第二章 第13話 違う始まり
アル・スハイルはセトを倒したが、街への攻撃は激しさを増していた、多くの街の人々が攻撃にさらされているが、アル・スハイルは全てを受け止めていた。
この犠牲の元に今があったのだと、サラスには不思議は力があり未来を見通していた、もし何かを代価にしても守ろうとするならば、アル・スハイルを過去に騙しオルビスの人類を滅亡へ追い込んだサラスなら、街一つならば容易く滅ぼすかも知れない。
それも解っていた、サラスがこの時からこれだけの犠牲を払い守ろうとしたのが、なんなのかもアル・スハイルには解っていた。
アル・スハイルは静かに、アル・カストルの書斎に向かった。
ただ一つの聞きたいことがあり、それを聞く為に傷ついた身体で階段を登って行く。
階段を登り切った時、メビウスの文明の船が街に落ちて行くのが見えた、アルタイルとベガが助けに来てくれたのだ。
「アル・ムーリフ
上手くやったようだな……」
アル・スハイルは静かに言った、アルタイルとベガが現れ、街を襲っていた者達は二人へ攻撃を始めアトリアロフへの砲撃が弱くなっているのが解った。
「アルタイルッ!
なんであの女の為に戦うんだっ⁉︎」
ベガがアルタイルに叫ぶように聞いた。
「それくらい気付いてよっ‼︎‼︎」
アルタイルが叫び返した、アルタイルはステラが話したことを思い出した。
(アトリアロフが襲われるってのか?)
ベガはステラが必死に話していることを疑った、ベガもアルタイルも鷲の力を持ち、その目は獲物は見逃さない、そんな二人が気付かなかったのだ。
(えぇっ
貴方達の助けが
どうしても必要なのっ!
二人がいないと……
アトリアロフがっ!)
(解ったよ
あんた…名前は……?)
ベガが答えようとしたが、その前にアルタイルが言った。
(なまえ……)
ステラは悩んだ、今ここでアル・ムーリフと名乗っていいのか、ステラはアル・スハイルと違い、夢なのか過去なのかまだ答えを出せずにいた。
その為に過去ならばアル・ムーリフの名を名乗り、今この世界に元からいるアル・ムーリフに何かあってはならない、だが姿は最盛期のアル・ムーリフの姿をしている。
ステラは考えてしまった。
(私は…この世界にいないはず……
でも…ここが過去なら……
私は…誰なの……)
この時にステラは無論存在しない、それさえも考えてしまった。
(ちょっと
名前くらい名乗ってよ
私達を引き止めたんだから
それくらい
教えてくれてもいいんじゃない)
アルタイルが言った。
(ねぇ……
あなたは
なんで旅に出たの?)
ステラの頭にあの記憶が蘇る様に、その言葉を初めて言った時の記憶が蘇る様に聞こえた。
(私はステラ
まだ居ない存在……)
ステラは静かに言った。
(はぁ?
あんた馬鹿なの?
目の前にいるじゃん)
アルタイルはそう言い、ステラに近づいた時、ベガが言った。
(行くぞ……
アルタイル
アトリアロフが危ない……)
ステラは、アルタイルと揉めてしまうことをベガが止めてくれたのだと感じた。
(ベガ……)
アルタイルはそう言い、アトリアロフに向かって行くベガを見て呟いた。
(アルタイルさん……)
ステラが言った。
(何?)
