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ねぇあなたはなんで旅に出たの?ねぇあなたはどおして旅に出たの?  作者: 〜神歌〜
ねぇねぇなんで旅にでたの?ねぇねぇどおして旅に出たの?〜最終章 コネクト 〜
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最終章 第1話 巨星アル・スハイル





「セプテント…リオさ…ま……」


 ミアプラがそう呟きすぐにひざまづいた、大大星セプテントリオその姿を誰も知らない、大大星メビウスも大大星スピカも一度もあったことが無かったのだ。



「ミアプラ

かしこまらないでくれ

わしはてっきりまた怒られるかと

そう思っておったのに」


 セプテントリオはそう穏やかに言った、二人の仲の良さがまた伺えるように言っていた。

 だがミアプラはすぐにサラスの心に触れ、サラスが今まで見せなかった心の一面を見た、そこにはミアプラとサラスが出会う前の光景を見ることが出来た。


 アルタイル、アルデバランを大大星スピカから養子に受け取った時にも顔を合わさず、そしてセプテントリオはメビウスを見たことがあるが、スピカを見た事が無かった、その為にアルナイルとあった時も全く気付かなかった、ようはその昔は星海に全くの無関心だったのだ。


 だがカストルに出会って彼は変わった、カストルが彼に星海を語りスピカの夢を語った。


 そしてカストルが大大星スピカからアルの名を譲り受けると同時に、アル・スハイルとアル・ムーリフを預かり、大大星セプテントリオはメビウスとスピカを確認しようとしたが、大大星スピカが姿を消したあとだったのだ。



「じゃあ……

サラス様がこの星の意思……

だから……」



 ユーファは空からでもサラスの声を聞いていた、風の精霊の力も併せ持つユーファには微かに震える空気の振動で聞こえていたのだ。


(だから…一億年前……

アル・スハイルを騙し

この星を滅ぼそうとしたのも


自分の星だから

ご自身の意思で……)


 ユーファはそう思った、他者に星が攻撃される、それなのに何故この星は抵抗しなかったのか、ユーファはアル・スハイルやアルタイル、星海人達と触れ合いそう思う時があったのだ。



「二人とも

わしの頼みを聞いてくれるかな?」



 サラスは穏やかにまるで答えが解っているのか、それとも何方でも構わないのか、他にも切り札があるのか、そう思わせるように聞いた。


「もちろん手伝わせて頂きます

わたくしがステラ様に見せた非礼

お詫びも兼ねて」


 ペレがサラスの命令とは言え、一度リオネスの街でステラを騙し、動物達がリオネスを襲うように精霊術を使った、そのお詫びと言った。


「兼ねてとは?」


 サラスが微笑み顎を触りながら聞いた。



「今のメイド長が

あのユーファじゃ

不安しかないですもの

行くしかないじゃないですか」



 ペレが空の上で待機しているユーファを見上げ、僅かではあるが全身から炎を放ち、その力を見せる。

 ガイアと戦った時とは違う迷いの無い、本来の精霊としての力を放っている。


 それと同時にアクアも水色の輝きを放ち始める、その輝きはよく見ると水蒸気であるが、アクアから放たれる水色の輝きがその水蒸気を伝っているようであった。



 アクアとペレはサラスに向かって綺麗にお辞儀し、ふわりと空に舞い上がりサラスもそれに続いた。



 サラスは精霊達と合流し静かに言った。



「わしの子らよ


大大星メビウスと

巨星アル・スハイルの元に

多くの者が集おうとしておる


遅れる訳にはいかぬ

女王が完全に我を失って仕舞えば

全てが手遅れになる


だがこの星海に

本当の敵などおらぬ

もし居るならば

それは各々の中にいる

それを忘れるで無い……


さて急ごうか」



 サラスはセプテントリオとして、星の意思として言っていた、その声と意思はセプテントリオのオルビスの隅々まで届き、全ての精霊達がそれに呼応し星海に向けて飛び立ちサラスが率いる精霊達と合流して行く。


 星海から見ればセプテントリオ全体から精霊達が飛び立ち、キラキラとした線が伸びていくように見えていた。



 アル・スハイルとメビウスは感じていた、二人に手を貸そうと、星の意思とその星に住む者が向かって来てくれている事に。




(星海が初めて

一つになろうとしている……)



 メビウスは心で呟いた、漆黒のアルナイルが放つ重力を全て変換し意識をそこに集中しているのだが、その大きなうねりのように押し寄せる力を感じていた。



(余が望んでいた未来が……

目の前に……


余の誓いを果たせる時が

迫っている……


だが…それまで持つのか……)



