第三章 第2話 子供は勇者
(にしても……
今のヴィーナスの力を防いだのは
赤い星の力
あの洞窟に何があるの……)
メビウスは洞窟を守った赤い光を見てふと考えた、あの子はアル・スハイルと居るはずなのに何故か放たれたその力に興味を持った。
そんなことはお構いなく知るよしもなく、クンガ村の前ではヴィーナスがシーリスに飛びかかる。
シーリスはヴィーナスの力を抑えたビンタを素早く躱す、すぐ近くにアルタイルがいる為に加減しているのだ。
「ちょっと……
さっき私も巻き込もうとしたよね?」
「何を言ってるんですか?
気のせいですよ
アルタイルお姉ちゃんに
そんなことする筈ないじゃないですか
このアマッ
待てゴラァァァァァァァッ!」
ヴィーナスはアルタイルには優しく言い、シーリスには荒い口調で言い放つ。
「わたしはあんたの姉さんじゃないって
昔から言ってるでしょ……」
アルタイルはお前の姉妹になりたく無いと言うことをそのまま言う、アルタイルからすれば冗談じゃないと言う話だが、言葉を選びながら話している。
「なにを言われるのですか
星図の上では
私の星とアルタイルちゃんの星は
姉妹なんですよ
このドブスが待ちやがれっ‼︎‼︎」
ヴィーナスは変わらない態度で話している、アルタイルはシーリスを追いかけ回すヴィーナスの衝撃波をひらりと躱し、あたまをかかえる。
シーリスはアルタイルが腰に身につけているスピカの剣を意識しているが、ヴィーナスの近接攻撃の威力が強く、アルタイルに近づくことも出来なかった。
「アルタイルさんっ!
なんとか言ってよっ‼︎‼︎
このままじゃ
話も出来ないじゃないっ‼︎」
シーリスはただ二人を傍観するアルタイルに言った、だがアルタイルは言った。
「シーリスさんだっけ……
いいじゃない
ヴィーナスが襲いかかるってことは
あんたのことを
美人って認めたからなんだから
ヴィーナスはね
自分のライバルになりそうな相手に
絡んでくのが趣味なのよ」
アルタイルは無論助ける気は無い、それは言うまでもなく、シーリスが敵であると解りきっているからと言うよりも、本気で関わりたくなたかったのだ。
「それは違いますわっ
この方は私を重いって言ったんです
この大星ヴィーナスに向かって
大変失礼じゃ無いですかっ!」
ヴィーナスは否定するが、アルタイルはヴィーナスがいる時点で気が重くなるのを感じた。
「それは申し訳ないことを
もう言いませんからっ!」
シーリスは詫びようとする、目的はあくまでもスピカの剣を手に入れることで、ヴィーナスがセプテントリオの直系と解った今、明確に敵に回すことも出来ないと冷静に考え怒りを鎮めようとしている。
「嘘こけオラァッ!
さっきマジッキレてだろっ‼︎
テメェなに様のつもりだこらっ
この私を馬鹿にしていいのは
ハダル様だけなんだよっ
解ってんのかこらっ‼︎‼︎‼︎」
ヴィーナスは叫び襲いかかる、アルタイルはそれを聞いて、以前にハダルの星にアルナイルの光星を突破して忍び込んで、大星ヴィーナスがそこで大人しくしていたのを思い出した。
「ねぇヴィーナス
ハダルとはどんな関係なの?」
アルタイルは聞いた。
「ハダル様は私を下したお方……
今までわたしに心の無い言葉をかけ
機嫌を取ろうとしてた殿方とは違って
心を込めて教えてくれましたわ」
シーリスを襲いながら目をうっとりさせてヴィーナスは言った、シーリスからすればその目は虐殺を楽しむような目にしか見えない。
「ハダルはなんて言ったのよ?」
アルタイルはベガの生まれ変わりのハダルが、優しい気の利いた言葉を言うはずが無いと思い聞いた、ハダルの生まれ変わりのガイアですらあぁなのだ。
「ドブスッ!
