第二章 第3話 白い誓いの星
スピカ(アルナイル)とメビウスがそんな話しをしている間に、ガイア達は急いでクンガ村に向かっていた、だが二人の話は平行線をたどり、メビウスが話し合う席を離れるか離れないかの境界を、アルナイルの光星が押し留めている形になっていた。
「母上……
私が必ずお救い致します
妹からスピカの居場所を
聞き出しますので
いま少しお待ちください」
アルナイルの光星を近くで見つめ、赤紫の光を放つ者が現れ、しだいにピンク色に変わり姿を現し始めた。
そしてオルビスを見てから少し考え、アトリアロフに向かい飛んで行ってしまう。
「赤の誓いならば
簡単に喋ってくれるでしょう
問題はアル・スハイルですね……
でもあの者を血祭りにあげれば
赤の誓いも恐れ
アル・スハイルから離れ
私の方に帰って来てくれます
あの子は名に相応しくないほど
怖がりですから
後は私が一緒に
お母様へお詫びしてあげれば
きっとお母様も許してくれますわ」
その者は妹の赤い誓いの星を、可愛がっていた様に言うがその瞳は怪しい光を宿し、弱い所も知っていて連れ戻そうと考えてる様だった。
更にメビウスを心配している面もあるが、スピカの性格も知っている様で、スピカがメビウスを殺そうとしないのも知っている様であった。
(えっ……)
赤い誓いの星は、何か懐かしい恐ろしさを感じ、小さな声を出してから怯え始めた。
「赤よどうしたのじゃ……」
アル・スハイルが屋敷の庭で一人でワインを楽しみ、優雅に何かを考えていたが、赤を心配する様に心で聞いた。
(お…おねぇちゃんがくる……)
赤い誓いの星が怯えながら言い、アル・スハイルが聞いた。
「紫の…誓いの星が来るのか?」
アル・スハイルは、ステラの星がなぜ?と思いながら聞いた。
(違うのっ!
白い誓いの星が来るのっ!
シーリスお姉ちゃんは
シリウスの妹星だったけど
ずっと昔にお母様の養女になって
お母様から名前をもらって
誓いの星の力も貰ったんですっ‼︎‼︎)
アル・スハイルは赤の言葉で顔を顰めた、アル・スハイルはシリウスの星が連星であったことは知っていたが、アル・スハイルがシリウスを倒した時に、そのシーリスが助けに来なかったが、アル・スハイルを恨んでいてもおかしくないと思った。
(シリウスのか
残念だが……
性格が手に取る様に解る……)
アル・スハイルはそう思うがあえて聞いた。
「ほう…して……
何をしに来るのか解るか?」
アル・スハイルが聞いた。
(解りませんけど……)
赤が言いアル・スハイルは言った。
「どうせ余を殺そうなど
くだらぬ事を考えてるのだろう……」
アル・スハイルがシリウスの妹星と聞き、因縁のメビウス養女と考えて言うと、赤が姿を表して言った。
「ステラさんの所に逃げましょうっ‼︎‼︎」
「逃げる?
余がその様な事を……
するはずが無かろう」
アル・スハイルがそう言った時に声が聞こえた。
「そうよね
あのシリウスを下し
それどころかお母様に体を捧げた
メビウスの巫女を
いとも簡単に殺した貴女が……
逃げるはずはありませんわね」
淡いピンクの輝きを纏った女性が、静かにその庭に舞い降りてきた。
「そちがシーリスか?」
アル・スハイルは(いつの間に……)そう思うが静かに聞いた。
アル・スハイルでさえ気配も何も感じなかったのだ。
「そうよ……
アル・スハイル
わたしのダメな妹が」
シーリスがそう言った瞬間、アル・スハイルの目元がピクッと僅かに動いた。
「迷惑をかけてるけど
それも今日まででいいわ
お、つ、か…れ……」
シーリスはもて遊ぶつもりであったが、そう言い掛けた時、喉元にサーベルが突き付けられていた。
「余の命を奪いに来たなら
声を掛けずに襲えば良いものを……」
アル・スハイルは椅子から立ち上がり、静かな殺気を放ち始める。
「余はまわりくどいことが
嫌いなのじゃ……」
アル・スハイルが静かに言い、シーリスはアル・スハイルの速さが想像を超えていると気付き、シーリスの言葉でアル・スハイルの怒りを買ったことにも気付いた。
「そして己が妹を
侮辱する者と話すなど……
むしずが走るっ‼︎‼︎」
アル・スハイルはシーリスを睨み叫び、そして凄まじい殺気を放った。
それと同時にシーリスはその殺気を、アル・スハイルだけでは無く、複数の何かが放っている事に気づいて、周りを見た瞬間、複数のサーベルに囲まれていた。
「死ぬが良い……」
アル・スハイルが冷酷な声で言い、一斉にそのサーベルがシーリスを貫いた。
「アル・スハイル……」
赤はアル・スハイルを見て呟いた。
「実の姉でないなら
容赦は要らぬなっ赤よっ‼︎‼︎」
アル・スハイルは赤に叫び聞いた、勝負が一瞬でついた様に見えたが、赤が再びシーリスを見た瞬間、再び赤が怯えた。
全身を貫かれ喉まで貫かれたシーリスが、自ら喉を貫いたサーベルを抜き、身体中に刺さったサーベルを白い光が包み消し去ったのだ。
アル・スハイルはその姿を見ても恐れずに怒りを瞳に宿し、アル・ムーリフのサーベルを抜きシーリスに向けた。
「はいっ‼︎‼︎」
赤はそのアル・スハイルの姿に引き込まれる感覚を覚え、シーリスが嫌いなのか大きな返事をし赤い星の姿になりアル・スハイルの背後についた。
その瞬間、アル・スハイルは既にシーリスに斬りかかっていた。
アル・スハイルとシーリスが戦い始めた頃、ステラがスッと立ち上がった。
「ステラどうした?」
ガイアがステラに聞いた。
「紫の誓いの星っ!