 アル・スハイルはそう感じていた、漆黒のアルナイルを倒す気は無い、だが全身全霊で剣を振らなければ、漆黒のアルナイルの放つ重力を操作し加速させられた、黒い稲妻の様な剣を防げないのだ。


 唯一の救いはアルナイルが戦い慣れしてないこと、剣技も素人では無いがアル・スハイルから見れば赤子のようなものだった。


 もしアルナイルがメビウスの様に戦いも好む性格だったとしたら、アル・スハイルは恐怖を覚えた。


 それは初めてと言える、アル・スハイルが戦いにおいて恐怖を感じたのはこの時が初めてであった。



 そう思っていた時、目の前に黒い稲妻の様な剣が振り下ろされた。


 その向こうには命を奪う事を楽しむ様に至上の喜びを味わうかの様な、漆黒のアルナイルの不気味に歪んだ恐ろしい笑顔がある。


「くっ……」


 アル・スハイルはすんでのところでそれを躱した。


「いただきまぁぁすっ!」

 

 漆黒のアルナイルが大きな声で言い、左手で漆黒のオーラを出しながらアル・スハイルを掴もうとした、それは躱せないアル・スハイルは解っていた。



 死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎。



 アル・スハイルの頭にただそれだけがよぎり、顔を歪めるがそれは恐怖で歪めた訳では無い。


 僅かに恐れた、その僅かが招いた現実、その現実を受け止めていた。


 あと僅かあと僅か耐え凌げば道が広がる様な、長い旅路の果てに大切なものが手に届きそうなやっと光が差し込んで来た時に。

 それが閉ざされてしまう様な感覚を非常に長く感じていた。



(余は諦めぬ…だがっ……)



 回避出来ない現実を前にアル・スハイルの心の中で絶望と死の文字が舞い踊るように迫って来る。

 そしてその二文字がふわっと散り漆黒の闇が広がる、するとその闇の中から白い手が無数に現れ手招きをしている。


 こっちにおいでと手招きをしている。


 その手は全てが人の手では無い、骸骨の手や腐り果てた手、美しい手などもあるが星の生き物の手なども混じっている。



 僅か一瞬の間ではあるが、それはアル・スハイルの頭に非常に長い間、確実に見えていた。

 漆黒の闇が広がり、漆黒のアルナイルの手が迫って来る、それと同時にアル・スハイルの頭の中の光景の闇が迫って来る。



(お姉ちゃんっ!

大丈夫っ!

まだ守れるからっ‼︎‼︎)



 アル・ムーリフの声が、アル・スハイルの持つそのサーベルから頭に響いて来た。


(アル・ムーリフッ!)


 アル・スハイルは何故かサーベルを手から離した、まるでアル・ムーリフのサーベルが離して欲しいと言った様に思えた。


 すると一瞬でそのサーベルは漆黒のアルナイルの胸に、凄まじい勢いで突き刺さる。


「カハッ」


 漆黒のアルナイルが声を出し体勢を崩した。



 アル・スハイルはそのサーベルを持つステラの姿を一瞬ではあるが見えた、その姿は涙を流すのを耐えている様に見えた。


 あのアル・ムーリフが大切な仲間を傷つけるのを好むはずが無い、その幻の様に見えるステラの姿が次第にアル・ムーリフの姿に見えて来た。


「なぁにぃを

したのぉぉぉぉぉぉぉぉ?」


 漆黒のアルナイルがゆっくりと言い、体勢を立て直そうとした時、アル・スハイルはそのサーベルを掴みそのステラと重なる様になり星を輝かせた。



「目を覚ませアルナイルッ!」



 アル・スハイルが叫んだ、赤と白い星を最大限に輝かせ、漆黒のアルナイルを闇に紛れて逃げようとしているのを抑え込んでいる。

 するとアル・スハイルが次に言おうとした言葉と違う言葉が口をついて出てきた。



「ねぇあなたは

どうして旅に出たの

そう聞かれた時に

言えばいいじゃないですか


大好きな人を追いかけて

旅に出たって!

愛する人を追いかけて

旅に出たって‼︎‼︎



そう言ってくれたよね?」


 それはステラの言葉だった、アル・スハイルはアル・ムーリフがアルナイルに伝えたいことがあるのだと思い、アル・ムーリフに口を貸した。



「ハダルのことが大好きなんだよね?

でも私に紹介してくれたよね?


それはなんで?」



 ステラは聞いたがその答えは解っていた。


「この星海を変えたいからでしょ?

