第一章 第7話 知っている者
「ほう……
これが不死と言うやつか
違和感があるが
なかなか面白いではないか……」
アル・スハイルは不敵な笑みを浮かべながら言う。
「アル・スハイルッ!」
アルタイルは驚きながらも喜び大きな声で言った。
「そう言うことっ!
プルートがついてんだ
簡単にはあのお方は死なないって‼︎」
ザウラクがアルタイルに言い、アルタイルもメビウスを攻撃し始めるが、メビウスは静かに言った。
「繰り返す……」
するとメビウスは二人の前から姿を消した。
「あれ……」
力強く剣を振りそれが空振りに終わったザウラクは思わず呟いた。
「どこに……」
アルタイルが呟いた時、メビウスはアル・スハイルに襲い掛かっていた。
アル・スハイルが居た場所は、メビウスがついこの前2日前にいた場所であり、自分自身をその場に移動させたのだ。
アル・スハイルはサーベルを抜き、メビウスのチャクラムを受け止め、不敵な笑みを浮かべた。
「……」
メビウスは動じる事なく、チャクラムを放ちアル・スハイルを狙う。
「……?」
プルートはフルートを吹きながら少し離れ異変を気付いた、自らの音色でチャクラムを腐敗させようとしていたのだが、全く効かないのだ。
(なに……
ザウラクとは違う……
星そのものの力が大きすぎるんだ……
私の力が届かない……)
プルートはその自らの異質な力に自信を持っていたが、今までそんなことは経験したことが無く、僅かに恐れ始めていた。
「恐るなっ!
そちの力は見事っ‼︎
出来ることをせいっ‼︎‼︎」
アル・スハイルはそう叫び、コートから十数本のサーベルを出し、襲い掛かって来るチャクラムをそのサーベルで受け止め、素早くメビウスの首を狙って行く、アル・スハイルはメビウスの言葉が力と関係しているのを、ザウラクとアルタイルが今まで近接で戦っている間に気付いていた。
アル・スハイルは赤い光線放つが簡単に躱されてしまう。
「どこを狙っている」
メビウスが静かに言うが、アル・スハイルの光線は追撃しなかった。
アル・スハイルはメビウスが一言も発せられない様に、首を飛ばし一刀で仕留めることを考えていた。
プルートはアル・スハイルの言葉、そしてその戦いに初めて引っ張られる気がし、勇気が湧き上がって来るのを覚えた、かつて星海で英雄と呼ばれたアル・スハイルの姿がそこにあった。
プルートは心を込めて吹き始め、一生懸命にアル・スハイルに死の力を与え始める、かつての破壊ばかりに走っていたアル・スハイルならば、その力に飲み込まれてしまいそうな感覚をアル・スハイルは覚えるが、アル・スハイルはサーベルを振りながら自らに叫び続けていた。
(これが死の力……
なんとも酔いしれ
意思さえも飲み込む様な力じゃな……
だが……屈さぬっ!
余が積み重ねた罪……
何があろうと屈してはならぬっ‼︎‼︎)
アル・スハイルは自らとも戦っていたのだ、自らが再び過ちを犯さぬ様に、その誘惑とも言える死の力を必死に受け止めていたのだ。
そしてその叫びは気を失っていた赤い誓いの星に届き、赤い誓いの星が目を覚まし、今の状況に気づいた。
(なんで……
メビウスと戦ってるの……)
赤い誓いの星が呟く。
赤い誓いの星が呟いた時、メビウスがアル・スハイルの隙を見逃さず小さく呟いた。
「繰り返す……」
その瞬間、アル・スハイルを凄まじい速さのチャクラムが襲った、最初のアル・スハイルを切り裂いたチャクラムの動きだった。
だがアル・スハイルの口元が小さく笑った。
次の瞬間、五本のサーベルが瞬時に現れそのチャクラムを受け止めたのだ。
「っ‼︎‼︎」
メビウスが驚いた表情を見せた、それを受け止めた者は今まで居なかったのだ。
「だからぬしは
余に滅ぼされたのじゃ……」
アル・スハイルが高圧的に、低い声で言いメビウスが見せたその隙にメビウスの首を斬り落とした。
メビウスはやっと気付いたが、既に遅かった、繰り返すと呟こうとした時、その斬り落とされた首の口を目掛けて赤い光線が貫いた。
アル・スハイルはメビウスの能力に気付き、メビウスがここに来ることを予想していたのだと、そしてこの戦いの場を構築しながら戦っていたのだ。
アル・スハイルはメビウスが時を戻すなら、どのタイミングに戻すか予想していた、それは他ならぬ、アル・スハイルに致命傷を与えた最初の一撃、そのタイミングだと読み切っていた。
その為にそれを受けた場所に、アル・ムーリフから送られた一番大切なサーベルをその場に残していたのだ。
他のサーベルはボロボロになったが、アル・ムーリフから送られたサーベルだけは傷つく事なく、しっかりとメビウスのチャクラムを受け止めていた……。
更にわざと外した赤い光線を消されない様に、二人の戦っていた周辺を周回させていたのだ。
メビウスの体は星海に漂い、その首が恨めしそうにアル・スハイルを見ている、だがメビウスのチャクラムはまるで何かの意思を持つ様に、凄まじい勢いで飛び去って行った。
「ふっ……
所詮は武具に意識を乗っ取られた者
余の相手にならぬ……」
アル・スハイルはまるで知っていたかの様にそう呟き、アル・ムーリフのサーベルを持ち、星海に高々とあげ赤い光を放った。
「流石としか言えませんね
あのお方は……」
ザウラクがそうアルタイルに話しかけた。
「本当に…あの子は……」
アルタイルはアル・スハイルが自分を超えたような気持ちになり、誇らしげな気持ちでいた。
「すごい……」
プルートはただそう思っていた。
「ダメダメッ!
