第一章 第3話 贈り物
「ガイアご飯できたよーっ‼︎」
ステラが元気にガイアを起こしに部屋に入って行く、ガイアは部屋に居なかったが、そのまま窓から外を見ると、精悍に剣を振っていたが、ステラからしたら安物の剣が不釣り合いに見えて仕方なかった。
「ガイアさん
ご飯出来ましたよ」
アルナイルはガイアが外に居るのを知っていたのか、呼びに行きガイアは手を振って応えている、ステラにも気付いて手を振ってくれステラは微笑んで、食堂に向かった。
「ガイアって剣の腕もいいよね?」
ステラが食事をしながら聞いた。
「あぁ
わざわざ剣を折らなくても
いい奴もいるし……
なんでだ?」
ガイアが聞いた。
「ううん
ちょっと聞いて見たかったの」
ステラが考えながら言う。
その様子を見てアルナイルがニマッとして言った。
「ステラさん
後で鍛冶屋さんに二人で一緒に行きませんか?」
「えぇ
いいけど依頼は見に行かないの?」
ステラが聞いた。
「はいっ!今日くらいガイアさんだけで
出来るのをしてもらって
私達はお出かけしましょ」
アルナイルが笑顔で言った。
「おぃ
いつも殆ど俺だけでやってないか?」
ガイアが言った。
「そうでしたね」
アルナイルはテヘッとした顔で言うと、ガイアは小さく笑って言ってくれた。
「いいぜ
たまには遊んできな」
「あ、ありがとう」
ステラはガイアなら怒るような気がしたが、アルナイルの態度でそう言ったガイアを、不思議に思った。
そして三人は食器を片付けて、街に出てガイアはギルドに行き、ステラとアルナイルは鍛冶屋に向かった。
「こんにちは」
アルナイルがそう言い入って行った。
「よう
嬢ちゃん達そろって
ガイアは?」
鍛冶屋の主人が言った。
「ガイアは一人でギルドに行ったの
アルナイルちゃんが
ここに用があるみたいなのよ」
ステラが話してくれた。
「おっ?
ようってのはなんだい?」
鍛冶屋の主人が言うと、アルナイルは二つの鉄塊をカバンから取り出すが、妙に軽そうだった。
「こっちはステラさんで
こっちはわたしで
ガイアに贈る剣を作って欲しいのです」
アルナイルが言った。
「これ……」
ステラがその鉄塊を見て呟いた。
鍛冶屋の主人がその鉄塊を持って驚いていた。
「こいつはぁ……
星鉄塊じゃねぇかっ!
しかも純度は極めて高いぞ……」
星鉄塊は鉄の塊だが、普通の鉄と違い純度が高ければ高い程強度が高く、そして軽いのだ……そして星鉄塊の最大の特徴は、持ち主を特定して武器を作れば、その個人専用になり、最大の力はその人でなければ解放出来ない剣になるのだ。
「ちょっと
そんな高価なもの……
わたしに……」
ステラが聞いた。
「いいのです
ステラさんはわたしに
優しくしてくれます
後から来たわたしのことも
ちゃんと考えてくれています
ガイアさんに
いい剣を贈りたいって
思ってるんですよね?
