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ねぇあなたはなんで旅に出たの?ねぇあなたはどおして旅に出たの?  作者: 〜神歌〜
〜第二章 新しい旅へ 〜
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第二章 第7話 事故物件




「エルナトよ……

どう思う?


このままこの星が成長すれば

余が手を下さずとも


この星の人間どもは滅びる


さすれば……

精霊達が支配する星になるであろう


それをどう思う?」


空を飛びながらアル・スハイルは言った。



「クールンで見つけた

洞窟のことですか?」


エルナトが考えながら言う。


「さよう……その昔だが

この星に余が放った魔物達によって

この星の人々は壊滅的な被害を受けた


だが動物や魔物

そして精霊は被害を免れておる


その結果人々は一度魔法を捨て

我らに恭順した


だがそれも忘れられた頃に

動物や魔物と戦う為に

彼らは精霊術を編み出し

精霊の力を使い始めたようじゃ」



 アル・スハイルは精霊の力を知っていた、単体では星海人と同等であるが、その力は限定的で星の中でしか発揮できない。


 中にはユーファの様に大精霊クラスになれば、星に大きな影響を与えるほどの力を発揮する可能性を持つ者もいる。



「わたしには関係ないことです


私達星海人から見れば人間なんて

下等な生き物で

その星の生き物に過ぎませんから」


 エルナトはそう言った、その言葉はアル・スハイルと共に戦って来た手星なら誰でも言う様な言葉であった。



「そうであるな……

だがアル・ムーリフが

それを望まないとすればどうじゃ?」


アル・スハイルが言った。



「アル・ムーリフ様が?

そんなこと無いと思います


アル・ムーリフ様は

アル・スハイル様の妹君

お二人の誓いは

星海に響き渡っています


もしそれをアル・ムーリフ様が

望まないとすれば……

この星の人間達を救う方法は

一つしかありませんよ」


エルナトが少し考えながら言う。



「そうであるな……

だがそれは余が禁じたこと


今更どうそれを行えば良いのじゃ」


 アル・スハイルはそれを禁じた時に、大星ベガが激しく抵抗し、手星を集め激しい戦いの後にベガを倒した。


 星海ではその昔から力を持ち、英雄と謳われた大星ベガが命を落としたことにより、アル・スハイルが禁じたそれを行う者は誰一人いなくなった。


 アル・スハイルはベガの最後を思い出しながら飛び、盗賊達の根城の上空に着いた。

 アル・スハイルは自らアル・ムーリフが帰って来てもらう為にもそれらを考えていたのだ。



「良いなエルナト

誰一人殺すで無いぞ……」


 アル・スハイルはそう言い、盗賊達に空から襲いかかった。


 アル・スハイルは盗賊達をあしらいながら、考えていた、この星の人間達が精霊術を使い人間以外の動物や魔物が、巨大化し始めていることに、精霊術は完璧に使いこなしたとしても、溢れる精霊の力によって動物達が巨大化し、いづれは人間の手におえなくなる未来が簡単に予想出来ていた。




 それから数日経ち、ガイア達は北へ向かっていた、目の前には雄大な山が見え始め北域地域が近づいて来ていた。



「あの街で山越えの支度をしないとな

どうすっかなぁ……」


ガイアが呟いて考えている。



「どうしたの?」


ステラが聞いた。



「おまえのことを考えてるんだよ

お尋ね者だからな

ばれねぇようにしないとな……」


ガイアがぼやくように言う。


「なるほど……

アルナイルちゃんお願い出来る?」


ステラがアルナイルに普通に言った。



「もちろんです」


アルナイルが明るく言う。



 数時間後、ガイア達は普通にその街を歩いていた。



「あ…クレープ美味しそうじゃない?」


ステラが普通に言う。



「いいですねっ」


 アルナイルが嬉しそうに言い二人はクレープのお店に行った。



「まったく

おまえらは……」


ガイアが呟きながら二人を待っている。



 アルナイルが光を曲げてステラの顔を別人に見えるようにしていた、ガイアはアルナイルの光の力が多様性に長け過ぎている気がしていた。



「はいっ!

