第二章 第6話 メビウスの星
「これは…忘れもしない……」
サルガスはその光線を知っていた、それはアル・スハイルがアトリアロフの街から人々を避難させようとして、上手くいかずに多くの人々が犠牲になった戦いの敵、その魔導士達が使った魔法であった。
サルガスは鞭を出しその者達に向け一度だけ振った、その鞭は怪しい光を放ち一瞬で伸びその者達を横殴りに襲った。
外星を持つサルガスはどちらかと言えば、接近戦より近中距離を得意としていた。
その者達は激しく魔法の矢で反撃をするが、サルガスはそれを躱し鞭を振り続ける。
ある者の腕は吹き飛び、ある者の首は飛ばされサルガスが怒りを見せている。
サルガスはあの時、避難するアトリアロフの人々の中にいた、だが隣街まで逃げられ無いと言うことを察したアトリアロフの人々が街に引き返そうとした時、凄まじい火球がその人々を襲った、サルガスはその時を思い出し全力で鞭を振っていた。
美しい姿に変わったメビウスの星の上で、蠍の尾、その星が輝きメビウスの者達に復讐する様にサルガスは戦っていた。
「貴様らがっ‼︎‼︎‼︎」
サルガスの怒りは凄まじく、星海人としての力を怒りと共に膨らませ、残虐と言う言葉が相応しい程にその者達の命を奪い始めていた。
(憎みなさい……)
サルガスの頭に悍ましい声が聞こえた、それは他ならぬメビウスの星から聞こえて来ていた。
サルガスはより強く鞭を振り、敵を倒し続けるが必死になりサルガスに斬りかかってきた一人の魔導士を殴り素早く、鞭をで首を締め上げ始めた。
(そう…
憎みなさい……)
そのがさつく様な声が聞こえた時、鮮明な声がサルガスの頭に駆け巡った。
(憎むのはやめじゃっ!)
アル・スハイルの声が鮮明にサルガスの頭を駆け抜けて行った。
サルガスは素早く鞭を消し、その首を締め上げていた者を放し、殺さない程度に蹴り飛ばした。
(この役立たずがっ‼︎‼︎‼︎)
その時サルガスは再び声を聞いた、それは過去に言われたアル・スハイルの厳しい檄であった。
その時サルガスは背後から高速で向かって来る殺気を持たない何かに気付いた、それは殺気はないが危険なものだと感じ、素早くそれを躱した。
それは白く輝く矢であった。
「へぇ…躱せるんだ……」
「誰だ……」
サルガスがだいぶ距離のある所から矢を放った、白く輝くシーリスを見つけて言った。
「わたしはシーリス
アル・スハイルの子犬さんが
こんな所で何をしているのかな?」
シーリスが一瞬で距離を詰めそう言ったが、サルガスはそれに合わせて鞭を振り、シーリスは躱し距離を取った。
(アル・スハイル様が
あの声が無ければ俺は……)
サルガスは心で呟き、あの声が無ければシーリスの放った矢に射抜かれていたそう感じていた、そして気付いていた、アル・スハイルと同じ誓いの星の力をシーリスが放っている事を……。
「何をしていたのか
教えてくれないのですか?
