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ねぇあなたはなんで旅に出たの?ねぇあなたはどおして旅に出たの?  作者: 〜神歌〜
〜第二章 新しい旅へ 〜
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第二章 第13話 6月12日




 エルナトはペレが消えたのを見て、疲れ果てたように座り込んだが、その顔は悔しさを晴らせたように穏やかであった。



「あの程度の敵に

引けを取るようでは

まだまだ稽古が必要じゃな……」


 アル・スハイルが優しく言った、それを聞いたステラもアルナイルも少し困った顔をした、先程の様子からしてもっと違う言葉をかけてあげるべきじゃないかと思ったからだ。



「はい……

アル・スハイル様


またお願いします」


 だが嬉しそうにエルナトが言う、エルナトもまだまだ強くならないとそう思っていたのだ。


 アル・スハイルはそんなエルナトを気に入っていた、それはサルガスも同じだ、アル・スハイルはかつてアトリアロフの街を守れなかった悔しさをバネにして成長した、それがあったからこそエルナトの気持ちを良く理解していた。



 そしてステラは自ら出した紫の星に懐かしさを感じて見つめていた、淡く紫にふわっと輝くその星に触れようとした時、その星はスッと消えてしまった。



「この星……」


ステラが呟いた。


「それはそちの星じゃ

よもや人の身で星を現せるとは……


才があるようじゃな」


 アル・スハイルは何かをはぐらかす様に言ったが、ステラの人としての道を考えアル・ムーリフのことは伝えなかった。



(思い出すまでに

そう…時はかかるまい……

まぁガイアがそばにおれば

大丈夫であろう……)


アル・スハイルはそう考えていた。



「ようっ!

エルナト大丈夫か?

あんま無理すんなよっ‼︎」


 ガイアがそう言い着地して来た、紫月を使い風を上手く使い、長い間浮いていたのだ。



「ガイアッ!

なんでもっと早く来なかったのよっ‼︎」


エルナトが言った。


「はぁ?なんでお前に

そんなこと言われなきゃなんねぇんだよ」


ガイアは思ったことを言った。



「だいたいてめぇら

この前まで敵だったんだぜ

助けてもらっただけでも

ありがたく思えよ」


「あんたねっ!

同じ従者ならわたしの気持ちだって

少しくらい解ってくれても

いいんじゃないのっ⁈⁉︎」


エルナトが言った。



「わりぃが全くわからねぇ……

お前アル・スハイルに

大切にされてんじゃねぇか


俺なんてなんかあったら

ぶん殴られてんだぜっ‼︎‼︎


何回頭の中で

星見てると思ってんだよっ!」


 ガイアがそう言い、星のことで悩んでるステラがイラッとした。


「だいたい俺は

ステラの従者じゃねぇっ‼︎

友達だってのっ!」


 ガイアがそう叫んで、ステラは初めてガイアに友達と言われた気がした。



「はいっガイア

そのくらいにして

またお星様みる?」


ステラが笑顔で言った。



「おっ!」


ガイアが驚きエルナトを責めるのをやめて、ステラを見た時ガイアは思った。


 先程街まで走っていた時のステラとは思えない、何か自信を持った様な顔をしていた、ガイアはそのステラの笑顔を見て優しい顔になり頭をかきながら言った。



「まぁ……

お前の声が聞こえて

急いで来たんだけどな

もう少し早く来れたら良かったな

わりぃ……」


ガイアがそう言い、エルナトが言った。



「はい助けて頂き

ありがとうございました」


 エルナトは初めてガイアに笑顔を見せた、そこには今までとは違う、ガイアを仲間だと思ってくれたエルナトが居た。



 そしてガイア達は宿に戻り、今回のことをステラとアルナイルの部屋で話し合った、アル・スハイルは宿に行く前に街の人々の前で姿を消し、行方を晦ましたので宿の周りでも騒ぎにはなっていない。



