第三章 第3話 エリスとヴィーナス
「アル・スハイル様ですっ‼︎‼︎」
エリスは自信を持って言った、どうだと言わんばかりに星海で最も有名で、実力者でもあり、アトリアロフの英雄アル・スハイルの名を叫ぶ様に言った。
ヴィーナスがアル・スハイルを敵として見ている、そして怒りを煽った事も知らずに。
「アル・スハイル……」
ヴィーナスはアル・スハイルに弟子がいる事を知らなかった、それが余計に怒りを煽った。
ヴィーナスはただの一度も先生と呼ばれたことは無い、教えを乞われた事もない、そんなヴィーナスにとって怒りが吹き出していた。
だがエリスはアル・スハイルの名前を聞いてヴィーナスが退くと自信を持っていた、仕方ないと怒りが鎮まるとも思っていた、エリスは燃えている炎に油を注いだことに気づいていなかった。
ヴィーナスは怒りをあらわにし、静かに歩みだした、この洞窟からアル・スハイルの赤い光が発せられたのを見ていた、ヴィーナスは歩み出した、アル・スハイルを叩きのめそうと。
エリスはそのヴィーナスの前に回り込んで、手を広げて通せんぼした。
「お嬢ちゃん…お姉さんは
お嬢ちゃんの先生に話があるの
通してくれるかな?」
ヴィーナスが優しく言った。
エリスは通せんぼしながら星を輝かせ、成長した姿になりダガーを向けた。
「あんたね
アル・スハイル様を馬鹿にしてない?」
エリスが怒っているが、その口調は少しアルタイルに似ていた。
「馬鹿になんてしてませんよ
嫌いなだけですから」
ヴィーナスは微笑んで言い、エリスのダガーを重くし持てなくしてしまい、エリスは余の重さでダガーを落としてしまう。
「あなたも
アルタイルさんと同じ感じですね
可愛いお顔ですが
真剣な時には
凛とした美しさがあります」
ヴィーナスはエリスの顔を見ながら言ったが、急に顔を近づけてエリスの瞳を覗きこんだ。
「なっなに……」
エリスは戸惑った、ヴィーナスの瞳は美しく、星海の星々の様に輝いている。
「あなたの星はなんですの?
なんか親しみがあると言うか……
そんな感じがしますわ……」
ヴィーナスが聞いた。
エリスはそれを聞いた時、不意に僅かだが意識が薄くなるが、代わりに何かがそっと全身を満たす様な気がした。
(えっ…なんだろ……)
エリスは心でそう小さくつぶやいた。
(不和と争いの星エリス……
セプテントリオの直系の星っ‼︎‼︎)
アルタイルは気付いた、エリスの星はヴィーナスの星と親戚にあたることに。
(なら……
エリスの言葉は私達が言うより
ヴィーナスにとっては
身内に言われた様に聞こえるはず
このまま普通の話に持ち込めば
ヴィーナスが落ち着いてくれるかも……)
アルタイルは気を持ちなおそうと、そう前向きに考えた瞬間。
ベチッ!
僅かに鈍いが高くいい音がした。
エリスが顔を近づけて来たヴィーナスの頬を引っ叩いたのだ。
(なんでっ‼︎)
アルタイルとシーリス、エルナト、それと押さえつけられ動けなくなっているザウラクは思った。
(話し合おうよっ!
いまいい感じだったじゃんっ!
普通に話し合える感じだったじゃんっ‼︎
あんたらの星は兄弟なんだよっ‼︎)
アルタイルはそう心で叫び頭を押さえている。
(あの子なんなのっ‼︎
星を聞かれただけじゃない
星海人には気軽に星を
聞いちゃいけないのっ⁉︎⁉︎⁉︎)
シーリスはシリウスの星の妹星、星自身の意思の存在であり、星海人では無いため星海人の常識を知らないシーリスは戸惑った。
(エリスッ‼︎)
ザウラクは戸惑ったが、どうする事も出来ない、まさかヴィーナスの力が地上でこれ程とは思ってもいなかったのだ、星海ならば大気と言う物はない、よって限定的な力になるだが地上ではそれがほぼ無制限であった。
「…………」
エルナトはあまりのことで言葉を失い、目が点になり心で聞いた。
(いま叩いたよね……
今の音って叩いた音でしたよね……)
パチンッ!