教えてくれたら
逃がしてあげてもいいわ」
シーリスはそう言い白い誓いの星を出し見せつけ始めた。
サルガスはシーリスが敵であることを察していた、決して友好的では無く間違っても勝てないことを理解していた。
(帰れないかもな……
だがっ‼︎‼︎)
サルガスはそう決意し、蠍の尾、自らの星を出して輝かせた。
ガイアは朝早く起きて外を見るが、美しい青空でなく暗く強い雨が降っていた、それでも先を急ぐガイアは、同じベッドで寝ていたステラの額に優しくキスをしてベッドを出て出発の支度をし始めた。
「ガイア……」
ステラが小さく可愛らしい寝言を言い、まだスヤスヤと寝ている。
「なんだ…この感じ……」
ガイアは外を見てそう呟き僅かな不安を覚えた、何かに狙われている様な気がしたのだが、その得体の知れない何かを大地の力で探るが、それはあって当たり前なものなのだろうか、まるで自然に溶け込んでいる様に思え、それが何かは全く解らなかった。
ガイアはステラを見て小さく微笑んでから言った。
「ったく……
いい気なもんだな……」
ガイアはステラの頬を優しく指でツンツンと突っついてから呟いた。
「ありがとな
ついて来てくれて……」
ガイアはそう言うと部屋から出てエルナト達の部屋に向かった。
「どういたしまして」
ステラはガイアが部屋から出ると小さく微笑んで言った、ステラは起きていたが額だけじゃなく、唇にもキスして欲しくて寝たふりをしていたのだが、それでもガイアの言葉に満足していた。
ガイア達は宿を出てパグスの街を出発し、北にあるパラドックスの街を目指した。
「北に向かっている
リオネスに向かうのかしら……」
レチクル川からガイア達を追って来た者はそう呟くと、ガイア達の馬車が水飛沫をあげた水溜りがボコボコと泡立ち、雨を集め人の姿を表し始めた。
「それなら…もう少し待ってあげる……
ふふっ……」
その者は水色の綺麗な長い髪をし、メイド服を着ている者だった。
ステラは馬車の中で本を読んでいた、その本はアルタイルが調べていた星の武器に関することが記されていた。
そこに書かれている一字一字を見てステラは不思議に思っていた。
(これ…サラスお父様の字……
なんでこんな物を残してるの?
うちの神殿書庫に…それじゃ……
いつかわたしが読むって解ってたはず
まさか私に残してくれたの?)
ステラはサラスのことが解らなくなっていた、本当に父の様に多くをステラに残していたのかも知れない、そう思えるが最後の戦いとサラスが計画していた事の意味を知りたくなって来ていた。
だがそのサラスがいま、アル・スハイルの屋敷に居るなどステラは夢にも思っていなかった。
(本当に……
何を考えていたのよ……)
ステラはその本を読みそう思っていた。
(これではマズイ……
前からシーリスの矢……
背後からのメビウスの者どもの
攻撃を受け止めねば……)
一方星海ではサルガスがシーリスに襲われ窮地に立たされていた、自分の間合いよりも離れた場所から矢を放って来るシーリス、背後からは接近と共に魔法を放ち襲って来る者達を相手にしなければならなくなってしまっていた。
(うかつだった……
こいつらさえ相手にしなければ
逃げられたと言うものをっ‼︎‼︎‼︎)
サルガスは後悔していた、接近して来たメビウスの者を捕らえシーリスが放つ矢の盾にし、魔法を放って来た者に鞭を振り牽制し隙を伺っていたが一切の余裕は無かった。
(あいつは本気を出してなどいない
今のままでは万に一つの可能性も無い……)
サルガスは遊ぶ様に放つシーリスの矢を最大限に警戒していた、メビウスの者達が放つ火や氷の魔法は最悪受けても耐えられるが、シーリスの矢は耐えられないと確信していた。
シーリスが微笑みゆっくりと狙いを定めている、だが注意してみる事も出来ずにサルガスは次の矢こそ躱さねばならないと感じていた、冷たい殺気を感じサルガスはどうにもならないと思い、隙が出来ることを承知で星を輝かせ姿を消した瞬間、メビウスの魔導士達がシーリス目掛けて魔法を一斉に放った。
サルガスの星の力で幻をメビウスの者達に見せたのだ。
その間にサルガスは素早く遠くに離れようとしたが、シーリスは星を輝かせサルガスの放った幻を紫のロープに変換し、サルガスの足を捕らえてしまう。
「さっこれでおしまいね」
シーリスはそう言い矢を放ち、凄まじい高速の光の矢がサルガスを襲った。
だがその瞬間、サルガスは眩い金色の光を目にし紫のロープが断ち切られ、何かがシーリスの矢を弾いてくれた。
「アルタイル……」
サルガスはその庇ってくれた者を見て呟いた。
「アルデバランを先にして良かった……」
アルタイルはそう小さい声で言った、アルタイルは大星アルデバランを最初に味方にしようと考えていた、アルデバランは大志と力を重んじる星で、アル・スハイルが破壊を中心とした時には決して従わず、シリウスの攻撃ですら防ぎ隙あらば反撃していた強者であった。
アル・スハイルが星海の自由の為に戦うとなれば協力してくれるはずだと考え、メビウスの先にあるアルデバランを目指していたのだ。
「すまないアルタイル……」
サルガスは耐え続け、無理をしてでも逃げのびようとし疲弊しきっていた。
「あれがメビウスの星
これじゃまるで……」
アルタイルはサルガスと同じ様に、メビウスの星の早すぎる復興に驚いていた。
「まるで何かしら?