って言ってくれましたわ」
ヴィーナスが目を輝かせて言い、、同時にその場にいたアルタイルとシーリス、そしてアルナイルとメビウスも同じ言葉を心で言った。
(気ちがい……)
アルタイルとシーリス、アルナイルとメビウスの四人は初めて共通の意識を持ったが、それを誰もが知るよしも無く言えるはずもなかった。
「勘違いしないで下さいね
男性だから許してるんじゃなくて
もちろん怒りましたわ
ですけど……」
ヴィーナスはそう言いながらもシーリスを襲い続ける、僅かに見える回避出来る未来を見ながらシーリスは全力で、ヴィーナスの狂った攻撃を避け続けている。
両腕から放たれる強烈なビンタを躱し、気圧の変化を利用し加速された凄まじい速さの蹴りを躱し、シーリスは必死だった。
(大星ヴィーナス……
外星の近接戦闘タイプの星
星海なら勝てる気がするけど……
地上戦は
わたしが圧倒的に不利じゃないっ‼︎‼︎)
シーリスは紫の星の力を感じ未来を操作出来ないでいた、同じメビウスの力を持つ者の中で現在を支配する紫の星の力は圧倒的であり、赤い星と違い力比べにすらならなかった。
シーリスが現状を把握した時に、ヴィーナスは言った。
「ハダル様は
わたしの力を寄せ付けないで
あの美しい鋼鉄のような拳で殴って下さり
私は感じてしまいました
あの情熱的な大地の力を
わたしの体を貫く鋭い岩のような
強い意志と
なんでも焼き尽くす
マグマのようなアツさを
全身で感じてしまって……」
ヴィーナスは思い出したかのように、顔をポッとさせ、シーリスを襲うのをやめ両手で顔をおおい恥ずかしそうにしている。
アルタイルは想像した、鋼の拳で殴られ、岩の槍で貫かれ、マグマで焼かれたヴィーナスを、そして思った。
(こいつ…マジヤバィ……)
それを思ったのはシーリスも同じで、星海で戦うことも躊躇った、理由はヴィーナスにダメージを与え、付き纏われる可能性が出てきたからだ。
それを聞いてメビウスは厄介過ぎると感じていた、解っていたが敵対したくないセプテントリオの直系の星であることが、更に厄介にしていた。
「でも……」
急にヴィーナスが凄まじい殺気を放ち始め言った。
「思い出したわっ‼︎」
「なにを?」
アルタイルがヴィーナスから殺気を感じ、不思議に思い自然に聞いた、そしてヴィーナスが叫んだ。
「あのアル・ムーリフのアバズレがッ!
わたしのハダル様をさらって
どこに隠したのよっ‼︎‼︎
絶対に見つけ出して
八つ裂きにしてやるわっ‼︎‼︎‼︎」
(ちょっ!‼︎)
アルタイルは戸惑った、すぐそばにアル・ムーリフの生まれ変わりのステラがいる、ハダルの生まれ変わりのガイアもいる、しかも二人は付き合ってるうえにステラは眠りにつきまだ起きていないっ!。
アルタイルはヴィーナスが放つ殺気を初めて感じた、それは恐ろしく邪な殺気であり、ある意味でメビウスがいだいた憎しみより強大であった。
「ちょっとまってまって
ヴィーナスッ
あなたハダルとどんな関係なのよっ!」
アルタイルは焦って聞いた、少しでも落ち着かせないといけない、アルタイルは慌てていた。
「うっ……うーん……」
その頃やっとステラが目を覚ました。
「ステラッ大丈夫かっ‼︎‼︎
からだは⁉︎大丈夫か?」
ガイアがステラに必死に聞いている、ステラは数日の間眠り続けていた、その間ガイアはアル・スハイルの像の近くでステラのそばにいた、交代でエルナトがエリスを連れてきたりして、エリスがガイアを明るくさせようとしてくれたが、ガイアは表情は明るくするものの精神的には明るく離れなかった。
「ガイア……」
ステラはガイアが本当に付き添ってくれていたのを感じた、村にいるのに満足に休めて無いような顔色をしているガイアを見て嬉しくなり、笑顔を見せて言った。
「ありがとう
心配かけてごめんね」
ガイアはそれを聞いてステラを抱きしめた、力強く抱きしめステラはガイアが本当に愛してくれてるのを感じた。
そしてクンガ村の外が騒がしくなってるのを、エリスが教えに来てくれたが、二人のその姿を見て気付かれないように慌ててそっと隠れて見ていた。
(いいなぁ……)
エリスはそう思いながら見ていると、エルナトが外の様子を見て慌てて知らせに来たが、隠れていたエリスが急に飛びつきエルナトを止めようとした。
