最終章 第1話 戦いの始まり
「ガイアよ……
ステラとアルナイルを
必ず守るのじゃ
良いな……」
翌日ガイア達はリオネスの街を出発していた、アル・スハイルが別れ際にそうガイアに言ったことがガイアの頭から離れなかった。
(なんだあいつ……
まるでもう会えない様な
そんな目をしてやがった……
なに考えてんだ……)
ガイアはそう考えながら北へ馬車を走らせていた、あと10日もすればアルナイルを信仰する、アークスの街に着き目標の神殿はその近くにある、ガイア達の旅の目的地までもう少しのところまで来ていた。
「ガイア
何考えてるの?」
ステラがガイアの様子に気付いてに聞いて来てくれた。
「アル・スハイルの様子が
おかしくなかったか?
あいつはあんな目をする奴じゃねぇ……
なんか気になるんだよ」
ガイアが言った。
「アル・スハイル様のことなら
心配ありませんよ
何日かすれば
私を何も無かったように
迎えに来てくれますよ」
エルナトが言った。
「お前も居るから
余計に気になるんだよ
あいつがお前を……
俺達に預けた見てぇじゃねぇか」
ガイアが言った、別れ際にアル・スハイルはガイアだけじゃ心配だからと言い、エルナトをガイア達に同行させたのだ。
その行動がガイアを余計に気にさせていた。
「何もなければいいけどな……」
ガイアがそう呟いていた矢先、アル・スハイルはオルビスの星を星海から眺めていた。
「いつ見てもこの星は美しい……」
アル・スハイルはそう呟いた。
アル・スハイルは手に一輪の紫のバラを持っていた、そのバラはアル・スハイルが席を立ってしまったステラの誕生日会で、ステラが誓いの星を使って出し飾ってくれたバラだった。
アル・スハイルは誕生日会が終わった深夜に部屋に戻り、そのバラを静かに手に取っていた、そして星海でオルビスの星にそのバラを向け棘を取り呟いた。
「アル・ムーリフ
そちに棘は似合わぬ……
いつまでも優しいバラであれ……
ハダルよ……
アル・ムーリフを頼む……」
アル・スハイルは星海でそのバラにダークマターを注ぎ、星海でも美しく咲いていられるようにして、そのバラの香りを楽しむように微笑み、コートにしまってシリウスの星を見た、そのシリウスの星は怒りを表すように輝いている。
「やはり話すだけ
無駄であろう……」
アル・スハイルはそう言い心で静かに言う。
(勝機は一度……
失することは出来ぬ……)
アル・スハイルはシリウスとの力の差を知っていたが、冷静に考え一度だけなら好機を作り出せると考えていた。
「距離は8日と言ったところか
余からすれば近すぎるのぉ……
じゃが丁度良いかもしれぬな
では…始めようかシリウス
そちの星と余の星……
どちらが外星として最も強き星か
決めようではないか……」
アル・スハイルは静かに言った、一度だけアル・スハイルはシリウスと争った、だがその時はアル・ムーリフが手を貸し勝負がつかなかった。
だが今はそのアル・ムーリフが居ない。
「我っ!
誓いの一星っ!
