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第一章 第2話 新しい家



「よっしゃぁぁぁっ‼︎‼︎」


ガイアがドラゴンを倒して叫んでいた。



「はいっ今日もお疲れ様です」


 アルナイルがそう言い、戻ってくるガイアにタオルを渡している。


 ステラはこの三日間、ガイアとアルナイルを二人で依頼に行かせていた。


 それはアル・ムーリフがアルナイルより先にガイアと出会ったので、それを気にしてその間の穴埋めする様にステラの貯まっている街の仕事をする様に意識を向けさせていたのだ。


 そうとは知らないステラは、やらないといけない仕事なので自然とこなしていくが、別のことを考えていた。


(アルナイルさん

お金を気にして安い宿使ってるけど

結果ガイアと同じ宿よね……


それってズルくない?


でもわたしがあの宿を使うのは

かなり問題あるわ……


セプテント家の一人娘であるわたしが

あの安宿を使い続けるとしたら

他の由緒あるホテルの経営者達が

黙っていないわね……)


 ステラはそう考えながら羽ペンを走らせている。



(二人をうちに招く?

いや……それはダメよ……

わたしが男の子をうちに住まわせたら

騒ぎになるわ……


でもアルナイルさんだけなら……)


 ステラがそう思った時、ステラの執務室の扉がノックされた。


「どうぞ……」


ステラは羽ペンを走らせながら言う。



「失礼します

旦那様がお嬢様をお呼びです」


メイドが執務室に入り、丁寧なお辞儀をしてから言った。



「解ったわ

すぐにいくから

そう伝えてください」


ステラが静かに言った。




 夕方になり、街ではガイアとアルナイルが戻り夕食をレストランで楽しんでいた。


「ガイアさんって

凄いですね炎の魔法も

土の魔法も上手に使えるんですね」


アルナイルが笑顔で聞いている。



「あぁ大地にからむ性質のものなら

大抵の魔法は使えるぜ


大地に溶岩があるから

火の魔法も得意だし


植物系の魔法も結構つかえるな」


 ガイアがそう話しアルナイルは安心した、ガイアはハダルの能力をそのまま引き継いでいる。


 光の剣の力はハダルが生み出した、鉄の力である、鉄も大地にあるがその力は大抵が建設や創作に使われる力で、星海では戦闘で重視されることは無かった、鉄のシールドなどを生み出しても、星の生み出す力によって一瞬で大抵が消滅するからだ。



「ガイアさん?

わたしもステラさんみたいに

ガイアって呼んでいいですか?」


 アルナイルがまだ数日しか経ってないので、一応聞いてみた、それはステラとガイアの関係がどこまで進んでいるのかも知らなかったからだ。


「あぁ気軽に呼んでくれよ

ステラだってまだ会って二週間位だし」


 ガイアはアルナイルに笑顔でそう言った、アルナイルが他人じゃない気がしていたのだ、それに同じ宿に三日ほど泊まっていて廊下や食堂で会っても、まったく普通で昔から同じ場所に住んでるような落ち着いた感覚があったのだ。


「ありがとうガイア

やっぱり近くにいると

とっても落ち着くね」


アルナイルがそう言い、考えていた。



(前は一緒に住んでたけど

兄妹だったから……

当たり前だよね……って!)


アルナイルは考え始めるが、何かに気付いた、その間ハダルは食事をしながら追加で頼むのかメニュー見ている。




(ちょっと待ってよ……



今はハダルお兄ちゃんが

生まれ変わってるから家族じゃないし


その先も……


えっえっえっ‼︎

ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎‼︎‼︎‼︎)



 アルナイルが妄想の果てに心で驚き顔を真っ赤にしているが、ハダルは気付いてなくメニューを見ている。


 アルナイルはアル・ムーリフが、女として勝負に誘って来たことの深い意味を、まったく考えていなかった。



「アルナイルもほかに頼むか?

今日の報酬は美味かったし

もっと頼もうぜ」


 ガイアがアルナイルを見て言ったが、アルナイルは顔を真っ赤にしてかたまっていた。



(ちょちょっと待ってよ

それアル・ムーリフさんは

知ってるのかな?


知らないよね絶対にっ!