これガイアのね」


 ステラ達が戻って来て、ガイアにチョコレートとバナナのクレープを買ってきてくれた。


「サンキューッ!」


 ガイアはそう言って一口食べ小さく鼻で笑って言った。



「たまに甘いのも悪くねぇな」


 ガイアは肉が好きでだいたい串焼きの店に寄るが、美味しそうにクレープを食べてくれていた。



 そして暖かい衣類も幾つか買い、この街を出れば山の中に入る事も考え、その日は宿に止まる事にした。



 パシャッ



 ステラとアルナイルが久しぶりのお風呂を楽しんでいる。



「あぁぁぁぁ

きもちぃぃぃぃ……」


ステラが湯船につかりぼーっとしながら言った。



「気持ちいいですね

ほんとにごくらくです」


アルナイルもその隣でぼーっとしている。



「4日も水浴びも出来なかったから

明日も泊まりたいわね」


ステラが言う。


「そうですねぇ……」


アルナイルがゆるゆるな顔で言う。



「でも……

アル・スハイルって

本当に昔は優しかったのかな?」


 ステラが不意に数日前のアル・スハイルのことを思い出して言った。



「わかりませんねぇ……

あの人はわたしより

2倍は生きてますから


そんな昔のことはわかりませんねぇ」


アルナイルはお風呂がよほど気持ちいいのか、頭もゆるゆるなのかそう言った。


 ステラはそんなアルナイルが珍しく思え、いまはそのゆるゆるに沈むことにし、二人でゆるゆると過ごした。




「ガイア

明日もここに泊まりたいんだけど

大丈夫かな?」


ステラが食堂で食事を取りながら聞いた。



「あぁそのつもりだぜ

まだ支度ができてねぇからな」


ガイアが骨つきのチキンを食べながら言う。



「ありがとガイア」


 ステラが微笑んでそう言い、アルナイルが聞いた。


「あと何が必要なんですか?

食べ物も暖かい衣服も買いましたし……」



「まぁ

寒いとこに行くのに

必要なことだよ」


ガイアは説明が面倒なのか簡単にそう言った。


 ステラとアルナイルはなんだろ?と考えながら食事をしていた。



 翌日ガイアは一人で出かけ、ステラとアルナイルは宿でゆっくりしていた。


 ガイアは地図を買い、馬車のまま山越え出来るか詳しく聞いて、買い物に行き夕方になって帰って来た。


 ステラ達は宿で一日ゆるゆると過ごしていたらしい、ガイアは二人の部屋に行きのんびり過ごしている二人に声をかけ、道の説明をしていた時に大通りから声が聞こえて来た。



「腕に自信のある冒険者は

街の東門に集まれっ‼︎‼︎


大至急だっ‼︎

急いで集まってくれ‼︎」


街の衛兵が走り回り叫んでいる。



「なんだ魔物か?」


ガイアが呟いて窓から顔を出し外を見た。


 外では衛兵が走り回っていれば、東門に向かって隊列を組み走って行く兵達もいる。



「まぁとりあえず俺は行ってみるぜ」


ガイアはそう言い部屋から出ようとしたがステラが言う。



「わたしも行くわ

この街がどんな対応するのか

気になるし」


ステラはこの様なことを時折フランシスで指揮を取っていた、お手並み拝見と言った感じである。



「いいけど気をつけろよ

一応お尋ね者なんだからな」


 ガイアがそう言うと、アルナイルは任せてと言う感じで微笑んでいた。


 三人は宿から出て街の東門に向かった、既に衛兵達が守りを固め冒険者達も集まって来ていた。



「来たぞっ‼︎


あのビックマンモスを

討伐した者にっ

街から一頭につき

15万セルを支払うっ‼︎


皆よっ腕を振るうが良いっ‼︎‼︎」


衛兵を率いている隊長が叫んだ。



 その声を聞いてガイア達と冒険者達はその先を見た。



 その先にはただでさえでかいマンモスの、2倍以上はあるマンモスが3頭もこの街に向かって突っ込んで来ていた。


 冒険者達は震え上がり、誰一人立ち向かおうとしなかった、と言うよりも既に人の手に負えるものでは無かった。



「ただの訳あり案件ね」



ステラが言った。



「ここにはマンモスも居るんですね」



アルナイルが言った、既に慣れている様な態度で二人は言っていた。



 ガイアはその隣にいて思った。



(いつものことだな……


つか……

これフランシスだと


ただマンモスって書かれて

報酬は5万セルってとこかな?


