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ねぇあなたはなんで旅に出たの?ねぇあなたはどおして旅に出たの?  作者: 〜神歌〜
〜第二章 新しい旅へ 〜
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第二章 第4話 大星アル・スハイル




 ガイア達はレチクル王国に入って最初の街パグスに着いた、パグスは街が見えた時から衛兵達の警備が厳重なのが解った。



 ガイア達は宿を探していたがステラは浮かない顔をしていた、それはアル・ムーリフの記憶がステラの体を時折使うで、アル・ムーリフの影を感じ始めていたのだ。


(私の中に……

もう一人の誰かがいるみたい


そんなはずはないんだけどな……)


 ステラはそう考えていた。



「よしっ

ここにしようぜ

そんなに高くねぇし

ちょうどいいだろ」


 ガイアがそう言いながら宿から出て来た、そして馬車を宿の倉庫に入れ、手荷物を持ち皆んなで宿に入る。


 まだ日が高く、念のためにガイアはパグスの街のギルドに行って呟く。



「なんでフランシスには

訳あり案件しかねぇんだ……」



 ガイアがそこで見る依頼は、やはりまともな依頼ばかりであった、普通の冒険者には難易度が高いだろうと言う依頼も、ガイアは運動程度で終わりそうな気がした、中には盗賊の討伐依頼もある、それはガイアにとって気晴らしにしかならない……。



 ガイアはやっと思った。



(おかしいだろ……)



 ステラはガイアが疑問に思ったことに気づいた。



(まさか気付いてないよね

私がガイアに訳ありだけを

見せてたなんて……)


 ステラは汗をかいている、ガイアが時々?いや、ほぼ毎日命をかけて依頼をこなしていた姿が脳裏に蘇る。


(いえ……

気付いてたはずよ

気付かないで毎日毎日やってたなんて


いくらガイアでもあり得ないわ


鈍いのは女の子のことだけよきっと……)


 ステラはそう思っていた。



「パグスの街って普通なんだな……」



 ガイアがそう言いステラは汗をかいた、純粋なのか馬鹿正直なのか解らない、ただガイアが色んなことに鈍いと言うことがハッキリとした気がした。


 

(大丈夫よ……

セプテント家を継いだとしても

私がしっかりしてればいいのよ……)


ステラはそう自分に言い聞かせている、まさかそうだとは微塵も予想していなかった。



(ステラさんっ!

大丈夫ですっ!

お兄ちゃんの責任は

わたしが取りますからっ!)


 アルナイルはステラの様子を見て、色んな意味を込め目を光らせてそう心で言う。


 アルナイルは忘れていなかった、愛の勝負でステラは大切な友達でもあるが、恋敵でもある、ガイアが人として生き続ける限り食いついていくと決めていた。



 そんな二人にはお構いなしでガイアは一枚の依頼を手にする。



「これ行ってみようぜ

ビックタイガーウルフだって


どんだけでけぇんだろな」



 依頼内容、ビックタイガーウルフ一頭の討伐、報酬は10万セル、ガイアはビックとついてるだけでその大きさに期待していた。



 そしてその依頼の場所に着いた、そこはパグスの街から歩いて1時間ほどの所にある森の中で、すぐにその大きいタイガーウルフを見つけてガイアは呟いていた。



「ふつうじゃねぇか……」



 それはガイアが三頭まとめて相手にした、あのステラの剣を折って倒したタイガーウルフであった。

 ガイアの感覚は既におかしい、それは他ならぬステラとアルナイルにこき使わ……もとい、鍛え上げられた結果だとしか言いようが無い……。


 ガイアは立ち止まり震えている、それは恐ろしいからではない、ガイアはあの時このタイガーウルフは一頭20万セルと見立てていたが、三頭で2万セルと言う内容であった、何分の1だと心で叫んだ記憶がある。