わたしはアル・ムーリフ様に
全てを捧げるのっ‼︎」
プルートはアル・スハイルに目移りしそうになった自分に、言い聞かせる様に自分の顔を両手で叩きながら大きな声で言った。
「…………」
アル・スハイルはそんなプルートを鼻で笑い、アルタイルの元に向かった、アルタイルとザウラクもアル・スハイルの方に向かい四人は集まりアル・スハイルから話しかけた。
「アルタイルよそなたが気付いたことを
話してくれぬか?」
アルタイルは少し考えたが、アル・スハイルがまた大きく成長してくれていたのを目の当たりにし、話し始めた。
少し前のことオルビスでは、心配する様にアル・スハイルの輝きをステラが見守っていた、アル・スハイルの星が今の戦いのさなか一瞬ではあるが陰ったのをステラは見逃さなかった、だが少しして再び強く輝き出したのを見てほっとしていた。
「支度を急いで下さい」
ステラが共に様子を見ていたユーファにそう言った。
「アルタイル様
アル・スハイル様も苦戦した様ですね」
ユーファが言った時、シャドウが神殿書庫から一冊の本を持って来て言った。
「こちらの書物に
それらしき武器の記述があります」
ステラはアル・スハイルからそのことを聞いて信頼出来る精霊達だけに、少しでも手がかりが欲しくて、神殿書庫で調べさせていたのだ。
その書物を受け取り、シャドウが挟んだ栞のページを開いて目を通す、サラスが書いたのだろう、サラスの字で記された一文を読んでそっとその書物を閉じる。
「ありがとう
助かります……」
「あと此方は旅先で開いてください」
シャドウがそう言い、もう一冊の本をステラに手渡した。
ステラはそれを受け取り、気にはなったがシャドウの言葉に意味があるものと思い、旅に出てから読む事にした。
「そうであったか……」
アル・スハイルはアルタイルの話を聞いて合点がいったように言った。
アルタイルはメビウスの力を持つ武器への対抗手段として、セプテントリオの杖を探す様に言ったのだ、真の大大星の力が強大であるのはサラスとの戦いで身をもって知っていたアルタイルの、冷静な判断であった。
「今回はアル・スハイルが退けてくれた
けど……」
アルタイルが言いかけた時、アル・スハイルが遮る様に言った。
「案ずるでない
余が何度でも退けてくれよう
余は守らねばならぬ」
アル・スハイルは不安にさせない様に言っていた。
「プルートよっ!