アル・スハイルッ
我が道を阻む者を
撃ち抜かんっ‼︎」
アル・スハイルはそう叫び、赤い誓いの星を出し、これでもかと言う程に輝かせ、瞳に意識を集中し、星海をアル・スハイルが飛んで8日以上先から向かって来るシリウスを捉えた。
その距離はアルタイルでは防御しか出来ない、星間攻撃となる距離であり、エルナトが持つ射程距離の3倍近くあった。
そして溢れる闘志を込め、シリウスを睨みつけ、右手の人差し指を向けた。
そしてアル・スハイルの黒いコートの赤いラインが、うねるように動き、そのラインが赤いバラの形に変形していく。
そしてアル・スハイルは静かに言った。
「消えるがよい
我がアル・ムーリフの為に……」
次の瞬間、星海を切り裂くような赤い一閃が走った。
それはアル・スハイルが初めて大星と呼ばれるきっかけ、その力を示した一撃、超長距離星間攻撃であった。
その最大射程は20日の距離まで届き、シリウスの最大射程の倍はある、そしてエルナトの星間攻撃の様に何かを転移させ急襲するとは違い、直接届かせる異質の攻撃であった、だがその攻撃は転移させる星間攻撃より正確であり、アル・スハイルのそれは遠い小天体に一撃で命中させる精度を誇り、誰もがアル・スハイルを大星と認めさせたものだった。
アル・スハイルが唯一シリウスに勝る射程を誇るその一撃は、それだけではなかった……。
「あれは……
アル・スハイルッ‼︎」
シリウスはその一撃に気付き、素早く躱したがその光線は凄まじい勢いでシリウスを追尾し始めた。
「この私を
邪魔だと言うのかっ‼︎」
シリウスはそう叫び、そのアル・スハイルの真紅の光線に青白い光線を放ち、受け止めたが次の瞬間、アル・スハイルの光線が五つに分裂しシリウスを襲い、全ての光線がシリウスを貫いたが、シリウスは口から僅かに血を流し傷口からは白い炎が見えていた。
「……」
シリウスは無言で血を拭い、オルビスの方を見つめ青白い星を出し小さく笑った。
その一撃は大星と呼ばれてない星海人を一撃で仕留める程の威力があった……。
(そう言うことか……
遥かなる星の一つ
毒針のシャウラまで討伐しに
行かせたのは
この私を遠ざける為だったのか……)
シリウスはアル・スハイル一人しか居ないことに気がつき、遠い星まで行かされた訳に気付いた。
それはアル・スハイルからアル・ムーリフが離れた時、戦いを求め続けるシリウスをアル・スハイル一人で抑え込めるはずが無かった、それはシリウスはアルタイルと同等の力を持つ大星だからである。
「シリウスよ
はよう撃ち返して来ぬか?
そちがその程度で怯まぬのは
解っておるでな……」
アル・スハイルはそう、静かに微笑みながら言い、再び右手の人差し指を輝かせた。
「アル・ムーリフは……
どこに居る……」
シリウスはアル・ムーリフを警戒して探していた。
そして再びアル・スハイルの光線がシリウスを襲ったが、シリウスはそれを青白い火球を放ち受け止め、立て続けに放たれるアル・スハイルの光線を全て受け止めていたが、何かを呟いていた。
「我……青炎が一星
シリウス……
我が道を青き炎よ包み込め……」
するとシリウスの青白い星が輝き、二本の白い炎がアル・スハイル目掛けて放たれた。
その炎は一瞬で星海に道を描く様にアル・スハイル目掛けて向かって行く。
「白き炎の道
その手には乗らぬ……」
アル・スハイルはそう呟き、赤い光線でそのシリウスが放った炎を貫く様に操り、消し去ったがその瞬間凄まじい速さで、青い炎の矢がアル・スハイルを射抜こうとした。
アル・スハイルは左手にサーベルを持ち、その矢を切り落としたが、キラキラと青い光が正面に見えた。
「我っ!誓いの一星
アル・スハイルッ‼︎‼︎
我が星よ汝の力を解き放てっ‼︎」
アル・スハイルが叫んだ瞬間、赤い誓いの星が凄まじい輝きを見せ、その光はオルビスの星にある多くの国々を照らした。