再び返す手でビンタをした、
ヴィーナスはそれを受けエリスを睨んで直ぐに驚いた表情をした。
エルナトはヴィーナスと同じものを見ていた、エリスの目が座っていたのだ。
そしてエリスは連続で往復ビンタをヴィーナスに入れた。
パチンパチンパチンパチンパチンパチンパチンパチンパチンパチンパチンパチンパチンパチンパチンパチンパチンパチンパチンッ‼︎‼︎
ヴィーナスは一瞬の隙を見て手でその往復ビンタを受け止めた、そして頬をエリスの放った往復ビンタで腫らしながら言った。
「いきなりなんですのっ
って言うか
なんで往復ビンタされてっ
懐かしいのよっ‼︎‼︎
あんた何者なのよっ‼︎」
「わたしはエリス
大大星セプテントリオの直系
ふわとあらそいの星エリスよ‼︎
…………」
エリスはそう言い急に考え出した、ヴィーナスはエリスの言った言葉に驚いていたが、エリスは悩み続けてふとエルナトに聞いた。
「エルナトさん……
ちょっけい…ってなに?」
エリスはアル・スハイルに調べてもらって、そう教わったのだが直系の意味なんて教わってなかったのだ。
「……」
アルタイルとシーリス困った。
アルタイルは気付いていたが、エリスが子供だと言うことを忘れていた、上手く説得出来るはずがないと凹んでいた。
シーリスはもう一人のセプテントリオの直系に出会えたが、エリスもまた面倒な子な気がした。
「ふふっエリスちゃん?
直系と言うから難しいのですよ
エリスちゃんの星も
わたしと同じ
セプテントリオから生まれた……」
ヴィーナスが優しいお姉さんの様に言おうとしたが……。
ベシッ‼︎
エリスはヴィーナスをまた引っ叩いた。
「えぇっ
教えてあげようとしたのよ」
ヴィーナスが驚いて言った瞬間。
ベシッッ‼︎‼︎
また叩かれる。
「わたしは
エルナトさんに聞いたのよっ!
なんであんたが言うのよっ‼︎‼︎
ドブスッ!」
エリスは何故かヴィーナスに苛立ちを覚えている、そしてアルタイルとエルナトはエリスが言う「ドブス」という単語に妙に心がこもっている気がした。
エリスは妙にヴィーナスにムカついていた、まるで星と星の間で何かあったのか、エリスは自らの星の意思と、アル・スハイルを馬鹿にしているヴィーナスの本心を感じ取りそれが重なりムカムカしている、いつもの可愛いエリスはそこに居なかった。
「また言ったわねっ!
何度も何度も子供だからって
わたしが何時迄もっ!
我慢してるなんて
思わないでちょうだいっ!」
ヴィーナスが我慢しきれずに手をあげた、その右手には先程の様に怒りに溢れた気圧が乗せられている、ヴィーナスが本気でエリスを引っ叩こうとした。
エリスはすぐに子供に戻り、身長が低くなりそのヴィーナスのビンタが空振りし、エルナトがいる方に衝撃波と言える凄まじい重圧が放たれた。
「わっわたしぃぃっ!
なんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ‼︎」
エルナトは悲鳴を上げたつもりだが、あまりのことに声が出ていなかった。
ザウラクはヴィーナスが完全にエリスの挑発に乗った為に大気圧から解放され、すぐにエルナトを庇った、エルナトを抱きしめ背中に美しい炎の翼を広げ、ヴィーナスのビンタから放たれた衝撃波を受け止めた。
「ぐっ!」
ザウラクは一撃で凄まじいダメージを負うが、鳳凰の星の力で瞬時に傷を癒す。
すると直ぐにエリスがまた成長した姿になり、本気でビンタをヴィーナスにお見舞いしヴィーナスがムキになってまた同じビンタをエリスに放とうとするが、エリスはまた子供になって躱して流れ弾の様に、エルナトを庇い終えてヴィーナスを見ようとしたザウラクは正面からその衝撃波を受ける。
「ひぃぃぃぃぃぃっ!」
エルナトはやっと悲鳴が出た、既に戦う戦意すらない、いやむしろこのくだらない喧嘩に巻き込まれたくない、そんなことすら考えられない状況に追い込まれている。
「⁉︎っ」
一方アル・スハイルは星海で、セプテントリオから自らの力で何かが守られているのをアル家の屋敷の庭から感じとっていた。
「サラス……
セプテントリオで何かが起きておる
様子を見に行った方が良いか?」
アル・スハイルが聞いた。
「あれはただの兄弟喧嘩じゃ
行っても疲れるだけじゃよ……」
サラスが遠い目をして言った、サラスも巻き込まれたく無い様であったが、状況を知らないアル・スハイルはサラスの予知的な能力を考え、大事には至らないと考えてしまう。
(あの二つの星は……
誓いの星を少しは見習うべきじゃな
いつまで歪み合っておるのじゃ……)
サラスはそう思っていたが、そこにシーリスがいる事を知らなかった、いや同じ様な力を持つシーリスをこの時は見れなかったと言える、更にヴィーナスとエリスの因縁と言える喧嘩が再発したと考えその方が大きいことで、巻き込まれることを避けたのだった。
「さようか……
星海には我らと違い
仲の悪い兄弟が沢山おるのだな……」
アル・スハイルはそう言い、庭にある白い綺麗なテーブルセットの椅子に座り優雅に紅茶を口にし、図面を見つめまた考えていた。
一方エリスは子供の姿のままヴィーナスの右足のすねを、えいっと蹴飛ばした。
「ぎゃっ!」
ヴィーナスは声をあげ普通に痛がり足を抑え、その間にエリスは後ろに周りこみ星を輝かせていた。
「あんのっクソガキッ!」
ヴィーナスの目の奥に本気で怒った様な炎のが見える、そしてヴィーナスが振り返った瞬間、ヴィーナスは動きが止まった。
ヴィーナスの前に昔のハダルが立っていた。
「ハダル…様……」
ヴィーナスが呟く。
エリスは不和と争いの星の力でハダルの幻をヴィーナスに見せていたのだ。
「ハダル?
たしか…ハダルってガイアお兄ちゃんの
前世だよね?」
エリスはその動きの止まったヴィーナスに更に幻を見せて、精神的に暫く戦えない様にしてやろうと考えていたが、気が変わった。
「ヴィーナス……」
幻のハダルがヴィーナスを呼んだ。
「な…なんでハダル様が……」
ヴィーナスが慌てておしとやかに可愛らしく聞いた。
(キモッ‼︎)
今までのヴィーナスからの変わり身が速く、その場にいた一同が思った。
「悪いけど
子供を虐める大人とは
仲良くなれないな」
エリスが自分に都合の良い幻をヴィーナスに見せている。
(ヴィーナスって
ガイアお兄ちゃんのこと好きなんだ……)
エリスはそれに気付いた、エリスはその人が本当に愛してる人の幻を見せているのだ、そしてエリスはすぐに思った。
「わたしの知らない
ガイアお兄ちゃんを知ってるなんて
すっごいムカつくっ‼︎‼︎」
エリスが本音を大きな声で言ったが、ヴィーナスには聞こえていない。
(そう言えばエリスちゃんも
ガイアのこと好きだったね)
アルタイルは、なはは……と言う顔でそれを聞いて思っていた、もう無理に話し合う形に持って行くのは不可能だと思い、エリスの星の使い方の成長が目覚ましいものがあるが、もうそれもどうでも良くなっている。
(これってどうやってヴィーナスを
アル・スハイルの所に……
連れて行けばいいんだ)
アルタイルはただそう考えるたびに白くなっていた。
「ヴィーナス
俺の大事なエリスを
優しくしてやってくれないか?
お前なら出来るだろう?」
エリスはヴィーナスが優しく出来る根拠も無く、ハダルの幻にそう言わせた。
(そんなハダル様が
わたしにお願いしてくるなんて……
一度も無かったのに……)
ヴィーナスが恥じらいを見せ、えっ、と言う顔をした。
(ヴィーナスって
案外馬鹿なのね……
さっき自分でなんて言ってたっけ
アル・ムーリフに
拐われたとか言ってたよね?
たしかハダルって……
アル・スハイルとやり合ってたの
昔見たけど
拐われる様な男じゃなかったよね
アル・ムーリフも……
そう言う性格じゃなかったし
つまり二人で逃げたんじゃない?