 今回のリオネスの街を動物達に襲わせた首謀者がサラスだと言う可能性が極めて高く。


 ステラは父サラス・セプテントが、そんな事を考えていたなんて信じられ無かった。


「きっと何かの間違いよ……」


ステラが呟いた。


「……」


 ガイアはステラがそう思うことが自然なことだと思った。



「でも……

わたしはそう聞いたんです」


 エルナトはステラがアル・ムーリフの生まれ変わりだと言う事を知っていたので、遠慮がちで言う。


 ステラもエルナトが嘘をついてないことは理解していた。



「どうすれば良いかの……」


 アル・スハイルが静かに言う、アル・スハイルにとっては簡単な筈だった、以前なら殺して仕舞えばいいそれだけであったが、相手は今のステラの親でそうはいかなかった。


 ガイアもアル・スハイルの反応には気付いていた、だがそれよりもあのペレが長い間セプテント家から離れていたと言うのが気になっていた、ステラはガイアより一つ上で17才、つまり17年前にはセプテント家には居なかったことになる。




 ガイアがそう考えていた時ふと思い出した。




「ステラ

とりあえず明後日まで

違うこと考えようぜっ!」


 ガイアが言った。



「えっ……なんで?

うちのセプテント家がこの街に

迷惑かけてるかも知れないのよ?

そんな時に考えるなって……」


ステラが戸惑う様に言う。



「アル・スハイル

ちょっと来てくれ

伝えたいことがある」


ガイアがそう言い部屋を出て行く。



「なんじゃ…

ガイアが余に話しとは……

ここで話せば良いではないか……」


 アル・スハイルはそう言いながら部屋の外に出て行く。



 アルナイルもエルナトも不思議に思った、ステラはガイアが何か解決する方法を知っていて、アル・スハイルにお願いでもするのかと思っていた。



「ちょっと……

アル・スハイル様とガイアって

その組み合わせ大丈夫なの?」


エルナトがアルナイルに聞く。



「一度も二人で話したことなんて

無いと思います……

いつもガイアさんから

喧嘩売ってましたから」


 アルナイルは今までの事と、ガイアがハダルだった時の星海での事も含めて言った。



 少ししてアル・スハイルとガイアは部屋に戻って来た、そしてアル・スハイルは言った。


「まぁ良い

ガイアの言う通り

明後日までこの話は無しじゃ」



「へっ?」


エルナトとアルナイルは揃って言った。


 まさかアル・スハイルまでそう言うとは思ってもいなかった。



「エルナト少し出かける

ついて参れ」


「はい

アル・スハイル様」


エルナトはそう返事をして立ち上がった時、ガイアも言った。



「わりぃけど俺も行くから

アルナイル

ステラを頼むな」


「えっ?

ガイアさんもですか?」


 アルナイルは不思議そうに聞いた、ステラはこんな時にそばに居てくれないのかな?と言う顔をしていたが、アル・スハイルとガイアが出かけることを止める気は無かった、少しでもガイアがアル・スハイルと話せる様になってくれればと思っていた。



 そして三人は出かけていった。



「なんか不思議ですね

ガイアさんの言ったことを

アル・スハイルさんが聞くなんて……」


アルナイルが言った。



「そうね……

でもちょうどいいわ……

アルナイル」


ステラがアルナイルを呼んだ。


「はい?」


アルナイルはうん?と言う顔でステラを見ると、ステラは真剣な眼差しでアルナイルを見ていた。


「わたしが星を使えるなんて……

思わなかったの……」


 ステラがなんて言って良いのか解らないようで少し考えながら話し出した、それは当たり前のことだった。


 ステラは人間で星を使えるはずがない、ましてやダークマターを呼吸できない、それなのにエルナトを助ける時に紫の星が輝きその力を使えたのだ、それはアルナイルからしても驚くことだった。



「それでアルナイルに

お願いがあるんだけど

聞いてくれる?」


ステラがそう静かに言った。



「わたしに?」


アルナイルが聞いた。



「星の使い方を

教えて欲しいの……」



ステラが静かに言った。



「え……」


 アルナイルは戸惑った、星を使うにはダークマターを呼吸しその自分の星と繋がる必要がある、それは人間には出来ないことだ、なぜかと言えば人間はダークマターを呼吸することが出来ないからだ。