次の瞬間凄まじい数の青い炎の矢がアル・スハイルを襲ったが、アル・スハイルの誓いの星から無数の光線が放たれ、次々と打ち落とし、その光線はシリウスを襲った。
シリウスは僅かな星の力を使い、全ての光線を青い炎の壁を生み出し受け止め、左手をアル・スハイルに向けスッと素早く振ると、巨大な白い炎の刃がアル・スハイルに向けて放たれる。
その攻防の様子を、オルビスの多くの人々が見ていた……。
「何が起こってんだ……」
ガイアがその赤い輝きと白と青の輝きを見て呟いた。
「あれは……
アル・スハイル様が……
戦われている……」
エルナトが呟いた。
「なにと戦ってんだよ……」
ガイアが呟きエルナトが思い出した様に、何かを胸元から取り出した時、アルナイルが静かに言った。
「あの光はシリウス……
アル・スハイルの手星ですけど……
以前のアル・スハイルより……
殺戮を好む大星……」
アルナイルはそう言い手で光を救う様にし、光を溢れさせシリウスの姿を映し出した。
「なんで…
シリウスが……」
エルナトが呟いた。
「シリウスはきっと
この星を見たら
全てを焼き尽くすでしょう
精霊が力を持ち
星海に届くまで成長しています
彼にとっては
いい口実にしかならないです」
アルナイルが言った。
「じゃぁ……
アル・スハイルが
この星を守ろうとしてるってこと⁈」
ステラが焦る様に言った。
(アル・ムーリフさんが……
眠り続けてる…こんな時になんで⁉︎)
アルナイルはそれに驚いてしまうが、エルナトが飛び出そうとした。
「待ってくださいっ!
エルナトさんが行っても
足手まといにしかなりませんっ!
アル・スハイルさんとシリウスは
星海人が飛んで
8日の距離で撃ち合ってるんですっ!
エルナトさんが行っても
狙われるだけですっ‼︎」
アルナイルは全力でエルナトを止めた。
ガイアはそれが途方もないことだけは理解し、馬車から飛び降り近くの木を殴り、なにも出来ない怒りを現していた。
ステラはそのガイアの気持ちを深く理解していた、あのガイアが悔しがっている姿を初めて目の当たりにした。
それでもステラは冷静に言った。
「エルナトさん
さっき何かを出してたけど
それは何?」
エルナトはそれを聞いて、すぐに取り出したネックレスを胸に当て、ダークマターを注ぎ込むと、アル・スハイルの声がネックレスから聞こえて来た。
「エルナトよ
すぐにガイア達の向かう先に行け
この星には秘密がある
すぐにそれを調べるのじゃっ!
時間は8日も無いと思えっ‼︎‼︎」
それは星鉄塊を美しく磨き上げたネックレスで、裏にはこう書かれていた。
「親愛なる姉上へ」
それを見たアルナイルとエルナトは過去に、アル・ムーリフがアル・スハイルに送った物だと気づいた。
エルナトはそれを見てそのネックレスを、ステラに歩み寄りつけようとした。
「えっ……」
ステラが戸惑ったがエルナトが言った。
「いいから…受け取って下さい」
エルナトが静かに優しく言った。
「待って……」
ステラが続けて言おうとしたが、エルナトが言う。
「これはステラさんが
身につけるべきです……
わたしには似合いませんから」
エルナトがそう言うとアルナイルも優しく頷いていた。
「よくわかんねぇけど
先を急ぐぞっ!」
ガイアがそう言い馬車を走らせた、アルナイルは自分が先に行けば早いと思ったが、ステラがネックレスのことより状況を優先して言った。
「アルナイルさんお願いします
すぐにセプテント家に行って
アルタイルにアル・スハイルを
助ける様に伝えて下さい」
「えっ……
多分無理だと思います!
シリウスはアルタイルと戦いません
アルタイルさんも
シリウスとは戦いませんよっ!」
アルナイルが言った。
「なんでだよっ‼︎」
ガイアが言った。
「解りません……
でも考え方の違う二人が
星海で120億年も生きてて
一度も戦った事が無いそうなんです
何かあると思いませんか?」
アルナイルが考えながら言った。
「それでもお願いっ!
