第二章 第5話 交渉の始まり
「あ~ぁ……
川から離れちゃうのか
でも人が多すぎるからダメね……」
レチクル川の中からガイア達を見てそう呟く者がいた。
「でも……
数日もすれば戦えるから
急ぎはしないよ……」
その者は再び静かに呟いた。
ガイア達はパグスの街に着いた。
「そう言えば
エリスとはこの街で出会ったよな」
ガイアはそう言うと、あの日に襲い掛かったステラとアルナイルのこぶ…いや降りかかった火の粉を思い出した。
ガイアはエリスを一度見てからエルナトを呼んで耳元で言った。
「エルナト
エリスのことは頼んだ
マジで頼んだ……」
エルナトはガイアが真剣に言っているので、過去に何があったのかが気になった。
ガイアは宿を見つけたがふと思い出した、その宿があの宿であった。
「この前の宿と同じ宿ね……」
ステラも覚えている様だった。
「おう…違う宿にしようぜ……」
ガイアは言ったがステラはガイアの手を引っ張って宿に入って行った。
ステラは少しくらい表情をしていたのにガイアは気付いていなかった。
部屋はガイアとステラは同じ部屋で、何故かその部屋はステラとアルナイルが過ごした部屋だった。
夕食を終えてから二人は部屋に戻り、何も話さずにいた、いや話せずにいたのだ余りにも偶然が過ぎていたせいだろうか、二人は静かにベッドに横になっていた。
「やっぱり
宿を変えた方が良かったんじゃねぇか?」
ガイアが静かに言った。
「いいの……
わたしが選んだんだから
この部屋でいいのよ」
ステラが言った、ステラはガイアが宿を変えるように言った時、部屋の番号を見てこの部屋だと気付いていたのだ。
「そっか……」
ガイアは呟いて言った。
前に旅した時、この部屋はとても騒がしかった、それはエリスのおかげとも言えるが、今は静寂だけが支配している。
そんな中でコンコンと部屋をノックする音が聞こえた。
「だれだよこんな時間に……」
ガイアがそう言い部屋のドアを開けたとき、ピンク色の髪をした少女がガイアに飛びついて来た、甘い優しい香りをガイアはその少女の髪から嗅いで気付いた。
「エリスッ!
何してんだよっ!」
ガイアが言いステラがベッドから起きて、二人を見た。
「ちょっと待てっ!
これは……」
ガイアが情けなく戸惑うが、ステラは殺気を放つことは無かった。
「ステラお姉ちゃん
ほんとに元気ないですね」
エリスが言った。
「エリス
なんのつもり?」
ステラがため息混じりに聞いた。
「ガイアお兄ちゃんを
貰いに来ましたっ!」
エリスは挑戦的に言った。
「はぁ?
お前なに言ってるんだよ」
(いいから黙ってて下さい)
エリスの声が頭に響いた、驚いたことにエリスは星の力をだいぶ使える様になっていた。
「ステラお姉ちゃんが
ガイアお兄ちゃんのこと
大好きなのは知っています
でも今のステラお姉ちゃんは
元気が無いんで
変わりにわたしが
ガイアお兄ちゃんの
面倒を見てあげるのです」
エリスはそう言いグイグイとガイアを連れ出そうとしている。
「なに言ってるんだ
おまえっ!」
ガイアが言いエリスの顔を見た時、エリスの瞳が一瞬淡いピンク色の様な光を放ち、ガイアはふわっとした気持ちになり、引き込まれそうになった、それを誘う様にエリスは胸を押し付けてくる。
それはエリスの不和と争いの星の力であり、そうした方が効果的なのを星が教えていたのだ。
「連れてっていいわよ……」
ステラが言ってまたベットに横になってしまう。
「えっ……」
エリスはステラの反応に意外性を感じ声をもらし、力を解いて子供の姿に戻ってしまう。
子供の浅知恵と言うのだろうか、ステラを怒らせて元気を無理にでも出させようとしたのだ。
その意図を察してガイアはエリスに言った。
「気を使ってくれてありがとな
でもよ……
普通に来てくれねぇかな?」
ガイアはそう言いながらエリスの頭をぽんぽんと優しく叩いてあげた。
「はぁい……
でもステラお姉ちゃん
こう言う時が一番元気だから……」
(それは元気じゃなくて
怒ってんだよ……)
エリスが言った言葉にガイアはそう思った。
エリスはシュンとして部屋に戻って行った。
「ガイア……
懐かしいね
たった3ヶ月くらい前だったのに
今ここには私と
ガイアしか居ないんだね……」
ステラが言った、ステラはエリスがあの姿で来てくれたことで、より一層あの時のドタバタを鮮明に思い出していた。
「あぁ……」
ガイアはそう言いステラはベッドから窓を見つめた。
「ガイアが気絶してる間にさ
その窓からアルタイルが来てくれて
お姉ちゃんが……
変わり始めたことを教えてくれたの
アルナイルがそこで
気絶したふりしてて……」
ステラはその時の様子を指差して教えてくれていた。
「アルタイルが
気絶したふりしてるのを教えてくれて
アルナイルがビクッてして
可愛かったな……」
僅か4ヶ月も経ってないことを、懐かしそうにステラが話している。
ガイアはステラの寂しさに気付いていた、ステラが静かに立ち窓をあけ、夜空で輝くアルナイルの光星を見つめていた。
(心配かけちゃってるなぁ……)
アルナイルは光星の中からでも、ステラが見ている事に気付いていた、メビウスは強制的に話し合うしか無いのに気付いたせいか、不毛な言い合いより、スピカの古い友人としての態度を取っている。
アルナイルもこのまま光星として、メビウスを閉じ込め続ければ、友人として諦めてくれるかな?とも考え始めていた。
それが永遠と言えるほどに長い年月であろうとも……。
「スピカさん
あの者達が気になるのでしたら
行けば良いではないですか
わたしが相手するのは
アル・スハイルとアル・ムーリフだけ
アル・ムーリフがステラとして
セプテントリオにいる間は
興味はないですよ
ただ星海に出て来たら
話は違いますけど……」
メビウスが紅茶を口にしながら言った。
「星海に出て来たら……」
アルナイルは不思議なことを言うと思った、それは人として生きてる間は手を出さないと言うことは、あと80年近くはアル・ムーリフを襲わないと言っているのだ。
「わたしのことを
疑ってるのですか?