 だがパグスでは同じタイガーウルフで一頭10万セル、ガイアの見立ての半分だがフランシスの5倍も支払われる。



 ガイアは鬼の様な条件でやらされていたことに、前から気付いてはいたが初めて実感してステラを見た。

 それはフランシスのギルドをどうにかしろと言うのが、痛いほど伝わる視線でステラは汗をかく、素直にストレートだが口には出さないガイアがそこにいた。



 ガイアは黙って歩き出しそのタイガーウルフに近づき、タイガーウルフがガイアに気付いた瞬間飛びかかり頭をぶん殴り、タイガーウルフの頭蓋骨を砕き一撃で仕留めた。



 既に素手で一撃で倒せる程にガイアは成長していた、と言うより怒りをぶつけたと言うのが正しい。


「帰ろうぜ」


 ガイアがそう言い歩いて先に帰り始めた。



「あれ……

怒ってるよね?」


ステラが困りながらアルナイルに小声で聞く。


「怒ってますね……」


アルナイルが小声で言う。





 一方フランシスでは、アルタイルがたまたま同じタイガーウルフを討伐していた、ガイアが普段格安でこなしている訳あり案件を処理していたのだ。



「ガイアちん……

普段からこれ一人でやってたのね……


強くなるはずよね……」



 アルタイルは人では処理しきれない過酷な案件を、ガイアは人の身でこなし続けていたのを感じ、それを手伝わずにいるアル・ムーリフを想像し汗をかいていた。


 無論アルタイルにとっては寝ながらでも出来る依頼であり、あくまでも人がやる依頼では無いと思っていた。




「ちょうどいいかもっ!」


 その様子を空から見ている者にアルナイルが気付いた、それが星海人であることも一瞬で気付いたが、アルナイルはあからさまな敵意をその星海人から感じなかった。



「誰だろ……」


 アルナイルが呟いて手を空に向けて光を放った。



「あん

なんかいんのか?」


 ガイアが機嫌悪そうに言うと、そのアルナイルの光に包まれた空の上にいた少女が、光から現れた。


 アルナイルは強制的にその小さい少女を連れて来たのだ。



「え……

なんでわたしここに居るの……」


 その少女が驚いて呟いたが、少女と言うより童女であった。


(エリスか……

少しは成長したのかのぉ……)


ステラの中のアル・ムーリフがそう呟く。



「私が呼んだんですけど

どちら様ですか?」


アルナイルが聞く。



「なっ!

わたしはエリスッ!


わたしはあんた達を倒して


今度こそっ!

アル・スハイル様の

手星に加えてもらうのよッ‼︎」


 エリスがそう言い、素早く離れダガーを抜いてガイア達に言った。



(相変わらずのようじゃな

まだ子供ゆえ仕方ないかのぉ

不和と争いの星……

まぁアルナイルが居れば問題なかろう)


ステラの中でアル・ムーリフが呆れながら言う。


 ガイアは変なものを見るようにエリスを見ている。


 アルナイルはここまで言わない方がいいことを言う人物を、ガイア意外に知らなくてキョトンとしている。


 ステラははっきりと普通じゃないとエリスを認識した。



「悪いことはいわねぇ

諦めてかえんな……」


 ガイアがそう言い見もしないで帰ろうとする。


 エリスは臆せずにガイアの前に出てダガーを向けている、幼さの溢れる顔でガイアを睨んでいる。


 ガイアは無視して歩く。


 エリスはまた前に出てガイアを通さない様にする。


ガイアは無視する。


エリスが前に出る。


ガイアは無視している。


エリスが前に出る。


それを繰り返しエリスが相手にしてもらえず泣き始める。



「…………」


 ガイアは無視して歩くが後ろからエリスが付いていき、その後を困りながらステラとアルナイルがついて行く。


「しくしく……

しくしく……」


エリスが泣いている。


 次第にガイアも悪い気がし始め、ステラとアルナイルの冷たい視線を感じ始めた。


「しくしく……

しくしく……」


エリスが泣いている。


 パグスの街についてもエリスは泣きながらついて来て、街の人々まで冷たい視線でガイア達を見ている。



「あぁぁぁぁっ!