いやぁぁぁぁぁぁいやぁぁぁぁぁぁいやぁぁぁぁぁぁいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎


ちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎‼︎‼︎ゆうぅぅりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ)


 アルナイルが両手でほぉを抑え、自分が妹であり妹しか知らない多くの絶対的有利を、実感し興奮し激しく揺れている。


 それを見たガイアは汗を流して言葉を失っている。



「いたいたっ!

って……

アルナイル何してるの?」


 ステラが来てアルナイルの奇行を見て戸惑いながら言う。


「よっ……よう……

ステラも何か食うか?」


 ガイアが戸惑いながら挨拶をしてステラを誘う。


「彼女なにがあったの……」

ステラがガイアに聞く、アルナイルは嬉しいのかクネクネしている。


「わかんねぇ

マジでわかんねぇ……

だっだいじょうぶか?」


 ガイアが再び言うと、アルナイルがステラが来ていたことに気が付いた。


「あっステラさんこんばんは」


アルナイルがステラに挨拶をした。


「こんばんはアルナイル

ごきげんみたいだけど

何かあったのかしら?」


ステラが聞いた。


「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや

なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんでもありませんっ!」


アルナイルが顔を真っ赤にして慌てて叫ぶ様に言う。


「あの……

それでなんでもないってのは

疑うしかないんだが……」


ガイアが疑いの眼差しで言う。


「ガイアさん

お父様からの依頼なんですが

お受け頂けますか?」


ステラがアルナイルの隣に座り、とりあえずアルナイルを置いとくようにガイアに言った。


「依頼?」


ガイアが言った。



「えぇ

フランシスの領主である

わたしの父からなんですが


フロー森林に

火竜が現れたようなんですが

変異種のようなんです


その討伐をお願いしたいそうです」


ステラが説明してくれた。



「それで報酬は?」



ガイアが聞いた。



「わ・た・し……」



ステラがウィンクして自分を指さした。



(どさくさに紛れて

自分をかけたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎)


アルナイルが頭を抑え立ち上がり錯乱した瞬間……。




「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎‼︎


俺が受けるっ!」


「俺にやらせろっ!‼︎」


「いやっおまえには嫁さんいるだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」



同じレストランにいた他の冒険者達が騒ぎ始め、ガイア達のテーブルに津波の様に押し寄せた。



(あ……

大丈夫……

ハダルお兄ちゃん

こう言うの嫌いだから)


アルナイルはそう思っていた。



 ステラはその冒険者達に気を良くして、迫りながらガイアに言った。


「さぁガイア様

お受けになって下さいますか?」



「断る……」



ガイアは両断するように断った。



 ステラの全ての期待をガイアは両断し蹴り飛ばした。


「なっ……」


 ステラは言葉を失ったが誇りをかけ言い返す。


「わたしより

いい報酬でもあるのかしら?」



「ふざけんなっ!

いつもいつも訳あり案件ばっかり

よこしやがってっ!‼︎‼︎」



ガイアが叫んだ。


(ほらね……)

アルナイルは予想通りのガイアの行動を見守る。



「なによっ‼︎

あんたくらいしか

頼めないじゃんっ‼︎

だからわたしを

ご褒美にあげるのよっ‼︎‼︎」


 ステラが強引にいく。


「冗談じゃねぇっ‼︎‼︎

おまえの訳あり案件ってのは

訳なんて通り過ぎて

既に事故物件じゃねえかっ‼︎


その度に毎回天国見てるわっ‼︎‼︎」


 ガイアが言い返す。



「なによっ!

このまえ私のファーストキスも

あげたじゃないっ‼︎‼︎」


 ステラも言い返した。



「はぁ?

スライムに飲み込まれて

ファーストキスだぁ?


あれは別れのキスだろ‼︎

マジで死んだって

思ったんだからなっ‼︎‼︎」


 アルナイルはその現場を見ていたので、何も思わないが、周りが動揺している。


「おい……

あいつそこまで進んでるのか?」



「愛しのステラ様が……」


周りの冒険者達が凹み始めた。



(ちょっと

あの会話でそう思うこの人達って

なんなの?)


