第二章 第12話 悔しさを超えて
「アルナイルッ!
ステラを頼むっ‼︎‼︎」
ガイアが叫ぶように言った、その時、森から巨大化した動物が大量に現れた。
「なんだこいつらっ!」
ガイアは再び紫月を抜き叫んだ。
「少し街に寄るぞ……」
アル・スハイルはそう言い、街に向かい走り出した。アル・スハイルは人に成りすましている為に走っているのだ、それに合わせて一番最初にステラがつい行く。
(夜なら飛べるのだが
昼では仕方ない……
それにこの獣ども
誘導されておる……
誰が仕掛けたかは解らぬが
争いたい者がおるようじゃ……
くだらぬ……
じゃが余にとっては都合がいい
利用しない手はないのぉ……)
アル・スハイルはそう考えていた、ガイア達とリオネスの街の間には僅かな林がある、もしガイア達に気付かずリオネスから砲撃や魔法での攻撃が始まったら、ステラに危険が及ぶかも知れない、そして争いを止める事まで考えていたのだ。
その動物達の群れを見てリオネスの街の人々が騒ぎ出し、街の衛兵達が街を守ろうと出て来て整列し守りを固め始める、リオネスには高い塔がありそこから見張りをしていた。
「どうしたんだよっ!
ここでやっちまえばいいじゃねぇかっ‼︎」
ガイアが叫びながらついて行く。
「ガイアはガサツだからねっ!
街の攻撃からも
私を守ってくれるのっ⁈」
ステラが大きな声で言うが、アル・スハイルには何か考えがある様に思えていたで、別にガイアを疑ってる訳では無かった。
「クククッ!
これは愉快っ‼︎‼︎
ステラの言う通りじゃ
我らの姿をリオネスの者達に
見せてやれば良いっ!」
アル・スハイルが楽しそうに言い、素早く走り抜けて行く。
(そんなことしなくても…
アル・スハイルさんなら
すぐにやっつけられるはず……
なんで……)
アルナイルはそう思いながらアル・スハイルについて行くが、簡単なことをしようとしないアル・スハイルの行動が不思議で仕方なかった。
「エルナトッ!
そちは身を隠し
リオネスに先に行け
精霊術を使った者を探し出せっ‼︎」
アル・スハイルがエルナトに言った。
「かしこまりました」
エルナトがそう返事をし林から出る前に離れて行った。
「精霊術?」
ガイアが聞いた。
「こやつらは精霊術の力に
引き寄せられたのじゃ
先程うっすらと感じたのでな……
まぁ丁度良いがの……」
アル・スハイルが最後の言葉だけを小さな声で言った時、ガイア達三人は林を抜けた。
「おいっ!
あれを見ろっ
人が追われてるぞっ‼︎‼︎」
街を守ろうとした衛兵達が、ガイア達に気付いた、だがその直後、ガイア達が出て来た林を薙ぎ倒しながら、十を超えるビックタイガーウルフ達が飛び出して来たが、その背後からビックマンモスなど、巨大化した動物達が溢れ出して来た、中にはスライムなどの魔物までいる。
衛兵達の前にはどの街と同じ様に冒険者達が居たが、既に怖気付き何人かはその場で倒れ気を失ってしまう。
「あれじゃ攻撃出来ない……
だが…迎え撃ったとしても……」
衛兵達を率いていた者が小さく呟いた。
「良かろう……」
アル・スハイルが呟いてからガイアに言った。
「そちらはそのまま街に行けっ!
余が一人で片付けてくれる……」
「あんっ⁈
何考えてんだっ!」
ガイアが言った。
「この星のためだと思って
先に行けいっ!」
アル・スハイルがそう言い、ガイアの中のハダルが呟いた。
(へぇ……
何すんだろうな……)
ハダルは興味ありそうな顔をし思い出していた。
「ねぇあなたは
なんで旅に出たの?」
その昔アル・ムーリフが不思議そうな顔で言ったその言葉を鮮明に思い出していた。
ねぇあなたは
なんで旅に出たの?