もし本当にそうなら
アルタイルを見てシリウスが
退いてくれるかも知れない
そう思わない?」
ステラは自信を持って言った、仮にそうならなくてもアルタイルはステラの頼みを聞いてくれる気がしていた。
アルナイルはステラのその態度にもしかしたら、アルタイルがアル・ムーリフの手星として、戦ってくれるかも知れないとそう感じて静かに頷いた。
そして美しい光を放って姿を消した。
「アルナイル…お願い……」
ステラはそう言い、飛ばす馬車の中から向かう先を見据えるように、立ったまま前を見ていた。
「派手にやってるね……」
アルタイルはセプテント家の屋根の上からそう呟き、エリスと二人でアル・スハイルの戦いぶりを、その輝きで見ていた。
「ししょぉ……
アル・スハイル様とシリウス様って
どっちがつおいんですか?」
エリスがアルタイルに聞いた。
「シリウスだよ……
アル・スハイルだけじゃ
止められないはずさ」
アルタイルはそう答えた。
「じゃぁ
なんでシリウス様は
アル・スハイル様の
しゅせいなんですか?」
エリスが素朴な疑問を聞いた。
「好きに暴れられるからだよ……」
アルタイルが言った、それは星海特有の事情がある、シリウスと言えども全ての星海人を相手には出来ないのだ、それはそれなりの力を持つ星海人が大勢集まれば、ダークマターを抑え込む事が出来る、そうなって仕舞えばシリウスと言えども、満足に戦う事が出来ないのだ、その為に権力を持つアル・スハイルの手星になれば、それだけの星海人が敵になることは考え難いのだ。
「ふーん……
良くわかんない……」
幼いエリスはそのことを理解出来ずにそう言っていた。
(なんでアル・ムーリフは
まだ来ないんだろう……
これだけの事が起きてるのに……
どうして……)
アルタイルがそう考えていた時、優しい光の球が目の前に現れ、アルナイルが慌ててアルタイルの前に現れた。
「アルタイルさんっ!」
アルナイルがアルタイルを呼んだ。
その頃ガイア達は馬車を飛ばしていた、凄まじい勢いで真夏の北域地域を駆け抜けていく、馬車を飛ばしているためか、その風が僅かに冷たく感じる。
「この星に
どんな秘密があるの……?
アル・スハイルが求める秘密って……」
ステラが静かに言った。
「解りません
ですが星海人の起源に纏わる
秘密の様です……」
エルナトが言った。
「星海人の起源?」
ステラが言った。
「余計な話はすんじゃねぇ!
舌噛むぞっ‼︎」
ガイアが叫ぶ様に言い、馬車は荒れた道を突き進んで行く。
(馬車じゃ遅ぇ…
あと8日もねぇって時に
アークスまで10日はある……
寝ずに馬車を飛ばせば
余裕に見えるけど馬はもたねぇ
待て……馬は2頭……)
ガイアはふと思った、近くには小川が流れているのがガイアの目に入った。
「エルナトッ!