アルタイルが不貞腐れた様に聞いた。
(あなたに会えて良かった……
ほんとうに良かった……)
ステラはそう静かに言った。
アルタイルは自分の力量を知っていてそう言ったのかと思った。
だがステラはこれからのこと全てが、アルタイルが居てくれたからこそ今のステラが居て、アル・スハイルも生き延び、今の未来がある事、その全てを込めて言った。
(ありがとうアルタイル……)
アルタイルはそれを聞き、まるで自分の全てを知っているのかとも思ったが、小さい笑みを見せベガを追っていった。
「あんな顔されたら……
頑張るしかないじゃんっ‼︎‼︎」
アルタイルは叫び、無数に羽を飛ばしメビウスの星が誇った文明の船を破壊して行く。
アルタイルは全力でアトリアロフの為に戦っていた、最初にアルタイルから引き受けたのは何故かと言えば、ベガが先にステラの呼びかけに応えたら、より深くベガを疑ってしまうと思った自分がいたからこそ、自ら引き受けたのだ。
だがステラの言葉でそんなことはどうでも良くなっていた、アルタイルはふと街を見た時、瓦礫の下敷きになっている少女を助けようとしている少女を見つけた、その後ろ姿が強烈に気になり、戦いながら見ているとその横顔が目に入り気付いた。
(さっきのおんな……
あの下敷きになってるのは……
アル家で見た……
まさかっ‼︎‼︎
そんなはずはっ‼︎‼︎)
アルタイルはあり得ないことに気付いた、そして悩む前に金色の羽を一枚、翼から抜いて、その瓦礫に向かって放った。
その表情をアル・スハイルは屋敷のまどから見ていた、アルタイルの信じられない様なその表情を見てアル・スハイルは呟いた。
「夢であって夢にあらず……
過去であるが……
我らの過去ではないと言うことか
まだ確証は無いが
戻れるなら
サラスにじっくり聞くとしよう」
アル・スハイルはそう言い、サラスが言った言葉を思い出していた。
(全ては夢……
だが夢と思わぬことじゃ)
その言葉が何を意味しているのか考えていた、一度は過去の夢だとそう思っていた。
だが過去の出来事とこの世界の出来事は、僅かに違うのでは?その違いが大きな違いになり、別の未来へと続くのでは?そう思い始めていた。
そして踵を返し廊下を進み、一つの扉をノックした。
「お父様…入ります……」
アル・スハイルは優しい口調で言った。
アル・スハイルは扉を開け静かに入った。
「スハイルか……」
アル・カストルが言いアル・スハイルは目を見開いた、この世界で誰もが気付かなかったことを、アル・カストルはアル・スハイルを一眼見て気付いたのだ。
「お父様……」
アル・スハイルが親子の絆の様なものを心の底から感じて呟く。
アル・カストルは、セトと戦い傷を負っているが、美しく成長し、サーベルを帯刀し立派な姿をしたアル・スハイルを見て微笑んでいた。
「わたしに
聞きたいことがあるのだろう?
言ってごらん」
アル・カストルが優しく言ってくれた。
外からは戦いの音が、絶え間なく聞こえてくる、そして街が燃え崩れて行く建物が遠くに見え、アル・スハイルはアル・カストルが、大大星スピカを破壊したその代価の中に居ることを目の当たりにしていた。
そんな中でアル・カストルは全てを受け入れている様であった、サラスはいつとは言わず、更にどの様な死に方をするかなどは伝えなかったのだ。
サラスには見えていた、アル・カストルが街の人々を救おうとし、街の人々を逃し自分だけが残ろうとすることが見えていたのだ。
だがそれと同時にアル・カストルが逃げようとするのでは?とセトがそう思い、アル・カストルを殺し、アル・スハイルもアル・ムーリフもその場で殺されてしまう未来も見ていたのだ。
アル・カストルはサラスを信じた、そのサラスが言った
(アトリアロフを静かに治め
アル・スハイルと
アル・ムーリフとの親子の時を
大切にすれば良い……
さすれば
そなたの願いは叶う……)
サラスが優しくも寂しそうに言った、その言葉を受け入れて信じていたのだ。
アル・カストルは、美しく、そして凛々しく成長した未来のアル・スハイルを見て、悔いは何一つ無いような顔をしていた。
「な…なんで…なんで……」
アル・スハイルは思わず、涙が溢れそうになりながらも呟くように言っていた。
アル・スハイルはアル・カストルの死後、アル家を背負い、常に気丈に振る舞い続けていた、本当の性格は気が強いがアル・ムーリフの様に優しい性格であった、普段は普通の女の子と変わらないそんな彼女は、屋敷の中では、「余」などと言う言葉は使わず普通に話していた、だがそれがこの日以降変わっていったのだ。
「なんで…スピカを……」
アル・スハイルは聞こうとした、こうなってしまった原因を、アル・カストルが大大星スピカをどうやって破壊したのかなどはどうでも良かったのだ。
