第二章 第3話 レチクル川
翌日、盗賊達が牢から出されセプテント家の精霊達に引き取られ、二百ほどのクールンの兵がつきフランシスに送られて行く。
「ステラ様
盗賊達の引き取りの手続きが
全て終わりましたので
私はこれで失礼します」
エントリアがその盗賊達を見送るステラに報告していた、ステラの手紙を受け取ったユーファがすぐに、セプテント家の精霊達を送ってくれたのだ。
「エントリア?」
ステラがエントリアを呼んだ。
「?どうされましたか」
エントリアが不思議そうに聞いた、ステラの呼び方が何かを気にしているようだったからだ。
「ユーファは元気にしてますか?」
ステラがユーファのことを聞いて、エントリアは優しい微笑みを見せて言う。
「ユーファは各地の精霊達に
当家のメイドの募集をしながら
当家のメイド達に戦闘訓練をしています
みんな毎日くたくたになってますよ」
エントリアがそう教えてくれ、セプテント領内の何処かでしごかれる精霊達を想像していた。
これから星海人と戦うかも知れない、それを見越して戦力の増強をしようとしているのが解るが、その姿を想像してステラは小さくクスッと笑った。
「元気そうでなによりです
よろしく伝えて下さいね」
ステラが言うとエントリアが微笑んでから言った。
「かしこまりました
ステラ様
この先はレチクル王国になります
国内は安定しているようですが
私達の助力は出来なくなります
お気をつけて下さいね」
「安心しろよ
おれが絶対に守ってやっから
でアルタイルはどうしてるだ?」
ガイアとアルナイルが来てアルタイルのことを聞いた。
「はいアルタイルは様は神殿書庫で
読書の日々を送ってくださってます」
エントリアが微笑んで言うが、アルナイルがその様子を思い浮かべて汗をながした。
「あと国境付近では
最近盗賊が
出没する様になりました
お気をつけて下さいね」
エントリアが言う。
「おっ
また乱闘出来るのか?
楽しみじゃねぇか」
ガイアがそう言いアルナイルは汗をかきながら言う。
「ガイアさん
色々と気をつけて下さいね」
ステラはガイアの言葉を聞き流し、少し考えていた
「リオー国で盗賊が?
珍しわね……」
ステラがそう呟いた、リオー国は精霊術が長けていて多くの精霊達が盗賊達の寝ぐらを見つけ、討伐されほぼ居なくなったのだ、今回の盗賊すら珍しいのだが、調べるとレクチル王国から南下してきていた。
「なんでも腕が良くて
盗賊狩りばかりする冒険者が
レチクル王国に現れたそうなんです」
エントリアはそう言うが二人は、それがアル・スハイルとエルナトだと言うことに気付かなかった。
そしてその送られていく盗賊達の様子を伺うように、アル・スハイルとエルナトが見ていた、そしてエントリア達は盗賊を連れて、クールンからフランシスに向かって行った。
翌日、クールンの街をガイア達は出発したが、アル・スハイルとエルナトはクールンの街から出発しなかった。
「アル・スハイル様
追わなくていいのですか?」
エルナトが聞いた。
「うむ……
少し気になったのでな……」
アル・スハイルはそう言い宿で何かを考えていた、アル・スハイルは昨夜、星を見てこの星を初めて見つけた時を思い出して疑問に思ったことがあったのだ、それはアル・ムーリフがこの星に居ることに気づいて、長居したから気づいたのだ。
それと同じ頃、アルタイルはセプテント家の神殿書庫で不思議な本を見つけていた、何かの記述と言うより日記なのだ、ページ数は500ページほどの厚さがあるが、読み続けて500ページを越えても新しくページが増えるように、既に700ページを越えたが読み終えることが出来ないでいた。
「なんだろ……
この日記……
と言うか誰の日記かしら
名前も書いてないわね
星海人の字なんだけど
私達は日記なんて書かないよね
120億年も生きてると
一日なんて秒で過ぎてる気になるし……
120億年分の日記なんて
何冊必要なのよ……
私はこまかく書きたいから
一日1ページじゃ足りないし
しまうの大変じゃない……」
アルタイルがぼやきながら読んでいる、アルタイルはアル・スハイルとアル・ムーリフより20億年程長く生きているのだ、ここまで長寿で生き抜いている星海人を、アルタイルはシリウスしか知らない、親友である大星ベガも星海人同士の戦いで戦死してしまっている
「はいはい……
星海を旅して700年経ちましたと……
700年も帰らないで旅するなんて
随分と暇なのね
どっから旅に出たんだっけ?