解ったよ

話は聞いてやるから

ちょっとそこの店に入ろうぜっ」


ガイアがたまらず観念して喫茶店に入る。


 そもそもガイア達を狙って来たエリスだが余りにも幼過ぎる、これでガイアが叩けば間違いなく童女の虐待であり、子供相手に戦う気はしなかったのだ。



「でっ

なんで俺たちを狙ったんだ?」


ガイアが聞いた。



「エリスちゃん

このパフェなんてどお?」


ステラが聞いている。


「食べたいですっ‼︎」


エリスが満点の笑顔で答える。



「すみません

イチゴバナナシフォンスペッシャルパフェ

3つお願いします」


ステラが注文する。


「…………」


ガイアは普通に注文しているエリスに汗を流す。


「あのさ……

おまえ敵だよな?」


ガイアは自然に聞いた。


「ガイアさん

戦う前から泣かせたんですから

少しは優しくしてあげて下さい」


アルナイルが言う。


「そうよ

こんな小さな子いじめてどうするのよ」


ステラが言う。



「…………」


そう言われてガイアは何も言えなくなる。



「エリスちゃんはなんで

アル・スハイルの手星になりたいの?」


ステラが優しく聞いた。



「カッコイイからですっ!」


 エリスが元気に答えた時に注文したパフェが来て、エリスは目を輝かせた。


「いただきますっ!」


エリスは元気に言いパフェを食べ始める。



(やはりまだ子供よのぉ

二億歳ほどだから仕方ないが……

既に星を持っておる


侮れぬがどう接してよいのやら)


珍しくアル・ムーリフが困っている。



「アル・ムーリフさんの手星じゃ

だめなの?」


 アルナイルが聞いた、シンプルに色んな意味で敵にしたく無い様だ。



(こやつっ

妾にこもりなどさせる気かっ


いや待て……

今はステラじゃ……

妾が手を下すことはないな)


アル・ムーリフはそう考えた。



「アル・ムーリフ様も

カッコイイよねっ!

でもどこにいるの?


この500年話しもきかないよ」


エリスは口に生クリームをつけて可愛く元気に言う。



(エリスの隣にいるけど……

言えないもどかしさがあるわね)


 アルナイルはステラを見てそう思い、どう言っていいのか悩み始めた。



「うんじゃ

アルタイルに

相談すればいいんじゃねぇの?


アル・ムーリフと

仲いいみたいだったじゃねえか」


 ガイアがそう言うが、ガイア的にもアルナイルと同じことを考えていてステラもそう思っていた。



「大星アルタイルしゃまっ!

アルタイル様も居るんですかっ‼︎‼︎」


 エリスははしゃいで喜んでいる、エリスはその若さで星を得てから星海での有名どころをおさえていたのだ、エリスは大星に憧れ夢溢れる星海人の子供だった。



(いや……

普通に考えて欲しいのだが……)


 アル・ムーリフはガイア達の言葉に困り始めている、理由は単純に子供に戦わせる訳にはいかない上に、色々面倒にならないかと考えていた、それはエリスの持つ星も考えていたのだ、子供で星を持ち、その星を制御出来なければ厄介なことにならないか心配していた。



「じゃっ

アルタイルさんを呼んでくるね」


 アルナイルがそう言い、喫茶店の外に出て手から空に向けて光を放った、街の人々はアルナイルの放った光を何かの魔法かと思い、特に気には止めなかった。





「あれは

アルナイルの合図だね」


 フランシスでその日の依頼を終えたアルタイルが見て呟き大鷲になり飛び立った。



「ほんとに良かったぜ

こんな子供殴れねぇし


アル・スハイルになんか渡せねぇよ」


 ガイアが言うとエリスは不思議な顔をして聞いて来た。



「アル・スハイル様のこと

キライなの?」


「あぁ

村があいつのせいで

一つ無くなっちまったんだ


一発ぶん殴ってやらねぇと

気がすまねぇんだ」


ガイアが言った。



「うーん

ほんとなの?