アルナイルは普通にそう思っていた。



「わっわたし……」

ステラが泣き真似をして、いたいけな姿を見せ冒険者達を味方にしようとしたが、何故か出来なかった。


(なんでよっ!

なんで涙がでないのよっ!)


ステラがそう思っていたが、アルナイルは解っていた。



(あなたの過去が

そうさせないわね……


あのプライドの塊


鬼畜姉妹の

妹ですもんね……)


アルナイルが安心して冷静を取り戻している。



「だいたいなっ!

いつもついて回ってる

おまえが報酬って言われても


タダ働きにしか

聞こえねーんだよっ‼︎‼︎」


ガイアが叫んでその場の時が止まった。



(ハダルお兄ちゃん……



ちょっと馬鹿になったの?



違うでしょっ‼︎‼︎


えっえっ

星海人よりこの星の

人間ってそんなに知能低いの?


えっえっえっえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎‼︎


違うよね!違うよね!!

違うよねっ‼︎違うよねっ‼︎‼︎


あんなに頭の良かった……

ハダルお兄ちゃんが……)


アルナイルは勝手に絶望している。



「そ……

それもそうね……」


ステラが納得したように呟いた。


(ステラさんも納得したぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎

そんな関係なのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼︎‼︎)


アルナイルがステラの態度で凄まじく動揺した。



「あぁそうだ‼︎

そんで極め付けは

おまえの親父の死刑宣告かぁっ‼︎‼︎


散々事故物件処理させといて

キス一つで死刑宣告かよ‼︎‼︎


今度こそ死ぬ

今度こそ死ぬ

間違いなく……


間違いなく死ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎」


 ガイアが叫ぶ、やはり魂は兄妹なのか取り乱した時はアルナイルと似ているようであった。



 そんなガイアをよそにステラが言った。



「50万セルと

フランシスの街にある

庭付きの家を差し上げるわ

それがお父様が提示した報酬よ」



「…………」


ガイアが止まった。



(待て……

今までの報酬を考えろ……

割に合わない報酬をこなして来たが

この報酬で割に合わなかった場合……


それは確実に死を意味するのでは?)


ガイアは冷静に考えていると……。



(ねぇあなたは

なんで旅にでたの?)


あの声が頭に響きガイアは答えを出した。


(あぁ……

死ぬためじゃないはずだ)


「わりぃ

いい話だがやっ……」


 ガイアがそう想い断ろうとした瞬間、鈍い痛みが頭に走り気絶した。



「アルナイル?

手伝ってね

依頼にいくわよ」


ステラがガイアを叩き気絶させて言った、ガイアに拒否権は無いようだ。



「ス……ステラさん……」


 アルナイルは戸惑いながらステラを手伝って、ステラが乗って来た馬車にガイアを乗せ現地に移動しはじめた、既にキャンプの支度もしてあり、途中鍛冶屋に寄って安い剣を十本ほど買ってフランシスの街を出た。


「ステラさん……

なにもそこまでしなくても

いいじゃないですか?」


 アルナイルがステラに聞いた時、ステラはアルナイルの耳元でコソコソと話した。



「え?

ほんとに?」


アルナイルは呟くように聞いた。


「ほんとほんと

その方がいいと思わない?」


ステラがアルナイルに聞いた。


「いいと思います‼︎」


アルナイルが言った。


「じゃ頑張りましょう」


ステラが元気に言い馬車を走らせて行った。



 その夜、ステラとアルナイルが焚き火をして適当に料理を作っている、ステラはご飯を食べてなかったのだ。


「ステラさん

火竜の変異種って

危ないですよね?」


アルナイルが考えながら聞いた。



「聞いた情報だと

ひょとしてなんだけど……

先史の野獣かも知れないのよ

そうなると

ガイアじゃないと

無理かも知れないの」


ステラが言う。


「先史の野獣……」


アルナイルが小さく呟いた。


 アルナイルはオルビスの歴史を、調べていた、そして先史の野獣が星海の魔物のことを言っているのに気付いていた。


 伝承では先史の野獣はその昔、この星を食い尽くす程に溢れたようだが、紫の星が輝き、全ての先史の野獣を焼き尽くしたと言う。


 その背景からこのオルビスと言う星が、過去に星海人に狙われたことがあると気付いていた。




「そっか……

ガイアはあの時の……

先史の野獣を倒したのね」


アルナイルはそう呟いた。


「うん?