ガイアの頭にその言葉が響いた。
「……
仕方ねぇな任せてやっから
上手くやれよっ‼︎」
ガイアがアル・スハイルを見て言った。
「ふっ…小僧が……
はよ行けいっ‼︎」
アル・スハイルが叫ぶ。
その荒れ狂う動物と魔物の群れに、リオネスの街の人々は気付き、絶望を覚えていた、その昔、この星の人々が先史の野獣に追い詰められた時、その事は世界中で歴史として教育されていた、その絶望を感じていたのだ。
「ど…どうかお助けを……」
街の人々の中にかつて崇めたと言われる、星神に祈り始める人達が現れ始めた。
アルナイルは人の祈りが強ければその祈りが、星海に溢れるダークマターを通してその星海人に届く事を知っていた、その為にアルナイルにその祈りは聞こえていた。
(私に祈ってる人がいる……
助けてあげたいけど……
アル・スハイルがやるみたいだから
大丈夫だよね?
うん?ってことは
アル・ムーリフさんにも
アル・スハイルにも
聞こえているのかな?)
アルナイルはそう考えながら走っていた。
「今一度……」
アル・スハイルは、人々の想いを聞いて呟いた。
アルナイルが思ったことは、アル・スハイルにも聞こえていた、誓いの星に祈っている人々もいたのだ。
(助けてあげたい…
街の人たちの気持ちが解るけど……
わたしには……)
ステラはアル・ムーリフが聞こえていた人の想いを、ダイレクトに感じていた、だが人の力ではどうにもならない、それを悔しく思いながら走っていた、その時間をとってもゆっくりに感じながら。
ステラはアル・ムーリフが、この星で育った姿と言える、親がサラスの様な怪しい趣味を持っていて、星海での親とは違い今の様な性格に育った、悔しい想いは星海では一度しかしたことが無い、あのアル・スハイルが命を落としそうになった時に一度だけした、それだけであった。
今、ステラの中で、その悔しさが溢れ始めていた、そしてガイアがサルガスを退けた時も、その人間離れしたガイアの力の前に悔しさを感じた。
(また……
わたしは何も出来ないの……)
ステラはそう思っていた。
(今度は逃げてるの……)
ステラはそう思い絶望を感じ始めていた、アル・ムーリフの影響で、人々の救いを求める声が聞こえて来る様な感覚に陥り、それでいて自分は何も出来ないで逃げている。
全ては悔しいと思ったことから始まり、深みには嵌ってしまったのだ。
そんな自分を小さく感じ、世界が真っ暗に思えて来て本当に気持ちまでもが逃げ出したくなっしまった時……。
その真っ暗な世界に光り輝く優しい手がスッと伸びて来た。
その手はステラの手を優しく握ってくれたと思ったら、力強くその暗闇から引きずり出す様に引っ張ってくれた。
(ガイア……)
ステラはすぐにその手がガイアの手だと気付いた、いつもの様にガサツで荒々しい、それでもいつも見てくれているそんなふうに、ステラの手を引っ張ってくれていた。
気付いたら現実にガイアがステラの手を握って、引っ張る様に走ってくれていた。
「なにやってんだよ」
ガイアが走りながら言う。
ステラの目は涙が溢れそうになっていたが、ただ……ガイアを見ていた。
「めそめそすんなよ
らしくねぇ……」
ガイアが走りながらステラの顔を見ないで言った、強気な面もありそれでいて弱気な面もあるステラをガイアは気付いていた、でもそうではない気もしていた、ガイアはステラにもう一人の影がいるように見ていた。
ガイアがステラの手を引いて走っている、ステラはその手を握り返し、瞳の涙を脱ぐって力強く走り始めた、それはガイアを抜く様に走り始めた。
「ガイアありがとう」
ステラが言った、悔しいと思うより走ることをステラが決めたのだ、ガイアを信じてステラは走っていた。
「あぁっ
俺はなんにもしてねぇけどなっ」
ガイアがそう言い二人はリオネスに向かって走って行く、アル・スハイルはそれを見て微笑み、振り返りサーベルを抜いた。
「よう群れておる……」
アル・スハイルは動物達を見てそう呟き、先頭を走って来た一頭のビックタイガーウルフの前足を狙い斬りかかり、一刀で斬り落とした。
凄まじい悲鳴と言える様な鳴き声をあげ、その獣は大地に思いっきり転倒し、他のビックタイガーウルフがアル・スハイルに襲いかかり、食いつこうとしたが、アル・スハイルはそれを簡単に躱し星の力を足に込め、その鼻先を蹴り飛ばした。
