第一章 第14話 赤
「で……
教えて欲しいんだけど
アルナイルはどうすれば
助けられるの?」
アル・スハイルの屋敷でアルタイルがサラスに聞いていた。
「わしにも解らぬ……」
サラスが考えてる表情で言った。
アルタイルはまたサラスが嘘ついてるのかと思い、同じことを聞く。
「そう言いたいのは解ったけど
こっちは教えて欲しいの
アルナイルを助ける方法をさ」
「そなたもくどいのぉ……」
サラスがそう言った時、珍しくアル・スハイルの屋敷に居るにも関わらず召使いを使わず、アル・スハイルが紅茶を持って来て言った。
「アルタイルよ
知っていても
今は言えぬのかも知れぬ
そう考えれば良い
アルナイルが何を考えているのか
余はそちらの方が知りたい
教えてくれぬか?」
アル・スハイルは冷静であった、それはアルナイルが言った、大大星が集まっても守れなくなるかも知れない、そう言ったからだ。
アル・スハイルからすれば信じ難いことであった、アル・スハイルはサラスが彗星となって放った、巨星ミアプラの力を感じ、それを上回る大大星が三人も集まって、太刀打ち出来ない何かがあるのかと考えていた。
「それは
わたくしがお話します」
サラスの手元にあるミアプラの杖が優しく弱い水色の光を放つと、ミアプラが現れた。
「そちは?」
アル・スハイルは星海人では無いミアプラを見て聞いた。
ミアプラはアル・スハイルが初めて見たと言う顔に最初に答えた。
「お二人とも星と話すのは
初めてですよね?
わたくしは
星の意思と言える存在です」
ミアプラは優しく微笑んで言うが、アルタイルは目をまるくし驚いている。
星の意思が人として現れたのだ。
「そんなに驚かないで下さい
皆さんはスピカ様と
一緒に過ごされていたじゃないですか
うちの人も気づいてましたよ」
ミアプラはそう言い、サラスを見るがサラスは一筋の汗を流していた。
「気付いてなかったようじゃな……」
アル・スハイルが突っ込んだ。
「わしもスピカ様も
お互いを気づかなんだ……
演じるとは恐ろしいものじゃな……」
サラスはそう言うが、セプテント家に居た間、互いに深く詮索することを避けていたとも言える、アルナイルはアルタイルが探っていることにも気付いていたのでアルタイルに任せるつもりでいた。
サラスはアルナイルの光の能力を警戒し、屋敷を離れたりとしていたのだ。
(二人とも凄いけど…
なによこの結果……
なんなのよっ‼︎‼︎)
必死になっていたアルタイルは、そう思いながらワナワナとしている。
「コホンッ
とりあえずですね」
ミアプラがサラスをつねりながら咳払いを小さくして話を切り出す。
「私が
ダイアモンドクロス星団を束ね
あの星海の外れにいるのは
スピカ様が他の銀河に
意識を向けられてからのことです」
「ほう……」
アル・スハイルはそう言い話を聞き始める。
「他の銀河の中には
星の生き物達どうしが既に交流を持ち
星々を渡りさまざまな
発展を遂げているのです
その彼らがどの様に過ごしているかは
アル・スハイルさんなら
想像がつくと思います」
ミアプラは空気を変えるように話し始めた。
アル・スハイルも星の生き物達がどう振る舞うのかをよく知っている、それに散々悩まされて来たのだ、アル・スハイルは顔を顰めて頷いた。
「スピカ様も
それを懸念され私に
ご自分のお力を分けてくださり
他の銀河から星の生き物が来ないように
あの場所に遣わされたのです」
「?ちと待て……
それじゃ何故あやつは
星海に命を溢れさせたのだ?
その様なことをすれば
星海は他の銀河と
同じ様になるでは無いか?」
アル・スハイルは自然な疑問を聞いた。
「少し考えてみて下さい
私達の力の源を……」
ミアプラが言った。
「力の源……」
アル・スハイルは考えたがアルタイルが言った。
「ダークマターだよ……」
「ッ!」
アル・スハイルは気付いた。
どんなに強い星ですら、ダークマターを呼吸し取り入れて力に変えている、力のある星海人が集まれば、そのダークマターの流れを僅かであるが変えることが出来る、それによりダークマターの呼吸を止められて仕舞えば、いくらアル・スハイルが賢い戦いをしようとしても無力化してしまう。
つまり力のある者が何十人何百人と一気に来られたら、この星海全体のダークマターの流れを、変えられてしまう危険性があると言うことをミアプラの言葉は遠回しに指していた。
「アル・スハイルッ!