何故それをしたのか、それだけを聞きたかったのだ。
「そうか…お母さんと……
出会えたのか」
アル・カストルが静かに言った、だが聞いたことと違うことを言ってきた。
「え……」
アル・スハイルは思わず驚いた、その言葉はアルナイルが、アル・スハイルとアル・ムーリフの母だと言うことにしか聞こえなかった。
「女王は今
なんと名乗られているのか
教えてくれないか?」
アル・カストルが聞いた。
「アル…ナイル……‼︎‼︎」
アル・スハイルは気付いたがアル・カストルが言った。
「アルナイルか
あの人も相変わらず人が悪いな
わたしの名はカストル……
ただのカストルなのだよ
アルと言う名はあの人が
くれた名で
私の本当の名ではないのだよ」
アル・スハイルは冷静に話を聞こうとしていた。
「スハイル
わたしは……
わたしが愛した
あの人の子のお前たちを
預かっていたんだ」
「な…なにを…何を言ってるの……」
流石のアル・スハイルも戸惑うしか無かった、いつもの様に最初から気丈に振る舞っていれば、戸惑いを隠せていたかも知れない、以前に思ったカストルが、大大星スピカの星を破壊してから戦いの運命づけられていたと言う怒りは、カストルを前にして消え去っている。
その上に父では無いと言われたのだ。
流石にアル・スハイルも精神的にまいりそうになっていた。
それはアル・スハイルとアル・ムーリフが、星海人では無く、星そのものだと言っているのだ。
「だからどうしたの?」
そこにステラが来て言った。
「アル・ムーリフ……」
アル・スハイルがステラを見て静かに言った、ステラも今は過去のアル・ムーリフの姿をしていて、アル・スハイルは救われる様な思いがしていた。
今のアル・スハイルにとって、唯一の信じられる存在であるアル・ムーリフ、ステラが言った。
「お父さんはお父さんよ
それが本当でも
私達を大切に育ててくれたじゃない
だからお姉ちゃん……
私達のお父さんが
カストルパパなのは変わらないよ」
その言葉を聞いてカストルは、アル・ムーリフも優しく成長してくれているのを知り微笑んでくれていた。
「わたしは幸せ者だな……」
カストルが言った。
「父上……
本当にアルナイルが我らの……
母上なのか?」
アル・スハイルは気丈に振る舞い聞いた、ステラが来てくれ、アル・ムーリフにアル・スハイルは支えられていた。
「アルナイルは
女王の隠し名
豊穣から生まれる輝き
だが女王は
分けるのがお好きなのだよ
幸せも豊かさも
名も分けられ
アル・ナイルと呼ぶのだよ
覚えておきなさい」
カストルは時間が無いのを知っているのか、秘密を先に教えてくれているようだった。
「そしてその名を継ぐが……
分けずに使った星もいる」
カストルがそう言い、書斎の窓の向こうで、この世界の二人の姉妹を守ろうとして横切る黄金の輝きを見た。
「アルタイル……」
アル・スハイルが呟き、カストルは窓の外を見ずに言う、アルタイルが二人を守ってくれるのを知っているように。
「そう……
アルタイルの星も
二人と同じ
女王から生まれた星……
だが女王を継ぐ気は無く
飛翔する鷲の様に
自由を愛している」
「だから今まで……」
ステラが呟いた。
「我らを……」
アル・スハイルが呟いた。
アルタイルからそれを知っている様子は一度も見た事が無い、だがこの日以降は二人に星の使い方も戦い方も教えてくれた、二人が戦い方を覚えても一時期はアトリアロフに家まで買い近くにいてくれた。
アル・スハイルが殺戮を繰り返した時も、過ちを教えようとしてくれていた、アル・スハイルが話を聞こうとしなくなり、力づくでも止めようとしてくれた。
それが宿命のように、二人のそばに必ずいてくれていたのだ。
「全ては女王が
スハイルと
ムーリフを心配してくれ
アルタイルが二人を守れるように
導いてくれている
二人ともアルタイルさんに
迷惑をかけない様にしなさい」
カストルが笑顔で言い、アル・スハイルは顔がひきつり、ステラは汗をかくしかなかった。
アル・スハイルは、この世界のアル・スハイルにそれを言うべきだと心から感じた、それは今言われても、今更としか言いようが無く、今の自分は既に迷惑の域を超え、散々に迷惑しか掛けていない気しがしていた。
「もう遅いのかな?」
二人の様子を見てカストルが微笑んで言った。
「遅いって言うか
遅すぎるよっ‼︎‼︎‼︎」
アル・スハイルが言おうとした前に、ステラが叫ぶ様に言った。
それはアル・スハイルが暴走した時期、散々悩んだのはアル・ムーリフとアルタイルだからなのは言うまでも無い。
「この後のお姉ちゃんが
何をしたか知ってるっ⁉︎⁉︎
知らないよねっ!