「わっ!」
エルナトが思わず声を出すが、エリスが指を立ててシーッとしていて、ガイア達の方を指差しエルナトが見るとそこには抱きしめあっている二人を見て、エルナトはエリスを連れてその場を離れた。
「今はそっとしてあげましょ」
エルナトはそう小さく言いクンガ村の外の様子を見れるあたりまで来て立ち止まった。
そこにはザウラクが先に来ていた、エルナトがさっき外の様子を見に来た時には居なかったが、既に体内で星を輝かせている。
「ザウラクさん?」
エルナトが声をかけると、ザウラクが聞いた。
「エルナト……
大星ヴィーナスの力を知っているか?」
「大気圧を操る大星
地上戦での破壊力はハダルと同等
星海での戦いでも
熱風を操ると聞きますけど
星海のどこにそんな風が……」
エルナトはアル・スハイルから関わらない方がいい星として、ヴィーナスのことは教わったが、アル・スハイルが一目置くその力も聞いていた。
「この星で言う太陽
太陽風を操るんだ……
つまり熱を放つ星の風を利用し
気圧を生み出す
ハダルを補佐する為に
編み出したと聞いたけど
その才能も実力も
アル・スハイル様に劣らない
油断しないで……」
ザウラクはヴィーナスが放った殺気と殺意が、アル・ムーリフに向けられた事に気付いて警戒していた。
「ガイアさんをサポートする?
それってアルナイルさんのお仕事じゃ……」
エルナトが聞いた。
「細かい経緯は知らない
ハダル一派は半分以上
ヴィーナスが支えてたわ
ハダルは
アル・スハイルに負け続けてたし
勝ち続けてたのは
ヴィーナスが率いてた部隊だけ
アル・スハイル様が
ヴィーナスを倒そうとしたけど……っ!」
ザウラクはそう言いふと思った。
(まさかハダルは
ヴィーナスを守ろうとして
部の悪い戦いをしていた?
まぁ…それは無いわね……
結果として
そうなったのね……
それをヴィーナスが誤解……
してる……)
「あれとハダルってどんな関係なの?」
アルナイルの光星の中で様子を見守るメビウスがアルナイルに聞いた。
「ハダルは地上戦最強の星
大地の力を持ってて
そのハダルにヴィーナスは叩きのめされて
それから付き纏ってたのよ
ヴィーナスは大気を操って
ハダルが大地を操って
あの二人の力の相性が良すぎて
調子に乗って地上に降りた
アル・スハイルの手星達は
手も足も出なかったのよ……
で…シリウスがハダルに絡んで
それを止めようとしたヴィーナスに
吹き飛ばされて
怒ったシリウスが
星ごと破壊しようとしたけど
ヴィーナスの力で弾き返されて
シリウスまで諦めるし
ハダルはあの性格のヴィーナスを
嫌がってたけど
ヴィーナスはハダルの前で
かわい子ぶってて
わたしからすればウザくて……
何度か光に乗せて遠くに飛ばしたけど
すぐに戻って来て
今度はわたしが絡まれて……」
アルナイルは思い出したく無い過去を語るようにぶつぶつと言っている。
「…………」
メビウスは沈黙している。
光を操る力はアルナイルの本当の力の副産物でしかない、それを知っているのはメビウスだけだった。
それでも大大星スピカに飛ばされてすぐに戻って来たと言う時点で、ヴィーナスが相当な力を持ってると感じていた。
「アルタイルさんっ!
アルタイルさんはあのっ!
アバズレの手星だったわよねっ‼︎‼︎
親戚だから今まで普通にしてたけど
さっきのはアル・スハイルの力よねっ
にっくきハダル様の敵っ!
アル・スハイルとアル・ムーリフは
今どこに居るのよっ‼︎‼︎」
ヴィーナスは叫んだ。
「あら…気が合いそう……
ちょっと話してみたいわね」
「話したければどうぞ
絶対に後悔するから……」
「やめとくわ……」
メビウスが呟きアルナイルナイルが自信を持って言い、メビウスは頭を抱えた。
「アル・ムーリフ様を……
アバズレ…だと……」
ザウラクは手を力強く握りしめ、星を輝かせ怒りを見せ始めていた。
「まぁ…
アル・スハイルも
アル・ムーリフも
アトリアロフに居るけど……
あんたのことを
アル・スハイルが呼んでるの
それを伝えるのに呼んだんだけど……」
アルタイルは悩みながら言う。
(ヴィーナス……
あんた友達いるの?