でもガイアさんの戦い方だとすぐに……
でも……
贈りたいですよね?」
アルナイルがステラに聞いた。
「うん……」
ステラが息をのんで真剣に頷いた。
「わたしも贈りたいです」
アルナイルが可愛い笑顔で言った。
「ありがとう……」
ステラが小さくお礼を言った。
「じゃっこの星鉄塊を
こうして抱きしめてあげて下さい」
アルナイルはそう言い、星鉄塊を一つ手に取り抱きしめた。
「こう?」
ステラも同じように星鉄塊を抱きしめる。
「はい……
そしたら魔力を高めて
大切な人を思って下さい
もちろんガイアさんのことですよ」
そうアルナイルは言い魔力を高めていき、ステラは恥ずかしそうに同じように魔力を高めて見ると、星鉄塊が輝き出した。
そして暫くしてアルナイルの星鉄塊が銀色に輝き、ステラの星鉄塊が紫に輝いた。
「もういいですね」
アルナイルが静かに言い二人は星鉄塊を置いた。
「お願いしますね」
アルナイルはほんのりと頬を赤く染めているが、それはステラも同じだった。
「あぁ解ったぜ
最高の剣を二人に造ってやるから
ガイアにプレゼントしてやりなっ!」
鍛冶屋の主人が二人を見てそう言ってくれたが、すぐに聞いてきた。
「今のは
星鉄塊の特別な何かなのか?」
アルナイルは微笑んで話始めた。
「はい
わたしが生まれた国に
昔から伝わる方法なんですが
気持ちを込めた星鉄塊で
武器を造って
女性が贈る風習があるのです
戦いから
無事に帰って来れますようにって
大切な願いから始まって
しだいに婚約とかにも
使われる様になりましたね」
それを聞いて鍛冶屋の主人は考えて言ってくれた。
「ありがとなっ!
いい商売になるかもしれねぇ話だな
星鉄塊の買取強化しないとなっ!
また教えてくれよっ‼︎」
「はいっ
頑張って下さいねっ」
アルナイルが元気に言った。
「じゃぁ
6日後に来てくれよ
それまでに造っておくからなっ‼︎」
鍛冶屋の主人が言ってくれた。
「6日後?
早すぎない??」
ステラが聞き返す、通常星鉄塊での武器作りは普通より時間がかかるのだ、そして他にも制作の依頼があるはずだが、6日でと言ってくれたのだ。
「他の依頼を
全部後回しにしてやるよっ
こんな気持ちのこもった星鉄塊を
後回しに出来っかよ
そんなことしたら
鍛冶屋の看板が泣いちまうってんだ
気にすんなよっ」
鍛冶屋の主人はそう笑顔で言ってくれた。
「ありがとうございますっ‼︎」
ステラとアルナイルは声を揃えてお礼を言って鍛冶屋を後にした、そして街のお店を回って、アルナイルはクレープをステラにも買って食べている。
そして食材を買ってから、セプテント家によりステラの仕事を受け取って、家に帰った。
「ステラさん大変ですね……
この前3日くらい依頼に来なかったのは
このお仕事をされてたんですか?」
アルナイルが自然に思ったことを聞いた。
「そうよ
これでも領主の一人娘だからね
やることあるのよ……
お兄ちゃんが帰って来てくれたら
ガイアが旅に出る時に……
ついていけるんだけどなぁ……」
ステラが自分の机に仕事を置いて、寂しそうに呟いている。
「だからガイアに……
家を用意したのですか?」
アルナイルが聞いた。
「そうよ……
旅についていけないから
フランシスに住んで欲しいの
旅に出ちゃっても
この街に帰って来て欲しいから……
そんな私が素敵な剣を贈れるなんて
思ってもいなかったの
本当にありがとう……」
ステラが静かに、自分の想いを打ち明けている。
それを聞いてアルナイルは自分の身軽さがあるのに、それを有利とは思えなくなってしまった。
(アル・ムーリフさん
そんなに不利なのに
わたしにあんなこと言ってくれたの?
この家にだって
わたしを誘ってくれて……
そんなのガイアが旅に出ちゃったら
全然勝負にならないじゃない……
そんなの……
わたしはダメだと思うっ‼︎)
アルナイルはそう思って静かに言った。
「出ちゃえばいいじゃないですか……」
「えっ?」
ステラはアルナイルを見た時、アルナイルの方が震えていた。
「そんなのおかしいと思います
おかしくなくても
絶対に後悔すると思います‼︎
生きるって
そう言う事かも知れませんが
そうじゃないかも
知れないじゃないですか
ねぇあなたは
どうして旅に出たの?
そう聞かれた時に
言えばいいじゃないですかっ!
大好きな人を追いかけて
旅に出たって!