どう言うこと?」

ステラが聞いた。


「ううん

なんでもないわ」


 アルナイルは追われていた時、先史の野獣を焼き尽くして落としたのがガイアだったと気づいた、攻撃手段の少ないアルナイルをすれ違いの様な形ではあるが、ハダルがちゃんと守ってくれたのに気づいていた。



 そして翌日……。



「俺の拒否権は……

俺に拒否権はないのか……」


ガイアが剣を抜かずに火竜と戦いながらボヤいていた。



「ガイア頑張りなさいっ‼︎」

ステラが全力で応援している。


「ガイアァがんばって!」

アルナイルが叫んで応援している。



「おまえらぁぁぁっ‼︎‼︎」


 ガイアは奮闘している、火竜は単純に亜種であったが……首が三つあり時折炎の身体になって刃が効かなかった。


 凄まじい勢いで吐く炎をガイアは、岩の壁を召喚し防ぎ、炎が収まってから再び斬りかかって行く。


(くそ……

炎を斬っても意味がねぇ

どうすればいいっ‼︎‼︎)


 ガイアは考えながら戦っているが、どうしていいのか解らないが応援する声はしっかり聞こえる。



「頑張りなさいっ!

女の子の夢を叶えなさいよっ!」


ステラが叫んでる。



(いや……

ステラさんの……

アル・ムーリフさんが起きた方が

あっという間だと

思うんですけど……


きっと寝ていますよね?

起きてるのかな?)


 アルナイルはそう思い星の魔力を耳と目に集中してステラを見た。



(ハダル……

それくらいはやく倒さぬか

妾にふさわしいそちなら

どうにでも出来よう)


 アル・ムーリフは起きていたが、ステラの意識に影響を与えない様に見つめている。



(起きてる……

流石アル・ムーリフさん

鬼ね……)


 アルナイルはそう思っていたが、ふとひらめいた。


 アルナイルは飛び出して火竜に右手をかざして叫ぶ。



「アクアスプラッシュッ‼︎」


 するとアルナイルの手のひらから、高水圧の水が吹き出し、火竜を襲う。



(そうよ

これは勝負なのよっ!


愛の勝負なのよっ!


たくさんガイアの役に立って

ポイントを稼ぐのよっ‼︎)


 アルナイルは頑張る決意を固めて、星海人としては叶わなかった想いを勝ち取ろうと動き出した。



(良いなアルナイルよ

妾とそちが争うとしても


互いに……


姉上や強力な星海人が現れぬ限り

星海人としての力は使わぬことじゃ


何があろうとも

ガイアに知られてはならぬ

知れて仕舞えば妾もそちも……

ガイアにとっては


人外である……


せめてガイアの内に眠る

ハダルの記憶が目覚めぬ間は

知られてはならぬ……)


 アルナイルは昨晩、ステラが眠った後アル・ムーリフが起きて来てそう言ってくれたことを思い出した。


 アル・ムーリフは魂こそ星海人ではあるが、生まれ変わり今は人の身体である、だがアルナイルは星海人のままで美しい姿のまま、年齢も50億歳を超えている。

 その様な人外を人はどう思うであろうか、アル・ムーリフはそれをアルナイルに教えてくれていたのだ。



「やっと手伝ってくれるのか

つかおっせぇよっ!」


 ガイアが火竜の真ん中と左の首が吐く炎を躱しながら叫び、アルナイルが右の首の気を引いてくれている、アルナイルはガイアが苦手な水の魔法を覚えようとしてくれていたのだ。


 ガイアがアルナイルを見ている時に、火竜の左の首がタイミングを逃さず炎を吐いた。


(やべっ!)


 ガイアは躱せないと思ったが、その炎がガイアを包み込もうとした時、凄まじい突風がそれを遮った。



「ちょっとアルナイル!

