第一章 第8話 手星
「守らねばならぬか……」
その昔サラスが大地に抱かれる様に深い洞窟の奥に突き刺さった、セフテントリオの杖の前で呟いていた。
(そうだミアプラよ
我を見捨てた者の末裔を滅ぼし
星の秩序を取り戻せ
あまたの星が今や奴らに
手を貸し始めている
お前の星が最初に裏切ったのだ
そのお前が星海人を率いる
アル・スハイルを倒せば
星海人達も気付こう
さすれば皆このセプテントリオに戻り
そなたはこの星の力を使い
望んでいた星の王にしてやる)
セプテントリオの杖がそうサラスに話しかけいる、だがサラスは動じる様子は無く、何かを考えていた。
(これでは気付かれてしまう……)
サラスはそう心で呟き小さな声で言った。
「まずは隠さねばなりませんな……」
サラスはそう不思議なことを呟いてから礼を取りはっきりと言った。
「良いでしょう
裏切りの責はこの私がとりますゆえ
今までのことをひらに
お許しください……」
(それでいい……
さぁ我をその手に取るが良い)
セプテントリオの杖がそう言った時、サラスはセプテントリオの杖に見えない様に不敵な笑みを浮かべ、神妙な面持ちでセフテントリオの杖を手に取り大地から引き抜いた。
「アル・スハイルを倒すのは良い……」
サラスはそうここにも無いことを呟いて洞窟を後にした。
それから数億年の月日が経った。
「ふぁぁ……」
ガイアは今日もあくびしている、違うのは馬車を走らせていることだった。
「今日も寝れなかったのですか?」
エルナトがガイアに聞いた。
「少しは寝れたけどな……
寝たりねぇ……」
ガイアは一緒に旅について来た、エリスを警戒しなかなか眠れなかったのだ。
ステラがエリスを後ろから抱き枕がわりに抱きしめながら寝てくれたが、エリスもガイアに抱きついていた、そして気付いたらエリスは星の力を使って少女の姿になっていた。
ガイアは危険を察知して馬車から降りて、座る様にしてやっと寝れたのだ。
「エルナト……
寝ぼけて星の力使うっての
何とか何ねぇのかよ……」
ガイアがエルナトに言った。
「いつもはアル・スハイル様が
寝ながらも赤い誓いの星の力を使って
エリスちゃんの星の力を
抑えてくれてましたが
私はまだその域に達してないので……
すみません」
エルナトが申し訳なさそうに言った。
ガイアは馬車の中を見ると、ステラがエリスの星の使い方の練習に付き合っている、ステラはエリスが以前の様にガイアに迫ったらお仕置きするつもりだったが、昨夜は完全に寝ぼけていたので、ちゃんと制御出来る様にしてあげるのが先だと思っていた。
「ステラ様もまだ人の身で
アル・ムーリフ様の時の様には
まだ星の力を使いこなせない様子
このままだと旅に支障がでますよね……」
エルナトが困りながら言う。
「そうだな……」
ガイアは眠そうに言うが、目の前に炎に包まれた鳥が飛んでくるのが見えた。
「なんだあれ……
焼き鳥が飛んでくるな……」
ガイアは寝ぼけた様に言った。
「ぷっ!」
エルナトは思わず笑ってしまった、ザウラクが鳳凰の姿で向かって来るその姿を、そう言ったのはガイアがはじめてであった。
「あれはザウラク様です
アル・ムーリフ様の手星の一人ですよ」
「へぇ……
ステラに客だぜ?」
ガイアがステラを呼んだ。
「誰かしら……」
ガイアが馬車を止めてステラがそう言い馬車から降りた、ステラはセプテント家の精霊達が忘れ物でも届けに来たのかと思っていた。
「エルナトさん
お久しぶりですね
お元気でしたか?」
ザウラクは明るくエルナトに挨拶している。
「はい
おかげさまです
こちらはハダルの生まれ変わりの
ガイアさんです」
エルナトは眠そうにあくびしてるガイアをザウラクに紹介した。
「あっこれは
アル・ムーリフ様の婚約者様ですね
私はアル・ムーリフ様の手星の一人
鳳凰の星ザウラクです
よろしくお願いします」
ザウラクが丁寧に挨拶してエルナトは、えっ!、と言う顔してガイアを見る、ガイアは耳を疑って飛び起きた様な顔をしていた、その反応からして婚約した覚えはない様で、慌てて言った。
「ちょっと待てっ……!」
そのやり取りを聞いたステラが前にでて来て、ガイアは言いかけたことを言葉を選ぼうとしていたが、ザウラクがステラに話しかけた。
「あなたがステラさんですか?」
丁寧にザウラクがステラに声をかけ、炎の翼からアルタイルに渡された本を出した。
「はい……
そうですけど……
ザウラク?