愛する人を追いかけて
旅に出たって‼︎
言えばいいじゃないですかっ‼︎
それ以上の答えってあるんですかっ!」
アルナイルはハダルの妹として言っていた、ステラもアル・ムーリフも恋敵かも知れない、だがアル・ムーリフはそれも知っていて言ってくれていた。
(これは妾と
そちの勝負じゃ……
どうじゃ乗らぬか?)
そう確かに言ってくれていた、アル・ムーリフの意思と考えるより、ステラも知っていたら必ず同じことを言っただろう、それはステラがアル・ムーリフ自身であるからだ。
アルナイルは長く見れば勝機の薄い勝負でも誇り高く誘ってくれた相手に「はいそうですか」と言うようなそんな態度は取れなかった。
「でも
わたしは……」
ステラはセプテント家を考えているようだったが、アルナイルは構わず言った。
「わたしはステラさんと
仲良くしていたいんですっ‼︎
そんな形でステラさんが
諦めちゃったら……
何年先にあっても
話しづらいじゃないですか……」
「そっか……」
ステラはそれを聞いて、アルナイルを本当に優しい子なんだと感じていた。
「そうですよっ!
だから……
ねぇあなたは
どうして旅に出たの?
そう聞かれても
ハッキリ言っちゃえば
いいじゃないですかっ‼︎
だからだからっ‼︎
一緒についていきましょ」
アルナイルは精一杯の笑顔でステラに言った、ステラはそんなアルナイルを見て首を横に振るなんて出来なかった。
「うんっ!」
ステラは思い切ってそう返事をした、アルナイルが背中を強く押してくれているのを感じていた。
そして夕方になり、洗濯も取り込んで二人は夕食の支度を始める、夕食の支度の間二人はもし三人で旅に出るならと、色々話しながら支度をしていた。
「そうね……
やっぱり普通の幌馬車の方がいいわね」
ステラが言う。
「でも場所によっては
馬車じゃ通れない場所もありますよ……」
アルナイルが言う。
「やっぱり徒歩が一番なのかな……」
ステラが言う。
「うーん……」
アルナイルが考えている時、玄関からガイアの声がした。
「今帰ったぜ……って
何考えてんだお前ら……」
ガイアが聞いた。
「いやっ
三人で旅に出るとしたら
馬車がいいのか馬がいいのか
歩きなのかな?って」
ステラが言う。
「どっちでもいいんじゃねぇか?
馬車で通れない場所は
近くの村で馬車を売っちまって
そこを越えてから近くの村で
馬車を買えばいいからな……
馬だけ連れ回せれば
結構どうにでもなるぜ
あとは持ってく金しだいじゃないのか?」
ガイアは普通に教えてくれた。
「あれ?
普通について行ってもいいの?」
ステラが聞いた。
「勝手について来るなら
ついて来ればいいさ……
どうせ拒否ってもついて来るんだろ?」
ガイアは小さく笑いながら言った。
(ほらね?
ガイアならそう言うって
言ったでしょ?)