星海じゃアル・スハイル様って

英雄なんだよ」



 エリスが悩むように言ったが、星海の事情とオルビスの事情を全く知らない様であった。




 その頃、大鷲になり黄金の輝きを放ち飛んでいたアルタイルがふいに声がかけられた。



「久しいのぉ

どこに行くのじゃ」



「アル・スハイルッ‼︎」


 アルタイルはすぐ真下にアル・スハイルがいると気付いた、アル・スハイルは既に星を輝かせいつでも光線を放てるようにしている。


「おまえ……」


 アルタイルが呟く、星海人にとって下を飛ぶのは目上に対する礼儀の一つであったが、星を出しているので疑問に思っていた。



「安心せい

これは貴様を警戒してのことじゃ

忘れてはおらぬからの……


あの時のことは……」


 アル・スハイルは静かに飛んでいたが、その昔アルタイルと戦った時のことを忘れていなかった、アル・スハイルが唯一完敗した相手を警戒しないはずがなかった。



「で……

わたしにようでもあるのかな?」


アルタイルが冷たく聞いた。



「珍しい奴がおると

思っただけじゃ……


アル・ムーリフは元気にしておる

それは良いのだが


そちはなぜアル・ムーリフが

余から離れたか

アル・ムーリフの手星のそちなら

知っておろう?


話してくれぬか?」


アル・スハイルが聞いた。



 アルタイルはアル・スハイルの態度に疑問を抱く、それはアル・スハイルが形だけでも礼儀をとり、まるで話し合おうと言う様に話しかけて来ているのだ。



「少し降りないか……」


 アルタイルがそう言い、二人はレチクル川のほとりに降りた。



 大星と呼ばれた二人が川のほとりで向き合い、互いに警戒をしていた。



「すまぬの……

余はそなたに一度助けられた


だが余は余の考えが

間違っているとは思えぬ……


星海を守るためには


星海に乗り出し

星を喰らう者を滅ぼさねばならぬ


一度許したとしても

星の生き物は

その者達は

千年も経てば世代が変わり

いつかは我らに再び

牙をむいてくるであろう……


我らは永遠と

戦い続けなければならないのか?」



 アル・スハイルは自らの考えと疑問を、アルタイルに投げかけていた。


 アルタイルはアル・スハイルの考えてることも理解が出来た、アル・ムーリフが姿を消してから暫くはゆっくりとしていたが、直ぐに星海人の街が星の生き物達に攻撃され、また戦い始めたのだ。


 アルタイルはアル・スハイルより長く戦い続けている、その戦いはアルタイルが生きた生涯120億年のうち100億年にも及び、まるで永遠を感じる程、気が遠くなる月日である。



「いつか終わるさ……


それがいつかなんて

私にも解らないけどね


ただ……


滅ぼすだけじゃ

終わらないんだよ


アル・スハイル

貴方達の誓い……

わたしは全部聞いていたよ



貴方達が交わした

あの美しい誓いを……

わたしも忘れてないよ


アル・ムーリフはそれを果たす道を

探してたんじゃないのかな……」



 アルタイルはそう静かに言った。


 

「余も忘れてはおらぬ……

じゃが余は……


道がわからぬ


余が進むべき道が見えぬ……

アル・ムーリフも

それを探しておると言うのか?」



 アル・スハイルがそう言った時、アルタイルは静かにエストックを抜いた。



「解らない…か……


お前の口から


その言葉はっ!