そんなに好きなのに

なんで壊しちゃうの……

私との勝負も

まだ終わってないじゃない」


 漆黒のアルナイルはそれを聞いて目の色が一瞬だが変わったのを、アル・スハイルは見逃さなかった、だが直ぐに真っ黒な瞳に戻ってしまい、黒オーラを纏った左手で薙ぎ払うようにアル・スハイルを掴もうとした、すかさずアル・スハイルはそれを躱し距離を取る。


(ステラ……)


 アル・スハイルは優しいステラがアル・ムーリフのサーベルに乗り移ってる事を感じていた。


 それもアル・スハイルの元に向かっている紫の星も知っていた、ステラの眠りがただの眠りでは無い、そしてアル・スハイルに起きた異変をメビウスが赤に問いかけ、赤はこう言ったのだ。


(ステラさんが……

アル・ムーリフさんがいる……)


 驚きながらメビウスに言った、赤はまだ親子喧嘩を仲直りした覚えは無いが、あまりの驚きの為にそれをただ呆然としながら言い、メビウスが紫の星にステラの体は大丈夫なのかと聞いてきて知ったのだ。



(アル・スハイル

あなたは巨星としては

まだ未熟かも知れない

けど……)




 漆黒のアルナイルはサーベルで貫かれた傷を瞬時に癒しつつ聞いた。



「ねぇあなた達は誰なの?


とって懐かしいから

すごく食べたくなるの

わたしのチカラをあなた達が

なんで持ってるの?


それにハダルってだぁれ?」



(まずいわ……

アルナイルは二人を覚えていない

もし二人が自分の子で

力を分け与えていたと知ったら


今の彼女じゃ

それを取り戻そうとするかも知れない


わたしはあのブラックホールを

抑え込むしか出来ない

わたしが時を操ったとしても

あのアルナイルが全力で拒絶する……)


 メビウスは漆黒のアルナイルの言葉を聞いてそう思ったが、今はアル・スハイルが戦える様に環境を作るしか無い、漆黒のアルナイルの生み出すブラックホールを押さえ込まないと、漆黒のアルナイルの力が巨大化し続けてしまう。


 メビウスはスッと汗を流したが、ふとセプテントリオが目に入った時に声が聞こえた。


「あなたが私達のお母さんなの……」


 アル・ムーリフがアル・スハイルの口で言った。


(なんで……)


 メビウスは焦ったが、アル・ムーリフは続けた、アル・スハイルもアル・ムーリフも隠す気は無かった、漆黒のアルナイルがニタリと怪しい笑みを浮かべたが、すぐにアル・ムーリフは話続けた。



「あなたが愛した人を

わたしも愛したわ…でも……

あなたは一度手放してたよね?


それでもあなたは

あの人のそばにいた……

見守る様に


それであの人が

セプテントリオに降りて

わたしが追いかけて


あなたは追いかけて来たよね?

時間がかかっても

見つけてくれたんだよね?

私達を……」


 アル・スハイルが言うアル・ムーリフの言葉を聞いて、何故か漆黒のアルナイルは動けなかった、何か別の意識が働いてるようにアル・スハイルもメビウスも見ていた。


「ねぇ……

なんであなたは旅にでたの?」


 アル・ムーリフが聞いたが、漆黒のアルナイルは答えずにただ俯いている。



「こんなことをする為に!

旅に出たんじゃなんでしょっ‼︎

あなたが描いた未来の為に

私達を探す旅に出たんでしょっ‼︎‼︎」



 アル・ムーリフが叫びその気持ちがアル・スハイルに余す事なく伝わり、アル・スハイルの顔から涙を流しながら叫んでいた。


 その時、漆黒のアルナイルの稲妻の様な黒い剣から、白い光が放たれた瞬間それが砕け散り、中からあのもう一本のスピカの剣が現れた。


 メビウスとアル・スハイルはそれを見てハッとしたが、直ぐに漆黒のアルナイルは左手でそのスピカの剣に触れて黒いオーラで包み込みまた黒い稲妻の様な剣に変えてしまった。


 アル・ムーリフ、ステラはすぐにまた何かを言おうとした。


(もう良い……)


 だがアル・スハイルはそれを止めた。


「アル・ムーリフ

そなたのおかげでやっと見えた」


 アル・スハイルはスピカの剣を漆黒のアルナイルに使わせようとしていた、だが漆黒のアルナイルは実はスピカの剣を使い続けていたのだ。


 だがその形が全く似ても似つかないそれに騙されていた、そして漆黒のアルナイルはまるで、アルナイルの意思を黙らせるかのように直ぐに黒いオーラで包み込んだ。


 更に漆黒のアルナイルはまだスピカの剣に、その意識を集中しているのが手に取るようにアル・スハイルには解っていた。



 アル・スハイルは漆黒のアルナイルに剣を向けて言った。




「そちが何者かなど

余には手に取るように解る……


それが幾ら群れようと

内と外に敵を持ち

星海を消し去ろうなど

星海を甘く見るで無いっ!