アルナイルが小声でステラに言う。
(そうね……)
ステラが小声でそう言った。
「とりあえず旅に出る準備は
少しずつするけど
暫く出る気はないから
安心しとけ」
ガイアが水を汲みながらそう言い、ステラとアルナイルは、えっ?と言う顔をした、二人ともそれは予想していなかったからだ。
「ありがとガイア
それじゃご飯にしましょ」
ステラはそう言い、テーブルに料理を並べていきアルナイルも手伝っている、ガイアは並んでいく料理を見てふと思った。
「これ二人で作ったのか?」
ガイアは聞いた、この数日この家で一緒に暮らしていたがステラの料理の腕は、その辺のコックよりいい気がしていた。
そしてアルナイルもそれなりである、アルナイルがそれなりな理由は、その年齢にもあるがハダルの好みも知っていたのだ。
「そうよ
わたしはセプテント家の令嬢なのよ
どこのお屋敷に行っても
王宮に行っても恥ずかしくない様に
毎日毎日レッスンレッスンだったのよ」
ステラが今までのことをサラリと言った。
「その料理を味わえるんだから
感謝しなさい」
ステラがそう言うが、ガイアは口にしてその美味さに更に思った。
「これ結構
高くついてないか?」
ガイアが聞く。
「今日は材料費
1250セルくらいかな……」
アルナイルが言う。
「そのくらいかしら」
ステラが言う。
「マジか
高いが安い……」
ガイアがそう言った、理由はレストランで6000セルは払いそうな味であった、因みに、アルナイルが良く食べるクレープは10セル程である。
「ガイアは
今日いくら稼いできたの?」
ステラが聞いた。
「5000セル」
ガイアが答えた。
「はいっお疲れ様です」
アルナイルがそう言ってくれた。
その日はそのまま夜が更けていき、ガイアは自分の寝室で真夜中に目が覚めた。
窓から庭を見ると、真っ赤な光を放つラインが入っている黒いコートを着ている女性が立って夜空を見上げていた。
腰まであるだろうか長い白い髪に、横の髪をツインテールにしているが、後ろの髪はそのまま背中に流している様な髪型をしているのが解る。
ガイアは異様な雰囲気を感じるが、昔から知っている気がした、味方では無く敵として……。
その女性がパチンっと指を鳴らして異変が起きた、ガイアは別の空間に飛ばされた気がした、今までの世界ではない、大地が無く美しい星々が瞬く世界だ。
「久しいのハダルよ……
余と戦ったのは
ついぞ500年前じゃな
覚えておるか?」
その女性が言った。
「誰だテメェ……
500年前ってなんの話だ……
あと俺はガイアだ
人違いだってんなら
どっか行きやがれっ‼︎‼︎」
ガイアが叫んだ。
「これはこれは
今はガイアと名乗っておるのか
まぁそんなことは良い……
そちのもとに余の妹がおる
返してくれぬか?
返してくれるならば
今の非礼
そして前世のことも全て許そう……
どうじゃ悪い話ではあるまい」
その女性は余裕を見せ、ガイアを小物扱いして話している、ガイアは気に食わなかった。
「テメェ
何様だよ……
ひとんちの庭に
勝手に入りやがって
うんで名乗らず妹を返せだぁ?
上等こいてんじゃねぇ‼︎‼︎」
ガイアが苛立ち始めた時、その女性が指を鳴らした、それと同時にガイアの安物の剣が二振り現れ腰につき背中にも二本背負っている、あのブルースライムと戦った時と同じ装備をしていた。
「余と遊ぶのも良かろう
余は……」
その女性がそう言い瞳を瞑った。
「誓いの一星
アル・スハイル
余を楽しませるが良い」
アル・スハイルがそう言い瞳を開けた時、紫の瞳孔の中心に赤い光を宿していた。
「ふざけるんじゃねぇっ!」
ガイアが叫び剣を抜いて斬りかかった。
「炎よ鉄を鍛えよっ‼︎‼︎」
ガイアがそう言い、凄まじい炎が剣に宿りアル・スハイルに右手の剣を振り下ろし、それをアル・スハイルは右手にサーベルをだし美しく受け流し、続くガイアの左手の剣の突きを躱して、ガイア頭を貫こうと突きを繰り出して来た。
その突きは見たことも無い速さで、ガイアは間髪で躱したが、連続で突きが放たれ、躱しきれずに右肩を貫かれてしまう。
「良いぞ良いぞ
よくぞこれだけ躱してくれた
さすが余にたてついただけはあるのぉ」
アル・スハイルはそのままそう言い、右肩をえぐろうとしたが、ガイアは左手に持つ剣でアル・スハイルのサーベルを叩き折ろうとしたが、折れずにガイアの剣が折れる。
「なっ……」
ガイアは思わず声を出した。
どう見ても細身のサーベルがガイアの普通の剣で折れなかったのだ、剣は横からの打撃や衝撃に弱い、それが大剣ならいざ知らず、細身の剣なら尚更である。
「そちのその様な剣が……
余の剣を折れるはずが無かろうっ‼︎‼︎」
アル・スハイルが勝ち誇った様に言った時、ガイアの折れた剣が輝き出した。
「うるせぇぇぇぇぇ‼︎」
ガイアが光の剣を使い、アル・スハイルを貫こうとしたが、アル・スハイルはサーベルを抜きガイアの剣を躱して距離を取った、そして手をガイアに向け、赤い光線を放ち、ガイアはそれを全て光の剣で弾いた、そして距離を詰め斬りかかった。
だがアル・スハイルは、ガイアの必殺の剣をそのサーベルで受け止めた。
「…………」
ガイアは言葉を失った。
斬り裂くため、貫くための剣がそれを果たすための、徒花の剣が受け止められたのだ。
「一つ教えてやろう……
余の剣は可愛い妹が
誓いと共に贈ってくれた剣……
そちの想いの乗らぬ剣なんぞに
折れるはずが無かろう?