それよりアルナイルのことが先だろっ‼︎
メビウスの力は
アルナイルの光星の中でも
大きくなっているのを
お前も感じてる筈だっ‼︎
それをなんで後回しにするんだっ‼︎‼︎」
アルタイルが強く言った。
「またぬか……
メビウスの力は星の力によるもの……
最悪の場合メビウスの星を
消して仕舞えばいいことじゃ
じゃがアルナイルはそれをせぬ……」
アル・スハイルはアルナイルが以前に言った言葉を思い出していた。
(うん
アル・スハイルが
また変な方に行こうとしたら
私の力で呼び寄せるからね
覚悟してね)
その言葉からアルナイルが、終末的な破壊を望んでは居ないのが手に取る様に解っていた。
「アルナイルより
メビウスの力が上回るのは解っておる
だがそれは
あやつが力を分けているからだと
そう考えてみよ
なぜアルナイルは力を一つに戻さぬ
それを解決せねばなるまい……」
アル・スハイルは考えながら言ったが、ふと何かを思いサラスに聞いた。
「サラス……
我が父の友であったそなたに聞く
ハダルの星は
どの星から生まれたのじゃ
よもや大大星の元から
生まれたのではあるまいな?」
アルナイルが守るもう一つの星ハダル、この後に及んでもアルナイルの光星はハダルの星を未だに包み、今はその光星が二つあることになる、それをアル・スハイルは不思議に思った。
「解らぬが
ミアプラはハダルを
スピカの子と言っておったな」
サラスが言いミアプラが言った。
「はい
ハダルはスピカ様から
生まれた星です
スピカ様の星はあの近くにありました
そのスピカ様の星の影響を強く受け
ハダルの星が生まれました」
「げせぬ……
それをなぜ
兄と呼んでいたのじゃ……」
アル・スハイルの疑問はそこに行き着いた。
アルタイルはアル・スハイルの考えてることをやっと解った、アル・スハイルは領主でもある、自分の民のことも考えつつ、この問題の根源であるアルナイル自らが力を取り戻す必要があると、それが一番アルナイルを救うと、そう考えていたのだ。
そのアル・スハイルからすれば、他の銀河が存在すると言うことは驚異でしかなかった、他の銀河から見れば星海で内輪揉めしている状態であると、アル・スハイルは気付いていた。
「アル・スハイル様
こちらにいらっ……
サラス…なぜお前がここにっ‼︎
死んだはずではなかったのか⁉︎⁉︎」
レグルスが星海の異変に気付いて、セプテントリオの調査を切り上げ戻って来たが、サラスがいる事に驚き、剣を抜こうとしたがアル・スハイルがそれを手の動きだけで止めた。
「サラスのことは良い
ミアプラが命を操ることは知っておろう
驚くことでは無い
特に大大星に次ぐ力を持つ
ミアプラならばな……」
アル・スハイルは自らもプルートの力でいっ時だが不死を実感した、そのおかげでサラスが生き返ったとしてもなんら不思議には思わなかった。
「ところで……
セプテントリオはどうじゃ
何か変わったことはあるか?
ステラ達が
セプテントリオの杖を探しておるが
障害になりそうなことはあるか?」
アル・スハイルは聞いた。
「セプテントリオは……
再び動物達が巨大化し
人々を襲い始めています
ステラ様達の障害には
ならないとは思いますが……
まるで……」
レグルスがそう言いかけたが、アル・スハイルは聞いた。
「まるで?」
「まるで星の意思の様に見え……
なんらかの対処をしなければ
いづれあの星の人々は
生き残れないかと……」
レグルスは考えながら言った、レグルスもここに来る前に幾つかの村と街を守って来たのだ、だが規模が次第に大きくなっていることに懸念を抱いていた。
「サラス……
そちは言っていた様だな
セプテントリオの意思だと
そちはどうやって抑えていたのじゃ……」
アル・スハイルが聞いた、それはサラスがセプテントリオの意思を押さえ込む様に操っていたからだ。
「セプテントリオの杖を手にすれば
容易いことじゃ……
じゃが…セプテントリオは
わしが眠りにつかせたはずじゃが……
まさか…
メビウスが目覚めさしたと言うことか……」
サラスが呟き深刻な顔をした。
「メビウスの子…
赤い誓いの星よ……
力を貸して下さいませんか?」
サラスの様子を見てミアプラが言った。
「メビウスの子?」
アル・スハイルが呟き、アルタイルとレグルスは顔を顰めた。
するとアル・スハイルの赤い星が現れ、輝きを増し声が聞こえた。
「ミアプラのお姉様
わたくしはまだ……
姿を表すことが出来ません
お許し下さい……」
赤い誓いの星が言った。
「赤い誓いの星よ
あなたの主人は
もう十分に成長していると
私は思いますよ」
ミアプラが赤い誓いの星に言った、それはミアプラが包み隠さず言った言葉であった。
「ですが……」
赤い誓いの星が困った声で言った。
ミアプラはふっと小さく鼻で笑い言った。
「あなたの
お姉様
紫の誓いの星は
いつでも姿を表しているじゃないですか?