いや……

3頭で2万セルってのもあり得るな)



そして呟く。



「つか事故物件だな」



 ガイアはそう呟いて様子を伺った、冒険者達は無論前に出ようとしない。



「どうしたっ!

それでも名だたる冒険者かっ?

あれを倒し街を救おうと言う

勇者は居ないのかっ!」


衛兵達を率いる隊長が檄を飛ばしたが誰も動こうとしない。



「そんな奴がいたら


勇者つうか馬鹿だよな

まぁ勇者と馬鹿は

紙一重だからな……」


 ガイアがそう言いアルナイルは驚いていた、そしてその次に言う言葉を期待した。



「仕方ねぇから

その馬鹿になってやるよ」



 ガイアはそう言い一人で前に出て行った、その言葉はハダルが誰もが怖気付いた時に言っていた言葉であった。



「くそっ!

大砲隊!狙いを定めよ‼︎‼︎」


衛兵隊の隊長がそう叫んだ時ガイアがその隊長に言った。



「ちょっと待てよ」


「なんだ貴様はっ!」


隊長が見た事もない冒険者だと思って怒鳴った。


「あれを片付けてやるから

3頭できりよく

60万セルにしてくれねえか?」


 ガイアが値段を釣り上げた、ガイアの見立てはビックタイガーウルフ一頭で20万セル、それより手強そうなマンモスなので一頭30万セルは欲しいが、蹴られてもつまらないのでそう言ったのだ。



「60万っ……」


 その隊長は少し躊躇った時、ざわめきが聞こえた。



「あいつフランシスの悪魔

ステラと旅してるやつじゃねぇか?」


「あぁ……

そうだクールンで見たぜ

ステラが居るはずだっ‼︎」


「賞金100万セルの

ステラが居るはずだっ‼︎」



冒険者達が騒ぎ始めステラが苛立ち始める。



 フランシスではフランシスの妖精と言われていたのが、悪魔扱いされているのに立場を忘れるほど苛立っていた。


「貴様っ!

セプテント家の者かっ!」


その隊長が叫ぶ様に言ったが、ガイアは言い返した。



「そんなこと関係ねぇだろ

払うのか払わねぇのかどっちなんだよ」


 ガイアがそう言った、既にビックマンモスはかなり近づいて来ている、隊長は決めあぐね即断できない様だった。



「ったく……

タダでいいぜっ!

但しっ俺らに手を出すなよっ‼︎」


 ガイアはそう言って走り出した、これ以上は街に被害が出かねない、ガイアは報酬より街を優先した。



 ガイアは先頭の一頭に正面から高く飛びかかり、凄まじい勢いでビックマンモスの眉間に殴りかかった。


 だが、タイガーウルフより強靭な頭蓋骨を砕くことは出来ずに、マンモスの鼻で叩かれたが隣のマンモスに体勢を立て直しそのまま飛び移り、背中を走り回り後方に居たマンモスに向かっ飛び叫んだ。



「紫月っ‼︎」


 ガイアは紫月を抜き、そのまま斬りかかりそのマンモスは鼻で振り払おうとしたが、ガイアはその鼻を斬り落とした、その痛みで暴れたマンモスの牙がガイアを貫いた。



 街から見てる人々は鼻を斬り落としたそれに驚いたが、隊長は鼻で笑った。


「大口をたたきお……って……」


 隊長はその次の言葉が出なかった。



 ガイアの体が砂になりその牙から落ち、着地し腰に身につけていた普通の剣を抜いて、その後ろから踏み潰そうとしたマンモスの足に斬りかかり剣を折った。



「徒花を咲かせよ……」


 ガイアが呟き光り輝く徒花の剣が現れ、素早くそのマンモスの足を斬り落とし、そのまま倒れてくるマンモスの胴体を下を走り抜けながら、その徒花の剣で斬り裂いた。


「安らかに……」


 ガイアが呟き素早く徒花の剣が消えた剣を手放し、背後からもう一頭の無傷のマンモスが襲って来たが、ガイアは大地を踏み締めた瞬間、巨大な岩の槍が大地から突き出しそのマンモスの頭を貫いた。


