最終話 ずっとついて来たんだから……
「お姉ちゃんっ‼︎‼︎」
ステラが驚いて叫ぶが、ステラからはもうどうしようもない、助けることなど出来るはずが無かった。
そしてアル・スハイルは微笑んだまま瞳を瞑り、その光線に飲み込まれてしまった様にステラからは見えた、シリウスの体は完全にその二人が放った光線で消滅し、もう復活することは無いがステラを凄まじい悲しみが襲っていた。
「ア…アルナイル……
なんで……」
ステラが悲しみを訴える様にアルナイルに言おうとした、アルナイルは静かに応えた。
「ステラを守るためだって
アル・スハイルが……
こんな……」
アルナイルはアル・スハイルが何とか躱すものだと思っていたようだった、だがそれはステラにとって、知らなかったじゃ許せないことだった。
だがそんなどうしていいのか解らない二人に、エルナトが近づいて来て言った。
「ステラ様
大丈夫ですよ
アル・スハイル様の
赤い誓いの星が輝いてますよ」
「えっ!」
ステラは驚いたが確かにステラの紫の誓いの星の横で、赤い誓いの星が優しく輝いていた。
「あの距離を間に合う奴は
二人しか居ないな……
カノープスともう一人……
カノープスの速さを
真似ようとした大星……」
レグルスが自らの顎を触り、考える様に言った。
「あぁ短距離だが
あの速さを身につけていたな……」
サルガスがその方向を見て言った。
ステラもその方向を見ると金色の輝きが力強く力強く輝いていた、アルナイルは気づいた、たった一人この場に居るべき者が居ないことに、最初は確かに居たが気付いたら居なくなっていた、その者は凶星となったシリウスと戦う為に、凄まじい高速でここから5日の距離を突き抜ける様に、シリウスを目指して飛んでいたのだ。
「よもやそなたに
助けられるとはな……
これで二度目となってしまったか」
アル・スハイルが、初めて助けられた時を思い出し、金色の羽で覆われた、その者の背中に乗って言った。
「あれ?
見逃したのも数えたら
何回目だい?」
その者が言った。
「二回目にしといてくれぬか
アルタイルよ……」
アル・スハイルが苦笑いをしながら言った。
「あともう少し
アル・ムーリフを見習ったら?
さっきのあんた可愛かったよ」
アルタイルが大鷲の姿のまま微笑みながら、と言うより小さく笑った様に言った。
「アルタイルッ!
それは誰にも言うで無いっ!
余は…余は……」
アル・スハイルは死ぬ覚悟で最後の言葉として言った、その想いと姿は全てステラに届いていた、アル・スハイルは約95億年ぶりに、心から恥ずかしいと思い顔を赤くしていた。
「アル・スハイルに
こんな可愛い一面があったんだ
アルちゃんって
呼んでいいかな?」
アルタイルが師匠として愛弟子を弄るが、アル・スハイルはサーベルを出し、アルタイルの背中に向けほのかな怒りを込めて言った。
「刺して良いか?」
「ほらっ!
ステラが手を振ってるよっ!」
アルタイルが誤魔化す様に明るく言い、力強く羽ばたきステラ達の元に向かって行った。
「アルタイル礼を言う
そなたが居らねば
余は誓いを全て
忘れてしまってたかもしれぬ……
感謝しておる……」
アル・スハイルがそう言ったが、アルタイルは自然に言った。
「お礼は可愛く言って欲しいなぁ」
それを聞いたアル・スハイル、は軽くアルタイルの背中をサーベルで刺した。
「イッタァァァァァァァァァァッ‼︎」
アルタイルの痛みを訴える大きな声が星海に響いた、だがアルタイルはすぐに言った。
「本当に刺すなよっ!
いまオルビスでサラスとガイアが
戦ってるんだっ!
私達も早く行かないと……
サラスはとんでもない奴だったんだ
ミアプラの星を持っている星海人で……
あの星の人々を滅ぼそうとしてる
一億年前オルビスの人々を騙して
アル・スハイルに
オルビスを滅ぼさせようとしたのも
サラス……
あいつだったんだっ!」
「ミアプラの星じゃと……
あの……巨星ミアプラか……」
アル・スハイルは顔をしかめながら言った、もはやミアプラの名を聞いて騙されていたことなどどうでも良かった、それだけミアプラの力が強大であるとアル・スハイルは解っていたのだ。
そしてアルタイルが元から傷を負っている事に気づいて聞いた。
「アルタイル……
そちが敗れたのか?」
「……大丈夫……
ハダルなら抑えてくれる……」
アルタイルは静かに言った、アルタイルはアル・スハイルを助けるために、カノープスが移動時に使う超加速を使っていた、だがカノープス程それを使いこなせずに力を使い切ってしまっていた、再び超加速を使うにはまだ少し時間がかかり、今から向かっても間に合わない、間に合ったとしても、アルタイルは足手まといにしかならない、そう感じてはいたが明るく振る舞ってはいた、だがアルタイルが急いでいることにアル・スハイルは気付いていた。
「……それ程の者が何故……
オルビスに留まっているのじゃ……」
アル・スハイルは疑問に思ったことをオルビスを見つめ静かに呟いていた。
ガイアとサラスは激しく戦い続けていた、ガイアの放つ鋼の拳はサラスを捉えるが、サラスは動じずにガイアを杖で殴りかかる、その打撃はガイアの砂の体を打ちのめすが砂が飛び散り、ガイアも退かずに殴り合っている。
(こいつ……
人間の体で星を操っていやがる
俺とおなじクチか?)