必要な時もそうでない時も……
それともまた……
臆病風に吹かれて
怖がっているのですか?」
「怖がるとな?」
アル・スハイルが聞いた。
「はい
この子は星海一の怖がりなんです
アル・スハイルが
今までこの子を
引っ張ってくれていたので
この子も成長できたのですが
今でもあなたの行いで
時々気絶してるんです……」
ミアプラが赤い誓いの星の可愛い秘密を暴露しはじめると、赤い誓いの星はアワアワした様に可笑しな光り方をし始めた。
アル・スハイルはミアプラの表情を見て小さく笑って聞いた。
「他にも
何かあれば教えてくれぬか?」
ミアプラは微笑んでアル・スハイルに歩み寄り、こそこそ話をしようとした時、赤い誓いの星が恥ずかしがり真っ赤に輝き、声が聞こえた。
「まっ!
待って待ってっ‼︎
待ってくださいっ‼︎」
そして赤い誓いの星は人の姿になり飛び出して来た。
臆病には見えない鮮やかな赤い髪をした少女が、アル・スハイルとミアプラの間に慌てて割って入り、慌てて言う。
「ミアプラ様っ‼︎
お願いしますっ!
なんでもしますからっ
言わないで下さいっ‼︎
アル・スハイルに
バラさないで下さいっ‼︎‼︎」
アルタイルとレグルスは、アル・スハイルが使う赤い誓いの星イメージが一気に崩れていた。
レグルスは赤い誓いの星が、アル・スハイルを呼び捨てにしたことに度胸あるなと感じていた。
「じゃ遠慮なくお願いしますね」
ミアプラはそう言い、手を赤い誓いの星に差し出すと、手の平から水が湧き出し、その水は球体になりふわふわと浮いた。
「あなたが持つ
お母様譲りの力を使って
この水にセプテントリオに
異変が起きた時を
映し出してくれませんか?」
ミアプラは赤い誓いの星が逃げない様に、両肩を優しく捕まえて言った。
赤い誓いの星は少し困った様にその水に触れて目を瞑り、誓いの星が持つ時の力をその水に注ぎ込んだ。
アル・スハイルは赤い誓いの星が、母であるメビウスを嫌っている様に見えていた。
それは普通であれば、母親から譲られたものが偉大であれば、誇りに思うものだどそうアル・スハイルは考えていた、その為にサラスが多くを守ろうとし、全ての大大星に気付かれない程に演じ切ったその行いは、ステラの、アル・ムーリフを喜ばせると確信し出来れば直ぐにでも伝えたいと思っていたことである。
だが赤い誓いの星はそれに近いと言える、強大な力を嫌っている様にしかアル・スハイルには見えなかったのだ。
そう考えながら赤い誓いの星が力を送り、薄赤色に光出した水の球体を見ていた。
(そう言えば…あの時……
裁きの力もこやつが
使い方を余に教えてくれたのか……)
アル・スハイルは赤い誓いの星を見ながら、そう思っていた。
それはメビウスの星を、アル・ムーリフと二人で壊滅させた時に使った裁きの力、それはアル・スハイルが星ごと壊滅させる力を求めた時、赤い誓いの星がほんのりと輝き頭にイメージが湧いて来たのだ、それ以来、裁きの力はアル・スハイルとアル・ムーリフ二人で放つ最大の技になっていた。
「ミアプラ様
見えました…これはお母様が……」
赤い誓いの星が水に映った何かを見て言った。
それはメビウスがアルナイルと戦う前に、オルビスの星を見つめている姿であった。
そしてそのメビウスの口元が僅かにつぶやく様に動いていた。
「何を言っているんだ……」
音の無い映像で何を言ったか解らずにアルタイルが言った。
「繰り返す……
そう言っておるな……」
アル・スハイルは読唇術で読み解き静かに言った。
「繰り返す……
それじゃメビウスは……
オルビスに…
セプテントリオの時を
戻したってことなの……?⁉︎」
アルタイルがその言葉と体験した効果を考えて気付いた、星一つまるごと時を戻したのかと、アルタイルはそのメビウスの力の大きさに驚き、半信半疑であった。
「いつまで時を戻したと言うのか……」
サラスが呟き、すぐにアル・スハイルはレグルスに聞いた。
「レグルスよ
動物達が再び巨大化したと言っていたな
どれ程にじゃ……
我らが降りた時に
無かった物などあったか?」
「いや……
星の時を戻されたとしても
我らが降りた後かと……」
レグルスは答えた。
「確証はあるか?」
アル・スハイルが聞いた。
「そっ…それは……」
レグルスが有るような無いような、言っていいのか悪いのかと言う顔をした。
「構わぬ
言うが良い……」
アル・スハイルが言った。
「では……」
レグルスはそう言い、少し間を置いて冷静に話し始めた。
「此方に帰る前に
立ち寄ったのですが……
わたくしがこの星に降り
アル・スハイル様に
挨拶をと参りましたあの場所ですが
アル・スハイル様に
わたくしが蹴り飛ばされ砕けた岩が
そのままでありました……」
「…………」
アル・スハイルは目を瞑り、顔を僅かにピクつかせながら、そんなこともあったと思い出しながら静かにしていた。
「………」
ミアプラとサラスもアル・スハイルの厳しい性格を知っていた為に、あり得る話だと思うが、確かに自然の物であり時が戻されていなければ、それはそのままである事で確証にはなるが、それを聞いてどう反応していいのか解らなかった。
赤い誓いの星も、サッとミアプラの背後に隠れた。
だが良いと言われたが、一番危険を感じていたのは他ならぬレグルスであった。
(確かに確証にはなるが
私の命には確証は無い……
やはり言うべきでは無かったか……)
レグルスはそう考え唾を飲み汗を流していた。
「ぷっ!