 ガイアはそれと同時に岩を生み出し、その上から高く跳躍し、もう一頭の鼻を斬り落としたマンモスに向かい紫月を振り、真空の刃を無数に放ち痛めつける。


 ビックマンモスは真空の刃に切り裂かれ激しく暴れている。


 その光景を見た衛兵達も冒険者達も、戦いの次元の違いを目の当たりにしていた。



「白銀……」


 ガイアが呟き白銀を抜いてそのまま、最後の一頭の頭目掛け落下した勢いをそのまま乗せ双刀を突き刺した。


 紫月と白銀は拳で砕けなかった頭蓋骨を貫き、ビックマンモスの脳に達し絶命した。



 ガイアは双刀を抜き、血を振り払い鞘に収め折った安物の剣の破片を拾い、歩いて戻って来た。



 誰もが今の戦いぶりを見て、ガイアを捕らえようなど思わなかった、幾ら賞金を積まれようとそれは死を意味する気しかしなかった、衛兵達の隊長もステラの捕縛と言う内容が不可能だとしか思えなくなっていた。


 ガイアが街の入り口まで戻り、姿を変えていたステラの手を取りひざまづいた、アルナイルは小さく微笑み光の力を解いた。



「ステラ・セプテント……

こんな近くに居たのか」


衛兵達の隊長が驚き呟いた。



 ステラはアルナイルが力を解いたことに気づいたが慌てなかった。



「ステラ様……

魔物の討伐は済みました」


 ガイアが丁寧に言ったが、笑いを堪えていたので小さな笑みが出て、その顔は僅かにひきつっていた。

 ステラもガイアの似合わない素振りに、笑いが込み上げて来るが、必死に耐え目に涙がたまるほど我慢していたが丁寧に言う。



「はい……

いつもお疲れ様です

ガイア……

これからも宜しくお願いしますね」


 ステラがそう言った時にステラの目からスッと美しく涙が流れた、その姿は街の人々からは美しい姫とそれを守る騎士の様な光景に見えているが、ガイアとステラは違った。



(やっ…やべぇ……

笑えて来やがる

これっマジでやべぇ……)


 ガイアは必死に笑いに耐えている、全てはステラが二人の関係に似合わないことを言ったからだ。


 街の人々はステラとガイアの関係は美しい主従関係にしか見えない、いやそう思うしか無かったが……。



(な…なんて…つらいのっ!

笑えないってこんなに辛いのっ‼︎

これって何かの……

罰ゲームじゃないの⁈)


 ステラは必死であった、必死に笑いを耐えて流した涙であった。



 ガイアは立ち上がり、その場に居た全ての者に向かって言った。



「わりぃけど

ステラに用があるなら

まず俺に言ってくれよな


喧嘩ならいつでも

相手になってやるぜ」


ガイアは自然に言った、これ以上演じるのは自分の限界も越えそうな気がしたのだ。



 そしてガイアだけは気付いていないことをアルナイルは、ステラの手配書を見て気付いた。



(ステラさんの手配書って

事故物件ですよね)



アルナイルはそう思い笑顔で手配書を見ていた。



 ガイアは辺りを見回し、兵達も隊長もガイアに手を出せないと解ったのを確認し、三人は宿に戻って行った。



「こ……こうしてはおれんっ!

すぐにステラが泊まる宿を調べよっ!

と言うか跡を追えっ!」


 その隊長は動揺しているが、直ぐにその街の領主の館に向かった。



 その三時間後、ガイアが泊まる宿に領主からの遣いが来たが、ガイアが出て対応して早く部屋に戻って来た。



「ガイアさん?

早かったですけど

なに話してたんですか?」


アルナイルが聞いてきた。



「なんかこの街の領主が

ステラと話したいらしいぜ」


ガイアが言いステラは、うん?と言う顔をするがガイアは続けて言った。



「館に招待してくれたんだけどな

うさんくせぇから

言ってやったぜ


用があるならテメェが来いってな」



「……」


ステラはそれを聞いて固まった。



(さすがお兄ちゃん

昔それと同じことを

アル・スハイルの遣いに言ったら


アル・ムーリフさんが

うちに来てたよね

あれは私も買い物から帰って来て

本当にびっくりしたよ


ってあの日わたしが居なかった間に

何話してたんだろ……)