アル・ムーリフが転生して
この星にいるってもう有名なことよ
誰も教えてくれないの?
と言うか
シーリスがいるから……
全部を伝えられない)
アルタイルがそう悩んでる様子をシーリスは見逃さなかった。
(今なら……
ヴィーナスの怒りが他に向いてる
スピカの剣を奪えるわ
でも待って……
アル・スハイルを敵視してるなら
このまま味方に出来ない?
アルタイルも
ヴィーナスを怒らせたく無いはず
アルタイルもヴィーナスが言えば
考えてくれるかも知れない……)
シーリスは自然にそう考えていた。
「アル・スハイルが
アトリアロフで呼んでる……」
ヴィーナスは呟いて叫んだ。
「アル・スハイル……
嘘つきなさいっ‼︎‼︎
さっき奥から来た光は
アル・スハイルのものっ
間違い無いわっ!
さては私と戦うのが怖いのねっ‼︎‼︎
逃しはしないわっ‼︎‼︎」
ヴィーナスがいきりたって言った。
(それは間違ってないよ
あの光はアル・スハイルの赤い星の光で
間違いないけどっ‼︎‼︎
あいつはあんたなんかから
逃げないからっ!
気ちがいは
相手にしないだけだからっ‼︎‼︎‼︎‼︎)
「ヴィーナスッ
まちなっ!
その村で暴れたらっ!……」
アルタイルは止めようとした。
(いまクンガ村には
ハダルの生まれ変わりのガイアと
アル・ムーリフの生まれ変わりの
ステラがいるっ!
ヴィーナスが気付けば
修羅場になりかねないっ‼︎‼︎
ステラは変換が使えるから
大丈夫だとしても……
ガイアがヤバイ目にあうっ‼︎‼︎)
「アルタイルちゃん?
まさか…アル・スハイルを庇うの?」
ヴィーナスがアルタイルを「ちゃん」づけで呼んだ、それはヴィーナスがアルタイルに怒るほんの手前のメッセージであった。
「いや……
絶対に後悔するよ……
ほんとうに……」
アルタイルが目を背けて言った。
「そう……
ご忠告ありがとう
アルタイルさん
後悔するのはどっちかしら……」
そう言いヴィーナスはクンガ村に入って行った。
「絶対にあんただよ……」
アルタイルはヴィーナスの後ろ姿を見ながら言い、シーリスが隣で聞いた。
「あの洞窟に何があるのよ
さっきのは赤い子の力よね?
アル・スハイルは
アトリアロフに居るはずなのに
なんであの洞窟から……」
「あの洞窟の奥に
アル・スハイルを祀る祠があるのさ
だからアル・スハイルの力で
クンガ村は守られてるんだよ……」
アルタイルはシーリスが話し合おうとして、襲ってこ無いことを解っていたのでそう答えた。
「あっ
メビウスの星にある
わたしの神殿みたいなものね
アル・スハイルには
小さな祠がお似合いじゃない」
「アル・スハイルは
そんなことは気にし無いから
別にいいんじゃない
この星を星神として見る事にしたけど
あんた達のせいで忙しくて
アトリアロフに釘付けだし……
で…私に話ってなんの話よ……」
アルタイルが聞いた。
「その前に……
ヴィーナスが後悔するって
気になるから見に行きませんか?」
シーリスは話を逸らした、正面から話しても無理だと考え、ヴィーナスを絡めてアルタイルに話そうと考えていた。
「そうしよっか……
知り合いも気になるし……」
アルタイルが言うとクスクスとシーリスが笑って言った。
「アル・ムーリフが居るのよね?」
「気付いてたんだね
なら話が早いわ……
アトリアロフにはアル・スハイルが
星の生き物達を集めてるわ
メビウスの者達で攻撃をしたら
すぐに星間戦争になるわよ
メビウスが大大星でも
アル・スハイルの手星達の
星の生き物も合わせたら
流石にまた焼き尽くされるわよ
アル・スハイルの赤い星と
紫の星の生き物達は野蛮だけど
このセプテントリオも
壊滅に追い込んだくらいよ
馬鹿なことは考えないで
私達星海人だけでかたをつけるべきよ」
アルタイルが逆に説得しようとしていた。
「それはどうかなぁ……
お母様はそれを望んではないわ
とりあえずアルタイルさん
貴方達が心配してる
スピカ……
あの大大星の望みを知ってる?」
シーリスが聞いた。
「アルナイルの望み?」
アルタイルが考えるとシーリスが言う。
「アルナイルって言うの?
