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ねぇあなたはなんで旅に出たの?ねぇあなたはどおして旅に出たの?  作者: 〜神歌〜
〜第二章 新しい旅へ 〜
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第二章 第1話 旅立ち


「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ‼︎」



 あれからもアルタイルとアルナイルの読破の日々は続いていた。


 それから解ったことが幾つかあり、アルナイルがここに来る前に立ち寄った北域と言う地域に、同じような神殿があることが解った。


 それを調査する必要性を感じたユーファだが、何かを悩んでいた。


 その様子をステラは気づき始めていて、また何か秘密裏に進められているのか心配になっていた。


 そしてガイアはギルドに通い続けていた。




 そんなある日……。




「クッソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」



 フランシスからかなり遠いベンダルと言う平原で、いつもの様に死に物狂いで走っているガイアがいた。



「がんばれーっ‼︎」



 空の上には大鷲になったアルタイルの背中に、いつもの応援団の様にステラとアルナイルが乗り声を掛けて応援している。



(くそがっ

あのアルタイルのやつ

あんなことを言いやがってっ‼︎

マジぶん殴ってやるっ‼︎‼︎)



だいぶ前のこと……。



「ガイアくん

折角だから剣を持たないで

行ってみようか?」


 アルタイルは大鷲になりガイア達を背中に乗せ、依頼対象の真上で小さな笑みを浮かべて言った、今日はアルナイルとアルタイルの休日(読書から解放される日)で、アルタイルはギルドから一つの依頼を持って来たのだ、それをガイアがやる事になった、アルタイルは特訓させる気でいた。



「はぁ?

お前なに言ってんだ?」


ガイアが普通に普通の返事を返した。



「ガイアくんは

剣の力に頼りすぎている

そう思わないかい?」


アルタイルはすっかり師匠に成り切っている。


 そう言われたガイアは少し考えていた。



「私がガイアくんと

剣を交えたとき

私が一度でも剣で

勝負を決めたことがあるかい?」


 アルタイルがそう言い、ガイアは考えてみると確かに、あれから何度かアルタイルと勝負したが毎回最後は、アルタイルの足や翼で勝負が決まっていた。



「剣はあくまでも

手段の一つなんだよ


剣だけで倒そうとすると

相手に最後の一撃が

剣で来ると読まれやすくなる


それじゃ

アル・スハイルには勝てないんだよ


打撃や遠距離色々な手があるけど

他にも信じられるものを持たないと

私達大星と呼ばれる

星海人の相手にはならないんだよ」


アルタイルはそうガイアに教えてくれた。


 アルタイルは星海人の中に、一つを極めると言う考えが無いとそう遠回しに言っていた、ガイアはその考えを不思議に思っていたがアルタイルは言った。



「さぁどうする?やってみるかい?」


「ちょっと待てよ

それじゃ剣だけじゃ

絶対に勝てないってことか?」


ガイアが聞いた。


「そう言うこと


今度でいいから

星の力を解放したアルナイルちゃんに

相手してもらうといいよ

よく解るから……」


アルタイルが言った。


「はぁ?

わかんねぇけど……



ステラちょっと預かっててくれ



うんで何を倒せばいいんだ?」



 ガイアはそう言い剣をステラに預けたが、依頼内容を知らなかった。



「簡単だよ

あの魔物を倒せばいいんだよ」


 アルタイルがそう言い、急に一回転してガイアだけを空から落とした、ステラとアルナイルの足をしっかりと大きな羽が絡みとり掴んでいたのだ。


「なっ!

マジかよっ‼︎‼︎」


 ガイアが叫んだとき、その真下には陸の上なのに巨大なタコが居た……。



(なんでいんだよ……)



 ガイアは心からそう思い、呆然としながら落ちて行った。


「頑張って

岩だけで倒してねぇぇぇっ‼︎」


 アルタイルが叫びガイアに注文をつけた、ガイアは火も使えるがそれじゃ簡単に倒してしまうからだ。



 これはあくまでも特訓であった。



「ふざけんじゃねぇっ‼︎‼︎」



 ガイアが叫びその巨大なタコはガイアに気付いた、四本の足を伸ばしガイアを捕まえようとしたが、ガイアは素早く一本目の足を蹴り二本目のタコの足に乗った瞬間思いきっり滑ってタコの頭に落ちた。



「クッセェェェェッ‼︎‼︎」



 タコだけに生臭かったのだろうガイアの叫びが聞こえてきた。



「絶対に

あんなのと戦いたくないわ……」



ステラがアルタイルの背中の上で呟いた。


「大丈夫ですっ!