この剣が生まれ
その後に幾億の星が生まれても
刃こぼれ一つなく
余と共に過ごして来た剣じゃ
数打ちの太刀が
魂をかけたところで……
どうにかなるものでは無いのじゃ
覚えておくがよい」
アル・スハイルがそう言い終えた時に、ガイアの徒花の剣が消えてしまった。
そしてアル・スハイルは冷たい笑みを浮かべ、そのままガイアを蹴り飛ばした、ガイアは大地も何も無い空間を飛ばされ続け、右手に持ってる剣を離してしまう、そしてアル・スハイルが目の前に現れ、ガイアの首を掴み捉えて言った。
「どうじゃ
余の妹を返す気になったか?」
アル・スハイルが優しい顔でそう聞いて来たが、ガイアは背中に背負ってる剣に手を伸ばし掴んで言った。
「わりぃな……
そいつから帰らねぇ……なら……
返さねぇ……」
ガイアはそう言って気を失ってしまう。
「ほう……
強情なのは変わらぬか
ならばこの夢の中で
永遠に彷徨うが良いっ‼︎‼︎」
アル・スハイルがそう言い、ガイアを投げ飛ばそうとした時、紫の光線がアル・スハイルを襲い、その光線は鮮やかに躱されてしまうが、その直後に凄まじい斬撃がアル・スハイルを襲った。
アル・スハイルはガイアを手放し、素早くその斬撃をサーベルで受け止める。
「アル・ムーリフッ‼︎‼︎」
アル・スハイルが叫び、アル・ムーリフがそこにいたが、持っていたサーベルはアル・スハイルが贈ったサーベルでは無かった、それはハダルが贈ったサーベルであった。
「姉上……
誇り高い姉上がなぜ
この様なことを……」
アル・ムーリフがそう言い、アル・スハイルを蹴り飛ばし、前世の姿でガイアを抱き上げる。
「解らぬのか?
そなたが帰らぬのなら
手段は選ばぬ……
余にそのようなことを
させないでくれぬか?」
アル・スハイルがそう、アル・ムーリフに言った。
(帰る訳にはいかない……
姉上がそう言うからには
私が帰ったらすぐにこの星を……
オルビスを消してしまうに決まってる
この綺麗な星を守るために
ハダルはここまで来たのよ
ハダルは何かを
この星でしたかったはず……)
「アル・ムーリフよ
なぜそちはこの星に拘るのだ?
かつて一度だけそなたは
この星を守っておる……
いったいこの星に何があるのじゃ……」
アル・スハイルが聞いて来た。
(私がこの星を……
そんな……わたしはこの星を知らない
ハダルと始めて来たのが最初のはず)
「知らぬなぁ……
妾の気まぐれだったのでは?
だが答えは変わらぬ
姉上……
妾の人としての生が終わるまで
待つくらい出来ぬのかえ?
妾と姉上にとって百年ほどなど
瞬きをする程度であろう?
