第一章 第11話 巨星ミアプラ
アトリアロフでは、アルタイルとアル・スハイルがアル家の書庫で、本を読み漁っていた。
古い星の記述を調べていくが、力を分ける星は中々見当たらない、アルタイルは星の力を数多く記した星海の図鑑を調べながらぼやく。
「有名なはずなのに……
図鑑に乗ってないってどう言うこと?
もう存在しない星なのかな……」
「アルナイルの星はのっておるか?」
アル・スハイルが聞いた。
「のってるよ
光星アルナイル
正体不明の実体の無い星……」
アルタイルはそう言いながら何かが引っかかった。
「余はそれを星とは思わぬ……」
アル・スハイルはそう言いながら一冊の本を読み終えたのか、静かに閉じて棚に戻し一冊の本が目に入り妙に気になり静かに手にした。
それは亡き父、アル・カストルが記した日記の様なものであったが、何故か歴史の棚に収められていた。
「何故この様な本がこの棚に
執事に言っておかねばならぬな……」
アル・スハイルがそう言い、本の真ん中辺りのページを開き、そっと目を通し少し硬直した。
「父上は……
サラスの友であったか……」
アル・スハイルが呟いた。
その言葉を聞いて、アルタイルの中で一つ引っかかっていたことがスッと落ちていった。
(ひょっとして……
サラスは二人を守ろうとしてたの?)
アルタイルはその条件を加えて、今まで集めて来たことを整理して並べて見ると一つの仮説が立ち始めていた。
(サラスは
アル・スハイルとアル・ムーリフが
メビウスに狙われてる事を知っていた
いや…予想していたとも言ってもいい……
その中で
あえてメビウスに従うふりをして
二人を庇い続けた……
違う…それじゃメビウスを止められない
メビウスから動いたら
どうにもならない……)
アルタイルが考えている間、アル・スハイルは読み続けている。
「クックックックッ……
ハハハハハハハハハハハハハハッ‼︎」
アル・スハイルが急に笑い出した、その笑いは心から自らに呆れた様な笑いであり、真実に触れた様な笑いであり、不気味な笑いであった。
「どうし……」
アルタイルが戸惑い聞こうとしたが、アル・スハイルが言った。
「全て決まっておったのじゃ……」
アル・スハイルが言った。
「何が…決まってたの?」
アルタイルが聞いた。
「我が父は
セプテントリオにおったようじゃ……」
アル・スハイルが静かに言った。
(セプテントリオの杖っ‼︎‼︎
そうかサラスは
セプテントリオの杖を持っていた
それならサラスがメビウスを牽制出来る
あとは適当に理由をつけたんじゃないかな
セプテントリオが望む事
セプテントリオを元の精霊の星に戻す
きっとそれだと思う……
それが出来たら手を貸すとか言って
それをゆっくりと
計画してる様に見せかけてたんだ……
そうやって
アル・スハイルとアル・ムーリフが
成長するのを待っていたとしたら……
でも…メビウスはなんで
サラスが動くのを待ったんだろう
メビウスだけじゃ復讐を果たせない
何かがあったのかな……)
この時のアルタイルにはそれが解らなかった、メビウスの前に立ちはだかる、今の星海を変えようとしている存在に気付いていなかった。
アル・スハイルは静かに言った。
「我が父は
大大星スピカを消滅させていたのじゃ……
その悲しみ故に
星を滅ぼしてはならないと
全ての星海人に
法として広めたとある……」
アル・スハイルはそこに書いてあったことを疑いはしなかった、星海人と星の生き物達との戦いを考えれば、つじつまが合う気がしたのだ。
「スピカを…
どこにそんな力が……
たった一人の星海人に
出来るはずが…‼︎‼︎」
アルタイルはやっと思い出した、豊穣の星、大大星スピカ、その力は全てを分け与えることを主とし、溢れ出る豊かさ全てを力とする星、その豊かさが指すのは星海全域で沸き起こる富や実り資源にまで及び、それに喜ぶ星の生き物達の精神的な豊かさにまで及ぶ、優しくその全てを平等に分け与えようとするスピカを、メビウスやセプテントリオの二つの大大星に生まれた生き物達は、星の女王とそう称えていたと書かれていたことを、セプテント家の神殿書庫の書物に書かれていたのも思い出した。
「アル・スハイルッ!