「今日ね……

凄い悔しかったんだ……


走ってる時に

街の人達の声が聞こえて来たの


助けてって

お救い下さいって……

沢山の人達の声が

聞こえて来たんだけど

わたしは……

走ることしか出来なかった……」


 ステラがアルナイルに自分の気持ちを語り出した、その気持ちにアルナイルは気付いていなかった、あの時、アル・スハイルについて行くガイアが急にステラを気にするようにペースを落として、ステラの手をとって走っていたのは見ていたが、アルナイルは少し離れてて何を話していたのか解らなかった。



「でもね……

今日アル・スハイルに頼まれて

わたし……

どうしていいのか解らなくて……


こんなわたしに

何が出来るのか解らなくて

でも……


逃げ出したら後悔するって

そう思ったの……」


 それはステラがあのクラスト村の一件から思っていたことも、深く関係しているのをアルナイルは気付いた、そしてステラが様々な想いを込めてエルナトを癒そうとしていたのを知った。



「そしたら……

アル・スハイルが教えてくれたの

星の使い方を……


だからっ!

もっと知りたいの

わたしの星の使い方を

もっと使えるようにりたいのっ!


ただついて行くだけ

そんなの……


嫌だから……」



 ステラは思っている事をそのまま素直に言っていた、それはガイアが燃え盛る屋敷に迷わず走り込んでいく時にも思っていたのだ。


 何処までもついていけない。


 そんなステラがそこに居たのだ、ステラは待ってる間にただ感じていた。


 いつか本当に大切な時に、ガイアのそばに居れなくなってしまうのではないかと。



 アルナイルは解っていた、ステラがそれを求めるのは気持ちもそうだが、ステラが元々持っている『紫の誓いの星』それを使いたいと言う至って自然なことであった。


「うーん……

じゃぁ胸に手を当てて見て」


アルナイルが言った。



「こう?」


ステラが胸に手を当てて言う。


「うんっ

それで深くお願いして見て

癒しの時が欲しいって」


アルナイルが微笑んで言う。



「…………」


ステラは瞳を瞑り心でそれを願い始める。


 すると手の平がほんのりと暖かくなり初めめ、紫色に優しく輝き始めそして手の中に何かがあるような気がしてきた。



「じゃゆっくりと

手を前に出して手を開いて見て」


 アルナイルが優しく言うが、なぜステラが人の身でありながら星を使えるのか、目の前で良く見て気付いた、それは「誓いの星」だから使えるのだ。


 誓いの星、その変換の力が、ステラが呼吸して体内に取り込んだ酸素の一部をダークマターに変換しているのだ。



(ほんとうに

凄い星だよね……

なんでも変換出来ちゃうみたい)


アルナイルはそう感心しながら見ていた。


 ステラはアルナイルに言われるままに、手を前に出して開いてみる。


 すると一輪の美しい紫のバラをステラは持っていた。



「綺麗……」


ステラはそのバラを見て呟いた。



「気品…誇り……

高貴…尊敬…上品……」


 アルナイルがその紫のバラを見つめ、微笑んで呟くように言う。


「え……」


ステラは驚くようにアルナイルを見た。



「紫のバラの花言葉だよ……

ステラさんにピッタリな花だね」


アルナイルが優しく言う。


 アルナイルはまるでアル・ムーリフを表すような花に思えていた。


 そんなアルナイルにステラが恥ずかしがりながら言う。


「褒めすぎだよ……

わたしそんなんじゃないよ」


「ううん……

褒めてなんかないよ


ステラさんはそう言う人だから」


 アルナイルが言うと、ステラは少し嬉しそうに聞いた。


「ねぇあなたは

なんで旅に出たの?」


「うーんなんでかな?」


アルナイルは嬉しそうにそう言った。


「でもなんで

星海人のアルナイルが

この星の花言葉なんて知ってたの?」


ステラが不思議そうに聞いた。


「ステラさん

わたしがあの書庫で何冊の本を

読んだと思ってるんですか?」


アルナイルは自信を持って笑顔で言った。


 ステラは神殿書庫でのアルナイルの光速読破ぶりを思い出して汗をかいていた。



 アルナイルは今と言うこの時が、ずっと続けばいいなと思い始めていた、ガイアとアル・スハイルが争わず関係として良い距離を取ろうとしている、星海ではアル・スハイルとハダルは意見の食い違いから、対立し続けていた。