100億年ほど生きておるのじゃ
一瞬ではないか?」
アル・ムーリフはそう話をはぐらかした、アル・ムーリフほどの星海人が覚えていない、それは記憶を操作出来るほどの何かがあるのかも知れない、強大な力を持つ、誓いの星のを持つ姉妹の記憶を操作出来る星の力は限られ過ぎているのだ。
そう考えている時、アル・スハイルが作ったと思われるその世界に一閃の光が走った。
「ふっ……
アルナイルか……
まぁ良い
だが待つ気はない
アル・ムーリフよ
余はサソリの尾を
落としてしまったのでな
よく考えるが良い」
アル・スハイルは、そう冷たい笑みを浮かべて言い、消えて行った。
そしてアル・スハイルが消えたのと同時に、二人はガイアの部屋に戻っていた。
ガイアはベッドで大量の汗をかいて眠っていた、ステラ・アル・ムーリフはそんなガイアを抱きしめて言った。
「ありがとう
ありがとうハダル……
わたしに決めさせてくれて
本当にありがとう
嬉しかったよハダル……」
アル・ムーリフはガイアとアル・スハイルの戦いを見ていたのだ、圧倒的にガイアは叩かれていた、それは仕方ないことである、星海人でもアル・スハイルと対等に戦えるのは、広すぎる星海でも数人しかいない、それを人の身でガイアは戦ったのだ。
だがその中で、ガイアは最後まで誰か解らない、その人の意思だと言ってくれていた。
(悪いが……
そいつから帰らねぇ……なら……
返さねぇ……)
そう言い、決してガイアから返すなど言わなかったのだ。
ステラ・アル・ムーリフは優しくガイアの汗を拭いてからアルナイルの部屋に行った。
「アルナイル妾じゃ
起きておろう
入るぞ……」
ステラ・アル・ムーリフはそう言い、アルナイルの部屋に入って行った。
アルナイルは起きていて、幾何学模様が羅列された魔法陣を生み出し、手を向けていた。
「さすがよのぉ……
光の星……いや輝きの一星の力……
さっそくしごとをしておるのぉ」
ステラ・アル・ムーリフがそう言うと、その魔法陣から光の線が現れガイアが寝ている方に、壁に穴を開けずに突き抜け、ガイアの頭に優しく当たり、魔法陣は消えていった。
「これで
アル・スハイルでも
ガイアさんの夢や意識に簡単に
干渉する事は出来ません……
本当にありがとうございます
あの状況で私が行っても
すんなりアル・スハイルに
帰ってもらうなんて出来ませんでした」
アルナイルがお礼を言う。
「よいよい
それとサルガス
サソリの尾が来るかも知れぬ……
気をつけなければの……」
ステラ・アル・ムーリフが言うと、アルナイルは少し考えながら言った。
「とりあえず
邸宅には星海人除けの結界を張りました
あと依頼も
なるべく三人で受けましょう
いざとなったら
私達でガイアさんを気絶させて
私達で戦いましょう」
アルナイルがそう言うと、ステラ・アル・ムーリフは笑って言った。
「そちも面白いことを言うのぉ
だがそれが一番良い手だのぉ……
記憶も甦らぬ
それでは大地の一星の力も
使いこなせぬからな……」
アルナイルはクスっと笑いながら言った。
「そのうちきっと
覚醒しますよ……
アル・スハイルにも噛み付ける
大地の一星の力が蘇ったら
私達は楽させてもらいましょ」
「そうじゃの……
それまで頼むぞアルナイル」
ステラ・アル・ムーリフがそう言った時、すぐにアルナイルは笑顔で言った。
「その先もですよ
ステラ・アル・ムーリフさん
宜しくお願いしますね」
アルナイルのその言葉を聞いてステラ・アル・ムーリフは微笑んでくれ、そのまま自分の部屋に戻って行った。
そしてベッドに入り呟いた。
「そうですね……
ガイアさん
アルナイルさん
ずっと宜しくお願いします……」
そう呟いてステラ・アル・ムーリフは眠りについた。
6日後……。