ガイアは考えていた、一度星海人として死に、オルビスに魂が抱かれ転生した、そうとしか考えられ無かった。
「ったくご丁寧なこった……
俺の身体を蘇生させようとしたみてぇだな
うんで出来なかったんだよな?
うんでミイラにして残してた癖に
てめぇの身体は蘇生してやがる」
「ほう……
記憶を取り戻しておるのですな」
サラスはガイアが殴りかかって来た鋼の拳を、その杖で凄まじい力で叩き割り静かに言った。
(星鉄塊の杖……
違うっ‼︎)
ガイアは素早くその叩き割られた拳から、砂を噴き出させ、銀色の手がその砂中から現れサラスを掴み、右足で腹部に蹴りを入れサラスを吹っ飛ばしたが、サラスは素早く体勢を立て直し着地してガイアに右手を向け、怪しい微笑みを浮かべた。
次の瞬間、水が凄まじい勢いで吹き出し、ガイアを直撃した。
「っ‼︎」
ガイアは思い出した、レチクル川で亡霊に殴りかかった時、体が濡れ砂の蘇生が遅れたことを、次の瞬間、無数の岩の槍がガイアを貫いた。
「なっ……」
ガイアが小さく声を漏らした。
「ガイア殿
大地の力を使えるのは
そなただけでは無いと言うことを
知らぬ様ですな」
サラスはガイアを見ながら、怪しくそれでいて優しい微笑みを浮かべながら言う、まるで死にゆく者を見送る様に。
「さて……
ステラですが
あれの前世は星海人でしてな
その昔この星を離れた者達の末裔で
我が子には変わらぬのですが
あの星の力は利用出来ると
そう思っていたのですよ
そして待ち望んでいた
アル・ムーリフを
ガイア殿が連れて帰って来て下さった
体も死に
抵抗出来ないようにして下さった時は
心から喜びが溢れて来たことを
今でも覚えておりますぞ
ですがアル・ムーリフを
蘇らせようとしたのとき……
不思議なことにその体に星の力が……
全く残って無かったのじゃ」
サラスはガイアが力尽きる寸前と見て、ゆっくりと話しながら歩み寄ってくる。
「ですが喜ばしいことに
アル・ムーリフの魂は
この星に留まってくれてましてな……
そこで我が精霊術で
人として生み出そうとしたのですが
これがなかなか捕まらず
五百年もかかってしまい
我が手に落ちぬかと
ひやひやしてしまいましたな」
サラスは微笑みながらそう言った。
ステラは人として生まれたのではなく、生み出されたのだった、ガイアはそれを声も出せずにただ聞いていた、蘇生できずに貫かれた体からおびただしい血が流れ出している、人としての命はとうに尽きている筈だが、ハダルの星ともう一つ何かの輝きが、ガイアの意思と命を照らしていた。
(ねぇあなたは
なんで旅に出たの?)
ガイアの頭にあの言葉が響いた。
(ちからが……でねぇ……)
ガイアは初めて大地に貫かれ、大地に見放されてしまった様な感覚に陥り、その声にまともに応えることも出来なかった。
「さてガイア殿……
我が手を取ってくださらぬか?
我が力ならばその命を
幾らでも溢れさせる事が出来ますぞ
我が命の星ミアプラの力ならば
容易い事ですぞ
さすればステラも私の言う事を
より良く聞いてくれると思うのですが
いかがですかな?」
サラスは微笑みながらガイアに手を差し伸べて言う。
ガイアはその手が目に映った時、真っ赤な血が混じった唾をその手に吐きつけて精一杯の力を振り絞って言った。
「ざけんな……」
サラスは微笑んだままガイアの頭を叩き割ろうと杖を振りかざしたが、不意に空を見た。
(ねぇあなたは
なんで旅に出たの?)
再びその言葉が響いた時、ガイアの頭の中で、何者かが戦っている姿が鮮明に浮かび上がって来た。
その者は美しい銀色の翼をはためかせ、無数の羽を何者かに向けて放ち、赤い光線を躱しエストックを振り、躱せない光線を弾き防戦していた。
ガイアはそのエストックが、アルタイルが持っていたエストックと同じ物だと気付いた。
(なんだ……これは……)
ガイアはその記憶と思われる戦いを見て、そう呟いていた、不思議と体の痛みは全く無くそれが精神的な世界だと感じていた。
やがて銀色の翼を持つ者を無数の赤い光線が、躱しても躱しても追尾し、その者を追い詰めていく、そして青白い狼の様な光線が正面からその者に襲いかかり、その者がその狼をエストックで貫いた時、赤い光線に貫かれてしまう。
そして失速した時、背後からガイアの知る人物がその者の銀色の翼をサーベルで切り裂き、その時何故かガイアは凄まじい激痛を感じ、その何者かが切り裂いた銀色の翼を持つ者を蹴り飛ばしてしまう。
それはアル・スハイルだった。
その銀色の翼を切り裂かれた者は、ガイアが親しみを感じる見た事も無い星に向かって落ちて行く、だがその者は力を振り絞り残って片方の翼からアル・スハイル目掛け、無数の羽を飛ばし反撃をしようとしたが、躊躇したようだった。
そして青白い狼が襲いかかりその翼を喰い千切り、更にもう一頭の青白い狼が光線の様に走り、銀色の翼を持つ者の首を喰い千切るように貫き、そのままその星に落とされてしまった。
「シリウスよ
なにも命まで取る必要はあるまい?」
アル・スハイルが顔をしかめて言った。
「殺せる時に殺しといた方がいい
こんな機会は
二度と来ないかも知れないからな」
アル・スハイルがシリウスと呼んだ者が、静かに冷たい笑みを浮かべて言う。
(はっ……
どこまで俺はバカなんだ
アル・スハイルをやれば
シリウスと戦えたじゃねぇか……)
その者は薄れゆく意識の中でそう思い、最後の力を振り絞ってアル・スハイルを見ていた。
「アル・スハイル……」