「うぬらが余を喰らおうなど
叶わぬことを……」
アル・スハイルはそう呟き冷たく微笑む。
「あれは
盗賊狩りのアル……」
リオネスの塔にいた見張りの兵が望遠鏡で、動物達と戦うアル・スハイルに気付いた、アル・スハイルは盗賊達から金品を巻き上げるだけでなく、しっかりとギルドからの報酬を受け取っていたのだ。
アル・スハイルからすればどうでもいいことだが、貰える物は貰っておきましょうとエルナトが言うので、エルナトと貰いに行っていたのだ、その為レチクル国ではだいぶ有名になっていた。
アル・スハイルがコートを広げ、十数本のサーベルを出し操り、その昔アル・ムーリフから送られた愛刀とも言える、一本のサーベルに星の力を貯めながら群れの中を走り抜けて行く。
その姿は遠くてなかなか見えないが、街の人々は盗賊狩りのアルが巨大化した動物達を抑えていることを知り、人目見ようと街の外にまで出てくる者まで現れていた。
「あいつ
目立ってんな……」
ガイアは立ち止まり振り返って街の反応も見ながら呟いた。
(目立ってる……
人として過ごすなら
目立たない方がいいのに……
ってまさかっ‼︎)
アルナイルはそう考えてやっと気付いた。
「そろそろ良かろう……」
アル・スハイルはそう呟き、高く飛び上がった、それは人が飛べない高さであり、人々はアル・スハイルが自らの飛んだのに気付いた。
そのアル・スハイルを追う様に、巨大化したスライムが襲いかかっている。
凄まじい勢いで伸びて来るスライムの体に目掛け、アル・スハイルは自らを守らせている操っているサーベルを一本素早く掴み、小さく笑いスライムを貫く様に投げつけた、そのサーベルはスライムの身体を簡単に突き刺さり、スライムの体に飲み込まれた。
「あいつわざとやりやがった……」
ガイアが呟いた時、アル・スハイルの赤い誓いの星が現れ輝き出した。
「星神様じゃ……」
街の外からその戦いを見ていた一人の老人が声に出して呟いた。
アル・スハイルは自らの正体を明かしたのだ、そしてスライムに飲み込まれたサーベルが赤く輝き出し大きな爆発を起こした。
その爆発で巨大化したスライムは跡形もなく吹き飛び、その周りにいた巨大化した動物達も巻き込まれ吹き飛ばされる。
「見るが良い……」
アル・スハイルはそう小さく言い、赤い誓いの星をより強く輝かせた、その輝きは昼間にも関わらず遠くまで届き、それはフランシス領からも見える程に輝いていた。
そしてその輝きに包まれた動物達は、次第に元の大きさに戻っていった。
精霊術の副作用と言える放出され過ぎた命の力、それを取り込み異常な進化をした動物達からその取り込み過ぎた命の力を変換し、元の進化の道へ戻しているのだ。
(姉上……)
ステラの中でアル・ムーリフは見ていた、敵から全てを奪わず、ある程度力を見せる為に戦いはするが、その昔、星海を守る為に戦い始めた頃、まだ慈悲を持っていた時のアル・スハイルの姿がそこにあった。
そして全ての動物達が元の大きさに戻ってから、アル・スハイルは動物達に向かい古い星海人の言葉で優しく言った。
「…………
……………………
………………」
「何言ってんだ……」
ガイアはその言葉が全く解らずに言う。
「動物達よ
そなた達の怒り
余が伝えよう……
今は静かに去るが良い……」
ステラが呟いた、アル・スハイルの使った古い星海人の言葉を、アル・ムーリフを通して聞こえていたのだ。
「そなた達の怒り……
動物達が何を怒ってんだ……」
ガイアが呟いた時、アル・スハイルの言葉が通じたのか、動物達は静かに森に引き返して行った。
「ワァァァッ!‼︎」
リオネスの街から人々の歓声が上がった、僅かな人々は星神に祈り救いを求めていたのだ、その人々が多くの人々に伝えその喜びの声は上がっていた。
「まったく……
いい気なものじゃ……」
アル・スハイルはそう呟き、リオネスの街の上空に行き、大きな声で言った。
「あの動物達の怒りは
そち達が元である」
アル・スハイルが言い、街の人々はざわめき出した、街の人々は動物達の怒りを買うようなことをした覚えがないからだ。
「今すぐに多くの国に伝えよっ!