ガイアはあれから朝起きてから毎日、いつもと変わらずに庭で剣を振っていた、その顔は真剣で鋭利な刃物のような目つきをしている。
(あいつは何なんだよ
夢だったのかわかんねぇけど
あいつはどっかに居やがる
解ってるのは
今の俺じゃ勝てねぇ……)
ガイアは剣の腕を磨こうとしていた、その動きは激しく、限界を突き詰めるように激しく力強く凄まじい動きをしていた。
「わたしがお相手しても
良いですか?」
ステラがガイアに声をかけた。
「あん
お前剣に自信あるのか?」
ガイアが聞いた。
「あいかわらず
あなたは失礼ですね
これでも近衛兵を指揮する身なんです
剣くらい振れなくては
務まりませんよ」
ステラが言い、サーベルを抜いてガイアの前に立った。
(サーベル……)
ガイアはアル・スハイルが振っていた剣を思い出した。
「あぁいいぜ
泣いてもしらねぇからな」
ガイアが言いステラに剣を向けた。
ステラが剣に集中してガイアに斬りかかった、ステラが初めて見せたその凄まじい速さの剣は、あのアル・スハイルの剣に似ていた、アル・スハイルより格段と遅いが剣線は非常に似ていた。
ガイアは素早く躱したが、ステラの剣は正確にガイアを追尾してくる、ガイアがギリギリで躱したとき、ステラがクスッと微笑んでいた。
(あぁ……
お前は魔法だけじゃ
なかったんだな)
ガイアがそう思って剣を素早く逆手に持ち替え、ステラのサーベルを受け止めた。
「なんで持ち替えたのかしら
わたしの剣に
それじゃ追いつかないわよ」
ステラはそう言うが、ガイアはふっと笑いステラを蹴飛ばし、全ての力を使い、全身のバネを生かして振り抜いた。
「なっ‼︎」
ステラは声を出して驚いたが、ステラ自身の素早さと洞察力で後ろに飛んで紙一重で躱したが……。
ステラの胸元の服を切先が斬り裂いた。
そして服がはだけステラの美しいその胸が見えた。
「あっ……」
ガイアが小さな声をこぼした。
「えっ……」
ステラが気付いて小声をこぼし、慌てて胸を隠し顔を赤くしていた。
「やっぱり避けたな……」
ガイアは即、見なかったことにし、そう言いその場を去ろうとした。
だがステラはガイアの背後から肩を掴み、振り返ったガイアの頬を叩いた、高くいい音が響き渡り、ステラの声が響いた。
「あんたねっ‼︎
女の子に悲鳴をあげる時間もくれないの?
もう少しわたしを見なさいよっ‼︎
わたしに魅了が……
まったく無いみたいじゃないの‼︎‼︎」
ステラはそれが不満だったようだ。
「はぁ……
何言ってんだ?
うんだったら
固まらないで即やれよ!
俺は悪くねぇ‼︎‼︎
それにお前に文句はねぇよ‼︎」
ガイアが勢いよく言った。
「だったらもう少しくらい
見惚れなさいよっ‼︎
わたしに魅了無いから
すぐにすぐに行こうとしたんでしょっ‼︎
わたしの胸なんて見る価値無いって
思ってるんでしょっ‼︎‼︎」
ステラがそう叫ぶ。
「そんなことねぇよ!」
ガイアはその一言を叫んで勢いが弱くなってから言う。
「いや……
お前は料理も上手いし
いつも良くしてくれてるし
アルナイルとも
仲良くしてくれてるし
それに……」
ガイアが慣れないことを言ってるのか、恥ずかしそうにしていた。
「それに?」
ステラは意外な態度になったガイアに聞いた。
「なんつうか
かわいいし……
って何言わしてんだテメェ‼︎」
ガイアがそう言った時、ステラは嬉しくて両手を上げて喜んだが、胸が見えそうになりステラは今度こそ逃さず、言われた様に即っ素早く、凄まじいビンタをガイアにお見舞いした。
「二人とも
なにしてるのですか?」
アルナイルがそう声をかけるが、一部始終を見ていたのか冷静であった、ガイアは力尽きた様に倒れている。
「いえ
ちょっとね」
ステラはガイアに、かわいいと言わせ更に見せてビンタ出来たことに満足したのか、ご機嫌で邸宅に入っていった。
(絶対にいまの
見る前だったよね?