そう呟き、エストックに力を込めアル・スハイルの向こうに居るシリウスを狙ったが、それを放つことはアル・スハイルをごと貫くことになると解っていた。
その時、アルタイルがアル・スハイルを助け、その後も星の使い方などを可愛がる様に教えていたのを鮮明に思い出し、アル・スハイルが誤った道に進んでも、最後にはアルタイルがアル・スハイルとアル・ムーリフを信じ、見逃していたのも思い出していた。
(あいつが可愛がってたからな……
出来ねぇよ……)
その者がそう心で思った時、ガイアはその者が味わった痛みと焼き尽くされて行く熱を感じて気付いた。
(こいつ……まさか……)
その者は星に落とされ、焼かれながらもアル・スハイルを見ていた、そしてアル・スハイルがシリウスに何かを強く言っているのに気付いた、その唇の動きから見て考えが合わない様であった。
(アル・スハイル
やはりお前は……
いつかシリウスと争うだろう……
その時こそシリウスを……
必ず…超えろ……
お前の誓いの為に
アル・ムーリフの為に……)
その者が言い、その記憶と思われるものが静かに暗く消えて行ってしまう。
そしてあの言葉が再び響いた。
(ねぇあなたは
なんで旅にでたの?)
(ステラ……)
ガイアが心で呟いた、身体は全く動かない、だが心は何故かその銀色の翼を持った者が放っていた輝きに満たされていた。
その時サラスは空を見て言った。
「ほう……
赤い星が勝ちましたか……」
そして再びガイアを見て言う。
「ガイア殿
良きお力をお持ちですが
ここまでですな
私はアル・ムーリフを……
手に入れるために
赤い星を消さねばなりませんので」
サラスがそう言い杖を振り下ろそうとした時、ガイアの背中から美しい銀色の翼が現れ、いきなり無数の羽をサラスに向けて放った。
サラスはその急に現れ、放たれた銀色の羽を躱せず、ほぼ全て直撃し、一本の羽が右目を奪った。
「がぁぁぁぁぁぁっ‼︎」
サラスが叫びよろめきガイアが呟く。
「ステラ……」
その声は弱々しく聞こえたが、ガイアは続けて言い続けた。
「ステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラ」
「これは……」
サラスが右目に刺さった羽を抜き、その羽を見て戸惑う様な声で言った。
ガイアは、ステラが精霊術によって作られた人間であり、その様な手段でアル・ムーリフの魂を捕らえたサラスに怒りが溢れ出していた。
そして星海では、ベガが力尽きてから一度も輝く事が無かった、ベガの星が輝き出しその輝きにアルタイルもアル・スハイルも星海にいた皆が気付いていた。
「ベガ……」
アルタイルが呟き、その輝きを見てアルナイルを遠くから見つめたが、アル・スハイルがアルタイルの背中で静かに言った。
「ふっ……
あやつはハダルの星に
抱かれておったのか……
となれば……」
アル・スハイルはオルビスの星を見ていた、まるで何が相手であろうと慌てる必要は一切無い様に静かに見ていた。
「まさか……
二つの星を持つ者が
私の他にいるとは……」
サラスはそう言い、ミアプラの星を輝かせ自らの傷を癒やし始めたが、凄まじい勢いで大地から岩の槍が突き出しサラスを貫いた。
「ステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラステラッ‼︎‼︎」
ガイアは叫び続けその腕で自らを貫いた岩を掴み、力を込め握り砕き、砕かれた岩は砂に変わり、ガイアに吸収され大地に足をつけた時、岩に貫かれたサラスは既に杖でその岩を砕き素早くガイアに襲いかかって来ていた。
振り下ろされたサラスの杖をガイアは躱すこと無く、右の翼で受け止めた、銀色に輝く翼に受け止められたサラスが顔を顰めた時、ガイアはサラスを睨みそのまま銀色の羽を飛ばし反撃をし、大量の羽をサラスに浴びせ、よろめいたサラスを殴り飛ばした。
更にガイアは銀色の翼をはためかせ、紫月を右手で抜き襲いかかったが、サラスを切り裂こうとした時、水色の鏡の様な障壁が現れそれを防いでしまう。
サラスは小さな笑みを浮かべた時、凄まじい数の真空の刃が放たれ、ガイアを刻む様に切り裂いた、ガイアの身体は砂の体になり、砂を撒き散らしながら、それを躱し着地しサラスも体制を立て直していた。
「幾ら足掻いても無駄な事を……」
サラスが微笑みながら言い、再び襲い掛かろうとしたガイアに手を向けた時、ガイアは呼吸できなくなってしまう、ガイアの周辺の空気が無くなったのだ。
(これは……)
ガイアは急に襲われた苦しさに立ち止まってしまう。
「セプテントリオには
二つの力がありましてな
一つはその星にある
全てのものを操れましてな
大気を操る事も造作もないこと
人の身体では
耐えられないでしょうな」
サラスは余裕なのだろう、穏やかに言いながら空に手を向ける、すると暗い雲が集まり稲光が走り強い雨が降り出した。
「まだ立っていられるのですか……
ですが……」
サラスがそう言い、杖をガイアに向けて振り、真空の刃がガイアを切り刻む様に放たれる。
ガイアはあまりの苦しさに避けることが出来ず、銀色の翼で自らを包む様に防ぐが次第に意識が薄れて行ってしまう。
(やべぇ……)
ガイアは大地の力では無い、水と空の力がそれに匹敵する程の力を持つ事に気づいたが、なす術が無かった。
ガイアは銀色の翼で真空の刃から守られてはいるが、呼吸が出来ない苦しさによろめいた時、白銀が光輝きガイアを包み込みまた声が聞こえて来た。
(お兄ちゃん
どおして旅にでたの?)