そなた達が使いし精霊術……
あれはこの星を滅ぼす
かのもの達は
精霊術より溢れた命の力を取り込み
巨大化したのじゃ
知恵もつけ人が齎したと
気付き始めておる
そち達が未来を求めるならば
今すぐにでも禁じよっ‼︎」
アル・スハイルはそう強い口調で言った。
「つか……
動物達がなんででかくなって
怒ってんだ……
つえぇ方がいいじゃねぇか……」
ガイアが言った。
「ガイアさん
でかくなっちゃうと
たくさん食べないといけないんです
ですから食べ物探しが大変になって
きっと困ってるんですよ」
アルナイルが可愛く説明する、アルナイルは思ったことを言っただけだが、実はそれが現実であった。
その巨体を維持するには今までの数倍食べても、動物達には全く足りなかった、そのため食物連鎖が崩壊し始めていたのだ。
「なるほど……
まぁ毎日腹へってたら
苛立ってくるよな……」
アルナイルの説明は解りやすかった様でガイアも納得出来ていた。
(姉上……
何を焦っておる?
その様なこと……
早すぎるのでは?
姉上の手星が
反発しなければ良いが……)
ステラの中でアル・ムーリフが心配していた、アル・スハイルの手星はその多くが、自らの力を誇示する者や、星海に乗り出し星を喰らう者達に多くを奪われた者達が集まっていた。
それはアル・スハイルの破壊的な思想に惹かれた者達が主であった。
アル・ムーリフの手星はその対象的で、力はあるが温和な性格の者達が多く、アルタイルはその筆頭であった。
(それって……
星神として
この星を見るってことだよね?)
アルナイルもアル・スハイルの行動でそれを理解していたが、アル・ムーリフの様にアル・スハイルが急いでいる事には気付かなかった。
その頃……。
「見つけましたよ~
かくれんぼは苦手なのかしら?」
エルナトがそう一人の女性に声をかけていた。
「これはお客様
こんなところに……
何か御用ですか?」
それはガイア達をあの宿に招いたメイドであった。
そこは宿のメイドが来る様な場所では無かった、リオネスの街の外れにある大きな屋敷の廃屋の大広間であった。
「そうですね
その魔法陣は何かしら?」
エルナトが漆黒の槍を出し、その槍でそのメイドの足元に描かれた魔法陣に槍を向け小さな笑み浮かべて聞いた。
そのメイドは可愛く微笑んだだけで、答えようとしなかった。
「別に答えなくてもいいわ
それにそのメイド服……
セプテント家のメイド服じゃ無いわね
どこの精霊さんかしら?