アル・ムーリフがメビウスの星から
集めた書物はどこにあるのっ!」
アルタイルが聞いた、アル・ムーリフはアル・スハイルがメビウスの星を滅ぼしたあとに、その星の文明の痕跡を残そうと探索していたのだ。
アル・スハイルは静かに奥の棚を指差し、アルタイルはすぐに駆け寄り、メビウスの星に語られていた神話の様な記述を調べ始める、大大星スピカは既に無い、ならば同じ大大星であり、スピカと交流をしていたメビウスの人達なら何かを知っていたはずだと考え、セプテント家の神殿書庫で身につけた速読で高速で読んでいく、言語は違うがセプテントリオの精霊達の言葉に近く、細かいことまでは読み解けないが、内容は何となくだが頭に入っていく。
その間もアル・スハイルは静かに、アル・カストルの本のページをめくっていく。
「やはり…
我が父がスピカを滅ぼしてから
星々の生き物が溢れ出し
我ら星海人を襲い始めておる……
我が父はなぜその様なことを……」
アル・スハイルはそう呟き、悲しみに暮れそうになった、自らの手で多くの星を滅ぼし自らの手だけが血に染まっている気がしたが、それは父アル・カストルから受け継がれたものだと悟った。
そして図らずも自ら同じ道を歩んだこと、そしてアトリアロフが何度も星の生き物に襲われたことも、アトリアロフにアル家が有るからこそだと気付いた。
全ては亡き父アル・カストルが原因だと感じてしまっていた、アル・カストルがスピカを消滅させた時からこの永遠を思わせる戦いが始まっていたとしたら、全ては今の状況になることがその時から決まっていたと、アル・スハイルは心から感じた。
「何を考え我が父は
大大星に……
それが何たることを招いたかっ!」
アル・スハイルが感じ、アル・カストルに対して初めて怒りを覚えた、それは当然である。
アル・スハイルの知っている星海初期、アルタイルが生まれるよりも前、星海人はサラスがミアプラの力を手にするまでは、星の生き物達に襲われなす術が無かった。
星海人の祖先はセプテントリオから生まれた、そのセプテントリオが姿を消してしまい、元々精霊だった星海人の祖先達は抵抗する力をセプテントリオから得ることが出来なくなっていたのだ。
だがミアプラが手を差し伸べてから、他の星達も手を貸してくれる様になり、力を持つ星海人が増え始め、国が出来る勢いまで成長した時期があったのだ。
だがどの星海の歴史書にもある空白の時があり、それを境に一度壊滅的な打撃を受けたのか星海人の勢力は停滞し、今の様に街が点在する様にし繁栄して来た。
その空白の時に何処かに消えていたセプテントリオにいたアル・カストルが、セプテントリオを飛び立ち、大大星スピカを破壊したことを当てはめるとしっくり来るのだ。
大大星に明らかに星海人が反旗を翻した、アル・スハイルは星の生き物達が溢れたことと、大大星スピカが破壊されたことが関係し、星の生き物達が他の大大星に従い、星海人達を攻撃し始めたと推測し、自らの父アル・カストルを憎みそうになっていたが、ふとステラが今もガイアと旅してる光景が頭をよぎった。
「何が敵であろうと……
薙ぎ払ってくれる
我が父の罪で
大大星が相手であろうと
余は屈さぬっ
余が薙ぎ払ってくれようっ‼︎
余を見捨てず
余を見続けてくれた……
そちの為に余は屈さぬっ!」
アル・スハイルがそれを振り払う様にアル・ムーリフを想い叫んだ時、アルタイルはかつてメビウスの人々が残した書物から、ある一文を見つけた。
「星の女王スピカ
星海を照らす為に
触れることの出来ぬ光の星とならん……」
アルタイルが小さい声でその一文を読んだ。
「触れることの出来ぬ光の星……」
アル・スハイルがそれを聞いて呟いた。
「そんな星……
一つしかない……」
アルタイルがそう呟きアル・スハイルが言った。
「アルナイル……」
二人は一瞬だが時が止まった様に思えた。
アルナイルが争いを好まないこと、絶大な力を思わせるが、その全てを救おうとすることにのみ使うこと、いつも正確に力量を見抜き冷静に対処しようとする姿勢、ステラがガイアを救おうとした時に引き止めたことも全てが繋がっていく。
二人は互いを見て頷き書庫から飛び出した。
「あやつは今どこにおるのじゃっ‼︎‼︎」
アル・スハイルが言った。
「解らないよっ!