ズルいっ‼︎」


 ステラが慌てて剣を抜いて風の魔法を放ち、その左の首の注意を引きつけようと、走り出していた。



「何がズルいんだか

わっかんねーよっ‼︎」


 ガイアはそう叫び、手を振って大地の魔法を使ってアルナイルを飲み込もうとした右の首を岩の槍で貫いて庇って、真ん中の首が吐いた炎を躱して走り出した。



「あっありがとうっ!」


 アルナイルが叫びその声にガイアは昔、アルナイルと同じようなことがあった気がした。



(まったくおまえら

なんなんだよ


二人とも守ってやんなきゃなんねぇ

そんな気がする……)


 ガイアはそう思いながら、隙を見てステラを切り裂こうとした火竜の爪を岩の壁を作り出して守った、ステラの表情から喜んでいるのが見て解った。



(まぁ悪い気はしねぇ……

それに……


これで反撃出来るっ!)


 ガイアはやっと真ん中の首だけを相手にし、相手の波状攻撃がなくなり攻撃と攻撃の隙間を見出せるようになった、そして火竜の真ん中の首が炎を吐きながら、ガイアを飲み込もうとしたが、ガイアは素早く後ろに飛び、かなり高い岩の壁を大地から生み出して防ごうとしが、巨大な火竜の首がその壁を砕いた。


「ありがとよっ


そいつはやっちゃいけねえ

手だったぜっ‼︎」


 ガイアは岩の壁に乗っていたのだ、そして岩の壁が砕かれた時、そこから高く飛んでいた。


 ガイアは火竜が部分的に体を炎に変えていたが、全身を炎に変えられないことに気づいていた、そしてガイアは火竜の真上をやっと取ったのだ。



「サウザンドアロー・サクスム‼︎」


 ガイアは叫び、無数の岩の矢を火竜の胴体目掛けて放つが、全て中心から外して放っていた、岩の矢が命中した部分が炎に変わり明らかに、炎に変えられ無い部分が見えた時、ガイアは剣を両手に持ち、剣と剣をぶつけて叩き折り呟いた。


「徒花を咲かせよ……」


 そして二本の折れた剣から光の剣が現れ、空からその剣を使い大きく十字に振り火竜を斬り裂いた。


 火竜の目の輝きが失われ、その巨体が音を立てて倒れ身体中の炎が消えていく。


 完全に倒したのだ。


「やりましたね」


アルナイルが着地したガイアに走り寄り、そう言ってくれた。


「やっぱりガイアなら倒せたね関心関心」


ステラがそう言いながらガイアに近づいて来た。



「つかお前ら

最初のあれはなんだよ」


ガイアが二人に言った。


 アルナイルとステラはガイアを応援していた姿を思い出す、二人ともガイアなら倒せると思っていたが、アルナイルは少し悪い気がして言った。



「ごめんなさい……

でもガイアさんなら一人で倒せるって

思ってたんです


だから……」


「そうよ

カッコイイガイアを見たかったの

悪いかしら?


それなのにアルナイルが

先に飛び出しちゃうから……」



ステラがそう言いガイアは思っていた。


(いつか……

こいつらに

マジで殺されるんじゃねぇか……


俺……)





 その三人を遥か空高く、星海と空の間から瞳に星の魔力集中させ見ている者がいた。



「アルナイル……ハダル……

我が妹よ見つけたぞ


アル・ムーリフ……

そなたの遊び

余も混ぜてくれぬか?」


アル・スハイルはそう呟き、怪しい笑みを浮かべ姿を消した。





 三人はそれを知る事もなく、帰り道で夜になり馬車を止めて、焚き火をし夕食を作っていた、ステラはわりと家庭的な面を見せてアルナイルもスープを作るのを手伝いながら、肉を串に刺していく。