それくらい教えて下さらないかしら?」
エルナトは挑発する様に、最も聞き出しにくそうなことを聞いた。
「わたしはセプテント家の者です」
そのメイドはそれを答えた。
言うはずの無いことをそのメイドが言ったことに、エルナトは一瞬戸惑ったが、そのメイドの目を見て気付いた、嘘をついてないと悟った時、一瞬にしてエルナトの背後が凄まじい炎が燃え広がり、火柱がエルナトを襲った。
エルナトはその火柱を星鉄塊の槍で斬り裂き、すぐに振り返るがその精霊はそこに居なかったが、真上から何発もの火球が放たれエルナトを襲った。
「やっぱり貴女は
精霊だったのね
アル・スハイル様も
気づかれてましたよ」
エルナトがそう言いながら槍を頭上で回転させ、全ての火球を防ぎ、その精霊は微笑みながら言う。
「流石は赤き星を持つお方ですね
一億年前……
この星を滅ぼそうとしたこと
私は忘れて居ません」
その精霊はそう強く叫びエルナトに襲いかかる、どうやら一億年以上生きてきた火の精霊のようであった。
エルナトはその精霊が最後に放った一際大きな火球を、槍で斬り裂き高く飛び槍で叩き落とそうとしたが、その精霊の体は火に変わり叩き落とすことが出来なかった。
「これは……」
エルナトは驚いた、それはマールスと言う星海人の能力に非常に似ていた。
エルナトが驚いた瞬間、そのメイドはエルナトに抱きつきその体の炎でエルナトを焼き尽くそうとした。
「くっ……」
エルナトはすぐに星を出して、貫く星の力を使い身を守ろうとした。
「ふふ……
私の炎に抗う姿……
うっとりしてしまいます」
そのメイドが微笑みそう言い更に火力を増し、焼き尽くそうとした。
(負けられないっ!
二度も精霊なんかにっ‼︎)
エルナトはそう心で叫んだ、普通に戦っては勝てない相手だと、ユーファの様に自分より強い精霊だと気付いたのだ。
「我……貫く星の一星……
エルナト……」
エルナトが呟き力を使おうとした時、そのメイドが口に優しく息を吹きかけると、エルナトの喉に炎が注ぎ込まれ、地獄のような苦しみを味合わされてしまうが、エルナトの星が強く光輝き、一本の槍が現れエルナトごとそのメイドを貫いた。
「かはっ……
そんな……わた…しのからだが……」
そのメイドは血を吐き炎の体が貫かれたことに戸惑い、エルナトから離れようとした。
「精霊如きに……
二度も……」
エルナトは焼き尽くされた喉を、星の力で少しずつ癒し苦しそうに呟く、以前ユーファに追い詰められたこと、それがエルナトにとって凄まじく悔しかったのだ。
エルナトは離れようとしたそのメイドを逆に抱きしめて、体内にあるダークマターを全て放出し全身を赤く輝かせ呟いた。
「全てを貫け……」
その時、そのメイドは気付いた、赤く輝き貫く星エルナトの力を秘めた十本の槍に囲まれていることに、そしてエルナトが微笑んだ時、その全ての槍がエルナトごとその精霊を貫いた。
エルナトは自らの命も貫くように強い意思で呟いたのだ。
「……」
その精霊は声も出せずに力尽きたかのように思えた、そしてエルナトが呼び出した槍が消え二人は音を立てて床に落ちる。
二人が戦っていた屋敷は炎上し、そのままエルナトを焼き尽くそうとしている様に火が忍び寄って来る。
エルナトは朦朧とした意識の中、星の力を使い体を癒そうとしているが脱出は間に合わないことを悟っていた。
「アル・スハイル様……
サルガス様……」
エルナトが倒れたまま多くを思い出し呟いていた。
(アル・スハイル様
わたしは外星タイプの星なんですよ
今日も槍の稽古なんですか?)