聞きたく無いっ‼︎‼︎」


 アルタイルはそう叫びエストックをアル・スハイルに向けた、そのアルタイルの眼光は鋭く凄まじい殺意を放っていた。



「そなたの想い

余は受けねばならぬな……」


 アル・スハイルはアルタイルがそう言い、エストックを向けて来ることに心あたりがあるのか、サーベルを抜きアルタイルに向けた。



 次の瞬間アルタイルが凄まじい速さで飛びかかり、そのエストックで凄まじい突きを放ちアル・スハイルはそれを突きで返し、アルタイルのエストックをその突きで正確に止めた。


 アルタイルは続け様に突きを放ち、アル・スハイルもそれに連続の突き返し受け止めていた。



 二人は僅かに距離を縮めながら、その突きを正確に躱しつ受け止め激しい攻防が繰り広げられていく。

 二人は僅かに少しづつ傷を負うが、一歩も引かずにそのまま剣を交えていく。



「そなたの想いに応えるために

手加減はせぬっ‼︎‼︎」



 僅かにアル・スハイルが下がり、コートを素早く広げ数多くのサーベルが飛び出しアルタイルを襲う。



「我れ誓いの一星

アル・スハイル……」


 アル・スハイルが唱えながら、サーベルを操りアルタイルを襲う、アル・スハイルのサーベルは速く一直線に並び、アルタイルを貫こうとしたが、その先頭のサーベルをアルタイルは弾いき二本目に来たサーベルも弾いたそのタイミングでアルタイルは躱し、翼を広げ大量の羽を放ちアル・スハイルを襲う。

 その羽を赤い星から光線を放ち撃ち落とすが、アルタイルは一瞬でアル・スハイルの背後を取りそのエストックで、アル・スハイルを貫こうとした。


「………

……


……ッ!」


 アル・スハイルは詠唱が間に合わないと悟り、そのエストックを躱そうとしたが、既にアルタイルの足が大鷲の足に変わっているのに気付いた。


(躱せぬ……)


 アル・スハイルはそう覚悟した、過去にあの足で捕まれその爪が食い込んだ肩に、過去の傷の痛みが走る、まるでその過去を思い出させるかの様に、だがその時気付いた。


 あの温厚なアルタイルとは思えない、殺気を放ち、その瞳からはかつてアル・スハイルに見せた殺気と悲しみの色に、怒りが混じっていることにアル・スハイルは気付いた。



(負けられぬっ


そちのその瞳に負けてはならぬっ!


受け止めねばっ‼︎‼︎)



 アル・スハイルはかつてアルタイルに敗れた時とは違い、全てにおいて成長していた。


 アル・スハイルはその一瞬に自らのサーベルに、アル・ムーリフと交わした誓いを乗せそのエストックを死線と思われる様な、それほど際どい線で躱し、アルタイルが追撃を入れるように、繋げてきた凄まじい速さのエストックの打撃をサーベルで受け止めた。



(その瞳に浮かべる怒りの輝き

それは余が与えてしまった光……)


 アル・スハイルはそう想いながらそのエストックをよく見た時、衝撃を受けた。



「思い出したかい……


このエストックは……」


 アルタイルの瞳からは悲しみが溢れ涙を流し始めていた。



「お前が殺したベガのものだっ‼︎」



 アルタイルが叫び凄まじい力でそのエストックを止めていたサーベルを弾いた。

 そしてその体勢を崩したアル・スハイルに叫びながら襲いかかる。



「お前がっ!

お前がベガを‼︎

わたしの愛するベガを殺したっ‼︎‼︎」


 その怒りは凄まじく、我を失う様な勢いでアル・スハイルに襲いかかっていた。



「なぜ殺したっ!