そんな男が急に現れて
優しく言って来たら
疑うしかないじゃない)
シーリスは自分の解釈を加え普通の感覚で物事を考え、ヴィーナスは実はチョロいのでは?と思いながら成り行きを見ている。
「ハダル様……
昔アル・ムーリフに拐われて
無事に逃げれたんですね
それなのに
なんで私の所に……
帰って来てくれなかったんですか?」
ヴィーナスはエリスの事を気にしつつも聞いた、エリスは思ったことを言った。
「帰るはずないじゃんバーカッ!」
「…………」
アルタイルもシーリスも顔をピクつかせ、エリスの性格とその星の組み合わせを、別の意味で厄介だと実感する。
「そうよっ!
もっともっと言ってあげなさいっ‼︎」
光星の中でアルナイルはその場にいない事をいいことに本音を言う。
エリスはそっと自分の成長した姿の幻も見せ、幻のハダルが幻のエリスを引き寄せ、そっと幻どうしでキスをさせた。
もはやそれはエリスの願望でしかなく、この幻を他の人達も見えてることは知っていて、恥ずかしそうにアルタイルの方を向いて二人の幻を指差して照れながら言った。
「お師匠様……
わたしの夢です…てへっ」
エリスは可愛く言う、何事も無い時ならアルタイルは「はいはい……」と言ってくれるだろうが、真っ青な顔をしているのにエリスは気付いて言った。
「あれ?
お師匠様どうしたんですか?」
エリスは普通の女ならそんなことを見せつけられたら、精神的に諦めるだろうと、精神的に叩きのめされるだろうとそう考えていたがヴィーナスは違った。
ブンッ!
凄まじい勢いで空を切るビンタが炸裂し、エリスの見せていた幻が吹き飛ばされる。
「エリス……
よくもわたしのハダル様を……」
「え……」
エリスは予想外のヴィーナスの反応に驚いていた、アルタイルはその幻を見てヴィーナスがどんな行動に出るか解りきっていて青ざめていたのだ。
一方シーリスは同じ事を予想し、エリスがアルタイルを師匠と呼んだのを考え、我関せずの態度を取り、だいぶ入り口の方に下がり距離を置いていた。
「ぶっ殺すっ!」
ヴィーナスが怒りエリスを見るがエリスは子供の姿で、固まってしまったようにトコトコとアルタイルの目の前まで行き精一杯叫んだ。
「虐待反対っ‼︎」
そしてパッとアルタイルの後ろに隠れた。
「…………」
一瞬だがその場になんとも言えない空気が流れ、アルタイルは動揺を隠し金色の翼を出し腕を組んで立っている、そしてヴィーナスが言った。
「アルタイルちゃん
その子を渡してくれないかしら?」
ヴィーナスの言葉から凄まじい殺意を感じる、渡せば間違いなくエリスは血祭りにされるだろう、だが渡さなければアルタイルの今後の人生に未来は無い。
アルタイルは思った。
(わたしって……
弟子に苦しめられる
そんな星の元に産まれたのかなぁ……)
アルタイルは心の中で泣いていた。
「アルタイルちゃん?」
ヴィーナスが再び聞いてくる、エリスはアルタイルの後ろでブルブルと震えている。
アルタイルはエリスを捕まえてヴィーナスの前に出して言った。
エリスは顔を真っ青にした、まさかアルタイルがエリスを差し出すとは思っては居なかったのだ。
アルタイルは冷静に言った、友達に言う様に冷静に言った。
「この子は私の弟子なんだ
怒らせたのは悪かった
本当に悪かったと思う
だけど…ごめん……
渡せないから逃げるっ‼︎‼︎」
アルタイルはそう言い、エリスを抱き抱え洞窟の入り口に向かって高速で飛び逃げ始めた。
「ちょっ!
こっちに来るぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎」
シーリスが叫び洞窟の外に向かって走り出した。
「あんたっ
私に話があるんだろっ‼︎‼︎
手を貸しなさいよっ‼︎」
アルタイルも必死で叫び、シーリスを巻き込もうとするが、シーリスは死に物狂いで走る。
「待てコラァッ!