 ガイアはステラが買い込んで残っている、ガイア用の剣の残りを一本一本、磨いている。


 そして夕食の時にステラが聞いた。


「ガイアって優しいよね

どうせ折っちゃう剣なのに……

磨いてあげるんだね」


「あぁ……

最近街に住んで

幾らでも剣が買えるからな


旅してる時はもうちょっと

大切にしてやったんだけど


最近折ってばかりだから

少しくらい手入れしてやらねぇと

悪い気がしてな……」


ガイアがそう言い、アルナイルは変わらないなって思って微笑んでいた。



「わたしも

それくらいでいいから……」


ステラが小さく小さく呟いたが、小さすぎてガイアは聞こえていなかった。



 そして翌日、まだ午前中にフランシスの街に帰り、三人はギルドに一旦よりステラが報酬のお金と鍵を三本受け取って来た。



「はい

これが今回の報酬のお金

16万6千666セルよ」


ステラがそう言いガイアに渡した。


「ちょっと待てよ

50万セルじゃ……


最初にそう言ったじゃねぇか」


ガイアが言った。


「はいこれは

アルナイルちゃんの分ね


なに言ってるのよ

私達も手伝ったんだから

山分けは当たり前でしょ」


ステラが言った。


「ありがとうございます」


アルナイルは笑顔で言った。



「さぁ行くわよ」


ステラが言い馬車を走らせる。


「ちょっと待てって」


 ガイアは嫌な予感がしてそう言ったが、ステラは勢いよく馬を走らせ、ガイアはその勢いで体勢を崩して、アルナイルに抱きついてしまう。


「わっわりぃっ‼︎」


ガイアが慌てて言ったが、アルナイルは嬉しかったのか座ったまま硬直している。


 そんなことは知らずにステラは馬車を走らせ、目的地に着いた、そこはギルドからそんなに離れていない所に建つ一軒のそこまで大きくないが庭はそれなりに広い二階建ての邸宅であった。


「さぁ着いたわよ

ここが私達の新しい家よ」


 ステラが言った。


「ちょっ……

私達って…………」


ガイアが呟くように聞く。


「はい

これがアルナイルちゃんの鍵よ


ガイア?あなたがこの家に

一人で住んでもどうせ掃除もしないで

荒れてくだけでしょ?


メイド雇うにもお金かかるし

まぁあなたは

メイドに手を出すような人じゃないから

そこはいいけど

維持費は大変なのよ


だから私達も

一緒に住んであげるのよ」


ステラが笑顔で言った。



(はっはめられた……

この俺が……)


 ガイアがそう思って、家の権利書をステラから奪ってサインを確認すると、しっかりとガイア、ステラ、アルナイルと書かれている。

 つまりガイア一人の独断ではどうにでも出来ないことになっていた。


「うんっ納得してくれましたね

じゃあ部屋決めよっか」


ステラがそう言い、邸宅に入ろうとした時ガイアが言った。



「ちょっと待て……」


「ガイアさん

そんなに嫌なのですか?」


アルナイルがガイアに聞いた。



「そうじゃない……」


ガイアが呟き、うん?とステラが思ってガイアを見る。



「せめて俺の部屋は……

俺に最初に決めさせろっ‼︎」



ガイアが言った。


「それじゃ決まりねっ」


ステラがそう言い、ガイアをステラとアルナイルが手を引いて屋敷に入って言った。


 ガイアが邸宅の部屋を確認しながら、2階のテラス付きの寝室が二つあり、そこを見てどちらにしようか悩んでいると、どっちの部屋で悩んでも、ステラとアルナイルが膨れている、二人はテラス付きのどちらかの部屋がいいようだとガイアは悟る。


 そして反対側のテラスの付いてない、それなりの部屋を見始めると、二人は笑顔で部屋を見ていく、そしてテラス付きの二つの部屋の間にある出窓付きの部屋をガイアは選んだ。


「じゃぁ

わたしはこっちにするわ」


ステラが右側のテラス付きの部屋を選ぶ。


「それなら

わたしはこちらにしますね」


アルナイルが左側の部屋を選んだ。


 二人は機嫌良くそれぞれの部屋に入って行く。



(これって……

俺は最初に選んだのか?


俺に選択権はあるのか?)


ガイアは疑問に思った時……。



「家具買いに行こうよっ‼︎」


ステラがそう元気よく言い。


「そうですね

家具だけじゃなくて

色々揃えないといけませんからね」


 アルナイルもそう言って三人は買い物に出かけた時……。



(ねぇあなたは

なんで旅にでたの?)



ガイアの頭にまたあの声が響いた。



「まったくわかんねぇよ

ほんとに……」


ガイアは小さく微笑み呟いていた。

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