シーリスってなによっ‼︎‼︎」
ステラが紫の星に聞いている様だ、そしてステラの背後に紫の星が輝き優しい光を放ち、姿を表したが。
ガイアは馬車を走らせていたがその姿を見て驚きを隠せなかった。
「アル・ムーリフッ‼︎‼︎」
ガイアはその姿を見て叫んだ、紫の誓いの星はハダルを愛した、この星に舞い降りる前のアル・ムーリフの姿をしていたのだ。
「ふっ……
妾はアル・ムーリフでは無い
そちを愛しこの星に共に降りた時の
アル・ムーリフの魂と記憶を守り続け
この姿になっただけじゃ……」
紫の誓いの星はガイアに向かって言い、ステラを見て話しを続けた、ステラはアル・スハイルを心配してか、紫の誓いの星を睨むような鋭い目で見ている。
「この前話した
妾の義理の姉じゃ
以前の赤はシーリスに虐げられておった
対等の力を持っておるが……
優し過ぎ臆病であったからな」
「赤……?」
ガイアが呟いた。
「さよう
赤い誓いの星は
アル・スハイルから
赤という名をもらった様じゃ」
紫の誓いの星がそう話している頃、シーリスがアル・スハイルを、滅びの未来へ誘おうとしていたが、赤は自らの過去の力を使いアル・スハイルを引き戻していた。
「星が名を受け取るのは
信頼の証じゃ……
赤は今……
初めてシーリスと互換に戦っておる」
「じゃぁ
何が心配なんだよ」
ガイアが聞いた。
「後はアル・スハイルの力量じゃ
相手はシリウスの妹星
その本人……
誓いの星の力が対等とすれば
あとは個人の力じゃ」
紫の誓いの星がそう言った時、斬りかかったアル・スハイルは、シーリスがいきなり出した青白い弓で殴られ、至近距離で矢を放たれそれを紙一重で躱していた。
「たった一人の星海人が
星に敵うはずがあるまい……」
紫の誓いの星がそう言いステラが叫ぶ様に言った。
「じゃぁっ!
なんで助けに行かないのっ‼︎
あなたは今を操れるんでしょっ‼︎‼︎
あなたの力なら
助けられるんでしょっ!