それはアルナイルの声だった。
そして紫月が光輝き出した。
(ねぇあなたは
なんで旅にでたの?)
ガイアは目を見開き紫月と白銀を抜こうとしたその時、まるで何もさせないようにサラスが力強く上から下に杖を振り下ろし、凄まじい重圧がガイアを襲った。
それは重力だった。
(ステラ……)
ガイアが凄まじい重圧に耐えながらも、心で呟いていた。
その様子を星海ではアルナイルが光の円を生み出し、ステラ達と見ていたが、アル・スハイルとアルタイルはまだそこに着いては居なかった、ステラは飛び出す様にオルビスに向かおうとしたが、アルナイルの光の翼が変形しステラの腕を捕らえ引き留めた。
「アルナイルッ!
なんでっ‼︎‼︎」
ステラがアルナイルに叫ぶ様に言う。
アルナイルはサラスが言った言葉も全て聞いていた、ステラが精霊術で作られた人間であると言うこと、それをガイアがステラには隠そうとしている事も気付いていた、人の身で母親が居ない、アル・ムーリフの記憶を取り戻したとしても、それをステラが受け止められるとはアルナイルは思えなかったのだ。
自らの体が作られた物、それをステラがどう感じるのか、それは人と言えるのかアルナイルはシリウスと戦っている時から考えていたのだ。
その不自然さは確かにアルナイルは感じていた、あのセプテント家の屋敷に、ステラの母親がいた形跡は何処にもなかった。ステラの母の部屋はあったが、ステラを産んですぐに亡くなってしまったとユーファから聞いていたが、ユーファさえステラの母親とは会ったことが無かったと言う、それはユーファが何十年か屋敷を離れた間の出来事だったと言うが、その部屋の光の記憶を見ても、その部屋に住んだ人が誰もいなかったと言う、不可解な部屋であった。
そして更にサラスの力が、オルビスの星の中では凄まじい事を知り、助けに行くことによって自分達が行きガイアの足手纏いにならないかを心配していた、ステラでなく星海人のアル・スハイルやアルタイルならば止めはしないが、ステラはまだ人の体であり尚更であった。
あの地上では敵無しだったハダルが圧倒されているのだ、その心配は更に大きくなっていた。
「ガイアさんは……
ステラさんを……
守ろうとしているんです
大丈夫です……
ガイアさんは絶対に負けません
だから……」
アルナイルがガイアを信じそう言った時、赤い誓いの星が二人の間に現れ、アル・スハイルの声がその星から響いた。
「アルナイル……
アル・ムーリフを行かせてやってくれ
アル・ムーリフに
そちの心配は不要じゃ」
アル・スハイルには飛び出したい程のステラの気持ちが、誓いの星を通じて届いていたのだ。
「アル……
お姉ちゃん……」
ステラが呟いた。
「大切な者を失う……
それがいかに苦しいものか……
余もそれを知った……
行かせてやってくれ
その時に何も出来ないこと程
苦しいことはないはずじゃ……
そちなら解るであろう……」
アル・スハイルは金色の大鷲となったアルタイルの背中の上からそう言っていた。
アルナイルはアル・スハイルの声を聞いて、ステラに手を向けて美しい光で包み込んで言った。
「絶対に二人で帰って来て……」
「うん……」
ステラがそう言うと、ステラを包み込んだその光は一直線にオルビスに向かって放たれた。
(もたねぇ……)
ガイアが今にも押しつぶされてしまいそうな、とてつもない重力に全身を鋼鉄に変えて耐えていたが、全身にヒビが入りそれが重力だけでは無い気がしていた。
そして一瞬だがその場がアルナイルの光に包まれ、サラスの背後から凄まじい速さでサーベルが襲いかかる。
サラスはまるで解っているかのように、それを躱した。
ステラが背後からサラスを襲ったのだ、その手にはアル・スハイルがその昔送ったサーベルを握っていた。
「ステラかっ!」
サラスが言った、その斬撃からは明らかな敵意が放たれ、親に対する気持ちは微塵も感じさせなかった。
「ステラ……」
ステラが自然に鼻で笑うように言った。
「……?」
サラスが少し考えるような表情をした。
「妾はアル・ムーリフ……
貴様の思い通りにはならぬっ‼︎
妾の自由を奪おうとした
そちに向けるものは
もはやこの刃しかないっ‼︎」
ステラがそう言い紫の星が現れ美しく輝いた。
ステラがアル・ムーリフとして心で囁く。
(紫の誓いの星よ礼を言う……
妾を生かし全てを伝えてくれた
私が…私が……)