なぜハダルの星に叩き落としたっ!」


 アルタイルは叫び凄まじい勢いで襲い続ける、そしてそのベガが持っていたエストックに多くの想いを乗せ、アル・スハイルの眉間をとらえ凄まじい突きを放とうとした。


 その時、アル・スハイルの持つサーベルが輝き、その輝きに一瞬ではあるが視界をアルタイルは奪われ、僅かに僅かにエストックの狙いが甘くなった、だがその強い意志でそのまま突きを放った。


 アル・スハイルはその僅かな一瞬と甘くなった狙いを逃さず、そのサーベルでエストックを弾きアルタイルを蹴り飛ばした。



 そして静かにアル・スハイルはサーベルをアルタイルに向けた。




「アル・ムーリフ我が妹よ……


また……

そちに助けられたな……」


アル・スハイルはそう呟いた。



「わたしは負けない……

お前にはっ

絶対に負けないっ!


あの人を殺したお前がっ!

解らないなんて言うことをっ

わたしは絶対に許さないっ‼︎」


 アルタイルがそう叫び立ち上がり、凄まじい悲しみと怒りを放った時、鮮明に悲しい記憶が溢れ出していた。





 アルタイルはベガが叩き落とされた、ハダルの星に降りベガを探した。


 無意味なことは解っていたが、現実と感情はそうでは無い。



(きっと生きている


生きていてくれる


苦しんでるはずだから

はやく助けないとっ!)


 アルタイルは現実を投げ捨てる様に、そう思うしかなかった、そして悲しいことに大星であるアルタイルを止められる者は誰もいなかった。


 数年が経ってもアルタイルはハダルの星を探し続けていたが、ベガを見つけることは出来なかった。


 そして冬になり極寒とも思える高い山の中で、アルタイルはやっと見つけた。



 氷の様な大地にそれは突き刺さっていた。



 その一本のエストックを見つけた時、アルタイルはやっと愛する人の最後を受け止めることが出来た。


 そのエストックを悲しみや寂しさ、様々な苦しみを込めて抜いた時、その全てを否定する様なベガの想いが伝わって来た。


 ベガは最後までアル・スハイルを信じて止めようとしていたのだ。

 アルタイルはその想いを受け止めベガが最後まで信じたことを信じることにし、アル・スハイルの側にいて、昔の優しい姉に戻って欲しいと願い続けている、アル・ムーリフの手星になったのだった。



 そのアルタイルからすれば、アル・スハイルが解らないと言ったことが、本当に許せなかったのだ、


 あの美しい誓いを果たせないのか、そうなればベガの死は何だったんだと思った時、凄まじい怒りが吹き出しエストックを抜いたのだ。



 アルタイルは翼をはためかせ、飛びかかりエストックで貫こうとするが、アル・スハイルはそれを躱し、アルタイルの翼が大きな刃のように襲いかかるがアル・スハイルの赤いの星が輝き、真紅の翼がその星から現れアルタイルの翼を受け止め、アル・スハイルは距離を取ろうとしたが、アルタイルの金色の羽が放たれアル・スハイルの足に命中し体勢を崩した瞬間蹴り飛ばされてしまう。



 アル・スハイルは大地に叩きつけられたが、凄まじい痛みに耐えながらも立ち上がろうとしている。



「あの時

わたしが助けなければ……


なにもしてない

平和に過ごしていた命も

奪われなかったはず……


あの時

わたしが貴方を止めていれば

ベガも貴方に殺されなかったはず……」


 アルタイルは静かな声で自然に言うが、その瞳には優しさなど微塵もない、全ての怒りを憎しみに変えた様な輝きを放っていた。



(その光……

余の命だけではおさまらぬな

余の次は……

アル・ムーリフに……


そうはさせぬ……)