しばらく余に仕えよ
ついてまいれ」
アル・スハイルはプルートにそう言い、プルートの返事を聞こうとせずにアトリアロフに向かった。
アルタイルはザウラクに一冊の本を渡して言った。
「私もアトリアロフに行くから
この本をステラに渡してくれないかな?」
「別にいいですけど
高くつきますよ?」
アルタイルは忘れていた、ザウラクはアルタイルに対してはかなり現金に振る舞う事を。
「解ったよ
こんどご飯おごってあげるから
はやく行って来てね」
アルタイルはそうザウラクに言った。
「じゃあ
アトリアロフの
月光亭でお願いしますね」
ザウラクはわざわざアル・スハイルのお気に入りの、アトリアロフの高級レストランを指定して来たが、アルタイルは気付いた、そこならアル・スハイルに言えばタダで食事できる所で安心し、笑顔で言った。
「はいはい
解ったから早く行って来て」
「やった!」
ザウラクは喜んでオルビスに向かって言った。
「ザウラク……
だからあんたは
大星って言われないんだよ」
アルタイルは実力は十分あっても、少しぬけてて大星と呼ばれないザウラクを見て呟いていた。
翌日……
「ステラとりあえず
何処に向かうんだよ?」
ガイアがステラに聞いた、まだ旅の目的は聞いたが何処に向かうのかは聞いていなかったのだ。
「そうね
とりあえず北に向かいましょ
気になるところがあるのよ」
ステラが言った。
ステラはクンガ村と思われる記実をサラスが残した書物をから見つけていた、アル・スハイルを星神として祀った古い洞窟の中にある村で、その洞窟にある、アル・スハイルの女神像の足元にあった窪みが記されていた。
サラスがなんでそれを記したのかは書かれていないが、セプテントリオの杖の力を記したページの前のページに書かれて居たのと、本当にサラスがアル・スハイルとアル・ムーリフを敵視していたのなら、その女神象の存在を知れば破壊する筈だと考え気になっていた。
「北か……
あの北の神殿を目指すのか?」
ガイアが聞いた。
「行きたいの?」
ステラが聞いた。
「あぁちょっとな……」
ガイアが言った。
「解ったわ
あそこにも書物が沢山あったから
調べてみる価値はあるわね」
ステラがそう言った時、ステラの心に声が響いた。
(繰り返す……)
ステラは初めて聞いたはずの声だが、聞いた事があるような声だと感じたが、ガイアが言った。
「はやく行こうぜ……
めんどくせぇ事になりそうだからよ」
ガイアはそう言い、荷物を馬車に乗せている精霊達を手伝い始めた。
ガイアの頭にもその声が響いていた、ガイアはステラと違い、その声に明確な敵意と殺意を感じていた。
それはプルートが向けてきた邪な殺意では無く、アル・スハイルが向けて来た愛嬌のある殺意でも無い……。
憎しみにまみれた殺意をガイアは感じていた。
ステラは静かに頷いてステラも手伝い始めるが、アルナイルは空を見つめていた。
(はやい……
すごい速さで遠ざかって行くけど
あれは……災を運んで帰ってくる……)
アルナイルには星海の光を通して見えていた、アル・スハイルに敗れ飛び去って行くチャクラムが見えていた。
「メビウスの輪……
あなたは繰り返そうと言うの?」
アルナイルは誰にも聞こえない様に小さく呟いた。
そして旅の支度をしているガイアに歩みよって聞いた。
「お兄ちゃん?
どおして旅に出るの?」
ガイアは手を止めずに荷物を馬車に乗せながら言った。
「アルナイルなら解ってんだろ?
この星がやばそうなことになりそうなんだ
なんとかしないといけねえからだよ」
「……」
アルナイルはそれを聞いて何も言わなかった。
「それより
星海で何か見たなら教えてくれよ
俺じゃアル・スハイルみてぇに
遠くは見えねぇからさ」
ガイアが聞いた。
「お兄ちゃん……
もしチャクラムを使う敵とあっても
戦わないで……」
アルナイルが言い、それを聞いたガイアは手を止め、ステラと精霊達もアルナイルの言葉を聞いて手を止めていた。
「アルナイル見てたのか?
アル・スハイルの戦いを……」
ガイアが聞いた。
「うん……」
アルナイルが俯くように言った。
「どうだったんだ?
アル・スハイルは無事なのか?」
ガイアが慌てて聞いた、それはアル・スハイルがステラにとって大切な姉であるから慌てて聞いたのだ。
だがガイアはアル・スハイルを心配する様な素振りは見せなかった。
「大丈夫
アル・スハイルは無事で
怪我もプルートの力で治ってるよ」
アルナイルがそれを伝え、ステラはほっとしていた。
「敵を退けて
今アトリアロフに向かっている
けど……
敵はアル・スハイルと
アル・ムーリフを狙っているの
お兄ちゃんから
手を出さなければ
お兄ちゃんは狙われない
だから……
戦わないで……」
アルナイルの言葉は信じられない言葉だった、まるで関わらないで欲しいと言っている、いやそうとしか聞こえなかった。
「まぁアル・スハイルは
誰に狙われてもおかしくねぇな……
いちいちそれに関わる気はねぇよ
スゲェめんどくせぇよなきっと
敵は星の数ほど居ても
おかしくはねぇからな……
アイツなら自分で何とかするだろ
それに……
俺に手を貸されるのは嫌がるだろう」
アルナイルはそれを聞いて不思議そうな顔をしている、ガイアらしい言葉でアル・スハイルを見放している様に聞こえた。
ステラもハダルとアル・スハイルが対立していたことも知っていたので顔を曇らして聞いていた。
「だけどさ
アイツがやられたら
こいつが泣くだろ……」
ガイアはそう言い、ステラを指さして言った。
「俺はそんな顔見たくねぇから
アルナイルに言われても
わりぃけど聞けねぇな」
ガイアはそう言いながら左手を鋼の拳に変えてアルナイルに見せた。
アルナイルはメビウスのことを知ってるようだった、一緒に手伝っていたエルナトはアルタイルがこの屋敷で、あれから神殿書庫で調べている時にボヤいていたのを偶然聞いたことを思い出した。
(アルナイルとガイアから
ベガの力を感じるんだけど……
こんな星……
確かあった筈なんだけど……
ベガの力は落ちる魂を輝かせる力
二つに別れるはずは無いし
ガイアはベガを乱暴にした感じで
アルナイルはベガの思いやりと言うか
優しさだけが……でも違うよね……
あんな優しさあったら
私に気付いてくれたよね……)
それは今は亡き、最愛なるベガに対してのぼやきであったのを理解し、少し困りながら声をかけようとした時、アルタイルは言った。
(そんなのは今はいっか……
二つに分ける星ってなんだけっなぁ
凄い有名な星だった
はずなんだけどぉ……
ねぇ?