この亡者どもがっ‼︎‼︎」



 アル・スハイルはそれがかつてアル・スハイルの手で命を奪った者達の、負の意思だと聞いていた。

 それを死を目の前にしその姿を見ていた、これらを消し去る方法など思いつかないが、ただ解っていた。


 それは漆黒のアルナイルがいかに強大であろうと、追い詰めることが出来ると。


 そしてアル・スハイルは攻勢に転じた、即座に斬りかかり自らよりも強大で全てを飲み込む力を持つ漆黒のアルナイルに斬りかかった。


 すぐに漆黒のアルナイルはそれを弾くが、アル・スハイルはその体勢のまま呟く。


「未熟……」


 アル・スハイルはそう呟きながら、その崩れた体勢から蹴り込み、漆黒のアルナイルの胴をとらえる。


 すぐに漆黒のアルナイルは、左手で黒いオーラを纏ったまま掴みかかって来るが、アル・スハイルはその腕をサーベルの柄で叩き込む。


「あまいわっ‼︎‼︎」


 アル・スハイルが気迫を込めて叫ぶ。


 明らかに戦闘経験の差を活かして戦っていた、アルナイルは戦いを避け守りに徹していた、だがアル・スハイルは戦い続けた、両者には極端な違いと差がある。


 守りに徹していたアルナイルが慣れない攻勢に転じていた、それをアル・スハイルは慣れない守りに転じていた、そこに気づいたアル・スハイルは攻勢に転じたのだ。



「そちは昔の余と似ておる

いや…それ以下か……


余には……

アル・ムーリフがおったからな」


 アル・スハイルが漆黒のアルナイルに言った、漆黒のアルナイルの剣は速く、そして凄まじい破壊力を秘めている、アル・スハイルはそれを必死に躱している、顔や頭を目掛けられた刃を躱す時は僅かに髪が斬られている。

 その中でもアル・スハイルは表情を変えずに語りかけた。


「へぇ……

むかしといまと

どう違うのかなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ⁉︎⁉︎」


 漆黒のアルナイルは叫ぶように言った、その声はアルナイルの声では無い、明らかに何千…いや…何万何十万との多くの人々の声が混ざり合った様な異様な声だった。


 だがアル・スハイルは恐れなかった、その訳を静かに言った。



「余にはアル・ムーリフがいてくれた……」



 それは昔も今も変わらないことであったが、剣を躱し斬りかかり変わらずに攻め続け話し続けた。


「今は赤もいてくれる

そしてメビウスもシーリスもいてくれる

そのうちガイアも紫の星も来よう


今の余には皆がいてくれる


そちには誰が来てくれる?

そちには誰が手を貸してくれる?」


 アル・スハイルはギリギリの線で躱し、斬撃を放ち語りかけている。


「誰もいなくてもへぇきだよっ!

わたしはぁぁ

まけないからぁぁっ‼︎」


 漆黒のアルナイルはそう叫び、左手の漆黒のオーラから強力な重力を発生させ、アル・スハイルを引き寄せようとした。


 だがすぐにその重力は無重力に変換されていた。

 メビウスは漆黒のアルナイルの背後にあるブラックホールの変換をしている、左手のオーラの重力を変換しているのは赤だった。


(アル・スハイルはわたしが守るっ!

私に名前をくれた……

赤って呼んでくれた

わたしの大切な友達だからっ‼︎)

 

 赤はそう心で叫んでいた、赤が変換を始めたとしても漆黒のアルナイルと赤の力は元から力の差があり過ぎる、それでも赤は全力変換し続けている。


 アル・スハイルは言った。



「解るか?

そちが何をしようとしても

決して叶わぬっ!


そちが余を滅ぼそうと

大大星を喰らい巨大になろうとも

決して叶わぬっ!

余が戦い続けた日々の様になっ!