ステラは遠い過去からガイアを愛していた事を知った、それはアルナイルが光でステラを包み込み、オルビスに送った時、紫の星が輝きステラに語り出すように、ステラの記憶では無く、紫の星が見て来たことを鮮明に見せてくれたのだ。
(礼には及ばぬ
そなたが消えれば
妾が困るだけじゃからな
ただ二度と愚かなことをするでない)
紫の星がそうステラに応えていた。
「ステラ……
星の声を聞いておるのかっ⁉︎⁉︎」
サラスがそれを感じ取り驚きの表情を見せ、ステラにその杖を振りかざし、力強く襲いかかった。
その勢いはまさに殺そうとする殺意が溢れ、凄まじい形相に変わっていた。
だがサラスが杖をステラに向けた時、ガイアを押しつぶそうとしていた重圧が、解かれたがガイアは凄まじい疲労に立ち上がることが出来なかった。
「解ったぜ……
貴様の力の秘密を……」
ガイアはサラスが二つの星持つ者と思っていたが、サラスが持つ星は一つであり、ミアプラの星だけだと気付いた。
ガイアは凄まじい重圧の中でも、苦しみに耐えひたすらサラスを見ていた、サラスの力がガイア体の奥底から溢れたベガの力のような内面的な物では無い気がしていたのだ。
「ステラッ‼︎
いつから星の声が聞こえていたのだっ‼︎‼︎」
サラスが叫びながらステラに襲いかかっている。
「それを聞いてどうすると言うのだ?」
ステラがアル・ムーリフとして言う、ステラの紫の星は全てを見ていた。
なぜサラスがハダルと共に、この星に降りたアル・ムーリフを蘇らせようとしたか、なぜ失敗したのか。
それはサラスが、アル・ムーリフだけを蘇らせようとしたからであった。
愛するハダルを蘇らせようとしなかった、その欲に溢れたサラスをアル・ムーリフが拒絶したこと。
そしてハダルの魂と共に飛び去った、だがサラスはアル・ムーリフだけを執拗に追い続けた、ようやくその魂を捕らえ精霊術を使い、ステラとして蘇らせたこと。
遥か昔にはサラスの思惑によってアル・スハイルを利用したこと。
そして何よりも、紫の誓いの星がサラスからステラを守る為に、アル・ムーリフの記憶をステラから切り離し、別の存在として生かしていたこと、その為サラスはステラから紫の誓いの星の力を引き出せなかったのだ。
(私が……私がガイアを呼び続けて……
ガイアは来てくれた……)
ステラはサラスが振りかざし力強く振り下ろした杖を、アル・スハイルのサーベルを使い美しく滑らすように躱し、素早い突きを繰り出し、サラスの右腕に傷を与える。
サラスは素早く距離を取り、杖を振り真空の刃や水の刃を無数に放った時、ステラはアル・スハイルのサーベルをサラスに向けて投げつけた。
(お姉ちゃんっ!
力を貸してっ‼︎‼︎)
ステラがそう願った時、そのサーベルは赤く輝き、十数本に分裂しアル・スハイルが操る様に、高速で次々とサラスが放った刃を斬り裂き防いでいく。
そしてステラはその昔ハダルが送ったサーベルを抜き、サラスとの距離を詰め全力で走り出した。
「小娘がっ‼︎‼︎
貴様に星の王たる資格は無いっ‼︎」
サラスが叫びステラに手を向けた瞬間、大量の岩の矢が現れステラに向かい放たれた、アル・スハイルのサーベルが、それらを迎撃して行くが、あまりの量に間に合わず幾つかの矢がステラを襲い、ステラはハダルが送ったサーベルで弾き防ごうとしたが防ぎ切れず、一本の石の矢がステラの腹部に命中した。
だがその石の矢はステラに当たった瞬間、一瞬で砂に変わって飛び散った。
「おっさん……
そいつは無いぜ……」
ガイアがやっと立ち上がり、サラスに手を向けていた、サラスが操った大地の力を、ガイアがハダルの星の力を使い逆に操ったのだ。
「小僧がっ‼︎‼︎」
サラスがそう叫び、ステラが切りかかって来た時、サラスはそれを躱しステラを杖で薙ぎ払いステラは飛ばされてしまう。
「クッ……」
ステラの紫の星が輝き素早くそのダメージを、ダークマターに変換し、紫の星はそのダークマターをガイアに送っていた。
(ガイアに送らないと……
星海人の力を……)
ステラは自らのダメージを紫の星を操り、それをガイアに足りないものに変化し、送っていた。
だがサラスは杖を振り下ろし、ガイアに放った重力の数十倍の重力でステラを一瞬で葬ろうとしたが、その杖を岩の槍が突き出し弾こうとした。
「テメェッ!
ステラをなんだと思ってんだ‼︎‼︎‼︎」
ガイアが叫び、銀色の翼をはためかせ白銀と紫月を抜きサラスに襲いかかった。
(紫の星その力っ!