 そんな事が嘘の様に感じるひと時が流れていた。




 一方フランシスではサラスが静かに呟いた。


「そうか

失敗したのか……」


「どうされました?」


ユーファがサラスに聞いた。


「いや何でもない

ところで城壁の工事は進んでおるかな?」


サラスがユーファに聞く。


「はい

あと一月もすれば

フランシスをはじめ

ペクトルなどの街の城壁も完成します


ですが小さな村は

もう少し先になるかと思います」


ユーファはリオネスの一件を、何も知らない様に答えている。



「ふむ……よろしい

早く全ての領民が

ゆっくりと過ごせる様にせねばな……」


サラスは満足してる様に穏やかに言った。



 その様子をアルタイルは普通の鷲に姿を変え、静かに屋根の上で伺っていた。



(サラスを止めないと……


でも…


アル・ムーリフはどう思うんだろ?

ステラの親だし……


ちょっと待って…普通に考えたら

出来すぎてるよね……


何でセプテント家に

精霊達が集まって

そこにアル・ムーリフ様の

生まれ変わりとして

ステラが生まれたの?)


 アルタイルはそう考えはじめた、良く考えれば出来すぎているのだ、アル・ムーリフは一度この星を救っている、そのアル・ムーリフがこの星で生まれ変わるとして、このセプテント家に生まれて来る可能性は雲を掴む様な話である、それを考えると色々なことが不可解に思えて来たのだ。


 セプテント家の力を持ってすれば、巨大化した動物達など精霊達の力でどうにでもなる、そしてそれを束ねるこのサラスが野心家なのは既に解っていた、そのサラスの代でステラが生まれた、いつかは確率は的に考えれば巡って来るかも知れない、だがそれは巡って来ない方が普通であって、このサラスの代に巡って来るなんてあり得ないと思ったのだ。




 そして暫くしてリオネスではガイア達が帰って来てガイアだけが、ステラとアルナイルが星の使い方を練習している部屋に来て言う。


「ちょっとまた出かけて来る」


ガイアはそう言いまた出かけて行った。



「もう……」


 ステラは練習している所を見て欲しかったようだった、だがガイアはステラが星を使えてる事に驚いていなかった。


 だがそれをガイアは伝えたかったが、それどころでは無かった、ガイアはとてつも無く焦っていた。


(ってか忘れてたぜ……

つかステラも絶対に忘てる)