そのために

ガイアさんが居るんですっ‼︎」


アルナイルが言う。



(そうじゃないと思うんですけど……

ガイアくんって……

どんな戦いしてきたの……)


アルタイルは色んな意味でそう思っていた。


「このやろぉぉぉぉぉぉっ‼︎

覚えてやがれ‼︎‼︎」


 ガイアが叫び走っている、既に負け犬の遠吠えに聞こえるが、ガイアはどうやって倒すかを必死になって考えていた。



 タコなのに凄まじい速さで陸上を走り、追いかけて来る上に常時四本の足でガイアを捕まえようと襲って来る、ガイアはそれを走りながら、アクロバットな動きで躱して行く。



(流石だね

大地に愛されてる恩恵はでかいね


大地が動きを教えてくれてる

後ろを見なくても

大地が見た動きを見てるんだね)


アルタイルはガイアの動きを見て、それを分析していた。


(ガイアくんは

地上戦で最強の星だよ

はやくそれを

理解してくれないかな?)


アルタイルはそう思い微笑んで見ていた。



 ガイアは不意に走り抜けた背後に、巨大な岩の壁を出現させ、足止めしようとしたがその壁は一瞬でタコの前足で砕かれた。


 その光景をあり得ないと思いながらステラとアルナイルは見ていたが、ガイアはそこに居なかった、その先にまた壁があり巨大なタコはその壁も破壊しまた壁があり、ガイアは少しづつその壁を広くしていた。



「クッソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」



 そしていつもの様に死に物狂いで走っているガイアがいた。



「がんばれーっ‼︎」



 空の上には大鷲になったアルタイルの背中に、いつもの応援団の様にステラとアルナイルが乗り声を掛けて応援している。



(くそがっ

あのアルタイルのやつ

あんなことを言いやがってっ‼︎

マジぶん殴ってやるっ‼︎‼︎)


 ガイアは必死になり走り続け、円を描いていた、タコは少しづつガイアとの距離が広がりガイアを完全に見失った。


 ガイアは壁を作り続け、壁に隠れながら迷路の様な空間を地上に作り上げて行く。


(う~ん

まだまだだけど

一応地形生成だね……


さてその地形でどうするのかな?)


 アルタイルは上空からガイアを見つめていた。



(くっそが

剣に頼らないってことは

岩で剣や槍を

作れねぇってことじゃねぇかっ‼︎‼︎


あんなもん殴っても意味がねぇ!

どうしろってんだよ‼︎‼︎)


 ガイアがそう考えてる間に、巨大なタコはガイアを探している、どう進化したのかガイアがどっちに居るのか解ってるように追って来ている。



「あれを潰す?

いやっあの馬鹿力を

潰すだけのでけぇ岩を作るには

時間がかかりすぎるっ‼︎‼︎


魔力を込めてる間に食われるっ‼︎


まてよ……」


ガイアが何かに気付いたようだった。



「あるもん使えばいいじゃねぇかっ‼︎‼︎」



ガイアが叫び手を空に向けた。



 アルタイルはその叫びと、ガイアが手を空に向けたのに不思議に思って、アルタイルが飛んでいる空から更に上を見て驚いた。



 空から岩が降って来る……。



 ガイアは星海に漂っている岩を呼び寄せたのだ、それは隕石である。



「えっ……」


 それを見たステラとアルナイルは、目が点になって小さな声をこぼした。



 ガイアは走りながら、タコの周りを岩の壁で覆って行く、アルタイルは目を疑っていた、大地を愛しているガイアが大地を傷つけるような事を、するはずが無いと思っていたからだ、だがそんなことを考えてる暇は無い。


 すぐにアルタイルはその場を離れるように加速して飛んだ。



「そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎‼︎」


 アルタイルは叫んだ、本気で叫んだ、半泣きで叫んでいた。

 アルナイルは星海人で星海に逃げても問題ないがステラは人間である、相当高等な魔法を使わなければ星海で生きていられない。


 ステラはアル・ムーリフである、アルタイルの主人である、全力で守らないといけない、今までアルタイルが経験したことの無いミッションが、いきなりアルタイルに襲いかかったような感覚に陥っていた。



(大きな隕石は

星の環境も変えるのよっ!