あはははっ‼︎」
アルタイルが笑い出した。
「アル・スハイルの厳しさが
初めて役に立ったね」
アルタイルは笑いながら言った。
アル・スハイルも静かに、ふぅ、と息をし冷静を保ち、レグルスはアルタイルが笑い話に変えてくれたと感じていた。
「これは大切なことだよ
アル・スハイル達が
みんなが降り始めた後に
戻されたってことは
アル・スハイルがその昔
赤い誓いの星の生き物を率いて
オルビスを滅ぼそうとした時までは
戻されていない」
アルタイルが説明しようとしている。
「と言うと?」
アル・スハイルが聞いた。
「私が星の時を戻されたってことで
心配したのは……
どれだけの時を戻したのか
それはきっと
星の力に関わる気がするんだ
ミアプラさんなら
知ってるかも知るない
星の力ってさ
私みたいに物理よりな力じゃなくて
時を操ったり
命を操ったり
またはプルートみたいに
死を生み出したり
サルガスみたいに幻や
エリスみたいな精神干渉とか
そう言った特殊能力は
星の力の最大値みたいなのがあって
対象の星との最大値の差
それによって効果が
違うんじゃないのかなって
そう考えていたんだよ」
ミアプラはそれを聞いて、ふふっと小さな笑顔を見せていた、まるで正解と言う様にアルタイルとアル・スハイルはその笑顔をとらえた。
「その中でミアプラさんは
命を操る星の中で最も力の最大値が高い
だからザウラクが癒やしてくれたけど
完全に治ってなかった私の傷も
ミアプラさんはちゃんと治せたんだよね
あの時にそう確信出来たんだ」
アルタイルの話をサラスは満足気に聞いていた、アルタイルの成長をサラスとミアプラは感じていた。
「その顔だと間違ってなさそうだね」
アルタイルはサラスとミアプラを見て言い、サラスは微笑んでいる。
「そう考えると
メビウスにとって一番都合の良い時は
多分だけど……
サラスがメビウスの杖を手に入れる前
もしくは最近なら
ステラが生まれる前に戻すはず……」
(そんな……)
赤い誓いの星は、メビウスならやりかねないと思い、心で呟き聞いていた、それが意味することに気付いていた。
「そこまで戻せば
ステラさんの存在を
消す事に繋がるからだよ」
アルタイルが言い、ハッとしたアル・スハイルが言った。
「そうか……
そこまで戻せば
サラスがステラを生み出した星海術は
行われてない事になる
そうなれば……
ステラの存在が否定されてしまい
アル・ムーリフは魂の存在に
戻ってしまうでないか……」
「そう言うこと
つまり同じ大大星である
セプテントリオの最大値も高くて
メビウスの力は
そこまでの影響を与える事が出来ない
それか限定的に時を戻して
何かを妨害しようとしたんじゃないかな」
アルタイルはそう言い、答えを求める様にミアプラを見る。
「私もそうだと思います……
お母様なら…出来るなら……
そうしたと思います」
だが赤い誓いの星がそう言った。
「そうね……
メビウスもまだ
アル・スハイルとアル・ムーリフ
二人から受けた傷が
まだ癒えきってない見たいね
星本体を失ったスピカ様が
半分の力…いえ……
数多くに分けられたかも知れない
その力で抑える事が出来る
そんな力じゃセプテントリオに
大きな影響を与えることは出来ないはず
だからアル・スハイルの
一番大切なアル・ムーリフを
ステラさんを消す程には戻せなかった
そう考えるのが自然ですね」
ミアプラが赤い誓いの星の言葉を補足して説明してくれ、アル・スハイルは静かにその幸運を受け入れていた。
「ちょっと待って
セプテントリオは大大星で
メビウスと……
対等な力を持ってるんじゃないの?