ほんとうに大変だったんだからねっ‼︎‼︎」
ステラが本気で訴えるのは当然であるが、アル・スハイルは知らない方がいいと思っていた。
「すっ!…すまない……」
普段怒るはずの無いアル・ムーリフが怒ったのに、カストルは驚いてそう言ったが、何かに気づいた。
それだけなのっ⁉︎と言う勢いでカストルを引っ叩こうとしているステラを、落ち着いて止めているアル・スハイルと一緒に二人を優しく抱きしめた。
「そろそろ時間のようだね」
カストルが静かに言った。
二人は忘れてしまっていた、この日にカストルの命が尽きることを、カストルの言葉を聞いてハッとする様に思い出すと涙が溢れてしまった。
カストルは悲しい時間を僅かいっときだが忘れさせてくれていたのだ、それは悲しむことは何一つ無いと伝えるように……。
「わたしが居なくても
二人ともちゃんと成長してくれたね
わたしはそれだけで
十分過ぎるほど幸せなんだよ」
カストルは静かに満たされたように言った。
「ちちうえ……」
アル・スハイルが静かに言った。
「お母さんは
二人のことを忘れているだろう
大大星の剣に二人の思い出を全て注ぎ
大星ベガに預けているから」
カストルは新しく生まれたアル・スハイルの疑問に応えてくれていた。
「でも悲しまないで大丈夫
その剣を持てば全てを思い出す
二人が来たと言うことは
その時が……
近づいていると言うことだから」
カストルは静かに大切なことを教えてくれた。
アル・スハイルは聞きたかった、今まで聞いた話しで、真実が一つ違うのだと気づいていた、そしてその答えも気付いていた。
たとえ本当の父じゃ無くても関係なかった、アル・スハイルとアル・ムーリフにとっては大切な父親であり、溢れんばかりに遠過ぎる過去の時に戻れた気がしていた。
(全ては夢……
だが夢と思わぬことじゃ)
まさに夢の様なひと時である、二人はこの日以降は戦いの日々であった。
領主としての街を復興させ維持していく戦い。
星の生き物から街を守り、討伐などでサーベルを振り続けた日々。
本当はふつうに育ち、ふつうに遊びたかったはずの二人の少女はこの日に全てが変わってしまったのだ。
二人がそのひとときを噛み締めていた時、窓の外に、白い光が一閃の様に走った。
そして一人の女性がアルタイルに襲い掛かった。
「父上……
余は行かねばならぬ」
アル・スハイルは気付いていた、この時のアルタイルではその女性に太刀打ち出来ないことを、そしてテラスへのガラスの扉を開けてアルタイルを襲った者を見ている。
「妾も行かなくてはな……」
ステラがアル・ムーリフとして言い、アル・スハイルの隣に行った。
「アル・スハイル
アル・ムーリフ……」
カストルがその場で静かに言った。
「二人とも
私の自慢の娘だ……
行きなさい
そして必ず
生き残りなさい」
「必ず……」
アル・スハイルとアル・ムーリフは、カストルを見ずに静かに言い、それぞれのサーベルを抜き、テラスから飛び出しアルタイルを助けに向かった。
アル・スハイルもアル・ムーリフも、カストルがこの日に命を落とすことを知っていた、カストルもそれを知り、帰って来なさいとは言わなかったのを二人は解っていた。
二人は「必ず」としか言えなかった。
アル・カストルを救ってはならないのも知っていた。
だが戦うしか無い何故ならばシーリスがこの世界のアルタイルを襲ったからだ。
そのそばには、この世界の瀕死に陥っているアル・スハイルと、それを助けようとしているアル・ムーリフがいるのだ。
「ステラッ!
