背後から漆黒のアルナイルが飛びかかる、完璧に不意を突かれサラスが庇おうとした。
「ふはははっ‼︎」
アル・スハイルは高々と笑った。
アル・スハイルは漆黒のアルナイルの斬撃を躱し、その動きのまま素早く漆黒のアルナイルを蹴り飛ばした。
「アルナイル?
わたしのこと忘れてない?」
アル・スハイルがステラの微笑みを浮かべて言い、続けてアル・スハイルとステラが声を揃えて言った。
「漆黒の星よ
そなたが騙すのが好きならば
そちの娘である我ら姉妹も
騙すのが好きだと……
そう思わねか?」
その時、アル・スハイル達が戦っている大地を取り囲む様に数多くの星の輝きが現れはじめた、遠く離れているが確実に円を描き力強く輝いている。
シーリス、アルタイル、アルデバラン、プルート、エルナト、ザウラク、エリス、それぞれの星を皆が力強く輝かせている。
それと同時にアル・スハイル、サラス、メビウスと力が衰えるのを感じていた。
ダークマターの遮断が始まったのだ。
それと同時に漆黒のアルナイルも同じ様に力を失い始めた。
アル・スハイルが集めた星を持つ星海人達も星を輝かせている、アルデバランの一団もヴィーナスが集めたハダル一派も一斉に輝かせている。
「なに……
なんで力が……」
漆黒のアルナイルが思う様にその力を使えなくなり、息苦しさを感じている様に呟いている。
「そなたの負けじゃ……
我ら星海人も星もダークマターから
力を引き出すのは知っておろう?」
サラスがそう言い漆黒のアルナイルに歩み寄ろうとした、アル・スハイルは引き止めようとした、何故かそうするべきだと感じたのだ。
スゥハースゥハーと漆黒のアルナイルが深く呼吸しているが、サラスは歩み寄っていく。
「漆黒の星よ
女王の意思を
その剣を渡しなさい
そなたの怨みも悲しみも
全て女王の優しさが
包み込んでくれるはずじゃ」
サラスがそう言い近くまで来た時、漆黒のアルナイルの口元が小さく笑ったのにアル・スハイルは気付いた。
「サラスッ!
離れよっ‼︎‼︎‼︎」
アル・スハイルが叫んだ。
その時、漆黒のアルナイルは素早く剣を振った、その剣を躱そうとサラスが離れようとしたが遅く、サラスの胸を斬り裂いた。
「グァッ!」
サラスが声を上げた、ダークマターの遮断がされているのでミアプラが傷を癒すことも出来ない最中で、サラスが重傷を負ってしまった。
サラスが膝を大地に着き、傷を押さえているが、漆黒のアルナイルが歩み寄りながら言った。
「ねぇねぇあなた達は
なんでここに居ると思う?」
不思議なことを言っている。
「わたしがさ全てを飲み込んだあと
この星海がどうなるか
考えた事なんてないよね?」
漆黒のアルナイルが言った。
「考える必要など無い……
それは何も無い漆黒の闇であろう」
アル・スハイルはサラスが動けない程の重傷であるが、まだ数時間は持つ事に気付き冷静に答えた。
「ふぅぅぅん……
お馬鹿さんだね
だから気付かないんだよ
あなたの考えた作戦が
失敗してることもさっ」
漆黒のアルナイルはそう言い、ヴィーナスのいる方に剣を向けた。
アル・スハイルはハッとしてヴィーナスを見た。
ヴィーナスはぼろぼろになりながらも、必死にダークマターを呼吸しているが、深傷を負っている為か星を強く輝かせることが出来ずにいた。
その周りではハダル一派の星を持つ者達も全力で星を輝かせているが、それらをまとめきれずに居るヴィーナスの姿を目の当たりにした。
この漆黒のアルナイルを包囲し、ダークマターを遮断しようとする包囲網に僅かな穴が出来てしまっていたのだ。
そこから漏れ出してしまったダークマターに漆黒のアルナイルはそれに直ぐ気付き、今この場にいる誰よりも多く取り込もうとし、深い呼吸をしていたのだ。
「ヴィーナス……」
アル・スハイルは呟いた、傷を癒さなければならない身体で、必死にアル・スハイルの期待に応えようとしている、その姿を見て呟いていた。