セプテントリオでも
メビウスの力に抵抗出来ないの?」
アルタイルが聞いた、ミアプラの話ではセプテントリオの力でも、力を取り戻したメビウスに敵わない様な言い方であった。
「それはセプテントリオの……
星の意思次第なんです
セプテントリオが
メビウスに意を唱えれば
メビウスが最大の力を持ってしても
抵抗し寄せ付けないでしょう
セプテントリオには
それだけの力があります
もしセプテントリオが
メビウスと共に歩もうとすれば
メビウスの力を受け入れ
時を戻してしまうでしょう……」
ミアプラは難しい顔をして言った。
「じゃぁ……
僅かに時を戻したってことは
どう言う……」
アルタイルが顔を曇らせて言った。
「セプテントリオは
傲慢な一面もある星じゃ……
今の三つの大大星の中で
最も力を持つだろう」
サラスがあごを触りながらおもむろに話し始めた、セプテントリオの杖を持っていたサラスは、その性質に気付いていたのだ。
「今は力を取り戻し切ってない
あのメビウスを
見下しておるかも知れんな……
生命の中でも最も力のある種族
精霊で星を満たそうとしている
それ程に傲慢で
自らを最大最強の星であろうとする
じゃがそれが満たされれば
あとはいい顔をしている星じゃ
恵みを求められればそれに応え
助けを求められればそれにも応える
セプテントリオが
アル・スハイルとアル・ムーリフを
狙い始めたのは……
そなたらが憎い訳ではない
そなたらの成長を恐れたのじゃ」
「我ら姉妹を恐れた?」
アル・スハイルが聞いた。
「そなたら二人は片鱗を見せ
力を増し成長しはじめた
メビウスの娘である
赤と紫の誓いの星と共にな
最強でありたいと願う
セプテントリオからすれば
そなたらは脅威でしかあるまい
だから狙おうとした
じゃが力の象徴たる
セプテントリオの杖は
ガイアによって折られてしまった
本当はメビウスに手を貸し
そなたらを葬りたい
セプテントリオは
今とても悩んでいる筈じゃ
メビウスに着くか
そなたらを狙うことを諦め
ガイアが共に行動している
スピカ様に着くかとな」
アル・スハイルとアルタイルは、セプテントリオが今後の星海の未来を握っている事にやっと気づいた、そしてセプテントリオは信用ならない星だとも思えていた。
だがそんな時に、ミアプラが赤い誓いの星に言った。
「言いたい事があるなら
貴女も言いなさい…貴女の主人に……
今のアル・スハイルなら
聞いてくれるかも知れませんよ」
赤い誓いの星は少し考えていた、ミアプラは赤い誓いの星が、アル・スハイルに何かを言いたそうにしていたのにも気付いていたのだ。
「いいの?
もしメビウスがスピカ様の光星を
超えて出て来たら
アル・スハイルは一番最初に
立ち向かって行くわよ
大切なアル・ムーリフの為に
何でもするわ
そんな戦いになったら
今度は今まで見たいにはいかないわ
さっきアルタイルさんが言った
星の最大値って正しく言うと
信頼関係なのよ」
ミアプラはサラスの右肩に優しく手を置き、サラスは左手で優しくその手に触れ、二人の信頼関係を赤い誓いの星に見せる。
「つまりセプテントリオの杖に
頼らなくても
抵抗出来る力になるのよ
サラス見たいにアル・スハイルが
貴女のパートナーになってくれれば
アル・スハイルも赤い誓いの星を
大切なパートナーとして
信じてくれれば
私達の様に巨星と言えるくらいに
強くなれるわ」
ミアプラが言い赤い誓いの星はアル・スハイルを見る、アル・スハイルは今まで自分と共に戦って来てくれた赤い誓いの星を、優しい眼差しで見ていた。
アル・スハイルは今までの話しも重要だが、赤い誓いの星に伝えなければならない事があった、いや…伝えたいことがあった。
(なんで……
そんな目で私を見るの……)
赤い誓いの星は不思議に思え戸惑いもあった、だがアル・スハイルはその優しい眼差しを変える事なく、赤い誓いの星に歩みよって行く。
その顔にはアル・スハイルとは思えない、優しい表情に感謝の気持ちがこもっていたが、その気持ちは赤い髪をした少女の姿になっている、赤い誓いの星にだけ届いていた。
(なんで……
わたしは何もしていない
わたしは何もしてないよ)