アルナイルはそう思っていた。



 暫くして窓の外が騒がしくなり、ガイアが窓の外を見るとかなりの数の衛兵達が整列し、豪華な馬車が宿の前で止まった。


「マジで来やがった……」


ガイアが汗をかいて言った。



「ちょっとどうするのよ

ここまで来てくれたみたいだけど

わたしの正装なんて無いわよ

この服で会えって言うの?」


 ステラが言ったがガイアにはどうする事も出来ないが、何かを思いついた。


 そして一人の老人が降りて来て、執事の様な者に案内され宿に入ってきた。


 少ししてステラ達の部屋がノックされ、ガイアがドアを開けた。



「失礼します

このパラドックスの街を治める

リヒテン様がセプテント家の御令嬢

ステラ様にお会いしたいと

此方までお越しになられましたので


どうかお会い下さい」


そう言って来たのは、正装に着替えてはいたが、先程の衛兵隊を指揮していた隊長であった。



「お前も似合わないことして

大変だな……

同情するぜ……」


ガイアがそう言って隊長の肩を叩いた。


 衛兵隊の隊長は汗を流し明らかに困っている。



「ガイア?

からかわないであげて下さい

わたしだってフランシスの街を守る時は

甲冑を着るのですから


それと同じですよ」


そうステラが言った。


 ステラはこの僅かな時間に、あのガイアに初めて見せたドレス姿でいたが、アルナイルは何かに集中している。



 ステラはそう言い、案内され宿にある応接室に案内された、この宿は古くからあるらしく一応偉い人が泊まってもいい様に高級感ある応接室があった。


 ステラとガイアはそこに招かれた、アルナイルは自分の部屋でステラの動きに合わせて光を操り、ドレスを自然に見せている、それは光の強弱を調整してスカートの影までに及ぶ繊細なものであった。



「うーん……

わたしも練習しないとなぁ

変光で洋服に見せるなんて

考えなかったよ」


アルナイルは呟いていた。


(でもっ

お兄ちゃんの頼みなら

頑張るのですっ‼︎)


部屋で一人頑張るアルナイルがいた。



 ステラとリヒテンは丁寧に挨拶をし、席についてステラの方から話を切り出した。



「リヒテン卿

このわたしになんの用かしら?」


 ステラがそう言い、紅茶とお菓子がステラに出されガイアが歩みより香りを確かめてから静かに頷いたが、続けて言った。



「ステラ様

こちらのお菓子は

リヒテン卿におすすめして下さい」


「解りました

用と言うのもやはり

わたしを捕らえたい

ということでしょうか?」


 ステラがリヒテン卿に聞いて、ガイアがそのお菓子をリヒテン卿の前に置いた。



 リヒテン卿は汗を流した、ただの強い眠り薬ではあるが無味無臭の物を使っていたはずだった、それを紅茶でなくお菓子にもっていたが何故気付かれたか解らなかった。



「これは参りましたな……

にしても何故解ったのですかな?」


リヒテン卿は落ち着いて自然に振る舞い、そう聞いて来た。



「ガイアは臭いだけで毒見します

無味無臭無色の物でも見分けれるんです

非常に助かっています」


ステラが言いガイアが微笑んで言う。



「ステラ様

最近は香りを確かめなくても

見分けれる様になりましたよ」


「あら?

お勉強は欠かさないのですね

関心します」


ステラが言うがガイアは思っていた。


(ステラも頑張るな

俺はだいぶ慣れて来たって言うか

ステラってそう言うやつじゃねぇか


無駄に誇り高いくせに自覚ねぇお姫様で

そのくせ普通に接して欲しい

まったくわがままだよな)



(ガイアも意外と

執事できるんじゃないの?

今度やらせて見ようかな?

面白そうじゃない)


ステラはそう思うがアル・ムーリフの記憶が二人の遊びに付き合っていた。


「お兄ちゃん

女の子はわがままなんですよ」


アルナイルは部屋で一人ガイアが思いそうなことを考え呟いていた。




「ほう……

これは良き従者をお持ちですな

当家も見習いたいものです」


リヒテン卿が微笑んで言う。



「ところで

お話と言うのはなんでしょうか?」


ステラが聞いた。



「まずステラ様に

眠って頂こうと思ったことには

お詫び致します


申し訳ない


わたくしはレチクル国と

違う目的で捕らえようとしたのです」


リヒテン卿は静かにそう言った。



「違う目的ってなんだ?」


ガイアが聞いた。



「あなた様が倒された

魔物のことです


あなた様はこの街を救って下さった


ウルフならばまだ人の手におえますが

あれはいかん……

そう言った魔物から今後もこの街を

守って頂きたいのです」


リヒテン卿が言った。



 それは一番最初にステラがガイアに頼んだことであった、だがリヒテン卿からすればステラはリオー国のセプテント家の一人娘、その従者とステラの関係は、あのマンモスを倒した時の二人の演技がそのまま報告され、容易にとどまってくれないだろうと判断し、ステラを捕らえようとしたのだ。