お前飛べるよなっ!」
ガイアが叫ぶ様に聞いた。
「はいっ!」
エルナトが大きな声で返事をした。
一方星海では……。
「アル・スハイル……
やはり貴様はまだ成長していたのか」
シリウスが呟く様に言い、アル・スハイルの攻撃を受け止め反撃を繰り返していたが、一気に距離を詰めはじめた。
「そう言えば
そちを青狼と呼ぶ者もおったな……」
アル・スハイルが呟く、シリウスは素早く飛びアル・スハイルとの距離を詰めていくが、その輝く姿はまるで青白い狼の様に見えていた。
(あやつが
5日の距離まで来たら
オルビスを背に戦えぬ
じゃがそれはそれで都合が良い……)
アル・スハイルはそう考えオルビスから離れた、まるでシリウスから少しずつずれる様に迎え撃ちながら離れていった。
アル・スハイルが離れると同時に、オルビスから見える赤い輝きと青白い攻防は離れていく、それはオルビスからシリウスの注意を逸らすように見えた。
「う~ん……
あれはグランドファングを警戒してるね
アル・スハイルはあれを
受け止められないからね
躱したらオルビスに直撃しちゃう
ちゃんと位置取りを考えてるね……」
地上からはアルタイルが観戦し様子を伺っている。
「アルタイルさんっ!」
アルナイルが大きな声で言う。
「嫌だね……
わたしはシリウスとは戦わないよ
シリウスを抱え込んだのは
アル・スハイルの過ち
あの時のアル・スハイルは
考えが共通するシリウスを手星に加えた
互いの利点が一致する間はいい……
でもそれが一致しなくなる事を
考えてなかった
だからアル・スハイルは
私に頼みに来なかった……
まぁアル・スハイルからじゃ
私に頼めないよねぇ……」
アルタイルはそう言った。
「でもっ
それじゃっ!」
アルナイルはアルタイルに訴えようとしたが、アルタイルが言う。
「アル・スハイルはね
プライドが高すぎるんだよ……
それを曲げれるのは
アル・ムーリフ様だけ
むかし私があの子を助けてあげた時も
苦虫噛んだ様な顔をしてたのを
わたしは毎回見てたさ」
アルタイルが言った。
「これは
ステラさんの頼みなんです
ステラさんは
アル・ムーリフさんの生まれ変わりで……」
「じゃぁ
なんでアル・ムーリフ様が
私に命令を出さないのさ
アル・ムーリフ様の命令なら
わたしは止めてあげるよ
アル・ムーリフ様の手星だからね」
アルタイルが言った、アルタイルは何かが起きてる事に気付いていた、シリウスとアル・スハイルの力量の差ならアル・ムーリフも知っている、だがアル・ムーリフが助けに来ない、このオルビスの星に居て、星海人からしたら目の前で繰り広げられている攻防に全く姿を現さないのに疑問を持っていた。
「アルタイルさんは……
アル・スハイルさんのことを
嫌いなんですか?」
アルナイルが聞いた、それはアルタイルの態度がまるでアル・スハイルが勝とうが負けようが関係ないように見えたからだ。
「好きだよ……
許せないことはあるけど
愛弟子だし
死んで欲しいとは思ってないよ」
アルタイルは静かに言った。
「なら……」
アルナイルがそこを突こうとしたが、アルタイルは言う。
「だから言ったじゃない
アル・ムーリフ様の命令なら
止めてあげるって
どの道シリウスは
倒さないといけないからね」
アルタイルは微笑んで同じことを言った。
「アル・ムーリフさんは…
眠られてるみたいなんです……
まったく気配がないんです……」
アルナイルが仕方なさそうに言った。
「なるほど…だから昨日から……
紫の星が見えないんだ……
そうなると
アル・スハイルは
覚悟の上で戦ってるんだ……」
アルタイルは微笑んだまま静かに言ったが、次に真剣な顔になり冷たく言った。
「見せてもおうかな
あなたが手にしたものを……」
アルタイルはアルナイルから聞いたことで、アル・ムーリフが何かしらの理由で眠りについたことを知り、それを知った上でアル・スハイルがシリウスと戦っている事も理解していた。
「アルナイルちゃん
悪いけど
わたしはシリウスと戦わないって
ステラさんに伝えてくれない?」
アルタイルは静かにアルナイルにそう告げた、アルナイルはそれを聞いてアルタイルの意思が硬いことを把握し、ガイア達のいる方に向かって光を放ってから星海人の姿になって言った。
「アルタイルさんって
なんなんですか?