赤い誓いの星はそう思い、後ろに一歩引いた、今までのアル・スハイルの行い、だいぶ長い間、破壊と戦いの力を好んだアル・スハイル、その力を変換し与えていたのは赤い誓いの星が、残酷な行為から目を背ける為であった。
細かい変換を必要とする行為をしなくてもいいように、アル・スハイルの基本的な力を底上げして、自分はなるべく見ないようにしていたのだ。
アル・スハイルの戦いも行いも目を背けて来ていたのだ、彼女がどう思って来たのか、どんな気持ちで戦い続けて来たのかさえも。
アル・スハイルは、どうした?と言う様に少しだけ首を傾げたが、怯える必要はないと言う様に歩み寄って行く。
「何もしてないよ……」
赤い誓いの星はやっとつぶやく様に言った、アル・スハイルは一度立ち止まり、目を静かに瞑り赤い誓いの星の次の言葉を待った。
「何もしてない……
わたしは何もしてないよっ‼︎‼︎
こわくてこわくて
わたしは何もしてないんだよっ‼︎」
その場にいた全ての者が、赤い誓いの星の言葉を不思議に思った、あのアル・スハイルの強さは赤い誓いの星があってこそのものだと、そう思っていたからだ。
「アル・スハイルは
いつも一生懸命だった……
でもわたしは……
戦うのがこわくて
いつもいつも隠れて
見て無かったんだよっ‼︎
アル・スハイルがイメージした通りに
そうしていただけなのっ!」
アル・スハイルはそれを聞いても、優しく目を瞑り静かにたたずみ聞いている。
「だから……」
赤い誓いの星がそう言った時、アル・スハイルは聞いた。
「そなたは何という……」
アル・スハイルは優しく小さく微笑み、瞳を瞑りながら聞いていた。
「えっ……」
赤い誓いの星は戸惑った、アル・スハイルが何を聞いたのか解らなかったのだ。
「ふ……
そなたは何と言う名なのだ
教えてくれぬか?」
アル・スハイルは立ち止まったまま、優しく聞いていた。
「な…なまえ…ですか……」
赤い誓いの星は聞いた。
「そうじゃ……
余はそなたの名を知らぬ
今まで共に居たのじゃ
教えてくれても良かろう?」
アル・スハイルはそう静かに優しく聞いた。
そのありふれた質問に、赤い誓いの星は不思議に思うより困った仕草を見せた、それは答えられないと言うより何か違う仕草であった。
「どうしたのじゃ?
赤い誓いの星とは
呼びにくいから聞いておるだけじゃ
何も疑わなくても良い
なんと言うかの……」
アル・スハイルは瞳を閉じたまま言う、アル・スハイルはある想いからそう聞いていた、だがアル・スハイルの性格からそれを上手く言えなかった。
(あのアル・スハイルが
悩んでる……
わたしは貴女の星……)
赤い誓いの星はそう初めて思った、今までもアル・スハイルが悩んでいる姿は見て来ていたが、今のアル・スハイルの悩んでいる姿は初めて見たのだ、冷たく厳しくもどうするかを悩むのではなく。
友達に何かを伝えようとする様な仕草であった。
(わたしなら
あなたが…あなたが……)
赤い誓いの星はアル・スハイルに向き合い、アル・スハイルの心の内を見ようとした。
それは赤い誓いの星にとって初めてのことであった。
「教えてくれぬのか?」
アル・スハイルがなんて言えばいいのか、解らなかった様で僅かに困った様な表情で聞いた。
(アル…スハイル……
あなたは……)
赤い誓いの星は初めてアル・スハイルの心の内に分け入って、涙が溢れそうになった、目を瞑りながらも涙を溜めている赤い誓いの星は耐えていた。
涙を流さない様に耐えながら言った。
「好きに…好きに…呼んで下さい……」
「好きにとは?」
アル・スハイルが目を瞑ったまま静かに聞いた、その表情にはやっと赤い誓いの星が話してくれる、そう思いまた微笑み聞いた。
「私には……
名前が無いのです
赤い誓いの星と言うのは
私達の力からそう言われる様になった
それだけの呼び方なんです
私だけじゃなくて
姉の紫の誓いの星もそうなんです」
赤い髪の少女は困ったように、それでいて寂しそうに言った。
その話を聞いていたミアプラは赤い誓いの星が、やっとアル・スハイルと向き合おうとしている姿を見つめ静かに微笑んでいた。
「メビウスから
名を貰っていないのか?」
アル・スハイルが聞いた。
赤い髪の少女は静かに頷いた。
アル・スハイルは瞳を瞑ったままであるが、赤い髪の少女が頷いたのが解った様に少し考えてから歩み寄った。