エルナトは二つに分ける星知ってる?)
流石アルタイル、エルナトが立ち聞きしてるのに気付いていたのだ、エルナトは大量の汗を流し、知らないです、と伝えたのを覚えている。
エルナトはその時のことを思い出し、アルナイルに疑いはしないが疑問に思えた、アルナイルの星はそもそも何の星なのか、ただの光の球体で太陽のような星でも無い、星に降りようとしても大地もなければガス惑星でも無い、そのため少し飛べば通り抜けてしまう。
無論眩しすぎて何も見えない、が……網膜や目が潰れる事はない、目が眩むだけで少しすれば目はちゃんと見える様になり、優しい星なのだ。
そしてその謎の星を持つアルナイルが、メビウスのことを知ってるようであったのだ。
「それとステラには
俺からいつか
言わなきゃなんねぇことがあんだ
それまでは……
バカやって怒らせても
泣かせねぇ」
ガイアはそうアルナイルに言った、その言葉をその場にいるみんなが聞いていた、アルナイルがガイアの気持ちを再び確認していた。
「解ったよお兄ちゃん……」
アルナイルが俯いて言う、まるで何かを知ってるようにそう言い、顔を上げて言った。
「じゃっ
ちょっとアトリアロフに行ってくる
時間かかっちゃうかもだから
先に旅に出てね」
アルナイルはそう言い、空に舞いあがろうとした。
「アルナイルッ!」
ステラが呼び止めようとしたが、アルナイルは振り返って言った。
「ごめんね
ちょっと急いでるから」
アルナイルはそう言い飛び去って言った。
(この星はセプテントリオだから
メビウスは簡単に手を出せない……
大大星は大大星を傷つけない
その盟約がある
アルタイルも後に
大大星になり得るシリウスと
争わない約束を訳は知らなくても
守ってくれていた……
でもそのシリウスを
アル・スハイルが破った
メビウス…あなたからすれば
アル・スハイルが
大大星になるのが許せない
それは解るけど……
星が星海人を支配する時代は
もう終わるんだよ)
アルナイルはそう思いながら光になって飛び去って行く。
(私もそれを望んでいる……
セプテントリオも
今はそれを望んでくれている
だから……
セプテントリオの杖はあの時
サラスの手の中で砕けてくれたんだ……
そのきっかけを作ったのは
ミアプラの星……
大大星になるべき星だった……
その……)
アルナイルはそこまで考えている時に気づいた、サラスはミアプラの星を持っていた、それだけの星を持つものがセプテントリオの杖に操られる訳が無いと……。
(じゃぁサラスは……
私の力に気付いて
セプテントリオの杖を砕いたってこと……
それじゃサラスは……)
アルナイルは光を強め、メビウスの輪が飛んで行った方に向かって行った。
「ガイア?
アルナイルは帰ってくるよね?」
少しして旅の支度はまだ続いているが、ステラはガイアに聞いた。
「あぁ
アルナイルは嘘をつかねぇから
必ず帰ってくるさ」
「ガイアお兄ちゃんっ!」
エリスがガイアに飛びついて元気な声で言う。
「エリスもついて行っていいのっ!
本当にいいのっ‼︎」
エリスは嬉しそうである、幼星であるがガイアを慕っているその気持ちは変わらない様で、ガイアからすれば降りかかる火の粉でしかない、ガイアの頭に過去の詰んだ記憶が蘇る。
「あぁ
エルナトも来てくれることになったからな
ちゃんといい子にしてるんだぞ」
ガイアはそれでも大人な対応をする。
「わーいっ!」
エリスは喜び伝わってないのが良く解る、不和と争いの星を持つエリス、その効果は星を使わなくても十分解る程であった。
子供に好かれるガイアの姿は微笑ましい物があり、セプテント家の精霊達は穏やかに微笑み荷造りを続けているが、穏やかでないステラは感情の籠っていない笑顔をガイアに送り、ガイアは落ち着かなかった。