私のこと解らないのですか?」
ステラはステラとしては初対面だが、ザウラクが自分の手星でアル・ムーリフの時に仲良かったことは知っていた。
「えっ…とぉ……」
ザウラクは本を一旦しまい考え始めた、その様子は本当に解らない様だった、その姿を見てザウラクが、何故アル・ムーリフの手星になったのかをステラは思い出した。
「……」
ステラは困った顔をした、ザウラクが手星になった理由はザウラクから望んで来たのだ、それは実力は大星に匹敵する、いやカノープスなどよりも手強い、ある一定の条件に追い込まなければザウラクを倒すことは出来ないからだ。
だがザウラクは大星とは呼ばれない、何故かと言えば、考えはするが気付かなかったり、色々とアホっぽいところがあり、大星と呼ばれたいと思って最初はアル・スハイルに願い出たが軽くあしらわれ泣いていたのだ。
そんなところを見ていたアル・ムーリフは、悪い子じゃないと思い優しくザウラクに声をかけると、今度はアル・ムーリフにすがって来たのをステラはアル・ムーリフの記憶から思い出して思った。
(この子って
本当に変わらないなぁ……)
ステラがそう思っているとエルナトが言った。
「ザ…ウラク様……
ステラ様がアル・ムーリフ様の……
人に生まれ変わられた御姿で……」
エルナトが困りながらザウラクに伝えた。
ザウラクはそれを聞いて固まった。
「えっ……」
ザウラクは目を丸くして小さく呟いた。
ザウラクはステラを色んな角度からジロジロと見始めガイアは、なんだコイツ、と言う様にザウラクを見ている。
「ア…アル・ムーリフ様……」
ザウラクはやっと解ったのかそう呟いたが、半泣きのような声で言った。
「ア…アル・ムーリフ様……
あの…お美しい……
アル・ムーリフ様はどこに……」
「えっ……」
予想外な言葉にステラは驚いた。
(案ずるでない……
優しくしておれば
そやつはそなたに尽くしてくれる
昔からそう言うやつじゃ)
苛立ちそうなステラに紫の星が囁いた。
ステラはそう言われ、とりあえず落ち着こうとしたがザウラクは言い続けた。
「あのお優しくて
慈愛に満ち溢れた
アル・ムーリフ様が……」
ステラはワナワナし始める、まるで今は美しくなく、優しくない様な言われ様である、だがステラは耐えていたが、その時にガイアは面白くなって言ってしまった。
「あってみてぇな
そんなステラに……
のぁっ!‼︎」
馬車のステラ側に座っていたガイアは、ステラにザウラクの目の前でガイアを引き摺り下ろされ、殴り飛ばされ、ステラは紫の星を出して高圧的にガイアに言った、
「何か言ったかしら?」
その姿はアル・スハイルの妹であることを思わせるには十分過ぎた。
ザウラクはとても長い間、十数億年以上ものあいだ誤解していたと思った。
アル・ムーリフはアル・スハイルの妹であるが、とても優しく女神の様な存在だと思っていたが、怒るとアル・スハイル並みに怒るのだと感じた。
だがそれは星海人のアル・ムーリフの時は、確かにその面が強かったと言えるが今は人で性格も違う、それにザウラクは気付かなかった。
ガイアは今回も綺麗な星を見て気絶している、いやステラの手で眠りにつかされた。
「さっザウラク
ガイアは気にしないでいいわ
私にようがあって来たのよね?」
ステラが優しく微笑んで聞いたが、それはザウラクにとって恐怖を与えていた。
(アル・ムーリフ様に
今まで私はなんてことをしてたの……)
今まで度が過ぎるほどにアル・ムーリフとフレンドリーに接して来た、その過去が頭に過り、ステラの質問が聞こえない程の恐怖に襲われていた。
「どうしたの?」
ザウラクにステラが聞いた。
ザウラクは固まっている、それはかつてレグルスがステラの殺意の籠った微笑みを見て逃げ去った時、サルガスがアル・スハイルに蹴り飛ばされ痛めつけられた時、その様な空気をザウラクが放っている事にエルナトは気付いた。
(わたし…どうすればいいの……
アル・ムーリフ様の変換の力の前には
私は無力に近い……
あのシリウスがあのお方に敗れた時点で
ほぼ星海最強……
それは既に星海に響き渡ってる事実
そのあのお方と同等の力を持ってる
アル・ムーリフ様に
なんてことをしてしまったの……
わたしの未来が未来が未来が未来が未来が未来が未来が未来が未来がが未来が未来が未来が未来が未来が未来が未来がっ‼︎‼︎)
ザウラクはそう考えるのに1秒もかけずに考えていた、普段明るくてのーてんきなザウラクが絶望しているのを、エルナトは感じた。
(まぁ……
そうよね…ザウラクはハダルの強さに
野生の直感っ!って言って気付いてたし
そのハダルの生まれ変わりが
目の前で一撃でのされちゃったし
ガイアさんがステラ様に無抵抗なのは
いつものことで
私は見慣れてるけどね……)
エルナトはそう思い、ふと馬車の中を見るとエリスが馬車の後ろから降りようとしていた、エルナトは御者席から後ろに行き、エリスを連れて幌馬車の後ろから降りて、エリスはエルナトが予想した通り、後ろからステラに飛びついた。
「きゃっ!