「余も…負けられぬのでな……


そなたのその怒りは

余が一人で受け止めねばならぬ……」



 アル・スハイルがそう言いながら立ち上がった、その顔は苦痛の色を見せず、誇り高いアル・スハイルは僅かに顔を歪めはしたものの、それを隠しながら立っていた。



「なら……

遠慮はしないよ」


 アルタイルがそう言い再び襲いかかる。



「来るが良い……」



 アル・スハイルは誇り高くアルタイルのエストックを受け止める。



「ふっ……」


 アルタイルはアル・スハイルが、もう受け止めることが出来ないはずの攻撃を受け止めたことを鼻で笑った。



「なにがおかしい……」



 辛そうにアル・スハイルが言う。



「?」



「そなたは大星である

そのそなたが怒りに瞳を染めている


全て余が招いたこと……


ならば尚のこと

負ける訳にはいかぬのだっ‼︎


我が誓いの元にっ

負けてはならぬのじゃっ‼︎」



 アル・スハイルは自分の背負っているものを訴えるように叫び、赤い星から真紅の輝きが放たれ、アル・スハイルはそのエストックを押し返しはじめた。


 誓いの星があの誓いを果たそうとし、そしてアル・ムーリフも守ろうとするアル・スハイルに応え、アル・スハイルが求めた破壊と戦いの力を、今必要な生命力に勝手に変換して与えたのだ。


 アル・スハイルの全身から生命力が溢れ、力が蘇っていく。



(これは……)



 そのアル・スハイルの星の動きにアルタイルは気付いた、その瞬間にアルタイルのエストックが押し切られ、アルタイルは体勢を崩してしまう。

 すかさずアル・スハイルはアル・ムーリフが送ってくれたそのサーベルに誓いを、そして想いを乗せ突きを放った。



 その突きは凄まじい速さで一閃が走ったようにアルタイルの肩を貫いた、その貫かれた傷からはアル・ムーリフの優しさが、痛みと共に全身を貫くように一瞬で走り、アルタイルの瞳に輝いた憎しみの光が消えて行く。


 アルタイルは気付いていた今の一撃は肩でなく、胸、心臓も貫けたはずだと、そしてアル・スハイルだけでなくアル・ムーリフと二人で放った一撃だと気付いた。



「このわたしが……」



 アルタイルは我に返ったように呟き、翼をはためかせ、アル・スハイルから距離を取るようにそのサーベルを引き抜いた、アル・スハイルは深追いしようとしなかった。


 それは様々な訳があった、そのままアルタイルに食いつき更に深傷を負わせることも可能であった、だが致命打に欠けアルタイルが反撃をした時に、アル・スハイルにそれを止める術もなく、耐えられる自信も無かった。


 アル・スハイルはあの時より格段と強くなっていたが、過去にアルタイルが言った言葉通り、大星を甘く見ていなかった。



 アル・スハイルが自らの命だけでなく、アル・ムーリフの運命も守ろうとし、その全てをかけて全身全霊を込めた一撃であった。



「なんで外したっ!」



 アルタイルが叫んだ、肩からは金色の美しい血が流れ手で抑え、顔を苦痛で歪めていた。



 アル・スハイルは既にぼろぼろで立つのもやっとだったが、誇り高く弱みを見せずに立ったままサーベルをアルタイルに向けて言った。



「仮を返したまでのこと……

余は一度そなたに救われているのでな……


だがっ次は外さぬっ‼︎

大星を憎しみで倒せるなど

思い上がるでない‼︎‼︎」


 アル・スハイルは誇り高く、叫ぶようにアルタイルに言った、その昔アルタイルに言われた事を言い返すように。


 アルタイルはそれを聞き、アル・スハイルも大星と呼ばれるようになり、それに見合う成長をしているのに気付かされ、アル・スハイルの瞳を見る。



 アル・スハイルの瞳には歩みを止めてはならないと、どんな壁であろうとも乗り越えようとする強い意志が輝いていた。



 それはベガのことを侘びなければならないことを解っていたが、詫びて済む話では無い、アル・スハイルは歩み続けないとならない、既に誓いを果たそうと戦い続け70億年は経つ、生涯を掛けていると言っても過言では無い、アル・スハイルとアル・ムーリフの果てしない旅路で、その足を止める訳にはいかなかった。




 アルタイルはアル・スハイルの消えかけていた、星海を守ろうとする意思に、再び火が灯ったように思えた、そして違う道も探そうとしている様な輝きを、その瞳が放っているのを見た。