いつもの様に頼めるか?」
アル・スハイルが飛びながら言った。
「えぇっ
任せて…って星の力がいまは……」
ステラは紫の誓いの星が今は居ないことと、アル・スハイルも同じ様に赤い誓いの星がいないことに気付いて言った。
「夢であろう……
ならば強く思い描くが良いっ!」
アル・スハイルは微笑みながら言った。
「なんだこいつ
わたしの攻撃を……」
アルタイルはシーリスに先を読まれ過ぎている、そんな気がして呟いた、空を見てもベガはメビウスの文明が誇る、機械兵が無数に襲いかかり助けに来れないでいた。
「アルタイル
無茶しやがって……」
ベガはアルタイルの状況を把握し、時折だがやっとの想いで銀色の羽を飛ばし散発的にだがアルタイルを援護していた。
(このままじゃ
あの子は助からない……
どうすれば……)
アルタイルは、重傷を負っているこの時のアル・スハイルを気にしていた。
シーリスの気を引きつけ、攻撃を躱し反撃をするが、近接攻撃も全て躱されてしまい、シーリスの放つ白い光線を弾いた時、その内の一発が二人の背後にある高い建物に向かってしまった。
「しまったっ‼︎‼︎」
アルタイルは焦り二人を助けようとした、シーリスの光線は建物を破壊し、二人の真上から瓦礫が降り注ぐように崩れ始めた。
アルタイルは翼をはためかせ二人を庇おうとしたが、シーリスに真横から蹴り飛ばされてしまったが、遠くからキラキラと何かが光り、十本のサーベルが飛ばされて来て次々と瓦礫を砕いていった。
「まさか自分を守る羽目になるとはな
情け無い……」
アル・スハイルが言った時、砕けなかった破片が急に向きを変え、シーリス目掛けて凄まじい勢いで飛ばされた。
「久しぶりね
この力を使うの……」
ステラが瓦礫の破片を操る、強く強く自分自身の最盛期を思い描き言った。
二人はその能力が特別な物と知っていた、他の星海人には無い、物を操る力、だがその力がなんなのかやっと気付いた。
大大星スピカの分ける力の一つ、物体を操り贈り物を優しく送る力なのだと、スピカの子と知りやっとその正体を知った。
だがアル・スハイルもアル・ムーリフも、その力を戦いでしか使った事がなかった、スピカのように優しく使うこと無く、戦いの中で全く違う力に成長していた。
その力を使いステラが言った。
「シーリス…貴方には……
これで十分よっ!
その身を持って受けなさいっ!‼︎」
シーリスはその全ての破片を躱したが、更に多くの破片がシーリスを襲い、アル・スハイルが操るサーベルも同時に襲い始めた。
(なにこの攻撃
星を持つ者じゃない
私と同じ星そのもの……
でも……
こんな力をわたしは知らないっ!
なんて星なのっ‼︎‼︎)
シーリスはアル・スハイルとアル・ムーリフを見た時、赤い誓いの星と紫の誓いの星が星海で強く輝きだした。
辺りは建物の瓦礫で砂塵が舞い、鷲の目を持つアルタイルでも視界が利かなくなっていたのだ、だが声が響いた。
「アルタイルッ‼︎‼︎
あの赤と紫の星に
二人を連れて行けいっ‼︎‼︎」
アル・スハイルの言ったその言葉を聞き、アルタイルは二つの誓いの星を見た。
そしてすぐにこの世界のアル・スハイルとアル・ムーリフの方に走った。
(あの星が
二人を見染めている……
まだ助かるっ‼︎‼︎)
アルタイルは急いで大鷲になり二人を背中に乗せ飛び立った。
「逃がさないっ!
黄金の鷲…スピカの子‼︎‼︎」
シーリスが殺気を放ち弓を出してアルタイルを射落とそうとしたが、そこにアル・スハイルが斬りかかった。
「どこを見ておるのじゃ?」
アル・スハイルが静かな殺気を放ち言った時、赤い誓いの星がアル・スハイルの背後に現れた。
「赤の星……」
シーリスが赤い誓いの星を見て驚いた様な顔をした。
「うぬは
この星に嫌われておる様だな?」
アル・スハイルは小さな笑みをこぼして言った、それはシーリスに虐められていた赤い誓いの星が、シーリスに挑んだアル・スハイルに勇気を持って手を差し伸べたことに思わず笑みが漏れたのだ。
「赤よっ力を貸せいっ!