メビウスだったよね?
ここまで700年もかけるって
どれだけ遅いのよ……」
アルタイルは800ページあたりを読みながら、ぼやいているが次の瞬間手が止まった。
「どう言うこと……
これを書いたのって
命の精霊ミアプラ……
なんで精霊が
星海人の字を知ってるの……」
アルタイルは考えた、もし星海人でなく精霊が星海を旅するとしたら、速くても星海人よりも相当遅い。
星海人はある一定の距離に離れているダークマターと自分が呼吸したダークマターを繋げて移動しているので、光より早く移動をしている、時には近距離でのワープを繰り返している星海人までいる、精霊ではそれが出来ない。
「ちょっと待ってよ
そんな遅い移動を700年もしていたら
星海人に捕まるわよ……
まさか……
これを書いた時に
星海人は居なかったってこと?」
アルタイルはその日記の不思議な内容に気づき始めていた、まるで初めて精霊が星海に飛び出した時の様な話しだったのだ。
アルタイルは適当でなく最初から丁寧に読み直し始めた(高速で……)。
それから三日経った夕方、クールンから北に向かっていたガイア達は、明日にはレチクル王国との国境に差し掛かる辺りに来ていた、少し道から外れて森を抜けると川があり、ガイアは水の爽やかな香りに気付いてそこに向かっていたのだ。
「さぁて
今日はこの辺で休むか
川もあるしちょうどいいな」
ガイアがそう言いながら馬車を止めると、アルナイルが馬車から飛び降り、大きな川に向かって走って行き水の香りを嗅いでから元気に言った。
「ガイアさん
このお水綺麗で飲めますよっ」
「いつも思うけど
アルナイルちゃんって
何でも匂いで見分けてて
すごいよね」
ステラが言った。
「そうか?
俺も出来るぜ」
ガイアが普通に言う。
「ガイア
傷んでるとか
腐ってるとかじゃないの
アルナイルちゃんは
匂いのしないものも見分けれるのよ」
ステラがそうじゃなくてと言う顔で言うが、ガイアはそう言いう事にして突っ込まない事にした。
(うんうん……
お兄ちゃんもちょっとは……
って!
勉強したのっ⁈⁉︎
あのお兄ちゃんがっ⁈)
アルナイルはいつもならガイアは関係なく言うだろうと、言うことを言わなかった事に驚いた。
(そっか……
ステラにはわからねぇのか……)
ガイアはステラが以前に、足手まといと言って酷く気にしていたことを思い出した。
自分だけ出来ない。
それはものによって個人差があったりするものだが、こういった特殊能力的なことは出来る出来ないではなく、生まれ持ったもので気にしない方がいいが、ガイアとアルナイルの二人が出来て自分だけ出来ないと言うのを気にはさせたく無かったのだ。
三人は早速、薪を集めたりして夕食の支度を始めた、そしてガイアは樽を二つ下ろして、その川で新しい水と入れ替えている。
「ステラさん今日くらいには
あれ出来てるんじゃないですかね?」
アルナイルが言った。
「そうね……
試しにちょっと出してみよっか」
ステラが笑顔で言う。
アルナイルとステラはキャンプ的な料理にも工夫をしようとしている、クールンを出発する前に新鮮なお肉を沢山買っていた、ガイアは痛むからやめとけと言っていたが、ステラは構わず買って、その日の夜に傷んでないかアルナイルに確認してもらって、3分の2程を切って二人で大きめの壺の中に入れ何かにつけていたのだ。
ステラはそれを用意している、アルナイルはご飯炊いてスープを用意している、美味しそうないい香りが辺りに漂い始めていた。
そしてガイアが水を入れ替えて樽を運んで来て、香りで気づいで言った。
「これってミーか?」
ミーは豆を発酵させた調味料で味噌みたいな物だ。
「そうよ
いつも干し肉ばっかりじゃない?