 ガイアは思い出していた、フランシスでガイアの家で話していたある事を……。



 ガイアはリオネスの街を走り、急いで何かのお店を探している、アル・スハイルはエルナトと自分の部屋で何かの準備をしている。



「まったく……

なぜそんな事を

あやつは忘れておったのじゃ


そもそも今日エルナトが

あんな目にあったその日に

それをするやつがあるかっ」


 アル・スハイルが準備をしながら、文句を言っている。


「でも良いかも知れません

わたしも悔しさを晴らせた日ですし


ステラさんの大切な日に

ステラさんが星を使えたのです


アル・ムーリフ様の

大切な日になりますから」


エルナトはそう言いながら手を動かしている。



「まったく……

この星の者達は

大切にしておるのだな……


余はあほらしくなって

10万年おきでしかせぬぞ……


アル・ムーリフは確か

1000年おきにしておったな」


 アル・スハイルはそう言い、エルナトもいつかそんな感覚になるのかと思い汗を流した。


 そんなこんなを言いながら準備をしている、アル・スハイル的にはペレは小物で、その戦いでエルナトとステラが成長してくれたのは収穫であったので、手間をかけているのだ。



「そう言えば

アル・スハイル様も

今日じゃないですか?」


エルナトが聞いた。



「そうじゃな

100億5千9百98万6百12回目

になるのぉ……」


アル・スハイルが悩まず言う。


「お年…覚えてるんですね……」


エルナトが汗をかきながら呟く様に言った。



 そして日が暮れてガイアが帰って来た。



「練習はかどってるか?」


 ガイアがそう言いながらステラ達の部屋に入って行く。



「えぇ

少しは慣れて来たわ」


ステラが自信を持って言う。



「ガイアさん

ステラさんの星はアル・スハイルと同じ

誓いの星なんです


星の力は変換ってかなり特殊なんです」


 アルナイルがそう教えてくれた。


「変換……

じゃっちょっと

今の服をドレスに変換出来るか?」


ガイアが聞いた。


「ドレス……

出来るかな?」


 ステラはそう考えながら言い、胸に手を当てて瞳を瞑り願い始める、すると紫の星が輝きステラの全身をその光が包んだ。


「綺麗……」


アルナイルが言った。


「おっ…おう……」


その美しさにガイアが驚いていた……。


 紫のワンピースのドレス、胸元だけが白くステラのまだ若さを補う程に大人びている、長いスカートもまた美しい。



「このドレス…わたし……」


 ステラはそのドレスに見覚えがあった、だが見たことないドレスのはずだった、だが何故か見覚えがあった。



「ステラ…」


 ガイアが呟き、それから我に返るように言った。


「メシに行こうぜっ!」


 ガイアがそう言いステラの手を引っ張って部屋から連れ出した、アルナイルはガイアが1日何をしていたのか、光を屈折させて見ていて知っていたのでガイアに合わせている。


「さっすがアルナイル

やっぱり気付いてくれてたんだな」


ガイアが元気に言った。



「ちょっとそこ

アル・スハイル達の部屋じゃっ」


ステラが焦りながら言った。


「いいんだっ

今日はここで食べるんだっ」


ガイアがそう言い部屋のドアを開けた。



 だが部屋は暗くガイアがステラの手を引いて部屋に入った時、一気に部屋が明るくなった。


「誕生日っ

おめでとうございますっ!」


 エルナトが元気に言ったがアル・スハイルだけは固まっていた。


「ステラ……

そのドレスはどうしたのじゃ……」


アル・スハイルが驚きながら聞いた。



 そのドレスはアル・スハイルとアル・ムーリフが星海にいた時、互いの誕生日の時に着ていたドレスであった、二人とも美しく着飾り互いが互いを祝うように着飾り、アトリアロフの街をあげて祝っていた。


「星にお願いしたら

このドレスが……」


ステラはまだ少し戸惑いながら言った。


「いいんだっ

誕生日くらい綺麗なカッコしたって

それに嫌なことなんて

パァーッと楽しんで忘れちまおうぜ」


 ガイアはそう明るく言った、それはあまり見せなかったステラが我慢していた事、それをそのまま言ったのだ。




(まさか……

そちが一千年と言わず

百年と言ったのは……)


 だがアル・スハイルはそれを聞いて気付いた。



(星海は昔から

平和を望んでいた街の人々も


星の生き物に

脅かされ街が襲われる時もあった

我らが幾ら戦っても

永遠に戦いが終わらなかった

星の数が多すぎるのだっ!)



(姉上……

妾は毎年でも構わないと

そう言ったではないか


忘れた訳ではあるまい?)


 アル・ムーリフの声がアル・スハイルに響いた、そして周囲の異変にアル・スハイルは気付いた、アル・ムーリフが時の流れを何かと変換して止めていた。


(アル・ムーリフッ!

何と変換したのじゃっ‼︎‼︎

時を止める対価など


何と変換したのじゃっ‼︎)


 アル・スハイルが叫ぶようにアル・ムーリフの意思に聞いた。


(妾の記憶じゃ……)


アル・ムーリフは言った。


(記憶…そんな……)


 アル・スハイルは愕然とした、記憶を変換し時を止めると言うことは美しい二人の思い出も全て忘れてしまうと言うことだ、そうまでしてもアル・ムーリフはアル・スハイルに伝えようとしていた。


(姉上……

セプテント家を

滅ぼす気であったろう?)