我がものにして見せるっ‼︎‼︎)
サラスはその力の流れ、ステラの力を我がものにしようと野心をむき出しにしていた。
ステラは紫の誓いの星から全てを見て、サラスが敵だと解っていた、ガイアもサラスが本気でステラを殺そうとしている事が許せなかった。
ガイアは二刀同時に振り下ろした斬撃をサラスは、杖で受け止め押し返し、ガイアに向けて突きを放ったが、その杖には凄まじい重力波が込められていたが、ガイアはそれを躱し、サラスの片腕を切り裂き切り落としたのだ。
そしてガイアは素早くサラスを蹴り飛ばした。
「なんと……」
サラスは初めて深傷を負った。
「ガイア……」
ステラが囁く様な声で言いながら腹部を押さえ立ち上がる、全てのダメージを変換出来なかったのだ、だが銀翼を持つガイアの姿がまるで天使の様に美しく見えていた。
サラスがゆっくりと立ち上がる、切り落とされた腕は、ミアプラの星の力で再生されて行く、その姿は悍ましくステラは僅かな汗を流した、だがガイアは睨みつけ再びサラスに襲いかかった。
サラスが杖を振り、セプテントリオの力を使いガイアの周辺の空気を奪うが、ガイアはものともせずに突っ込んで行った。
(ステラ……
わりぃがこいつは生かしておけねぇ……)
ガイアはそう想いサラスに立ち向かっていた。
ステラがそれに応えるように、僅かな僅かな哀しい色を見せる瞳で、ガイアにサーベルを向けていた、紫の星がガイアに送ったダークマターを空気に変換していたのだ、送られたダークマターは無限を思わせる様に空気に変換されていく。
その様子を星海ではアルナイル達が見守っている、急いで来たアルタイルとアル・スハイルもそれを見守っていた。
ガイアは白銀で斬りかかり、サラスは全力で杖を振り、その白銀を弾こうとした時、白銀が砕け散ってしまい、続けて紫月でガイアは斬りかかるがサラスは素早く躱し、紫月目掛けて杖を振り下ろした。
紫月までもがその打撃で折られてしまっい、ステラはその瞬間をとてもゆっくりに感じていた、アルナイルと沢山の気持ちを込めて送った双刀が折られてしまったのだ。
だがステラは小さく微笑み、アルナイルも小さく微笑んでいた。
アルタイルは剣を失ったガイアに危機を覚えたが、アル・スハイルが静かに言った。
「やはり……
ハダルは解っておる
大星に相応しい奴じゃったな……」
「えっ……」
アルタイルが驚いた、アル・スハイルがハダルを認めたのだ、ただ認めたのではない、エルナトもいればサルガスもいる、レグルスも居てアルナイルも居る、その場で認めたのだ、星海で権力もある大星アル・スハイルが自分より格上の大星アルタイルを前して言ったのだ、それはハダルが大星であると言うこと以外の意味は無かった。
そうアル・スハイルが言った瞬間、ガイアは小さく鼻で笑った。
「ふっ……」
「?」
サラスはその笑みの意味を理解出来なかった。
「徒花を……
咲かせよっ‼︎‼︎」
ガイアが力強く言った時、紫月と白銀が強烈な輝きを放ち、光の剣が現れた。
サラスはそれを理解出来なかった、ハダルの力では無い、別の星の力であると気付かなかった。
それはベガの星の力であった。
ガイアは戸惑うサラスを逃さず、素早く白銀が放つ徒花の剣で腹部を切り裂く、サラスはミアプラの力で蘇生しようとしたが、ガイアはサラスをそれ以上斬る気は無かった、ガイアのその力強い目は、アクアマリンの輝きを放つミアプラの星を見ていた。
サラスの背後にあり、剣では届かない。
だがガイアは素早く紫月の光の剣でミアプラの星を目掛けて突きを放った……。
その光の剣は美しく伸びミアプラの星を貫いた、そしてミアプラと言う命の星と呼ばれた星の記憶が、ガイアの光の剣を通じて流れ込んで来た。
その瞬間サラスは大量の血を口から吐き、悲鳴をあげ、凄まじい力を振り絞りガイアを杖で薙ぎ払おうとしたが、ガイアは白銀の光の剣でそれを力強く受け止めた。
「なんで……
その星と話そうとしなかった……」
ガイアはそのミアプラの星の力を知った、それは大地の星、ハダルの星と同じ程優しく、限りない程の命を生み出し育む美しい星の力であった。
「星の声などとうに聞こえぬ……」
サラスが苦しそうにガイアを睨みながら言った。
「なぜ神だと思ったっ!