今一度シーリスをっ
叩きのめしてくれるっ‼︎‼︎」
アル・スハイルは叫び、赤い誓いの星は引っ張られた気がし力強く輝き、赤い光線を放ちシーリスを襲った。
シーリスは白い光線を放ち、全てを受け止めるがアル・スハイルは凄まじい勢いでサーベルを振り、シーリスの頬をかすめた。
赤い誓いの星は、まるでアル・スハイルが自分の事を全て知ってくれている様なそんな気持ちになる、そしてすぐにアル・スハイルが本当は重傷だと気付いてすぐに体を癒やし始めた。
(こんな身体なのに
私のことを思ってくれてる……
この人は…いったい誰なの……)
赤い誓いの星はそう思い、強く強くアル・スハイルに引き寄せられていくのを感じていた。
(この敵…どこかで……)
シーリスはどこかでアル・スハイルを見た様な気がした、この世界のシーリスはアル・スハイルとまだ戦ってはいない、だがどこかで見た気がしていた。
(……さっきの二人っ‼︎‼︎)
シーリスは気付いた、ついさっきまで近くにいた、重症の少女の面影を強く残している事に気付いたのだ。
「メビウスの者どもっ!
なにをしているっ‼︎‼︎
アルタイルを追いなさいっ‼︎
金色の鷲を撃ち落としなさいっ‼︎‼︎」
シーリスは叫んだ、このアル・スハイルがあの少女の未来の姿だと気付き、逃して仕舞えば強敵になると確信して叫んだ。
シーリスの叫びが届いたのか、メビウスの者達は一斉にアルタイルを追い始めたが、ベガがそれを最初に遮った。
「お前らの相手は俺だってこと
忘れんじゃねぇっ‼︎‼︎」
ベガが叫びメビウスの艦隊に激しく襲いかかる、その姿をステラはガイアはこの頃から乱闘が好きなのかと言う眼差しと、守りたい人を全力で守ろうとするベガの態度に、僅かなやきもちを妬いて見ていたが、手を差し伸べ敵の機械兵を操り同士討ちさせ始めた。
アトリアロフの真上にいるメビウスの者達は混乱し始め、シーリスはこのままではカストルさえも倒せないかも知れないと思い始めた。
襲い掛かって来るアル・スハイルのサーベルを躱し、後頭部に素早く蹴りを入れ、体勢を崩しながら振り返ろうとするアル・スハイルに至近距離から矢を放った。
(やはり
強いっ!だがっ‼︎‼︎)
アル・スハイルは心で叫び急所を外して躱すが、右肩を射抜かれながらも、サーベルを振りシーリスの前髪を斬るが頭部に届かず、シーリスはアル・スハイルを蹴り飛ばし、アル家に向かった。
だがすぐにステラがサーベルで斬りつけて来た。
シーリスはそれを躱したが、背後から声が聞こえた。
「もう一人いたのを忘れていたのか?」
アル・スハイルがシーリスに聞くように言い素早く、斬りかかった。
シーリスは弓で受け止め、ステラを蹴り飛ばしアル・スハイルとステラにグランドファングを至近距離から放った、アル・スハイルはそれを斬り裂くことが出来たが、ステラは体勢を立て直した直後でどうする事も出来なかった。
(しまっ……)
アル・スハイルは声を失ったが、直ぐに冷静になりシーリスに斬りかかろうとした。
シーリスはアル・スハイルの一瞬の動作を見て回避出来る未来を見ようとしたが何故か見れず、アル・スハイルが動揺を直ぐに振り切ったのを不自然に思い、アル・ムーリフの姿をしたステラを見た時、一瞬で時が止まった。
(間に合いました……)
赤い誓いの星がアル・スハイルに言った。
そこには紫の誓いの星がステラの背後で輝き、シーリスの放ったグランドファングを、消し飛ばした。
赤い誓いの星が紫の誓いの星を呼んでいたのだ。
(わたしの力を……
あなたは私と相性がいいのですね)
この世界の紫の誓いの星が、ステラの精神力を使い時を止めたが、ただ止めるのではなく意思だけを残し物体だけを止めたのだが、それが何も抵抗なく、スッと止めることが出来たのを僅かに驚きステラに言った。
「えぇ……
長い付き合いですから」
ステラが小さな笑みを見せて言い、紫の誓いの星も小さく笑い、シーリスに言った。
「姉上……
わたくしと赤い誓いの星を
相手になさりますか?」
「紫の星……
まだ母上と争うと言うのですか?