その昔のエルナトがアル・スハイルに言う。
(つべこべ言わずかかって参れ
外星を持つ者は
その良いところしか伸ばさぬ
それでは余を超えることは出来ぬ)
アル・スハイルがそう言い、エルナトの槍の相手をしている、アル・スハイルはエルナトの星の力は外星タイプであるが、近接向きなのでは?と思い、もしそうであればとてつもなく希少な星だと感じ時間を見ては、稽古していた、その懐かしい想い出がエルナトの頭に鮮明に浮かんでいた。
(エルナトよ
もし特殊な力で
体を変える相手に出会ったら
自らの星の力を武器に乗せるんだ
そうすれば
星の力と星の力が直接ぶつかり
相手に傷を負わせることが出来る
やってみろ)
サルガスが、優しくエルナトに戦い方を教えてくれた時の思い出も浮かび上がってくる。
エルナトは感じていた、アル・スハイルから教わったこと、そして愛しいサルガスからも教わったこと、それがあってこうして戦えているのだと、そしてやっと勝てたのだと安らぎを覚えそう感じていたが……。
無情にもそのメイドがゆっくりと立ち上がった、エルナトが覚悟を決めた一撃で倒せなかったのだ。
「やはり星海人は
簡単にいきませんわね
これだけの火に囲まれてなかったら
わたくしも
今のは耐えられませんでした」
そのメイドは笑顔で言った、そしてエルナトが助からないと確信して言っていた。
「そっ…んな……」
エルナトは僅かな声を出し、必死に体を起こそうとする、星の力を使い僅かに繋ぎ止めていた命の炎を燃やし、立とうとするが立つことも、体を起こすことも出来ないほどにエルナトは瀕死であった。
「ふふ……
ではわたくしはこれで失礼します
ごきげんよう」
そう言い燃え盛る炎の中で美しくメイドの礼をしてからその場を去ろうとし、振り返った時、漆黒の拳が目の前にあり、一瞬でそのメイドの顔面をガイアの鋼鉄の拳が殴り飛ばした。
「っ‼︎‼︎」
そのメイドは殴り飛ばされ壁に叩きつけられたが、その体は火になり飛び散り、その飛び散った火が集まり姿を現した。
「……」
ガイアは無言で再び襲いかかる、ガイアには聞こえていたのだ。
(負けられないっ!
二度も精霊なんかにっ‼︎‼︎‼︎‼︎)
その悔しさが溢れ自らを犠牲にしてでも、と言うエルナトの心の叫びを、大地を通して聞き一番最初に走り出したのだ。
(エルナトが危ねぇ‼︎)
ガイアは無意識に叫び走っていたのだ。
「エルナトッ!
なぜ余に知らせなかったのじゃっ‼︎」
アル・スハイルはそれを聞きガイアを追った、そしてそのメイドを倒すことより、エルナトを助けようとすぐに抱き上げ、赤い誓いの星を輝かせ生命の力を分け与え癒し始める。
その間ガイアは全力で戦い、アル・スハイルが治療に専念できるようにしていた。
そしてアル・スハイルとエルナトは銀色の輝きに包まれ、外で待機していたステラとアルナイルの元に一瞬で移動した。
アル・スハイルは本当にエルナトを助けようとし、声をかけ続けていた。
「エルナトッ!
大丈夫じゃっ!
気を確かに持てっ‼︎
そちを失ってしまったら
そちを余に預けたサルガスに
余はなんて言えば良いのじゃっ!
余をそなた一人も救えない
愚者にするでないっ‼︎」
アル・スハイルは必死である、万能に見える誓いの星の力でも死者を生き返らせることは出来ないのだ、アル・スハイルはこの星の精霊が厄介なのは知っていたが、まさかユーファの様に強い精霊がリオネスに居るなんて考えてなかったのだ。
街の人々はアル・スハイルに共感している、大切な仲間を救おうとするアル・スハイルに向け、エルナトに向け祈り始めてくれていた。
「アル…スハイル様……
わたしは…悔しかったのです
精…霊に……
二度も……」
エルナトはやっと声を出したが、その想いは痛い程にアル・スハイルにもアルナイルにも届いていた。
星海人として、アル・スハイルの側にいる者として、意地でも精霊に二度も負ける訳にはいかなかったのだ。
「エルナトッ!
そちはっ余の手星じゃっ
死ぬでないっ‼︎
死んではならぬっ!