ハダルお兄ちゃんお疲れ様です……)
アルナイルはそう思いながら、ガイアに近づいて言った。
「ごはんだよー
出かけるんだから早くしてねー」
そしてその日の午後、ガイア達は鍛冶屋に行った。
「こんにちわー出来てますか?」
アルナイルが元気に言うが、ガイアはブスッとしている。
「おぅっ出来てるぜぇ!
ステラちゃんのやつはこいつだ」
そしてステラが鍛冶屋に依頼した剣を受け取ってガイアの前に差し出して言った。
「今朝はごめんね
でもあれはガイアが悪いんだからね」
(絶対俺は悪くねぇ……)
ガイアは思う。
(悪く無いと思うけど
悪いことにしとくのがお利口ね……)
アルナイルはそう思っていた。
「これ私からの贈り物だけど
受け取ってくれるかな?
星鉄塊はアルナイルから貰ったけど
気持ちは沢山込めたから……
もらってくれる?」
ステラがそうおしとやかに言った、ガイアに以前、剣を断られていたので不安もあったのだ。
「気持ち……」
(「一つ教えてやろう……
余の剣は可愛い妹が
誓いと共に贈ってくれた剣……
そちの想いの乗らぬ剣なんぞに
折れるはずが無かろう?
この剣が生まれ
その後に幾億の星が生まれても
刃こぼれ一つなく
余と共に過ごして来た剣じゃ
数打ちの太刀が
魂をかけたところで……
どうにかなるものでは無いのじゃ
覚えておくがよい」)
ガイアは呟き、アル・スハイルの言葉を思い出した、そしてその剣を、そのアル・スハイルの妹の生まれ変わりである、ステラの想いがこもった剣だと知らず握った。
ガイアが握った時に、吸い付くような感覚を覚えた、その紫の美しい刀身がまるでガイアの体の一部のような、そんな感覚であった。
(これが贈られた剣……
ステラの想いがこもった剣……)
ガイアがそう思っていたとき。
「ガイアさん?
これは私からの剣です
受け取って下さい」
アルナイルがそう言い、銀色の刀身を持つ同じ形の剣を差し出して来た。
「同じ形……」
ガイアが呟いた。
「あぁ
お嬢ちゃん達が喧嘩しないように
双剣にさせてもらったぜ
お前なら
喧嘩しない様に使えるだろ?」
鍛冶屋の主人は剣を鍛えてる間に、二人の想いを感じとっていたのだ、そして二人を喧嘩させたく無いと思い双剣として作ったのだ。
その言葉を聞いて、ステラもアルナイルもガイアを優しい瞳で見ていた。
「あぁ
喧嘩させねえよ
それとありがとな
大事に使わせてもらうが……
ビンタはいらねぇからなっ‼︎」
ガイアが言った。
「おっ!
目の保養でも出来たのか
羨ましいねぇ……」
鍛冶屋の主人はそう言うが、ガイアは言い返した。
「見てねぇよ!
目に写ってねぇよ‼︎
ぶっ叩かれて
空しか見てねぇよ‼︎‼︎」
ガイアがそう叫んでるが……。
「はいはいっ
そんな恥ずかしいこと叫ばないのっ」
ステラがそう言い、ガイアの背中を押して鍛冶屋から連れ出そうとしている。
「おじさんありがとうね
また宜しくねっ‼︎」
アルナイルがそう笑顔で言い、ガイアの手を引っ張っていく。
「ちょっと待てっ
言わせろっ
お前らの鬼畜さを
語らせろぉぉぉぉぉ‼︎‼︎‼︎‼︎」
ガイアの声がフランシスの街に響き渡り、ガイアは二人に連れ去られて行った。