わたしは正直過ぎると思うのですけど
そのおかげでサラスに
長い間騙されてたくらいですよ
あなたより正直なんですけど……」
メビウスは親しげに言う。
確かにアルナイルはメビウスを今まで騙して来た、大大星としていた時もメビウスにイタズラして来たのも覚えていて、更に自分が星を失っても死んでいないのはメビウスは気付いていた、だが姿を眩まし死んだ様に見せかけ時を待ち続けていたくらいで、そう言われれば多少悪い気がして来ていた。
そんな自分に光星になる前は怒りをあらわに向けて来たが、観念しているのか、隙を伺っているのか、以前の様に話しかけてくれている。
「でもダメですっ!
アル・スハイルを狙う時点で
ダメですっ!
アル・ムーリフだって
人として死んだ後に
星海人に転生して戻る時は
無防備そのものじゃないですか
そこを狙ってるんですよねっ⁉︎⁉︎」
アルナイルが言った。
その流れは少し考えれば解ることであったが、メビウスは普通に話し普通に友達に話す様にアルナイルにバラしている様であった。
「スピカ
よく考え下さい
我らが全てを支配し
我らの元に
全てが集っていた時……
この星海に
争いなど何一つとして
無かったではありませんか
それが…あなたとわたくし……
大大星同士までもが争うことを
あなたは望んでいるのですかっ‼︎」
メビウスはその想いを全てぶつける様にスピカ(アルナイル)に強く強く言っていた。
スピカは今の星海の状況になる事を考えて居なかった訳では無い、スピカの星がアル・カストルに消されてからハダルの星が生まれるまでの間、約75億年の間に完全に姿を眩ました時期があった。
スピカが表情を暗くしていた、それはメビウスにも解り、こうなるはずじゃ無かったと言うのをメビウスは察し静かに聞いた。
「何があったのですか?
あなたが姿を消したあの時期に……」
メビウスは星海全体を見ていた大大星の責任だろうか、それを知る必要があると考えたがアルナイルは言った。
「何もありませんよ」
アルナイルがそう言った後に、僅かに目線を逸らしたのをメビウスは見逃さなかった。
そして静かに光の球体を出して、ガイア達の様子を見ていた。
メビウスもスピカが大切にしている者を好んで襲う様なことはしない、例外としてアル・スハイルだけは許せないが、アル・ムーリフは考慮の余地を残していた。
メビウスの星の人々をアル・ムーリフはその優しさで、そこに人がいたと言う痕跡だけでも残そうとしていたのを知っていたからだ。
「わたしが
アル・ムーリフを許すとしても
教えてくれませんか?」
メビウスが静かにカードをきり始めた。
その言葉はメビウスが態度を変え、交渉しようとスピカに持ちかけていた。
メビウスがそう切り出した時、ようやくサルガスはメビウスの星につき驚愕していた。
「なんてことだ……」
サルガスはメビウスの星を見てそう言うしか無かった、メビウスとアル・スハイルの戦いが、激しさを増す事をそれを見てサルガス簡単に予想が出来た。
かつてアル・スハイルが手を下し撤退的に破壊した星が、この様に変わったことをサルガスは見た事が無かった。
メビウスの星は豊かな緑に包まれ、美しい海をたたえている、オルビス(セプテントリオ)とよく似ている星となっていたのだ。
そして星の裏側、夜になっている辺りからは街の明かりだろう、キラキラと光が見え文明があるのが手に取る様に解った。
「これは……
直ぐにアル・スハイル様に
知らせなくてはっ!」
サルガスは急いで帰ろうとした、メビウスの文明は幾度となくアトリアロフを襲っていた、今あるその文明がいつ星海に飛び立ちアトリアロフを目指すか解らない、サルガスは急いだ、サルガスもアトリアロフで生まれ育った一人であり、アトリアロフを守らねばならぬと思っていたのだ。
その場を急いで離れようとしたサルガスに向け、水色の光線が放たれ、サルガスはそれを躱し振り向いた。
そこにはサルガスも見た事がある魔導士達がいた。