いい加減になされては?」
シーリスが言った、義理ではあるがシーリスの方が姉であるにも関わらず、その言い方から気を遣っている様に聞こえた。
「ふんっ……
あなたに何がわかると言うのですか?
私と赤い星の苦しさを……」
シーリスはそれに関しては何も思わないようであった。
紫の誓いの星はシーリスが養女であり、血縁も無ければ気が合う事も無かった、その為に何も感じないと解っていた。
ただ紫の誓いの星は大大星メビウスの血を引く長女として、誇り高く振る舞っている。
そしてシーリスが退く気がない事を知り、冷たく言った。
「過去と現在を敵にして
勝てるとでも思っているのですか?
貴女の持つ未来の力
その源は
今と言う時が繰り返され
それが繋がり導かれ輝く力……
あなたもご存知でしょう
あなたの持つ未来の力を
今この場で断ち切ることさえ……
わたくしには容易いことを
忘れてはいませんよね?」
現在の全てを支配するような口振りで紫の誓いの星は言った、シーリスはまだ力で劣るのか、悔しそうな顔をしている。
アル・スハイルからすればこの場で倒しておきたいが、紫の誓いの星はまだステラを選んでいない、そして赤い誓いの星もそうであり、そんな中でこの話を壊しシーリスを倒そうとすれば、この二人がこの世界のアル・スハイルとアル・ムーリフを見染めてくれるか解らない、だが何よりも紫の星が時を止めている為に手を出せずにいた。
(赤っ‼︎
力を貸してくれぬかっ
シーリスを……
倒したくないのかっ‼︎)
アル・スハイルはそう赤に訴えた、時の力に抗えるのは同じ時の力を持つ、誓いの星しか無いからだ。
(わたしとシーリスのことを……
なんで知ってるの?
私を赤って…名前なの?
でも…紫のお姉様が……)
赤はアル・スハイルの言葉からとてつもない信頼と怒りを感じたが、それに対してこれ以上の力を貸そうとはしなかった。
それは紫の誓いの星が、間に立っているからだとアル・スハイルは気付いた。
(そう…か……実の姉を……)
アル・スハイルはそれ以上言おうとはしなかった、姉を信じる赤の姿とアル・ムーリフの姿を重ね小さ溜息をついた。
ステラも紫の誓いの星の好きにさせていた、それは紫の誓いの星がアル・スハイルのように気が強く、指図されるのが嫌いだからだ、ステラもシーリスを倒せればと考えていたが、それは我慢して紫の誓いの星に任せている。
シーリスは紫の誓いの星と戦おうとせずにステラの背後、アル家の方に目線を送って小さく笑い静かに言った。
「わかりました……
わたしは母上に可愛い妹達が
元気で変わりないことを伝えておきます
ただ……」
シーリスはそう言い、退く態度を見せて言った。
「この先も
お母様の邪魔をなされると言うなら
何時もわたくしが引き下がるなど
思わないでください……」
シーリスがそう言うと同時に時が流れ出し、メビウスの者達を率いてシーリスは去って行った。
「好きにしなさい……
私が今のあなたを認めるなど……
あり得ないのですから」
紫の誓いの星はそう言い、アル・スハイルの背後で輝く赤い誓いの星を見てから優しく微笑む。
ステラもアル・スハイルも、紫の誓いの星が妹の赤い誓いの星を大切にしているのを容易に見てとれた。
アル・スハイルはサーベルを鞘に収め、アル家の屋敷を見ていた。
その先にはアル家の屋敷が炎に包まれていた。
「いいのですか?