 アル・ムーリフがアル・スハイルに聞いた、アル・スハイルは見抜かれていた、瞬時に多くを考え、星海人として星神としてこの星を見ようとした時、精霊達を束ねようとするセプテント家は邪魔でしかなかった。


 争わないのならば……。と考えていたがセプテント家から仕掛けて来たのだ。



(破壊と戦いの力を使って……

滅ぼす気でしたよね?


それをするならわたしは……

わたしは……

二度と姉上と

話せなくなってしまいます)


 アル・ムーリフがステラとしての立場も考えながら話している、そうアル・スハイルは気付いた。


(どうかそれはしないで下さい……


わたしの……

この星での…お父さんなんですっ!


わたしに二度も父上を

亡くす想いをさせるのですかっ⁈)


 アル・ムーリフの意思はそうアル・スハイルに訴えた、それはアル・スハイルが聞かないことも覚悟の上で、耐えきれず記憶を代価にしたのだ、いっそ忘れてしまいたいそれ程のことであった。


 アル・スハイルにとってそれは誤算であった、アル・ムーリフの父は星海であの日に、アトリアロフが襲われた日に亡くしている。

 だがこの星でアル・ムーリフがサラスをまた親として思っているとは全く思わなかったのだ。


(解ったっ!

これ以上話すでないっ‼︎


時を動かせっ!

全てを失ってしまうぞっ!)


 アル・スハイルがそう訴えたがアル・ムーリフは全ての想いを込めて言った。


(姉上っ!

誓って下さいっ‼︎


二度と破壊と戦いの力に

頼ら…ない…と……)


(アル・ムーリフッ!

やめよっ!

アル・ムーリフッ‼︎)


 アル・スハイルは叫び、ステラを叩いてでも止めようとしたが、時が止まっているのでそれも出来ずにいた。


(アル・ムーリフッ!

誓うっ余は誓うぞっ!

だからもうやめよっ‼︎)


(あねうえ…

ほんとうに誓…って……

下さ…い……)


 アル・ムーリフの声は必死に伝えようとしているが、そう最後に弱々しくなり、アル・ムーリフの声は聞こえなくなってしまった。



 そして時が動き出しステラはガイアに席に案内され、困りながらも嬉しそうにその席に着く。


 だが時が動き出したことは、アル・ムーリフの記憶が全て消えてしまった事を、意味する事をアル・スハイルは気付いていた。


「ガイアよ…

ステラを頼む……」


 アル・スハイルは、そう優しく微笑んで言い席を立った。


「あん?

アル・スハイルどうしたんだ急に

どっか行くのか?」


 ガイアが聞いた。


「忘れたものがあっての

思い出したのじゃ……」


 アル・スハイルはそう言い部屋を出て行った。


「なんだよ…あいつ……」


 ガイアはそう言ったがエルナトがフォローする様に言う。


「きっとお好きなワインを

買い忘れてしまったのですよ

急いで準備したので


ガイアさんが

もっと早く教えてくれれば

良かったんですよ」


「そうだったな」


ガイアは笑って誤魔化すがステラが突っ込む。


「ちょっとっガイアッ

わたしの誕生日忘れてたの?