アルタイルさんと似てる名前ですね
それはまぁ良いとして
大大星スピカは
この星海を命で満たして
見た目だけじゃなく
生き物達が躍動する銀河に
星海を変えようとしてるのよ……
それがどんな意味を持つか解るかしら?」
シーリスがアルタイルに聞いた。
「いいんじゃないのか?
星海は星海人だけのものじゃ無いし」
アルタイルは自然に言った。
「わたしもお母様も
それだけを見るなら反対しないわ」
シーリスは考えながら言う。
「メビウスもシーリスも……
何が不満なのよ」
アルタイルはそこまで聞いて、この戦いの訳を話そうとしている気がした時、前方から怒れる声が聞こえた。
「ザァァァウゥゥラァァァクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……」
シーリスはその声をイカれた声にしか聞こえなかった。
「ハダルがドブスって言ったの……」
シーリスが呟く。
「性格のことね
それしかないわよ……」
アルタイルがため息混じりに言う。
前方では問答無用でヴィーナスがザウラクに襲い掛かったようだ、アル・ムーリフの手星の一人ザウラクが居ることで、アル・ムーリフがこの奥に居るとしかヴィーナスは思えなかった。
ザウラクは体内で星を輝かせ、命の炎を燃やしヴィーナスを抑えようとしたが、凄まじい大気圧をザウラク一点に集中させられ大地に押しつぶされるように叩きつけられた。
すぐにエルナトが槍を構え襲い掛かろうとしたが、ヴィーナスは槍に気圧をかけ振れない様な重さにしてしまう。
「あなたは誰?
見た事もない可愛い人ね
あなたには興味ないから
そこで大人しくしてなさい」
ヴィーナスはエルナトを美人というジャンルに入れなかった様にそう言った。
「わっわたしは……」
アル・スハイルの手星として、誇りを持ってエルナトは名乗ろうとしたが、何故か嫌な予感がして躊躇った。
(なに……
なにか名乗ったら
悪い予感しかしないのは
なんでっ?)
エルナトはそう思い、ザウラクがヴィーナスの力で押さえつけられてる姿を見て感じた。
(ザウラクさんは
アル・ムーリフさんの手星で
有名だから
一目で解ったんだ
わたしはアル・スハイル様の
数多く居た手星の一人に過ぎない……
だから……
わたしのことを知らないんだ……)
エルナトはアルタイルも手を出さない、ザウラクは手も出せないその力を見せつけられ、自然に悟った、手を出さない方が賢明であり、何とかして洞窟の外に出て貰おうと考えた。
「あっあの……」
エルナトが話しかけようとした時、エリスが子供の姿のまま飛び出し、ダガーでヴィーナスに襲い掛かった。
「エリスちゃんっ!」
エルナトが心配して叫ぶがエリスは叫ぶ。
「焼き鳥さんに何をしたぁっ‼︎‼︎」
エリスは可愛い声でザウラクを焼き鳥と叫び、ヴィーナスにダガーを突き刺そうとしたが、ヴィーナスは素早くエリスのダガーを払いエリスの足を軽く蹴飛ばし、転倒する瞬間に右手をエリスに向け、誰もがエリスが押し潰されてしまうと思った。
「エリスッ!」
ザウラクが叫ぶ。
だがヴィーナスはその手で前から倒れ込もうとしたエリスの背中を掴み、ジタバタするエリスを顔の高さまで持ち上げ、笑顔で聞いた。
「いまそこの人をなんて呼びました?」
エリスはジタバタしていたがキョトンとした。
ヴィーナスはエリスの顔の周りだけの大気圧を残し、体にかかる大気圧を軽くし軽々とエリスを持ち上げている。
「なんて呼んだのですか?