お母様の力を持ってすれば
滅びた文明を
最盛期の時に戻すなんて
簡単なことよ……
大大星を
甘く見ていたんじゃないのかしら?」
シーリスが静かに言った。
「サルガスッ!
急いでアル・スハイルに伝えてっ‼︎
あと星の魔物も
出来るだけ集めてっ‼︎」
アルタイルがサルガスに叫び、突き飛ばす様にサルガスを逃した。
サルガスもアルタイルの意図を察していた、メビウスの星は今でも力が増し続けている。
必要に応じてはメビウスの星の文明を再び滅ぼさなくてはならない、もはやいつ星間戦争が起きてもおかしくなかった。
そんな時にサルガスは憎しみに囚われそうになった事に気付き、アル・スハイルの元に急いで向かった。
(そう言うことか
だからアルナイルの光星に
閉じ込められてもメビウスの力は
増し続けているのか……)
アルタイルはメビウスの力の源を見てそう考え、シーリスを睨みつけた。
「悪いけど通してくれないかな?」
アルタイルは殺気を放ちシーリスに言った。
「そうね……
あなたはさっきの子犬とは違うわ
私もただじゃ済まないかもね」
シーリスは微笑んで言った。
「試してみるかい?」
アルタイルはそう言うと凄まじい金色の輝きを放ち姿を消した。
次の瞬間シーリスの腹部にアルタイルの超加速からの回し蹴りが炸裂し、シーリスをメビウスに叩き落とし、アルタイルはそのまま飛び去って行った。
(本当にかまってられない
あいつシリウスの気配もあったし
誓いの星の力も持ってた……
勝てるか解らないし今はもう
そんな時間なんてないっ‼︎‼︎)
アルタイルは心で叫び飛び去って行った。
その訳はメビウスの星の繁栄にあった、メビウスはアル・スハイルに滅ぼされようとも、かなり早く文明が現れ幾度となくアトリアロフを襲っていた、それを踏まえた時、今のメビウスの繁栄はかつてない程であり、それが星海から眺めた無数に輝く美しい街明かりが、次の攻勢が凄まじいことを簡単に予想していた。
(大星アルタイル
私の矢を弾いたあの剣……
あれは……)
シーリスは自らの星、誓いの力を込めた矢を弾かれた時、僅かにスピカの気配を感じて気になっていたが、メビウスの星の重力に巻き込まれ、星の力を使い身を守り白い流星になってそのまま降りて行った。
(それにしても
アル・スハイルもそうだけど
みんな気が短いのね……)
シーリスはアルタイルから受けた傷は既に癒えていた、アルタイルは現状での渾身の力を込めて放っていた、メビウスの時は余力を残し敗北したので、繰り返さない様に行動していた結果であった。
(さっきの子犬さんは
アル・スハイルの元に向かったわね
アルタイルさんは…アルデバラン……
まぁいいわ……
さて私達が送るカーニバルに
間に合うかしら?)
シーリスは成層圏を抜けメビウスの星に入り、空を飛び海に面した街を見て微笑んでいた、そこにはアル・カストルの命を奪った文明まで蘇り、星海を走る軍艦までもが数多く海に集まっていた。