それ以前に爆風に巻き込まれたら

ステラ様が即死するじゃないっ‼︎‼︎

何考えてるのよっ‼︎‼︎


アル・スハイルでも

そんな滅ぼし方しな……


まって……

アル・スハイルはあんな岩を操れない

ガイアは操れるとしたら)


 アルタイルはそう思い、速度を落としてゆっくりと旋回して隕石を見た。


 その隕石は成層圏でだいぶ焼き尽くされていた、普通より早いペースで焼き尽くされアルタイルが想像したより、小さくなっていた。



「なにビビってんだよ……」



 ガイアがそう呟いたとき、その隕石は巨大なタコに直撃した、凄まじい衝撃が巨大なタコを切り裂き同時に隕石の熱で、その体を焼き尽くすが、爆風はそうでも無かった。


 巨大なタコの内部で隕石をガイアは破壊した瞬間、更にその周辺を一瞬で砂漠のような砂地変化させ衝撃を大地に吸収させた。



 ガイアが作り上げた岩の迷路が吹き飛ばされたが、その程度で済んだのだ、その爆風に巻き込まれたガイアが草原に仰向けになって空を見上げて倒れていた。



「もう二度とやらねぇ……」



 ガイアは星海の岩を二度と使わないと、そう心に決めていた、自分も吹っ飛ばされぼろぼろになっていたが、事故物件に鍛えられた成果だろうか気を失う事もなく耐え抜いてそう呟いていた。



「ガイアくん

本当に……

なにを考えてるのですか?


あんな事して本当に

死ぬかと思いましたよ」


 帰りの空で、アルタイルがガイアを背中に乗せて聞いていた。


「仕方ねぇだろっ

テメェが岩だけで戦えって言うから

あるもん使っただけじゃねぇかっ‼︎‼︎」


 ガイアが文句を言った。



「にしてもね……

メテオなんて高等魔法を

使うなんて思って無かったんですよっ


解りますか?


太古の昔この星に

おっきな隕石が落ちて

沢山の生き物が死んだんですよっ!


もしあれがメテオじゃなかったら

この星の危機だったんですよ?」


 アルタイルがその昔、苦戦した星での戦いを思い出していた、ガイアが落としたあの隕石はその星の者達が使った魔法によく似ていた。


「メテオ?

なんだそれ……

俺は魔法なんて使ってないぜ」


ガイアは言った。


「え……」


今の話を聞いていたステラが声を漏らす。


「俺はあの辺にあった

柔らかそうな岩を選んで

使っただけだぜ」


ガイアは平然と空を指差して言った。



 つまり魔法ではなく純粋な隕石だったのだ。


「…………」


 アルタイルは空を飛んだまま沈黙していた。




 その日屋敷に帰り、ステラは夕食後にガイア達と今日のことを話して、皆んなが寝静まった頃、一人で地下の神殿書庫に向かった、あの扉のが気になったのだ、もう一度よく見ようと思い何度も足を運んでいたが、その夜は違った。


「フランシスの守りには

アルタイル様の力がいる……


調査団にアルナイル様を含めて

アルタイル様は此方に残ってもらうのが

妥当だと思うけど……」


ユーファが精霊陣の前でそう言っていた。


「でもアルタイル様は

アルナイル様のご友人……

アルナイル様がこちらを離れれば

アルタイル様も

ご一緒に行かれてしまうのでは?」


エントリアがそう言っていた。


 ステラはそっと気配を消して、その話を聞いていた。



「確かにそうですが



ステラ様と



フランシスの街を守るためには

アルタイル様に残って貰うのが

最良だと思うのは私だけですか?」


 ユーファが言った、それを聞いたステラは気配を消したままその場を去った。





 ステラは悲しくなっていた、涙が溢れそうになりながらも地下から一階に上がってすぐに走り出して、自分の部屋に戻って扉に鍵をかけて涙を流した。


 声に出して泣きそうになっていた、セプテント家の一人娘であり、フランシスからそう簡単に出る訳にはいかない、それは解っていた、そしてユーファ達が話していたのは恐らく北域地域にある、セプテント家の地下にある神殿書庫に似た遺跡の調査の話しに違いなかった。


 ステラは自分の家に、ガイアへの想いが引き裂かれてしまう気がした。


 とてつもない不安がステラを襲った。


 ステラは扉に寄りかかり涙を流していた、悲しみが溢れ寂しさで心が溢れ、また街の人々が自分を権力としか見ない、人として一人の女の子として見てくれない……。


 そんな日々に戻ってしまうのかと、とてつも無い不安と寂しさに駆られていた。




(ねぇあなたは

なんで旅に出たの?)