教えてくださいませんか?」
再びヴィーナスが聞いた、エリスは何故ヴィーナスが笑顔なのか解らずキョトンとしている、エリスに向かって殺気は全く放たれていない、むしろ可愛い子供を相手にする様にエリスを下ろし、優しく立たせてくれ、しゃがんでニコニコとしている。
「焼き鳥さん…って……」
エリスが言いヴィーナスは微笑んで言った。
「焼き鳥……
あの人にはお似合いね
可愛いお嬢ちゃん
私達仲良くなれそうね」
ヴィーナスが微笑んでエリスの頭を撫でているが、エリスは嫌がってその手を子供らしく払った。
「やだっ!」
エリスは思ったことを言った、不和と争いの星がエリスに、ヴィーナスの邪すぎるねじ曲がった性格を感じさせていた。
「あら?
私と仲良くなりたくないの?
わたしは大星って呼ばれてるの
知らないのかしら?」
ヴィーナスは子供をあやす様に言った。
「だってお姉さん
性格悪いって有名だもん」
エリスは言わなくていい事を言った。
ヴィーナスの額に血管が浮き上がる。
「大星の中で
一番性格がドブスって言われてるよ」
怖いもの知らずな小さな勇者エリスが言う、エリスは星海中の大星を調べていた、それはエリスが大星に憧れているからであるが、その中で唯一眼中に無い大星が目の前にいるのであった。
ヴィーナスは子供の言う事として耐える忍耐は持ち合わせてはいない、その様子をアルタイルとシーリスは氷の様に固まってヴィーナスの後ろから見ていた。
「あの子…死ぬ気?」
シーリスが呟く。
「エリス……」
アルタイルは既に固まり真っ白になっていた、ガイアの短気には幾らでも割って入るアルタイルですら固まっていた。
そしてエリスは更に本気で言った。
「ぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇったいにドブスとは仲良くならないっ‼︎‼︎‼︎
ドブスッドブスッドブスッドブスッドブスッドブスッドブスッドブスッドブスッドブスッドブスッドブスッドブスッッ‼︎‼︎‼︎」
その場にいた誰もがエリスが叫ぶドブスの連呼を聞き白く固まり、もはや子供の言った事として対処出来ないヴィーナスが静かに立ち上がった。
アルタイルは後悔する、エリスに一般常識を教えるべきだったと……。
だがヴィーナスは意外な言葉を言った。
「お嬢ちゃん……
言っていい事と
悪いことは勉強しましょうね
誰がこの子の面倒を見てるのかしら
とっても綺麗な人なのかしら
その先生の顔をわたくし
見たくなりましたわ……」
ヴィーナスも精神的に成長したのか、必死に耐え優しく言っているが、その優しい口調の裏に明らかな殺意が溢れ吹き出している。
だが美人か美人でないかでは無く性格を言われてることはヴィーナスには関係なかった、あくまでもヴィーナスはそこだけにこだわっていた。
アルタイルは本気で人生の終わりを直感し、エリスの教育をしたアルタイルは魂が抜けて行く気がした。
「お嬢ちゃんのせんせいは誰かなぁ?」
ヴィーナスが聞いた。
(終わった……
わたしの名前を言われて
その後一生つけ狙われる……
メビウスと
アル・スハイルの戦いが
終わったとしても
星海が平和になったとしても
わたしに安らぎは訪れ無い……
永遠に……)
アルタイルが絶望している、その姿を見てシーリスは不思議に思う、エリスがアルタイルを師匠と呼んでいるのを知らなかったからだ。
「わたしのせんせいはぁっ!」
エリスが恐れずに自信を持って言おうとしている、アルタイルに絶望を感じさせていることを知らずに。
エリスからすればアルタイルは誇れる偉大な師匠であり、最高峰の大星であるが、そこは子供でありアルタイルの迷惑になるなど考えもしない。
(やめて…言わないで……)
アルタイルは真っ白になり心で呟いている、そして思った、後悔するのは自分だったと、そしてエリスは自信を持って叫んだ。
「アル・スハイル様ですっ‼︎‼︎」
アルタイルは精神崩壊寸前であった、だがエリスが言った言葉で目の前が明るくなり、溢れんばかりの安堵感に満たされ、喜ぶ前に膝から崩れ落ちていた。
エリスはアルタイルを師匠と呼び、アル・スハイルを先生と呼んでいた、それがアルタイルを精神的に追い込んだことをまだ知らないエリスであった。