一人では決して叶わぬのじゃっ‼︎‼︎‼︎」



「うるさぁぁぁぁぁいっ‼︎」


 アル・スハイルは凄まじい勢いで叫び、漆黒のアルナイルは叫び力を込めた斬撃を振り下ろした。


 その斬撃をアル・スハイルは待っていた、隙があり無駄に力がこもった斬撃、心が乱れ取り乱した斬撃を。


 アル・スハイルは一瞬で全ての身体能力を高めた、その力はシーリスの力を頼っていた赤は変換を使い疲れている、無理にでもアル・スハイルの身体能力を高めようとしてくれているが、アル・スハイルのコートにある赤いラインが白く輝き、以前に一度だけ赤いバラに変わったのが、一瞬で白いバラに変わった。


 全ての集中力と力を込め、それを受け止めるのでは無く、砕くようにしたから弾く様にサーベルを振った。


(だめっ!躱してっ‼︎‼︎)


 だがアル・ムーリフの声がそう頭に響いた。


 アル・スハイルはそのまま剣を振り抜こうとした、既に躱せる体勢では無い、アル・スハイルは全ての力を込めて、その漆黒のアルナイルの放つ稲妻の様な剣に向けて振り抜いた。


 アル・スハイルの刃が漆黒のアルナイルの剣を受け止めた、凄まじい光を放ったがその光は消え吹き出す様なオーラが漆黒のアルナイルの剣から溢れた、アル・スハイルの力が及ばなかったのだ。


 二人の力は拮抗する間も無く、一瞬でアル・スハイルは押し切られたのだ、シーリスも赤も今からでは先ほどの様に時を遅く出来るはずも無い、そんなことをすれば直ぐにサーベルは折られてしまい、アル・スハイルは即死するだろう、だがこのままではどの道助からない、赤もシーリスも何も出来なかった。


 だがその瞬間、アル・ムーリフに送られたサーベルが輝き一瞬だけ漆黒のアルナイルの目を眩ませた。


 だが、アル・スハイルのサーベルにヒビが入り次の瞬間信じられないことに簡単に折れてしまった。


 あのアル・スハイルのサーベルが折れてしまった、アル・スハイルにとってかけがえの無い宝物である、その瞬間はとても長い時間に思えていた、今までにニ度だけ紫の星が時を止めている、だがその時よりとても長く感じていた。


(わ…たしの……)


 アル・スハイルの戦う気力が砕け散りそうになった時、その体が勝手に動き、その漆黒のアルナイルの剣を素手で横から触れ狙いを逸らした。


 それはアルタイルの技であった、素手で刀身の刃では無い真横から触れ狙いを逸らす技であった、肉弾戦に特化したアルタイルならではの技をアル・スハイルは無意識に行っていた様に思えた。


 だがその体はそのまま回転させ、美し蹴りを漆黒のアルナイルの頭部を蹴り飛ばした。


 それはアル・ムーリフの動きであった。


 その瞬間アル・スハイルの砕けそうになった心が暖かく包まれた。


 アル・スハイルは叫んだ。



「アル・ムーリフッ!」



 するとその砕けたアル・スハイルのサーベルが消え、違うサーベルが現れそれを力強く斬りかかるが漆黒のアル・ナイルは簡単に躱し、再びそのサーベルを折ろうと、切り返してくるアル・スハイルの斬撃に向け大振りに剣を振りかえして来た。


 漆黒のアルナイルは見逃して無かった、アル・スハイルがサーベルを折られ僅かに動揺したのを見逃してはなかった。


「また壊してあげるっ

あなたの大切なものぜぇぇぇんぶ!

壊してあげるよっ‼︎‼︎」


 漆黒のアルナイルが言い、アル・スハイルは小さな笑みを浮かべて呟く。


「素人が……」


 そう呟くとサーベルで受けず、隙だらけの斬撃を躱し、それを待っていたかの様にステラが入れ替わり凄まじい蹴りを漆黒のアルナイルの腹部に入れた。


「な…に……」


 漆黒のアルナイルはそう小さな声を漏らし、僅かに飛ばされ体勢を立て直しアル・スハイルを見た時、アル・スハイルとアル・ムーリフが重なって見えていた。


「姉上……

妾のサーベルを簡単に

折るのかと思ったではないか」


 アル・スハイルの体でアル・ムーリフの魂が言う。


「折るわけなかろう

そちのサーベルじゃぞ……」


 アル・スハイルが言うが、アル・ムーリフの魂が言った。


「まぁ別に折っても構わぬがな

姉上のサーベルはもう無いのでな


姉上……


この戦いが終わってから

新たに送り合わぬか?」


「それも良いな……」


 アル・スハイルは微笑み呟いた。


「次は戦いの為にあらず

安寧を願い送り合おう……」


 アル・ムーリフの魂がアル・スハイルの体を使いそう言った。

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