テメェはその力を使って
星海人を助けてたはずだっ‼︎‼︎」
ガイアが叫ぶ様に言った、それは遠い昔、まだ星海人達が、星海に出て間もない頃サラスは優しい星海人であった、精霊が進化し星海人になったばかりの頃、その当時の星海人は星の力をまだ手に入れてなく、他の星の生き物に襲われ、危機的な状況によく陥っていた。
そんな時、ミアプラの星が優しく多くの仲間を助けようと奔走するサラスを、見初め初めて星が星海人に力を貸したのだ。
「昔のテメェは何処に行ったんだっ‼︎」
ガイアが叫ぶ。
「……」
サラスは答えなかった。
「サラス様……」
ユーファがその様子を星海で見て小さく呟いた、ユーファはサラスに長く仕え続けていた、そのユーファはサラスの深すぎる奥底に誰よりも優しい心があるのを感じていたのだ。
だがガイアには次々とミアプラの星の記憶が流れ込んでくる、まるでミアプラの星がサラスを救って欲しいと訴えている様に、それは止めどなく流れ込んで来ていた。
そしてガイアはサラスが自惚れていくさまを目の当たりにして行く、命を生み出し与えることの出来るその力を使い、一時は権力の様なものを手に入れて行く。
だがサラスには出来ない事があった。
ミアプラの星は、命を奪う事が出来なかったのだ、いや正確にはミアプラの星の意思が自惚れ傲慢になったサラスにその力を与えなかったのだ。
そしてサラスは力を求めた、破壊の力、全てを奪う力を……。
「アル・スハイルが力を求めて
アル・ムーリフがどれだけ苦しんだか
お前知らねぇだろ……」
その言葉を星海では皆が聞いていた、アル・スハイルは胸を貫かれる様な、そんな想いで聞いていた。
「知っておる……」
サラスがやっと答えた、そして血を吐きながら話始めた。
「だがあやつらは……
変わらなかった……」
サラスがステラを僅かに見て話を続けた。
「強大な地位と星の力を手にしても……
あやつらは変わらなかった……」
サラスが言ったその言葉をガイアは理解出来なかった、アル・スハイルが変わりアル・ムーリフが苦しんだ、だがアル・スハイルとステラは理解していた、変わらなかったものが二人にはあった。
「お父さん……
いえ……
あなたはなんで旅にでたの?」
ステラが静かにサラスに聞いた。
それは聞く意味すら聞きたくなることであった。
だがステラはサラスと共に暮らした時を考えると、本当にただ力を求めただけなのか知りたくなっていた。
サラスがその時を思い出していた、それはサラスからの視点であり、それをいつ消えてもおかしくないミアプラの星が精一杯輝きガイアに伝えていた。
サラスは孤独だった。
星海のはずれに位置する星団にミアプラの星はあった、力を求めてはいたが何よりもその孤独さがその力を求める欲求を大きくしていたのだ、それは偉大な力は、常に孤独と隣り合わせであることを物語るようであった。
ステラの紫の星が輝き、その寂しさをそれとなくステラに伝え、ステラがアル・ムーリフの持つ優しさだろうか歩み寄ろうとした時、サラスはそれを振り払うように言った。
「あやつら二人はっ!
変わらぬ絆を見せつけおった‼︎‼︎
このわしに
不変とは何かを見せつけおった‼︎‼︎
この星の王たるこのわしをっ!
愚弄したのじゃっ‼︎‼︎」
サラスが叫び力を振り絞り、杖を振りガイアに衝撃波放った、サラスの腹部からはおびただしい血が溢れ、大量の血を吐きながらもそれを繰り出し、ガイアは直撃を受け吹き飛ばされてしまう。
「こいつ……
死ぬために……」
ガイアは感じた、その凄まじいサラスの表情とは違い、瞳だけはその表情からかけはなれた悲しい目をしていた、サラスは死を選んでいたのだ。
ガイアは素早く翼をはためかせ体勢を立て直し、サラスに向かって飛びかかる。
サラスが血にまみれた手でガイアに杖を振り下ろそうとした時、ガイアはそれを紫月と白銀で受け止めた時、サラスの力とガイアの力がぶつかり合い、三つの武器が眩い輝きを放った瞬間。
サラスの杖にヒビが入り七色の輝きが漏れ始めた。
(セプテントリオの杖が……)
サラスが心で呟いた時、セプテントリオの杖から吹き出すように七色の輝きが溢れ出して行く。
「サラスッ!
お前はその星に愛されていたんだっ‼︎‼︎
なんでそれが解らなかった!
なんで力なんて求めちまったんだ‼︎‼︎」
サラスはそれを聞いて気づいた、ガイアに貫かれ力を失ってもおかしくはないミアプラの星が、消えずにサラスに寄り添うようにアクアマリンの輝きを放ち続けていた。
だがミアプラの星はサラスの傷を癒す力を失い、サラスの選んだ道を見守っているようであった。
「……」
サラスは何も言わず更に力を込めた時、その力に耐えきれずにセプテントリオの杖が砕け散った。
サラスはセプテントリオの星の力を杖を通して、操っていたのだ。
そしてガイアは紫月の光り輝く徒花の剣を素早く振りかざし、小さな声で何かを言った。
「…………」
そしてそのまま振り下ろし、右の肩からサラスを斬り裂いた。
サラスは斬り裂かれても、倒れることなく立っていた、もう歩く事もできず僅かな間だが立ったままガイアを見ていた。
その表情は優しく穏やかで、ミアプラの星がガイアに伝えた遠い昔のサラスの顔であった。
「いい顔してんじゃねぇか……
お前の帰りを
ずっと待っててくれてるやつが居るんだ
早く帰ってやれよ……」
ガイアはサラスの後ろの空に昼間でありながら今まで見たこともないほど、美しく眩い輝きを星海で放つミアプラの星を見ながら言っていた。
サラスはそのまま何も言わず、前から倒れ死を迎えると塵りになり、風が吹き舞い上がり、その塵はミアプラの星に向かって飛んでいってしまう。
少ししてその塵を見送る様に見ているガイアに、ステラは静かに歩み寄ってきた。
「私って……
これからどうしたらいいのかな?」
ステラが少し困った様に言った。
それはステラが母親も居ない、作られた人間であり、サラスが消え、セプテント家がどうなるのかと言う不安もあった。
だがサラスの死を悲しんでいる様には見えなかった、生み出されてからサラスが育て続けていたのは間違いない、それを悲しまないステラにガイアは不思議に思うと、その様子にステラが気付いて優しく言った。
「きっとガイアが相手だったから
あんな優しい顔で最後を……
迎えることが出来たんだと思うの……」
ステラは少し寂しそうな顔をして言っていた。
「すまねぇ……」
ガイアが静かに言った。
「気にしないでいいよ
お父さんは大好きな人の所に行ったんだし
私だって
あなたを追いかけて来たんだし……」
ステラはアル・ムーリフだっだった時、どんな気持ちでハダルと一緒にこの星に降りたのか、その気持から見るとサラスの塵が、ミアプラの星に向かって飛んで行ったのと重ね合わせて見ていた。
「でも……
ちゃんと責任取りなさいよ」
ステラは微笑みながら言った。
「はぁ?」
ガイアはいきなりそんな事を言われ、顔を顰めた。
「あんたね?