だから作ってみたのよ」
ステラが笑顔でそう言った。
ステラとアルナイルは保存用に肉を味噌漬けにしていたのだ、これはクールンの街でステラがアルナイルと二人で靴を探している時に、肉屋で売っているのを見つけたのだ。
温度管理など出来れば半年から一年くらい持つらしいが、1ヶ月くらい保てばとステラは考えていた。
「へぇ……
美味そうな匂いだな」
ガイアは男の一人旅じゃ思いつかないことを、ステラとアルナイルが二人が楽しんでやってくれていて笑顔になっていた。
そして料理も出来て焚き火も丁度良くなり、三人は夕食を取り始める、ガイアはそのミーで漬け込んだ肉を焼いた料理を美味しそうに食べてくれ、ステラもアルナイルも嬉しくなっていた。
そしてアルナイルがふと夜空を見ると、雲がかかっていて星空が見えなくなっていた。
「ステラさん
明日は多分雨になりますから
ご飯食べたら水浴びしてきましょ
多分ですけど……
明日は出来ないと思います」
アルナイルが考えながら言ったが、ガイアはそれに気づいていた、そのために一番最初に水を入れ替えていたのだ。
三人は食事の後に、アルナイルとステラは川で洗い物をしてから水浴びを始めた、ガイアは川を見ないように焚き火の番をしながら地面に手をついて、何かを探っていた。
(やっぱり盗賊か……
近くにいるがこっちには気づいていない
見つかるとしたら明日か……
明日は雨……
雨の中で乱闘はしたくねぇな……
いや離れて行くな
これなら見つからずに行けそうだが
気をつけねぇとな)
ガイアはこうして大地から様々なことを聞いていた、それはガイアの昔からの能力で生まれ持ったものであった。
翌日はその予想通り朝から雨が降っていた、ガイア達は森の道に戻り昨日泊まった場所なから見えた石橋を目指した。
ガイアの予想通り、盗賊達は襲って来なかったがガイアは不思議に感じていた、それは盗賊達は川のこちら側にいる、一度気付いたような動きをしたが川から離れたのだ。
ガイアは橋を渡り始めてから異様な空気を感じた、冷たく寂しく悲しみに満ち溢れた空気が橋だけを覆っていた。
その橋は大きく対岸まで50メートル程ある、レチクル王国の国境はこのレチクル川を超えた先にあるが、対岸の少し先までリオー国であり、レチクル王国は先代の国王まで国境をレチクル川と定めるべきだと主張し、時には争いリオー国との関係は冷たいものであった。
そう言った暗い歴史を持つレチクル川にかかるこの橋で、ガイアは馬車を止めた。
「どうしたの?」
ステラがガイアに聞いた。
「あぁ……
いつもみたいに応援たのむは……
アルナイル
ステラを守ってくれよ」
ガイアはそう言って手綱を置き馬車から降りて前に出た、良く見ると橋の向こうから傘もささず、白い服を着た女性がこちらに向かって歩いてくる。
白い長い髪をしているが、若そうな女性だがあからさまに様子がおかしい……。
「魔物……?」
ステラが呟く。
ステラもその異様さにそう感じた、冷たく雨が降りその雨に濡れても気にしていないようだった。
そして女性は橋の中腹まで来て、静かに手すりに手をかけ、川を見つめ何かを呟いている。
「…………」
雨が少し強くなった気がしたが、その呟きがゴソゴソと耳に入るが何を言っているかガイアには解らなかったが、とてつもない寂しさだけが猛烈に伝わってくる。
「ゴースト……」
アルナイルがその正体に気付いて呟いた時、その女性のゴーストは橋から身を投げたが、川に落ちる音はしなかった。
「ったく……
回りくどいことすんなよ……」
ガイアはいつもの様に無神経にそう呟いたが、ガイアは馬車に戻ろうとしなかった。
「…………」