「なるほど……

お話は解りましたが

わたしが捕らえられたとなれば

当家のメイド達が

大挙して押しかけますが


それを防げる自信があるのですか?」


 ステラが言いガイアはその地獄絵図を想像する。

 あの武装メイドを抑えるのは普通では出来ない、なんと言っても精霊達の力に人が対抗出来る訳がなかった。


「それだけではありません

ひいてはリオー国とレチクル国で

戦争になりかねません


それも考えて頂けたら

街一つと国の戦い

どちらに重きを置くかは

解って頂けるはず


わたくしはそれを考えれば

今回のことは

愚かな行為にしか見えないのです」



 ステラは冷静に話をしている、リヒテン卿もまさか僅か17か18程のステラが、そこまで話すとは思っていなかったのだ。



「これはこれは……

一本も二本も取られましたな

ですがフランシス領も

同じ問題を抱えておりませんか?」


リヒテン卿が聞いて来ていた。



 ステラは不思議に思っていた、リヒテン卿はレチクル国と言うよりリヒテン領をの事を考えている様だった。


 そしてリヒテン卿が言うのも最もで、大型の魔物に襲われたことはクラスト村の事もある意味同じであり、裏でアル・スハイルが関わらなくても、パラドックスの街は同じ様な被害に遭うところだったのだ。



「そうですね

わたくしも他人事には

思えない話しです……」


 そうステラが言うとリヒテン卿はほっとした顔をし、違うことを聞いてきた。



「まぁ……

この話はここ迄にしましょう

解って頂けるのでしたら

また話し合うことも出来ますからな


ところでどちらに向かわれるのですかな?

宜しければお教えください」


「東に向かおうと……」


ステラがそう言おうとした時、ガイアが割って入って来た。



「ステラ様?

北のアークスに向かっているのですよ」


ガイアが明かした。



 ステラは行き先を隠そうとしたが、ガイアはこのリヒテン卿が悪い人には思えなかった、それをお嬢様を振る舞っているステラの態度を利用し、教える様に言ったのだ。



「アークス……

さようですか

ならば此れより北の山々は

わたしの息子の領内


これをお持ちくだされ」


そう言い指輪をステラに渡した。



「それを息子の領内で見せれば

私の遣いと解りますので

無事に通れるでしょう」


リヒテン卿がそう言ってくれた。



「あ……

ありがとうございます

いいのですか?」


ステラは少し驚きながら礼を言った。



「構いません

いまは国同士で争う時期では

無いと考えてますからな


また帰りにでも寄って下され」



 リヒテン卿の言葉にステラは少し驚いていた、互いに同じ問題に直面している、同じ事を考えられるその大切さをステラは感じていた。


 その会見が終わり、リヒテン卿は馬車で帰って行った。



「ガイア?

なんでリヒテン卿が

悪い人じゃないって思ったの?」


ステラがリヒテン卿の馬車を見送りながら聞いた。



「あん?

そりゃあの隊長だよ


あいつが変な奴だったら

俺が戦ってる間に

ステラを探してたはずさ

あいつはそれをしないし

ズル賢くなさそうだったからだよ


そう言う奴が出世してんだ

上の奴もまともな気がしたんだよ」


 ガイアはリヒテン卿の馬車を見ながら言っていた、ステラはそれを聞いてガイアはガサツであるが、人もちゃんと見ている気がして頼もしく思えていた。



 翌日、ガイア達はパラドックスの街から更に北に旅だった、アルナイルが予想した通り、ステラの手配書はそのまま貼られたままだったが、この街に居る冒険者達もガイア達を追おうとはしなかった。



 ステラの手配書が事故物件だと冒険者達に認識されていたのだ。



「これで少しは快適な旅になるかしら?」



 ステラが何も知らずに言う、快適になったのはステラが事故物件だと知れ渡ったことが、一番大きいと言う事に気付いて居ないから言えるのであった。


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