あなたが戦わないなら
私が行きます……」
「勝手にすればいいよ
ただ私には約束があるからね
簡単にはシリウスと戦えないのさ」
アルタイルが言い、それを聞いてアルナイルは光になってステラ達の元に向かった。
「エリス…
覚えときなさい……
力ってのはね
どんなに強くても
一人の力って
大したことは無いんだよ
あぁやって駆けつけようとしてくれる
そんな仲間を大切にしなよ」
アルタイルはエリスに教えるように言った。
「はいっ
おししょう様」
エリスは状況を知らずに可愛らしく言った。
(アル・スハイル……
あなたはにはアル・ムーリフしか
居なかったよね
本当に信じられる人がさ)
アルタイルはそう心で優しく呟き、アル・スハイルの元に向かおうとするアルナイルを見つめていた。
(くっ……
やはりシリウスは強い
この戦いで余の方が
先に剣を抜く羽目になった……)
アル・スハイルは遠距離の撃ち合いで身を守る為にサーベルを振っていた、だがシリウスはアル・スハイルの放つ光線を、全て自らの星の力だけで受け止めている。
そしてそのまま距離を縮めていた、その速さはアル・スハイルの想像を遥かに超えていたが、アル・スハイルは気付かなかった、シリウスが何かを唱えていたことを……。
「さぁ……
アル家のお嬢様……
どうされるのかな?」
シリウスはそう静かに呟き冷たく微笑んだ。
次の瞬間、凄まじい青い炎がシリウスの星からアル・スハイル目掛けて放たれた。
その炎は青く彗星の様に長い尾を引き、次第に一頭の青い狼の様に星海を走り抜けた。
アル・スハイルはその光を見て言った。
「あれは…
グランドファングッ‼︎」
アル・スハイルは素早く全ての光線でその青く輝く狼を打ち落とそうとしたが、まるで意思を持つ様にアル・スハイルの光線を躱したのだ、そして最後に一直線に加速しアル・スハイルを襲った。
「しまっ……」
アル・スハイルが声を出し素早く身体を捻り僅かに躱した時、その狼の様な光線はアル・スハイルの右肩を食いちぎる様な傷を与えていた。
アル・スハイルはよろめきながら、その右腕をあげ再び、シリウスに狙いを定め超長距離攻撃で反撃をする。
(シリウス……
あやつも力を増しておったか
これは8日も持たぬかも知れぬ……)
アル・スハイルは出来るだけ時間を稼ぐ様に、火力を上乗せし反撃をしていた。
抵抗するアル・スハイルの攻撃をシリウスは鮮やかに青い炎で消し去り、勢い衰えることなく突進し続けている、そして再びグランドファングを放った。
青い狼の光がアル・スハイル目掛け、星海を再び走り抜けていく、アル・スハイルは再び自らの光線で撃ち落とそうとするが、やはりそれは躱しアル・スハイルを襲った時、アル・スハイルは叫んだ。
「余は一人ではないっ‼︎‼︎‼︎」
そしてアル・ムーリフから送られたサーベルでその光線を切り裂いた。
そして間髪いれずにもう一撃のグランドファングが襲いかかって来たが、その光線もアル・スハイルはサーベルで見事に弾いた。
「そうじゃ……
余はいつもそちとおった
なぜ気付かなかったのだ……」
アル・スハイルはそのサーベルからアル・ムーリフを感じていた。
「いつまで耐えられるかな……」
シリウスはそう静かに言い、今度は連続でグランドファングを放ち続けた、数十頭と言うべきだろうか、凄まじい勢いで狼の様な光線が星海を駆け抜けた。
アル・スハイルの誓いの星が輝き迎撃しようとし、多くの真紅の光線を放ち打ち落とそう追尾し始める、流石に数多く放たれたグランドファングの幾つかを消す事が出来たが、まるで意思を持った様なグランドファングは四方からアル・スハイルを襲ったが、アル・スハイルはコートを広げ、サーベルを操りそれらから身を守るが、守り切れないグランドファングを自ら切り裂いていた。
(これ程とは……
一度戦った時とは別物じゃな……)
アル・スハイルはそう感じ、自らも距離を縮め始めた、遠距離で圧倒された為に近接で戦おうとした時、見た事もない速さの光線にアル・スハイルは足を撃ち抜かれ、体勢を崩した。
アル・スハイルを数多くの青い魂無き獣の様な光線が襲おうとした、アル・スハイルは凄まじい勢いで過去の記憶が、脳裏に走り感じた。
(これが……
走馬燈と言うやつか……)
アル・スハイルはその中でも、サーベルを力強く握り振り抜いた。
その時アル・スハイルは銀色の光に包まれ、何かに抱きつかれて引っ張られた。
「アル・ムーリフか……」
アル・スハイルが言った時、その抱きついた誰かが言った。
「残念でした
アル・ムーリフさんなら良かったね」
その声がアルナイルだと気付いた時、アル・スハイルは別の場所にアルナイルと居た。
アル・スハイルを襲ったグランドファングは全て互いにぶつかり合い、爆発し青い光を放っていた。
「なぜ……
そちがここに……」
アル・スハイルはまさかアルナイルが助けに来るなど思っていなかった。
「それはまた後でっ!