 ステラの頭にその言葉が響いた、その言葉をとてつもなく昔に、とてもとても愛した人に言った気がした、それは過去と言うには遠過ぎる今の自分が生まれる前に言った気がしていた。


 そしてステラは呟いた。



「ねぇ……

あなたは……


なんで旅に出たの?


ねぇ……

あなたは……

私をつれてってくれないの?」



 ステラが部屋の扉を背に、膝を抱えながら涙を流して呟いた。




「ついてくんなら……

どこまでもつれてってやる……」




 ガイアの声が扉の向こうから聞こえてきた、ガイアはステラの部屋の扉に寄りかかりながら静かにそう言っていた。


 ステラはその言葉を聞いて動けなかった、ただ顔をあげて窓の外を見ていた。


 ステラの心にはただ光が刺していた、暗いステラの部屋から月明かりが差し込んで、外の夜空に美しく星々が輝いているのが見える、ステラの部屋はまるでステラの心の様に暗い、だが窓の外には美しい夜空が広がっていた。


 ガイアの頭にも響いていたのだ、ステラの心に響いた言葉が、ガイアの頭にも響いていたのだ。




 扉一枚隔てたその向こうにガイアが居る、だがステラはその扉を開けられなかった……。

 たった一枚の木の板と言える扉の向こうに、ガイアが居るがステラには開けられなかった、それがステラの居るセプテント家と言う暗い部屋であった。


 そして扉の向こうからガイアが立ち去る足音がした、静かに静かに廊下に響いていた。



 ステラは呆然としていた。



(わたしは……


わたしは……)


 ステラはそう心で深く深く呟いた、決して地位や名誉で開けられなかったのでは無い、多くの責任と言うものがステラにのしかかっていた、クラスト村のことも復興しなければならない、そしてこのフランシスを守らなければならない。

 ユーファの言っていたことは全て間違っていない、ステラはフランシスを飛び出す訳には行かなかった、だが……。



(ねぇあなたは

どおして旅に出たの?)



 アルナイルが言った言葉がステラの頭に響いた。



(ねぇあなたは

どうして旅に出たの?



そう聞かれた時に

言えばいいじゃないですかっ!


大好きな人を追いかけて

旅に出たって!

愛する人を追いかけて

旅に出たって‼︎


言えばいいじゃないですかっ‼︎

それ以上の答えってあるんですかっ!)


 ステラの脳裏に一生懸命に訴えてくれるアルナイルの姿が、鮮明に浮かんだ。


 いま思えばアルナイルが一生懸命に手を引こうとしてくれている、一生懸命に引っ張ってくれようとしているステラはそう思えた。


 外は変わらず美しく星々が瞬いている。


 ステラは静かに立ち上がり、窓へと近づき静かに窓を開けて言った。


「アルタイルさん

いるんでしょ?

話があります」



 するとステラの部屋の上の屋根にいたアルタイルが美しい金色の翼を羽ばたかせ、ステラのいる窓の前に美しく現れた。



「ステラ様わたしに何か?」



 アルタイルが月明かりに照らされ、その金色の翼がまるで天使の様に美しく見えた。



「一つ頼みがあります……

聞いてくれますか?」



 ステラが真剣な目つきで言った。



「なんなりと……」



 アルタイルはステラに美しく礼をとり、そう言ってくれた。




 翌日……。



 ステラはガイアがギルドに行ってる間に、自分の仕事をしていたが、机の上にある呼び鈴を鳴らした。



「ステラ様

お呼びですか?」


 ユーファがステラの執務室に来た。


「ユーファさん

最近また隠し事をしていませんか?」


 ステラが聞いた。


「いえ……

ステラ様になにも

隠すことはありません」


ユーファは自然と答える。



「それならいいですが

クラスト村の件

なぜ私に黙っていたのですか?」


ステラは領主の娘として聞いていた。


「……」


ユーファは口を閉ざした。



「話しなさい

それでも当家のメイドですか?」



ステラはユーファに問い詰めようとした。



「ステラ様には

戦はまだ早すぎます

街を魔物から守るのとは

訳が違います


これは師として言っていますので

お許しください」


ユーファはそう言った。



「悪いけど

それは許せないわ


師?なによそれ

あの時までなにも私に知らせないで


気付いた時に

村が一つなくなりましたなんて

笑えないのよ


いい?私はセプテント家の一人娘として

知らなかったなんて

許されないの……


私はクラスト村の生き残った人達に

なんて言えばいいのよ……

どんな顔して会えばいいのよ……」



 ステラがそう言い、涙を目に溜めて言っていた、あの帰り道、あの子供達に出会った、その後あの子供達は両親と再会出来た知らせをステラは聞いてほっとしていたが、クラスト村は村の再興も難しいほど人口を失ってしまった、だが村の人々は諦めずにそこに住む事を望んでいる知らせが届いていた。