妹なんでしょっ‼︎‼︎」
「遠すぎるのじゃ……
妾が干渉できるのは5日の距離
アトリアロフまでは10日はある
とても及ばぬ……」
紫の誓いの星は焦るステラにそう言い、その頃アル・スハイルはサーベルを躱され、その瞬間にシーリスが放った白い光線を赤が赤い光線放ち受け止め、シーリスがアル・スハイルの腹部を蹴ろうとするが、それをサーベルで受け止め一歩も引かない攻防を繰り広げていた。
「仮に影響を及ぼそうと言うなら
三ヶ月はそなたが
眠りに着くことになるが
それでも良いか?」
紫の誓いの星がそう言った時ステラは「それでも構わない」そう叫ぼうとしたが馬車を操りガイアが言った。
「くだらねぇ……」
「なっ‼︎」
ステラはガイアの言葉を疑うが、紫の誓いの星は冷静に耳を向けた。
「あいつはそんな弱くねぇよ……」
ガイアが言った時、アル・スハイルはシーリスが弓で殴ろうとしたそれを躱し、素手でシーリスの頬を本気で殴り飛ばした。
(な…ん…で……)
シーリスが戸惑う。
その時、赤はアル・スハイルがただ戦っている訳では無いと感じた。
「あいつはもう
一人じゃねぇからな……」
ガイアがそう言った時、アル・スハイルが静かにシーリスに言った。
「臆した者を虐げ何が楽しい」
その言葉と共にアル・スハイルは死の力を込め、シーリスを蹴り飛ばした、その一撃は重くシーリスは血を吐き、自らの傷ついてない未来を引き寄せ、瞬時に無傷にまで回復する。
プルートが異変に気付き、屋敷から出てフルートを吹き、死の力をアル・スハイルに送っていた。
「己が妹を……」
アル・スハイルが命の力を拳に込め、追撃し地面にシーリスを叩きつけた。
気付けばサラスもミアプラの杖をアル・スハイル向け命の力を送っていた。
赤はやっと気付いたアル・スハイルが誰の為に戦っているかを。
シーリスは素早く距離を取り、白い狼の様な光線を放った、それはシリウスが得意としたグランドファングを力を溜めずに放っていた。
「おまえが
一番信じてやんねぇで
どうすんだよ」
その時にガイアがステラにそう言い、ステラはハッとして気付いた、今までアル・ムーリフのために、ステラの為に戦い続けてくれたアル・スハイルを疑っていたことに。
アル・スハイルは怒鳴る様にシーリスに言った。
「なぜっ‼︎
大切にせぬのじゃぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎」
アル・スハイルはそのままアル・ムーリフから送られたサーベルを振り、グランドファングを切り裂きその刃から赤い光の斬撃をシーリスに放ち、それを追う様に追撃した。
赤は自分のためにアル・スハイルが戦ってくれている。
それに気付いたのだ。
「本当に星海人なのっ⁉︎⁉︎」
シーリスはその凄まじい怒りのこもった追撃を青い弓で受け止めてから振られたサーベルを弾き、それと同時に逃げ切れる未来を見て素早く矢をサラスとプルート目掛けて放った。
その矢をサラスが弾くが、プルートは驚いてフルートを口から離してしまい、一瞬でアル・スハイルの体が重くなり失速してしまう。
アル・スハイルが再び斬りかかるがシーリスはそれを簡単に躱し、アル・スハイルを蹴り飛ばし逃げ去ってしまった。
アル・スハイルは地面に叩きつけられるが、すぐに赤が姿を表しダメージを命に変換し癒し始めたが、なぜか涙を流していた。
最後の一撃が重かったのか、アル・スハイルは倒れたまま痛みを隠して聞いた。
「なぜ泣くのじゃ……」
赤は言葉が出なかった。
「そちの苦しさを
あやつに教えてやったのに
なぜ泣くのじゃ……」
アル・スハイルが目を瞑り静かに聞いた。
「ごめんなさい……」
なぜか赤はアル・スハイルに謝った。
「ごめんなさい!ごめんなさい!
ごめんなさいっ‼︎」
赤は謝り続けた。
「なぜ謝る……
そちが詫びることはなかろう」
アル・スハイルは痛みを隠しゆっくりと立ち上がり、優しくそう言った。
「お姉ちゃんだから
最後に……」
赤は最後にシーリスが逃げようとした時に、過去の力を使い引き戻すのを躊躇ってしまったのだ、それはシーリスのことが嫌いでも義理でも姉であると言うことが、赤を引き止めさせたのだ。
その結果、サラスとプルートが狙われシーリスを逃したあげく、アル・スハイルも傷を負ってしまったのだ。
「かまわぬ
義理であろうと
そちの姉なのだろう?
それでかまわぬ……」
アル・スハイルはそれに気付いていたが、赤を責めなかった。
赤はアル・スハイルの言葉に再び驚いた、まだまだ痛みが残る体でしっかりと立つアル・スハイルは、赤に手を差し伸べ微笑んで言った。
「余はそちの
その優しさに救われて来た
それを責めはせぬ……」
赤は時が止まっ様な感覚を覚え、周りを見渡すが紫の誓いの星は近くにいない、赤は遠い昔、アル・カストルが命を落とした日、このアトリアロフがメビウスの文明に攻撃を受け多大な被害を受け、アルタイルが必死に近くまでアル・スハイルとアル・ムーリフを連れてきた日を思い出した。
アル・スハイルは赤が躊躇ってしまったことを、「優しさ」と言ってくれたのだ。
赤はそのアル・スハイルの優しさに引き寄せられた感覚を覚え、そっとその手を取り、アル・スハイルが静かに引き寄せる様に赤を立たせていた。