防御なら私に任せて下さいっ!」
アルナイルはそう言い、アル・スハイルの肩と足の傷を癒やし始めると、無数の白い炎の矢が二人を襲ったが、アルナイルが手を前にだし光の壁を生み出し、その壁に命中した白い炎の矢は反射され、シリウスを襲った。
「これは……
白銀の翼と同じ力っ!
馬鹿なっ‼︎」
シリウスはそう叫び全ての、白い炎の矢を剣を抜き斬り落とした。
争いを極力好まない、防御だけに特化したアルナイルの力が初めてアル・スハイルを守っていた。
アル・スハイルもアルナイルのその力には一目置き手星に加えたいと考えた時期もあった程の力がオルビスのすぐそばで光輝いていた。
「アルナイル…
頼んだ…時間を稼いでくれよ……」
ガイアが呟き馬を飛ばしている、ガイア達は馬車を捨て、馬で移動し始めたのだ、多くの荷物を捨て必死にアークスの村へ向かっていた。
そしてアル・スハイルとアルナイルがシリウスと戦い始め、アルナイルは気付かなかった二人の星海人が戦いながらオルビスに降りた事に、だがそれをアルタイルは見逃さなかった。
「サルガス
この俺を
止められるとでも思ったのかっ!」
「カノープスッ
貴様もシリウスに組みするなら
止めて見せるっ!
アル・スハイル様の為にっ!」
それはサルガスはシリウスを止めようとしたが、それをカノープスが襲ったのだ、カノープスは超高速で移動できる力を持ち、背後からアル・スハイルを襲おうとしサルガスを置き去りにしようとしたが、サルガスは鞭を振り、カノープスを捉えカノープスの力でオルビスまで一瞬で移動したのだ。
その妨害にあったカノープスはサルガスと共に、オルビスの重力に巻き込まれ落下して行ったが、二人はその燃え盛る炎の中でも戦っていた、サルガスは鞭を振り、カノープスは剣を振り二人は星の力を最大に使い、流星になり落ちながらも戦っていた。
そしてその様子を、サラスは微笑みながら見ていた。
(愚かな星海人どもめ
互いに殺し合うが良い……)
サラスがそう思って居た時、アルタイルがサラスに背後から声をかけた。
「随分と楽しそうだね……
あんたさ…
うちらが殺し合うのを見て
楽しいのかな?」
「そう見えますかな?」
サラスはすまして言う。
「この戦いさ……
アル・スハイルが負ければ
この星が無くなるんだよ?
それは解ってるのかな?」
アルタイルは質問を変えた。
「アル・スハイル殿が
負けるはずはありませんな
とても頼もしい
妹君がおられるじゃないですか」
サラスが言った。
「あんたさ…
アル・スハイルと
アル・ムーリフの
何を知ってるのさ?」
アルタイルが聞いた。
「はて……
アル・ムーリフ殿は
アル・スハイル殿と同じ星を持つ
双子の妹君では?」
それを聞いたアルタイルはエストックを抜き、サラスに背後からそれを向けて言った。
「あんたさ……
人間じゃないよね?
それに精霊でもないよね……?
じゃあ……
星海人かな?」