脅かさないでよ
いまねおねーちゃん
お話ししてたのよ
エルナトと遊んでてくれる?」
優しいお姉さんの様にステラがエリスに言い、その場の空気が和みザウラクは僅かに安堵した。
「すっごい鳥さんっ
燃えてるよ!
熱くないのっ⁉︎⁉︎」
エリスの言葉にザウラクはまだ鳥の姿をしていたのに気付いた。
「あっ失礼しました」
ザウラクはそう気付き、人の姿に戻りアルタイルから渡された本ををステラに差し出して言った。
「アルタイルが
こちらの本をステラ様にと
預かって参りました」
「この本は……」
それは他ならぬアルタイルにが見て頭を抱えていた本だった。
「解ったわありがとう
ザウラクはこれからどうするの?」
「はい
しばらくはステラ様の御身の為に
お側にいようかと」
ザウラクは丁寧に言った。
「解ったわ
そんなに硬くならないでいいわよ
昔と一緒でいいから
みんなと仲良くしてね
あと食事はみんなと一緒に食べること
いい?」
ステラはザウラクにそう言い、ザウラクは先程のことといいどうしていいのか解らなくなった、まだ馬車に寄りかかるようにガイアが伸びている姿が痛々しい……。
「ザウラク様?
ステラ様が厳しいのは
ガイアさんだけだから
硬くならないで大丈夫ですよ」
エルナトが言う。
「エルナトはなんで
ザウラクに様をつけるの?」
ステラが不思議そうに聞いた。
「ザウラク様は
大星と同じくらいの実力をお持ちで
アル・ムーリフ様の手星で
私より目上なんですよ」
エルナトが微笑んで言う。
「私の手星ってのは関係なくない?」
ステラが更に聞いた。
「いえいえ
アル・ムーリフ様の手星は
アルタイル様とザウラク様の
お二人しか居ません
お二人とも大星クラスで
アル・スハイル様の手星とは
質が違うんですよ」
エルナトが簡単に説明した、アル・スハイルはある程度戦えて、利害が一致するか忠誠を誓うかのどちらかを満たせば手星に加えていたのだ。
「アル・ムーリフ様と手星の関係を
ずっと羨ましく思ってました
いつも仲良しな三人みたいで
いいなぁ…って……」
エルナトは思い出すようにそう言った。
「うーん……」
ステラはそう聞いて少し考える様な仕草を見せ、ザウラクもその主従関係の違いを考え始めると、エルナトは言った。
「でも
アル・スハイル様も
アル・ムーリフ様のおかげで
変わられました
私のことも以前より気にして下さりますし
力でものごとを進めることを
避けて下さってます
この星のことを学んでから
星神様になろうとされてます
以前のアル・スハイル様なら
とても考えられませんでした
これからきっと……
みんな仲良くなれると思います
主従の壁があっても
アル・ムーリフ様達の様な関係に
きっとなれると思いますから
お気になさらないで下さい」
エルナトはしだいに明るくなり、最後にはそう笑顔で言っていた。
「元から姉上はそう言うお人じゃ
少しばかりか道を誤って
戻れなくなっておっただけなのじゃ
済まぬなエルナトよ……
姉上を許してやってくれ」
ステラがアル・ムーリフとして優しくエルナトに言った、ザウラクはその姿を見て、昔と変わらないアル・ムーリフを見ていた、だが人の身体でどこまで紫の星を使いこなせるのかを少し気になり始めていた。
それはメビウスの力を目の当たりにしていた、ザウラクだけが気にしていた。