瞳を瞑ったまま、赤い誓いの星に近づき手が届く距離まで来て立ち止まって小さく微笑み言った。
「ならば余はそちを
赤と呼ぶが…良いか?」
「赤……」
赤い髪の少女は小さく呟いた。
「そうじゃ赤じゃ
赤い誓いの星と呼ぶのは
いささか疲れる
愛嬌も何もないではないか
そなたらしく良いと思わぬか?」
アル・スハイルが言い、赤い髪の少女は少し困ったようにそれでいて嬉しそうにしていた。
「良いようじゃな」
アル・スハイルはそう優しく微笑んで再び聞いた。
「はい…
ありがとうございます……
でも…
わたしは……」
赤い髪をした少女はそう答えたが何かを言いたそうにしていたが、アル・スハイルは言った。
「余は赤に感謝しておる
そなたが居なければ余はあの時に
死を迎えていただろう
それは紛れもない事実じゃ
余はそなたが何もしていなかったなど
何一つ思っておらぬ
そなたが居てくれた
余はそなたの助けを得て
今まで戦えてこれたのだ
余のイメージしたままにしてくれた
それで余は助かっておったのだ
余の行いを見て余を恐れ
離れていった者も数多くいる
じゃがそなたは
余のそばに居てくれたではないか
そなたは臆病などではない
そなたは何もしていないなど
余は思っておらぬ……」
アル・スハイルは赤に、精一杯気持ちを伝えようとしていた。
アルタイルはアル・スハイルが慣れないことをしている様には見えなかった、不器用ではある気がしたが、アル・スハイルが元々は優しい少女であると解っていた、それは長女であり、名門であるアル家を背負うと言う気持ちが彼女をそうさせているのだと、アルタイルは気付いていた。
だが赤もそれに先程だが気付いていた、アル・スハイルの気持ちに分け入り赤も気付いていたのだ。
「赤よ…そなたは
気付いてなかったようじゃが……
アル・ムーリフが居なかった
あの500年……
余はそなたが居て
寂しくはなかったのだ」
アル・スハイルは赤にそう言い、赤はその言葉が信じられ無かった、あの間は赤がアル・スハイルに破壊と戦いの力を与えていた時期であった、それは感情を麻痺させる様な時もあり、アル・スハイルを孤独にしかねない力でもあった。
「え…そんなはずは……」
「そなたは
紫の星の妹のようじゃな
昔のアル・ムーリフの様に
臆病なのはようにておる……
余はそなたから
アル・ムーリフを見ていたのじゃ」
アル・スハイルのその言葉を聞いて誰よりもサラスが驚いていた、表情には出さないがその500年前からアル・スハイルは、赤の存在に気付いていたのだ。
「じゃから余は
アル・ムーリフを
探し続けることが出来た
そなたに支えられてな……
アル・ムーリフと再び
歌を歌いたくての……」
アル・スハイルは幼い時、アル・ムーリフと二人でアル・カストルの前で歌を歌った時を思い出しながら言っていた。
赤はアル・スハイルにとって、側に居ることが自然な存在になっていた事に気づいた。
「アル・スハイル……」
赤がそう言い、涙を溜めながら優しく言った。
「わたしは過去の時に
触れることが出来ます……」
赤の言った言葉は先程の力を見れば、誰もがすぐに理解した。
「わたしの姉
紫の誓いの星は
今と言う現在に
触れる事が出来ます」
アル・スハイルは、赤が続けて言った言葉に驚きはしなかった、それはアル・ムーリフが記憶を代価に時を止めてしまったあの瞬間に目の当たりにしていたからだ。
アル・スハイルは赤が何を言いたいのか、何を願って居るのかを静かに聞いていた。
「母メビウスは
私達の力を合わせ持ち
星の女王になろうとしていました
スピカ様からその座を奪い
また静かな星海に戻そうとしています
大大星が支配する星海に
戻そうとしているんです……」
「さようか……」
アル・スハイルは静かに言った、無論その意味を理解していた、大大星が支配すると言うことは星海人が淘汰されることを意味する、自由な意思も奪われ全てを力でねじ伏せることでもある。
「赤よ……
そなたは余に
どうして欲しいのじゃ?」
アル・スハイルが聞いた、赤は言っていいのか悩むそぶりを見せたが静かに言う。
「お母様を…
止めて下さい……」
「良いのか?」
アル・スハイルは自然に聞いた、まるで不可能では無いと言う様に。
「そなたの母であろう?