ガイアの耳だけじゃなくステラにもアルナイルにも、先程のゴソゴソとした声が響いて来てステラが怯え始めた。
「来る……」
ガイアが呟き、足元の水たまりからぬっと白い腕が伸びてガイアの足を掴み、背後からその者が襲いかかった。
「ガイアッ」
ステラが怯えながらも叫んだ。
「白銀っ‼︎」
ガイアが叫びアルナイルが送った剣を握った、ガイアはアルナイルの剣をそう名付けた様だ。
すると光の障壁が現れそのゴーストを遮りガイアは守られた、アルナイルの溢れる程に強い思いだろうか、悲しみに満たされた亡霊はその障壁を越えることが出来ずに姿を消し、ガイアは白銀を抜いた。
「寂しいんだろ掴んでろよ……」
ガイアが呟く、ガイアの足はまだ亡霊の腕に掴まれたままだった、そして川が増水し凄まじい勢いで川の水が橋にぶつかり始める。
亡霊が橋を壊そうとし、ガイアごと押し流してしまおうとしているが、橋はびくともしなかった。
「くだらねぇ……
大地ってのはおまえひとりの想いじゃ
動かねぇんだよ」
ガイアが無神経に言う。
気づけば石橋を作り上げていた一つ一つの大きな石材が融合し、一個の塊の様になり、強靭な一個の岩の塊の橋へと変わっていた。
それは亡霊が生み出した激しすぎる川の流れでもびくともしなかった。
「焦んなよ……
話は聞いてやっから……」
ガイアが優しく言った。
だが亡霊はガイアに足元から襲いかかった、その口はぽっかりと開けていて、目だけが無く何かを口ずさんでいる様な声が聞こえる。
ガイアはその這い出るように、鋭い爪をガイアに食い込ませながらも、しがみつく様に水たまりから這い出て来るそれを嘲笑う様に言った。
「ばっかじゃねぇの
なんで追いかけなかったんだよっ‼︎‼︎」
ガイアはその亡霊にそう言った、その者の心の叫び魂の叫びが聞こえていたのだ、その言葉はその亡霊の怒りを買った、その女性の魂にとっては身もふたもないガイアらしい無神経にも程があるだろうと、そう思わせる言葉だった。
アルナイルはその言葉に汗をながし、ステラは怖いと思う気持ちが吹っ飛び、その亡者が哀れに思えて来た時、ガイアがその亡者を蹴り飛ばした。
蹴れるはずが無い者を、ガイアはステラが送ってくれ剣を握って蹴り飛ばした。
「紫月っ!」
ガイアはそう叫び素早くその亡霊を切り裂いた、だが死者である亡霊は痛みを感じずにガイアを襲い続ける。
飛びかかって来る亡霊の爪を躱しガイアはステラが送ってくれた剣、紫月で斬りかかる。
紫月は普段より輝き、ガイアの斬撃を普段より速く正確にしてくれている、ガイアの荒っぽさをまるで包み込んでくれている様に、ステラの想いが輝いていた。
「この剣はな
精一杯悩んで悩んで
飛び出してくれたやつが
送ってくれた剣なんだよっ‼︎
その気持ちをっ!
少しは見習えよっ‼︎‼︎」
ガイアがそう叫んだ、ガイアはステラの気持ちを良く理解してくれていた、そしてその想いを真っ直ぐに伝えようとしていた。
ステラは嬉しくなるが、アルナイルはそれじゃあの亡霊を倒すことが出来ないと思った。
だがガイアは相変わらず、悲しみを訴える亡者に厳しくあたり続ける、それは大自然の中で弱肉強食と言うルールがあるように、そのまま切り裂いて行く。
実態の無い亡者に物理だけで立ち向かう勇者がそこに居た。
(お兄ちゃん
もうちょっと違う方法あると
思うんだけど……
と言うか話を聞くって言ってたけど
聞いてる様には……
見えないんだけど)
アルナイルはそう思い困り始めていた。
だがガイアは真面目に伝えたかったのだ、いつまでもここに留まるなと、新しい人生という旅に出ろと伝えたかったのだ、大地は厳しくも揺かごの様に新しいそれを与えてくれると伝えたかったのだ。
「いつまで繰り返すんだよっ!