私には誰も身内が居ないのよ
誰が私を見てくれるのよ」
ステラが文句あるの?と言う顔で言う。
「って!
お前にはアル・スハイルがいるだろっ!」
ガイアがステラの姉にあたるアル・スハイルのことを、アル・スハイル達がいる方向の空を指差して言う。
「それはあっちのはなしっ!」
ステラは同じ方向を指差して言い、そしてガイアの頬をつねりながら言う。
「私が言ってるのは
この星でのことよ
なんか文句あるのかしら?」
(アル・ムーリフの時の方が
ぜってぇ可愛いいじゃねえか……
この違いはなんだ
育ちか?
星海と地上で違いがあんのかよ……
いやっ絶対にあのクソ親父のせいだっ‼︎)
ガイアはサラスを考えながら汗を流した、ステラの言い分は完全なるこじつけというか、押し付けてる様な言い草である。
「で……どうなのよ?
私と同じベットに居たもことあったよね?
私から入ったとは思えないし
あなたが連れ込んだのよね?
そこまでしておいて
知らないとか言わせないわよ」
ステラは高圧的に言い、ステラの背後で紫の星が力強く輝いている。
「ちょっと待て
あれは俺も……」
無論ガイアも連れ込んだ記憶もない、唯一知ってそうなアルナイルもこの場には居ない。
「何困ってるのよ
あれは私から入っていったんだから
ガイアは悪くないわよ」
ステラはアル・ムーリフの意識が悪戯に入って行ったのを知っていて、悪戯に言っていたのだ、だがガイアがかなり困っていたので突っ込んで見た。
「…………
それともあの時
私に何かしたの?」
「わりぃが何もしてねぇ」
ガイアはステラが何かを期待してるのに気付いて、あのなぁと言う顔で言うと、ステラがいきなりガイアの鼻を摘んだ。
「なっ!」
ガイアが口を声を出した時……。
柔らかい感触が、ガイアの口を覆ってステラは鼻を摘んだ手を離した。
ガイアは驚いたが、静かにステラのキスを受け入れた……。
暫く二人は時が止まった様に感じていた。
そしてステラがガイアを抱きしめようとした時、それはガイアからステラを抱きしめてくれた。
ステラは静かに口を離し、ガイアの耳元で静かに言った。
「こう言うことくらい
ガイアからしてよ……
ずっとついて来たんだから……」
ステラは付いてくるならと言うガイアの考え方を、ズルいと思っていたのを静かに言った。
「あぁ……」
ガイアは静かに優しく微笑んで言った。
二人はそのまま暫く抱きしめあっていた。
「アルナイル
そちはあれで良いのか?」
星海から地上に降りようとした、アル・スハイル達がその様子を見てアルナイルに聞いた。
「仕方ないよ
私妹だし……
こうなるって解ってたし……
お兄ちゃんの側に居ても……
ステラさんの邪魔になっちゃうから
暫くはアル・スハイルのお手伝いでも……
しようかな?」
アルナイルは妬むことなく素直に認めて言った。
「ふっ
そちが余を手伝うとはな
考えもしなかったのぉ……」
「うん
アル・スハイルが
また変な方に行こうとしたら
私の力で呼び寄せるからね
覚悟してね」
アルナイルは光り輝いて言う。
(さすが……
ハダルの妹じゃな……)
アル・スハイルはある意味で監視が付いた様な気がしていた。
「ほらっ
終わったみたいだから行くよ」
アルタイルがそう言い大鷲になり、アルナイルとアル・スハイルを背中に乗せ、ガイアとステラの元に降りて行くと、ステラとガイアはアルタイルに気付いて手を振ってくれているが、二人は想いあっているのが解るように手を繋いでいる。
アルタイルの周りにはセプテント家の精霊達もついて来ている、その光景は金色の大鷲と数多くの精霊達が二人を祝福してくれている様に、二人には美しく見えガイアの頭に声が聞こえて来た。
(ねぇあなたはなんで旅に出たの?
ねぇあなたはどうして旅に出たの?)
ガイアは小さく微笑んでステラの顔を見ると、ステラも優しく微笑んでガイアを見てくれ、二人は今度は軽く本当に軽いキスをしてからアルタイルが降りてくる方に走り出した。
その様子をアルタイルは空から見て気付いた、ガイアの方が早くステラが自分から着いて行くように、あえてガイアを先に走らせてる様にそうアルタイルからは見えていた。
(ほんっとうにあの二人って……)
アルタイルは静かにそう心で呟いていた。
その様子を星海にある、一つの星から水晶の玉を通して見ていた者が、静かに呟いていた。
「サラス…あの役立たずが……」
~ねぇあなたはなんで旅に出たの?ねぇあたなはどおして旅に出たの? ~ 完
こんにちは、〜神歌〜です。
「ねぇあなたはなんで旅に出たの?ねぇあなたはどおして旅に出たの?」をご愛読下さり誠にありがとうございます。m(_ _)m
現在第二部を作成中なのですが、まだ目処が立たないので一旦第一部で完結させて戴きます。
また第二部の投稿を再開した時はまたご愛読頂ければ幸せに思います。
それではその時はまた宜しくお願い致しますm(_ _)m