6月12日って言ったじゃないっ!」


ステラが言った。


「つかっステラだって忘れてたろっ!」


ガイアが言い返しアルナイルが言う。


「まぁまぁステラさん

思い出してくれただけでも

良かったじゃないですか


私なんて昨日で過ぎてますし……」


「…………」


 さりげなく自分をアピールしたアルナイルの言葉で、その場の時が止まった。




 その頃アル・スハイルは宿を出て、街の外で一人座り星を眺めていた。


 記憶を代価にしてでも、アル・ムーリフは訴えていた、それは二度と姉であるアル・スハイルに繰り返して欲しくないと訴えていたのを解っていた。


「アル・ムーリフ…

そちは言っておったな……


皆が悲しんでる時に

楽しい模様しをしたいとな

皆が元気になれるようにしたいとな


そちが誕生日を祝いたいと言ったのは

ただの口実であったのだな……

余を頷かせるための

口実であったのだな……


運命の悪戯か

ステラとアル・ムーリフの生まれた日が

同じ日とはの……」


アル・スハイルはただ静かに呟いていた。



 夜空にはシリウスの星が一際美しく輝いている、そして赤く輝く誓いの星はどこか悲しげにアル・スハイルの瞳にうつっていた。


「時が無いか……

だが…それでも余は誓おう

ほかならぬそちの為に……」


 アル・スハイルはシリウスの星を見て、オルビスのすぐそこまで近づいて来てるのに気付いて立ち上がり、苦しさを押し殺して言う。



「我っ誓いの一星……」


その声は静かに響いていた。



「我がアル・スハイルの名において


誓う……」



 アル・スハイルの瞳に涙が溢れそうになっていたが、アル・スハイルは流さなかった、だが涙を誘うように今までのアル・ムーリフとの思い出が溢れてくる、そしてその悲しみが溢れてしまいそうになった時、ガイアがステラに言った言葉が何故か頭に響いた。



(めそめそすんなよ

らしくねぇ……)


 するとアル・ムーリフがステラとしてガイアと接した日々が、頭に浮かび凄まじい勢いで流れていった。


 アル・スハイルは悟った、アル・ムーリフは記憶を代価にしたのでは無いと、仮に代価にしたとしても大切なことの全てをアル・スハイルに預けたのだと。



「アル・ムーリフ

余にそのようなことを……」


 アル・スハイルは瞳を瞑り、そう呟きその瞳を見開いた、その瞳は寂しさや悲しさを全て押し殺したかのような輝きを見せていた。


「我…誓いの一星

アル・スハイル


我が星よ

しかと聞くが良いっ!


我…この星を導くことを

破壊と戦いの力を

二度と使わぬことをっ!

我がアル・ムーリフに誓うっ!

そちに誓うのではないっ‼︎‼︎」


 アル・スハイルは自らの誓いの星に言った、それはアル・ムーリフの記憶から、扱う力によって思考が変わってしまうのでは?と言うことも聞き、星に支配されたのではと言う疑念に自らの意思をぶつけて叫んでいた。


 アル・スハイルの星よりも、アル・ムーリフを大切に思う誓いであった。




 その頃星海ではアトリアロフに大星シリウスが立ち寄っていた。


「アル・スハイル…

あいつは俺を

なんだと思ってるんだ……」


シリウスが言い何者かがシリウスに言った。


「シリウス……

アル・スハイル様を

あいつ呼ばわりするとは

貴様何様のつもりだっ!」



「サルガス

この私にいつからその様な

口を叩ける様になったんだ?」



 サルガスは赤いアル・スハイルの星の輝きが変わったのに気付き、自らの星から再びオルビスに向かっていたのだ。


 そしてアル・スハイルの屋敷でシリウスにあったのだ。



「シリウスよ

同じアル・スハイル様の

手星として言おう


アル・スハイル様が

星神として星を見るならば

我らもその様に動くべきであろう


今後は無闇に星を殺さぬことだ」


 サルガスがシリウスに言った、同じ手星同士で争うことはアル・スハイルとアル・ムーリフが禁じていた、シリウスもアル・スハイルとアル・ムーリフの姉妹が手を取ればシリウスを押さえつけることが出来るのに気付いていたので、それに従っていたのだ。



「ふっ……

あの小娘に問いただすまで

では……」


 シリウスはそう言いオルビスに向かって行った。


「待てっ!シリウスッ‼︎‼︎」


 サルガスはシリウスがアル・スハイルを小娘と言ったことに、危険を感じシリウスの後を追っていった。



 シリウスは外星を持ち遠距離を得意とし、それはアル・スハイルを超えていた。


 アルタイルは内星を持ち、近距離を得意としアル・スハイルを超えている。


 シリウスはアルタイルの対照的な存在であり、両者は互いに戦わずに悠久の時を過ごして来た、それは近距離と遠距離の特性を持つ大星ベガが二人に結ばせた、不戦の誓いが守られ続けた結果と言えた。



 互いに距離を置き続けた二人の大星が、近づきつつあった。





~第二章 新しい旅~完

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