違うだろっ‼︎‼︎」
ガイアは訴え続けるがやはり伝わりそうに無く、それほどにまでその亡霊の無念が強かった。
そしてガイアの傷が砂にならない事にアルナイルが気付いた、降り続ける雨に濡れ砂になれないのだ、ガイアが少しづつ傷を負い始め、亡霊がガイアに抱きつき凄まじい勢いで水を集めガイアを捕らえようとした時、ステラが静かに立ち上がった。
そしてガイアはその亡霊の集めた水に取り込まれ、物理だけで亡霊に挑んだ勇者ガイアは一瞬で気を失ってしまった。
「またせたね……」
その時、見知らぬ男性の声がその場に響いた、気付くとステラ達の乗る馬車の後ろから、白く輝く一人の人影が歩いて来て、その亡霊の方に歩いて行く。
「あれは……」
アルナイルが呟いてステラを見ると、ステラの背後に紫の星が輝いていた。
「妾より先に死ぬでない……」
ステラ・アル・ムーリフが微笑んで言った、誓いの星の力で亡霊の求める者を呼び寄せたのだ。
アルナイルは誓いの星、その変換の力を目の当たりにした、誓いを叶えるために必要な力へ星の力を変換する、その使い方によってはまさに驚異的な星の力であった。
「あなた……」
ガイアを襲った亡霊の漆黒の瞳が、初めて人の瞳の輝きを放ちガイアを窒息させようとした水が飛び散り、ガイアを解放しガイアはばったりとその場に倒れた。
二人の亡霊は抱きしめ合い、優しい光を一度放ち静かに消えて行った。
「まったく死者と言うのは
勝手なものだ……
望みが叶えば礼も言わずに去っていく
次は離れるでない……
次こそは幸せになるのだぞ……」
ステラ・アル・ムーリフは空を見上げながら静かにそう言った。
その言葉にアルナイルは、アル・ムーリフがガイアと共に居ようとする、その思いがこもっている気もした。
「ステラさん……」
アルナイルがそう呟いた時、ステラは倒れ気を失っていた。
アルナイルは馬車をガイアに寄せた時、雨が止み空が晴れ始め美しい太陽がガイア達を照らしていた。
「ったく……
アイツ次あったら
今度はぶん殴ってやる」
ガイアは亡霊に負けてぶつぶつ言っているが、アルナイルは思っていた。
(次に会う時は多分
人の女の子だよね……
しかも覚えてないだろうし
それじゃ流石にお兄ちゃんでも
何も言えないよね)
アルナイルはそう思いながら、疲れていそうなガイアの代わりにレチクル国の国境目指し、森の中の道を突っ切る様に馬車を走らせていた。
そんな時、ガイア達の馬車の前に盗賊達が現れ馬車を止めた。
「お……
いい女がいるじゃねぇか
俺たちとあそばねぇか?」
一人の盗賊が前に出て言ったが、アルナイルは微笑んで元気に言った。
「お兄さん達
早くにげたほうがいいよぉ
とぉぉぉぉぉぉっても機嫌が悪い
暴れん坊がいるからねっ!」
「はぁ?
何言ってんだじょうちゃ……」
そう盗賊が言い終わる前に、ガイアが馬車から飛び出しその盗賊を殴り飛ばした。
「てめぇら……
ちっと気晴らしに
付き合ってくれねぇか?」
機嫌の悪い暴れん坊ガイアが、凄みを出して静かに言う。
殴り飛ばされた盗賊は木に叩きつけられ気を失っていた。
「野郎っ!
やっちまえっ‼︎」
盗賊達がガイアに襲いかかる。
「上等だゴラァッ‼︎‼︎」
ガイアが叫び乱闘が始まり、ガイアはうっぷんを晴らすように暴れまくっている。
その暴れている音でステラが起き、馬車の外を見て汗をかいて困りながら呟く。
「なに…やってるの……?」
「ちょっとね
ガイアさんの気晴らし?」
アルナイルはテヘッと言うように舌を出して可愛く言った。
ステラは暴れ回るガイアを見て、あの気を失ったあと何があったのか気にはしたが、アルナイルがそう言ったからには、ガイアが納得しない相当な事があったのかと思い聞かない事にした。
「オラァァッ‼︎‼︎」
ガイアの気合いの入った叫び声は、レチクル国の国境まで響いていた……。