これは余の命令じゃっ‼︎‼︎
死んではならぬっ!」
アル・スハイルはその昔、エルナトがアル・スハイルに認めてもらい、手星になりたがっていたことを思い出してそう大きな声で言っていた。
エルナトの星も輝き傷を癒しているが、自らの力、貫く星の力も強力であったために、その体を癒やしきれていないのが解る。
更に大量の血が流れすぎ、いつショック死してもおかしくない状況であった。
(ステラよ……)
アル・スハイルと共にエルナトの傷を癒そうと、治癒の魔法を使っていたステラの頭に、アル・スハイルの声が響いた。
「えっ……」
ステラは思わずアル・スハイルを見た。
(エルナトは
血が足りぬのじゃ……
そちの力を貸してくれ……)
ステラはその声に驚いた、アル・スハイルは生命の力を送り続けエルナトの傷を癒していた。
だがエルナトはその全ての力を使い、自らの肉体と共に敵を貫いていた、それは命を貫いた行為、アル・スハイルの力で傷を癒し更にダークマターを送り続けている、そのおかげでエルナトは星と繋がり続けやっと命を繋いでいたのだ。
だが失った血を戻すには至らなかったのだ。
(どうすればいいの……)
ステラはアル・スハイルが言う事に意味があると思って心で呟いた。
(願ってくれぬか……
心から……)
アル・スハイルの声がまた聞こえた。
そしてステラは心から願った、不思議とアル・スハイルに深い親しみを感じていたステラは、アル・スハイルを疑わずにエルナトを助けたいと願った。
アル・スハイルとエルナトがアルナイルの力で、屋敷の外に移動した後、ガイアは言った。
「てめぇ……
ステラの屋敷に居たのか?」
ガイアがそのメイドと戦いながら言った。
「いえ……
わたしはペレと申します
サラス様の御用でわたしは
かなり長い間……
屋敷には居ませんでしたから
あの時がお初でしたよ」
ペレはそう名乗りながら答え、ガイアの攻撃を躱し続ける。
「ステラはお前のこと知ってんのか?」
ガイアが聞いた。
「いえ……
わたしもこの前お会いしたのが
初めてですから」
余裕を見せているのかペレはそう答えた。
「うんじゃ……
遠慮はいらねぇな……」
ガイアは怒りを込めて静かに言った、ガイアはペレがセプテント家の者だと普通に気付いていた、メイド服を着た精霊と言えばそうとしか思えなかった、そしてステラとペレが、ユーファのように深い関係にあるのかを気にしていたのだ。
だがそれが無いと確信して、床を力強く踏みつけ、凄まじい数の岩の槍が突き出し、ペレを串刺しにするがペレは火の体になり、すり抜けるようにガイアに飛びかかって来た。
だがガイアは待ち構えていた、そして鋼鉄の拳で全力で殴り飛ばした。
(なんで……
この拳を防げないっ‼︎)
ペレは二度目の打撃を受け確信した、一度目は不意を突かれたと気にしなかったが、今のは違った。
ガイアは殴り飛ばしたペレに追撃をかけ、紫月を抜き斬りかかる、紫月は風を纏いペレはその風を利用しようとしたが、利用出来ずに斬り裂かれた。
「そんなっ!
嘘でしょっ‼︎‼︎」
ペレは驚きの声を上げながら、必死になり火の体を維持していた。
紫月が纏っていた風は凄まじい風圧があったのだ、如何なる炎も吹き飛ばすようなその風圧にペレの体は斬り裂かれたのだ。
「ステラはてめぇの主人だよなっ⁉︎⁉︎
セプテント家のメイドさんよっ‼︎」
ガイアはそのまま紫月を振りかざし再び襲いかかる。
ペレは素早く躱し、ガイアの腕を掴み投げ飛ばしたが、投げ飛ばされるはずの方向に岩の壁が突き出し、ガイアは手を砂に変え体を捻り、その岩の壁に足をつきそのままの体勢で、砂に変えた腕を戻し紫月で斬りかかった。
「化け物なのっ‼︎」
ペレはその異常な体の動きに思わず叫び、全力でその刃を躱すが凄まじい風圧で吹き飛ばされた。
「化け物?