相手が相手じゃ…手加減は出来ぬ……
その命を奪うことになるやも知れぬ
良いのか?」
アル・スハイルが厳しい表情をしていた、それは星海全ての星の生き物を滅ぼそうとしていた、あの時代のアル・スハイルの表情で冷酷な眼差しをしていた。
ミアプラもサラスもアル・スハイルのその表情の意味が解らなかった、アル・スハイル一人で出来るはずが無いことだからだ。
だがアル・スハイルは態度を変えない、まるで不可能では無いと言う態度をとっていた。
「出来るの……?」
赤が聞いた。
「出来るか解らぬ……
それなりの支度にも時がかかる
幸い彼奴をアルナイルが
閉じ込めてくれておる
アルナイルの言葉からして
それを待っているのかも知れぬ……」
(美しく変えるまでの時間くらいは
作れると思います)
アル・スハイルは読唇術で読み取った、アルナイルの言葉を考えながら話していた。
「セプテントリオは
ガイア達に任せれば良い
そちにも手を貸して貰わねばならぬ
ミアプラの力を超える相手じゃ
話が通じるとは思えぬ……
まともに戦えば
負けることしか思いつかぬ
ならば黙らせるまでのこと……」
赤はアル・スハイルが何を考えてるか解らなかった。
「やっ…やっぱり……」
赤は怖気付いた様に何かを言おうとした。
「ふっ……」
アル・スハイルが小さく笑い優しい笑顔を見せた。
「えっ……」
赤はその笑顔に驚いた、アル・スハイルのその笑顔は明らかに恐れを隠した笑顔であった。
「覚悟を決めぬか
そちが決めれば余も決めよう
余も怖いのじゃ
勝てぬかも知れぬ……
シリウスの時の様に行くとは思えぬ
じゃが
やらねばならぬのじゃ
この星海の為に
アルナイルの為に……」
アル・スハイルが言った、アルタイルは気付いた、アル・スハイルが勝算の無い戦いを仕掛けようとしている、何よりも大切な人の為に、そして素直に怖いと思うものを、怖いと言うアル・スハイルの姿を見ていた。
「アル・ムーリフさんの為に?」
赤がそう言った時に気付いた、それは赤の姉、紫の誓いの星の為でもあると。
「そうじゃ…
そちも紫の誓いの星のことは
大好きなのであろう?」
アル・スハイルが優しく聞き、赤は静かに頷いた。
「決まったようじゃな……」
アル・スハイルが言った、赤の瞳から僅かではあるが母メビウスを止めようと言う意思が見えていた。
(そちにアル・ムーリフと
同じ後悔はさせぬ…余がさせぬ……)
アル・スハイルはそう心で呟いてから大きな声で言った。
「レグルスッ‼︎
すぐに星海中の街に行けっ!
そして星を持つ星海人を全て
アトリアロフに集めよっ‼︎‼︎
アルタイルッ!
そちは全ての大星を集めよッ‼︎‼︎
アルデバランからヴィーナスまでも
余に従わぬ大星も含め全てを集めよっ‼︎‼︎
そちの名を使ってでも
アル・ムーリフの名を使っても良いっ‼︎‼︎
全て集めよっ!‼︎」
「ちょっと待って
カノープスもかっ⁉︎」
アルタイルはカノープスに不信を抱いていた、それは力に従うカノープスは再び裏切る可能性が非常に高いからだ。
「そうじゃ……
彼奴が余に従わぬならば
次は許さぬ
そう伝えよ……」
アルタイルはそれを聞いて、アル・スハイルが昔に戻ったような気がし、何かを言おうとしたがアル・スハイルは強く言った。
「解らぬかっ‼︎‼︎
セプテントリオに頼ってはならぬ
我ら自らの力で
大大星を凌ぐ力を見せなければならぬ
いつまでもアルナイルに
頼る訳にはいかぬっ!」
アル・スハイルの言葉を、サラスは静かに聞いていた、アル・スハイルがどの道を選ぶのかを確かめる様に。
「大大星メビウスと
星海をかけた争いなのじゃっ‼︎
我ら自らの自由を手にする為に……
急がぬかっ‼︎‼︎」
アル・スハイルが叫ぶ様に言ってアルタイルは考えを聞こうとしたが、レグルスがアルタイルの肩をつかみ止めた。
アルタイルはレグルスの目を見て気付く、レグルスの目はアル・スハイルを信じている目をしていた。
アルタイルはレグルスと共に書庫を出て星海に飛び立って行った。
「アル・スハイル……」
赤が呟きアル・スハイルが言った。
「安心して…
一つだけ…
方法があるから……」
その口調はアル・スハイルが、赤に心を許してる、それを赤に伝えるには十分であった。
「アルナイル…
帰ってくるよね……」
「あぁ……
あいつは約束を
破ったことはねぇ……」
オルビス(セプテントリオ)にいるステラが不安そうにガイアに聞き、ガイアは静かにそう答え、馬車を走らせていた。
エルナトもザウラクも何が起きているのか解らなかったが、エリスは幼い純粋な目で二人が感じている寂しさを感じていた。
なんでどおして旅にでたの?~第一章 大大星達~ 完