「負けたよ……

でも今度弱音を吐いたら

次は無いからね」



 アルタイルはそう言い大鷲に姿を変えて飛び去って行ったが、アル・スハイルも解っていた、アルタイルはまだまだ戦えるが、アル・スハイルに余力は残っていなかった。


 アル・スハイルはアルタイルを見送るように見ていた、だが凄まじい疲労と体の限界で真後ろにそのまま倒れた。



「アル・ムーリフ……」



 アル・スハイルが静かに呟く、既に夜になり美しい夜空を眺め、今の戦いでアル・ムーリフがなぜ離れてしまったのか気付き始めていた。



「奪い過ぎたと言うのか

だがどうすればいいのだ……


あの戦いで

一度許したメビウスの者どもに

アトリアロフの……


余の民の

多くの命が散った……


どうすれば良いのじゃ……」



 アル・スハイルは悩みを呟いていたが、夜空の美しい星々の輝きはそれを気にしないように輝いている。



「まったく……


あやつらは勝手なものだのぉ

余がそち達のために悩んでおるのに

素知らぬ顔をしておる」


 アル・スハイルはとても優しい顔で星々に向かって言っていた、それはまるで隣にアル・ムーリフが居れば、何かを返してくれるような言い方であった。





 一方その頃……。




 ガイア達はアルタイルが来るのを喫茶店で待っていたが、いっこうに来ないで夜になり閉店してしまったので、宿に向かっていた。



「アルタイルさん来なかったですね」


アルナイルがそう言った。



「まぁ……

忙しいんじゃね?

俺らの代わりに

訳あり案件やってくれてる見たいだし


何かと戦ってたりしてな」


 ガイアが待ちくたびれて、疲れてしまったエリスをおんぶしながら笑顔で言うが、まさかアルタイルがアル・スハイルと戦っていたとは誰も思ってはいなかった。



「でもエリスちゃんも

ガイアに懐いてくれたね


寝顔可愛いぃ」


 ステラがそう言いながら、マシュマロみたいにぷにぷにしているエリスのほっぺをツンツンしていると、エリスは赤ちゃんみたいにステラの指をパクッと咥えて吸い始めた。


「キャっ!」


ステラが喜んでいる。



 そうしながら宿に入り部屋に入って行く、ガイアはエリスをステラとアルナイルの二人部屋に預けようとし、連れて行きアルナイルのベッドに寝かせようとした時にエリスは起きた。



「ふぇ……」



 エリスが寝ぼけている、そしてガイアに抱きつく。



「ガイアと一緒がいい……」



 エリスはガイアと寝たい様だった。



「エリスちゃんってパパっ子なのかな?」



 アルナイルが笑顔で言い、アルナイルもステラもガイアパパの姿を想像し、結構な親バカになるような気がして小さく笑った。



 結局、まだ小さいと言うことでエリスはガイアと一緒に寝ることになった、ステラもアルナイルもガイアはそう言いことに一切無関心で、ただ子供に優しいガイアに任せることにしたのだ。


「わたしガイアさんの

お嫁さんになりたいっ!」


 エリスが元気にそう言った。


「はいはい

エリスがおっきくなったらな」


 ガイアが小さい子供を相手にするように言う、すっかり近所の優しいおにいさんの様に相手をしている。


 そんなやりとりをして、二人はステラ達の部屋を出てガイアの部屋に入って行った。



「ふふっ

ガイアって子供の面倒見がいいよね」


ステラがアルナイルに言った。



「わたしもガイアさんが

あんなに子供好きって始めて知りました」


 アルナイルが笑顔で言い、二人は自分とガイアの間に子供ができたらと言う、いつ叶うか解らない妄想をしてニマニマしていた。



 それから少しして二人の部屋を誰かがノックして、まだ鍵をかけてないドアのドアノブがくるっと回った……。

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