まだ助けられますが……」
紫の誓いの星がアル・スハイルの後ろで言った。
「え…でも……」
ステラが助けを求めようとしたが躊躇っている。
それはアル・カストルがここで死ぬはずであり、あの屋敷の中では既に手遅れかと思えていた。
「赤の星の力なら
時を戻せます……
赤の星……」
紫の誓いの星は赤い誓いの星を呼んだが、アル・スハイルが言った。
「構わぬ……
二度も苦しめたくは無い……」
アル・スハイルは時を戻し、アル・カストルを救ったとしても、再び死を選ぶことしか考えられなかった。
「……」
ステラは静かにアル・スハイルの横に行き、焼け落ちていく屋敷を見ていた。
アル・スハイルは言った。
「赤と紫よ
余と妹を頼む……
まだ何も知らない
私と…妹を…お願いします……」
アル・スハイルの口調が変わったことに気付いたステラがアル・スハイルを見ると、アル・スハイルが沢山の涙を流していた、今まで見せた事がない程の涙を流し、冷静を装っているが本当は泣き崩れたい程の悲しみが伝わって来ていた。
(この者は…いったい……)
紫の誓いの星は父親が死を迎えようとしているにも関わらず、それを受け入れその悲しみに負けずに立っているアル・スハイルを見て興味を持った。
今のアル・スハイルの後ろ姿からは、先程シーリスと対峙していた覇気は全く感じられない、普通の少女の様な悲しみと苦しみをを伝えているが、アル・スハイルは耐えていた。
紫の誓いの星はその訳を知りたくなり、一度全ての時を止めた、その力は強大なものでシーリスはそれを知っていたので退いたのだ。
紫の誓いの星はアル家の屋敷を見に行き、倒れているアル・カストルを見つけた。
(気を失っているが
まだ息はある……)
紫の誓いの星はアル・カストルがまだダークマターを、呼吸していることに気付いた。
(記憶を見れない……
この私の力で見れないって……)
紫の誓いの星はアル・カストルの魂が、何か強い別人の意思で守られているに気付いた。
(うん?この部屋には……
三人の呼吸がまだ残っている)
紫の誓いの星はアル・スハイルとアル・ムーリフの呼吸で出た、ダークマターを探りそれらを全て変換し始めた。
三人がこの部屋でした会話へと変換し始め、それを全て聞いて紫の誓いの星は優しく微笑んで言った。
「面白い話
知らないふりをするのも
苦労しそうですね」
そして時が動き出し、紫の誓いの星はステラの元に戻って言った。
「赤い星よ
その者の頼みを
聞きに行くとしよう
赤い星はスハイルを見よ
それがその者を救う
妾はムーリフを見る
相性が良いのでな」
紫の誓いの星が言った言葉にアル・スハイルとステラは驚いていた、まるで二人のことを知っている様に話したのだ。
「……」
アル・スハイルは涙が自然と止まった、その感覚はステラにも伝わり自然と悲しみが薄れていった。
「なんで…知っているの?」
ステラが聞いた。
「さぁな……
そなた達が来た世界では
妾はこう話しておるのだな
気に入ったぞ……」
紫の誓いの星が楽しそうにそう言った時、アル・スハイルが言った。
「あぁ……
余の妹をもっと知りたければ
はやく行くが良い」
その言葉を聞いた紫の誓いの星は、アル・スハイルの勘の鋭さに気付き、何も言わずに去ろうとしたが、振り返り楽しそうに言った。
「いつの日か妾から贈り物を
あの二人に届けよう
何も心配せずに帰るが良い……」
そう言い去っていった、この世界のまだ何も知らない姉妹のために。
「この世界の二人に?
私達の方には何も無いのかしら?」
ステラがそう言ったが、アル・スハイルは小さく笑っていた。
「あるかも知れぬな……」
アル・スハイルはそう呟き、焼け落ちていくアル家の屋敷を微笑んで見ていた。
「本当に可愛いんだから
教えたくなるじゃない……」
紫の誓いの星が自らの星に帰る途中で呟いた。
「お姉様……
また何かを隠されたのですか?」
赤い誓いの星が聞いたが、紫の誓いの星は微笑んで言った。
「ひ・み・つ……」
この日から多くが変わった、アル・スハイルとアル・ムーリフの暮らしも、その二人を選んだ二つの誓いの星も、また違う未来へとこの世界のそれぞれの姉妹が歩んだとしても、ステラは何も心配しては居なかった、結果肝心なことをアル・スハイルは父アル・カストルから聞けなかったが、それは直接本人からまた未来で聞けると思えていた。