そのクソガキを
置いてけぇぇぇぇっ‼︎‼︎」
ヴィーナスは精神的に叩きのめされる事はなく、物理的に叩きのめしに来ている。
ヴィーナスの殺意がこもった大気圧の衝撃波が放たれ、アルタイルもろとも吹き飛ばそうとしている、シーリスは出来るか解らないがヴィーナスに向かって立ち止まり、誓いの星の力でその凄まじい衝撃波をそよ風に変換しようとしたが、最強を目指すセプテントリオが生み出したヴィーナスの力が凄まじく、変換しきれなかったがなんとか突風に変換するが、シーリスは吹き飛ばされた。
「あのオンナッ!狂ってるっ‼︎」
シーリスは変換しきれなかった事に戸惑うよりも、本音を叫び洞窟の壁に上手く足をつき飛び降りてアルタイルを追うように走り出す。
「ドブスッドブスッドブスッドブスッドブスッドブスッドブスッドブスドブスッドブスッドブスッ‼︎‼︎‼︎
そんなんだから
ハダルに嫌われたんだよっ‼︎
べーだっ‼︎‼︎」
エリスはアルタイルの腕の中で安心したのか、あっかんべーをしながら叫び燃え盛るヴィーナスの怒りの炎に油を注ぎ続ける、いつもの可愛いエリスでは無く、エリスの星が本当にヴィーナスの星が嫌いなのと、エリスがあくまでも子供だった為に、エリスは幼稚で悪質な挑発を連呼し続けている。
「…………」
その様子を見ていたメビウスはもはや言葉も出ない、星海ではアル・スハイルが真剣にメビウスとの決戦に向けて準備を進めている。
そしてアルタイルが持つ大大星スピカの剣がその勝敗の鍵になる、それをシーリスは奪いに行ったはずなのだが、それどころではなくなっている。
(なんなの……
セプテントリオの直系が
まるでシーリスの
邪魔をしてるみたいじゃない……
大星ヴィーナスは
アル・スハイルが
味方にしようとしていた
それでセプテントリオに来たのね
そこにシーリスが居て話がこじれた
これじゃアルタイルさんも
ヴィーナスとアル・スハイルを
引き合わせるなんて
無理ね……
でもシーリスもこれじゃ
アルタイルさんと交渉なんて……
出来ないじゃない)
メビウスはそう考えるが、アルナイルは今後どうなるか想像できない現実に気付き頭を抱えている。
(ちょっと待って……
こんなドタバタ騒ぎで私の本体が
折られたりしたら……
ないわっ!
そんな恥ずかしいことで
わたしの力が暴走するなんて
あっちゃいけないわっ!)
アルナイルは考え始める。
(でもどうするのよ
メビウスを解放してもいいの?
メビウスは友達だけど
喧嘩してたばかりじゃない
今は落ち着いてくれてるけど
絶対にまだ諦めて無いわよ
諦めてたらシーリスに
わたしの本体を伝えないと思う
それにさっきも言ってた
シーリスが奪えるか奪えないかで
決めるって……
そうよ…シーリスは
シリウスみたいな子じゃないわ
あの子がどうするかで決まるのよ
いまのメビウスはわたしが抑えてるから
星海でのメビウスの意思の執行者は
シーリスなんだ……
わたしの意思の執行者は
アル・スハイルと
ステラさん……
あとは…お兄ちゃんが
気付いてくれれば……)
アルナイルは冷静に考えるが、一つ気がかりなことがあった。
「こっこまでおいでぇぇぇ
べーだっ!」
エリスは本気でヴィーナスが嫌いの様だ、そのエリスを抱えているアルタイルは気が気ではない、あのアルタイルが半泣き状態でクンガ村の洞窟を飛び出し、それに続いてシーリスも飛び出しアルタイルもシーリスも広がる大空に飛び星海に逃げようとした。
(加速して逃げたいっ!
でも超加速しても
ヴィーナスが気圧で壁作ったら
もろにぶつかっちゃうっ!
どうしたらいいのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼︎‼︎‼︎‼︎)
一目散に逃げているアルタイルだが、ヴィーナスの力を恐れていた為に超加速をしない範囲での最高速で飛んでいたのだ。
ヴィーナスは近い関係であるエリスの星に、思いっきりバカにされているので余計に余計に腹が立っている。
「アルタイルちゃん
ぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇったいに逃がさないわっ‼︎‼︎‼︎」
ヴィーナスはそう叫び洞窟の外に飛び出した。