体を火に変えられるお前に
言われたくねぇな
つか……
これはステラの刃だ
てめぇの主人が
ゆるさねぇってことだ」
ガイアがそう言いながら歩み寄り、ペレはゆっくりと立ち上がった、ペレは火を操る強力な精霊で、燃え盛る屋敷の中では異常な回復力を見せていた。
ガイア達の戦いでその燃え盛る屋敷の一部が崩れ始め、それが全体に広がろうとしている。
「……」
ペレは何かを呟き手を天井に向けると、凄まじい火柱を上げその火柱の中で微笑み、一瞬で屋敷の天井を焼き尽くした。
「ではごきげんよう
またお会いできる日を
楽しみにお待ちしています」
ペレはそう微笑んで言い、その火柱の中から飛んで立ち去ろうてしいた、ガイアはその火柱が床ではなく大地から燃えているのに気付いた。
「にがさねぇ‼︎」
ガイアが叫び、大地を蹴飛ばした瞬間凄まじい勢いで、その火柱の元からマグマが吹き出しガイアはそれに飛び込み、マグマと共にペレを追った。
「なんなのっ⁉︎
わたしの火がっ!」
ペレは力を奪われて行く感覚に陥っていた、まるで自分の体が灼熱のマグマに吸収されてしまうような、そんな感覚であった。
ガイアは火を操るペレに対してマグマを用いた、火の火力を遥かに超える数千度の火力がペレを飲み込もうとした時、ペレはたまらなくなり飲み込まれていく火柱から飛び出して空に出た瞬間、ガイアが頭上から殴り飛ばし、大地に向けペレは叩き落とされていく。
「やはり……
あやつと地上で戦うのは
愚かなことであるな……」
アル・スハイルがペレの火の力を、遥かに上回るガイアの力を見て言った。
その様子を街の人々は見ていた、ガイアは気付いた、街の人々だけでなくアル・スハイルも見ていた事に、そして地上からとてつも無く強い意地で何かが放たれた事にガイアだけが気付いた。
ペレはガイアに応戦しようと、落下しながらも体勢を立て直しガイアに手を向けた時。
「てめぇの悔しさっ!
全部ぶつけてやれっ‼︎‼︎」
ガイアが叫んだ。
ペレはなんのことか解らなかった、そして次の瞬間、真紅の輝きを放った漆黒の槍がペレを貫いた。
「この槍は……」
ペレが呟き振り返って地上を見た時、その振り返った時がとてつもなくゆっくりと感じていた、そしてエルナトが立っていて自分に手を向けている。
ガイアはエルナトから流れた血が大地に染み込み、その血からエルナトの想いが伝わって来ていたのだ。
「我が思いを受け止め
全てを貫け……
我っ貫く星の一星!
エルナトッ‼︎‼︎」
地上でエルナトがそう叫んでいる、その声までもがペレにはゆっくりと聞こえていた、そして気付いた時、また十本の赤く輝く漆黒の槍に囲まれているのを見た瞬間、ペレはその槍全てに貫かれていた。
ペレは体を火に変えることが出来ず、血を吐き全てのエルナトの槍が消え、落下して行く、先程とは違い炎に囲まれていない空の上で耐えられなかったのだ。
「なんで……
あいつが…生きて…る……」
落下していくペレはそう無念の想いで呟き、その目に紫の星を輝かせているステラの姿が映り、目を見開いてそれを見ていた、かつてペレはこの星を先史の野獣が襲った時、たった一人で圧倒的な力を用いてこの星を救った紫の星を持つ星海人を、見ていたのだ。
ステラがアル・スハイルの声を聞き、紫の誓いの星の力を使い、アル・スハイルが送り続けた命の力の一部を血に変換し救っていたのだ。
「紫の星…あなたは……
我らの敵も……」
ペレはそう最後に小さな声で言い力つき消えていった、それはペレにとって救い主と信じていたアル・ムーリフが、星海人を助けたことに、やはり同じ星海人なのかと、なんとも言えない想いを込めた、最後の言葉であった。