でも星を見ればすぐに解るはずっ!
アルナイルの光を探せば
すぐに見つけられる‼︎‼︎」
アルタイルが言う、アルタイルは鷲の獲物を探す能力なのだろうか、アルナイルが今は星海に居ることを感じていた。
二人は大大星スピカを失う訳にはいかなかった、アル・スハイルもアルタイルもほのかな希望とそれを上回る不安を感じていた。
それはアルナイルが武器を持った姿を見た事が無かったからだ、星の力を持つ大大星の武器を持たず、メビウスと渡り合えるのか、それが二人に不安を覚えさせていた。
廊下を歩き、アル・スハイルの元に行こうとしていたプルートが、慌てて向かって来るアル・スハイルを見つけて言った。
「アル・スハイル様?」
「プルートッ!
アトリアロフを頼むっ‼︎」
アル・スハイルがプルートにそう走りながら頼んだ、今はザウラクがステラの元に居る為に、大切なアトリアロフの街の守りをプルートに頼んだのだ。
二人は屋敷を飛び出し星海を見渡し、アルナイルの輝きを探した。
美しくあまねく星々を見渡し、アルタイルがメビウスの星の方を指差して言った。
「あれかな……」
アル・スハイルはすぐにアルタイルが指差した方を見る、微かな光に気付いてすぐに赤い星を出して長距離射撃用の視界で見て叫んだ。
「あやつっ!
メビウスと戦っておるっ‼︎‼︎」
直ぐにアル・スハイルは飛び立ち、アルタイルもすぐに追ったが、アル・スハイルは違和感を覚えアルタイルに聞いた。
「アルタイル傷が痛むのかっ⁉︎」
この距離の移動、アルタイルが超加速を使わないことに違和感を覚えたのだ、見るとアルタイルが首を右手で抑えている。
アル・スハイルは気付いた、そのアルタイルが抑えているのは先の戦いでメビウスに斬られたで場所あり、ザウラクに命の力を注がれ一命を取り留めたアルタイルは、力がまだ回復してなかったのだ。
「アルタイルッ
無理をするでないっ!
そちはアトリアロフに残るが良いっ‼︎」
アル・スハイルが強い口調で言った。
「あんただけで
行かせる訳にはいかないっ!
メビウスはあんたを狙ってるんだっ!」
アルタイルが言い返した。
それを聞いたアル・スハイルは素早くアルタイルの前に行き、思いっきりアルタイルを引っ叩いた。
「…………」
アルタイルがアル・スハイルの厳しい顔つきに変わっていることに気付いた。
「な…」
「そちは……
アル・ムーリフの手星であろう……」
アル・スハイルが言った。
アルタイルはアル・スハイルが何を言いたいのかを悟った。
「解ったかっ‼︎
この愚か者がっ!
さっさと立ち去れいっ‼︎‼︎」
アル・スハイルはそうアルタイルに厳しく言い、アルナイルの輝きに向かって飛び去って行ってしまう。
「ほんとに……
あんたも変わったもんだね
いつからそんなに
他人を思える様になったんだい」
アルタイルはそう小さく微笑みながら言った。
アル・スハイルはアルタイルを心配し、そしてアルタイルが満足に戦えない事にも気付いていた、そして今は傷を癒やし、自分に何かあったらアル・ムーリフの力になってやって欲しいと思いそうしたのだ。
「悪いけど……
ついていくよ
あんたを死なせる訳にはいかないからさ
アル・ムーリフ様の手星としてね」
アルタイルはそう言いアル・スハイルを追った、だが力が戻ってないアルタイルはアル・スハイルに追いつけないと感じ始める。
「足でまといって
ことだったのかな……」
アルタイルがどうするか悩んでいた時、アルタイルの真上を美しい水色の彗星がメビウスの星に向かって流れて行った。
「あれは……」
アルタイルは呟きその彗星の放つ力を感じ、大きく目を見開いて言った。
「ミアプラッ‼︎‼︎」
アルタイルが叫ぶとその体が軽くなったのを感じた。
「命の力……」
アルタイルが呟き再び彗星を目を凝らして見ると、アルタイルは確かに見た、かつて見たあの者の姿を……。