 ステラはその知らせを聞いて、胸を痛めていたのだ。


 アル・ムーリフも星海では、故郷のアトリアロフの街を守るために尽力していた、そのせいもあって村一つでも守れなかった事がステラは悔しかった。



「それは……」


 ユーファはステラがそこまで胸を痛めたことに気が回っていなかった。


「ユーファさんが

私の未熟を知って

伝えなかったのは解ります


でもっ!


それでも知らせて下さいっ‼︎

私はステラ・セプテント

いつかこのセプテント家を

継ぐ者なんです!」



 ステラは精一杯にそれを伝えた。


 最近ガイアの前で見せてはいなかった、セプテント家の一人娘の姿が現れ始めていた。



「サラス様はいま

王都にクラスト村の件を

報告に行かれました……


テナー領に資材交渉に行かれたとのことは

偽りでございます

私の計らいでそう偽ったこと

お詫び申し上げます……」


 ユーファがそう話し始めた、ステラはユーファが思うより自分の立場と言うものを自覚していたのを気付いていた。


「現在私達は

北域地域に秘密裏に

調査団を派遣しようと

検討しています


他国領内になりますので

慎重に検討しています

ただ……」


ユーファがそこまで言い少し考えていた。


「ただ?」


ステラが聞いた。


「調査団にはアルナイル様の同行が

不可欠かと思います

そこでガイア様とアルナイル様に

同行して頂こうと考えています」


ユーファが言いづらそうに言った。


「私は?」


ステラが聞いた。


「ステラ様はセプテント家の

大切な御令嬢……

行かせる訳には参りません」


ユーファがそう言いづらそうに言った。



「……」


 ステラは沈黙してしまう、ただでさえ旅に出ることに問題がある、確かに隣国はリオー国と友好かと言えば疑問しか残らない、そこにリオー国で最有力のセプテント家の一人娘が行く、不安しか残らなかった。


「ただ……」


ユーファが呟く。


「ただ?」


ステラが小声で言う。



「アルタイル様が

このフランシスに残って頂けなければ

この調査団の派遣は行いません


フランシスに何かあった時を考え

アルタイル様に滞在して貰わなければ

ガイア様とアルナイル様を

向かわせる訳にはいきませんので」


ユーファがそうステラに伝えた。



「解りました

今後はその様なことも

話して下さい


私ももう子供ではありません……

良い方法を考えますので

お願いしますね」


ステラは静かにそう言う。


「かしこまりました

今後はその様に致しますね

ステラ様」


ユーファは丁寧にお辞儀をして言った。


「はい

宜しくお願いしますね


もう下がってよいです」


 ステラは優しく微笑みユーファにそう言うと、ユーファは静かに部屋を後にした。




 ステラは立ち上がり、自分の剣を取り窓を開けて、静かに深呼吸をした、それはこのステラの部屋にいっときの別れを告げる様に、そして息を整えたあと、全力でその窓からステラは屋敷の外に飛び出した。


 まるでセプテント家の戒めを、過去の自分を引き裂く様にステラは飛び出したのだ。



 庭に着地しステラは全力で走り出した。



「ステラ様っ‼︎」


 庭を手入れしていたメイド達がステラに気付いてステラを呼び止めるが、ステラはそれを無視して走り抜けようとする。


 メイド達はステラを止めようと精霊の力を使い、広い庭から出さない様に阻もうとした、それは敵意では無い、今までステラがその様な行動を取ったことがない、その上にアル・スハイルがセプテント領にいるかも知れない、そんな中でステラを守ろうとしてのことだった。



 ステラは走り抜け、漆黒の剣を持つシャドウにサーベルを向け、そして斬りかかったがシャドウはそれを剣で受け止めたが、ステラは素早くシャドウの腹部に強烈な蹴りを入れて蹴り飛ばした。



「ごめんっ!行かせてっ‼︎」


 ステラがシャドウに叫び、そのまま走り抜けようとした時、ステラを狙う突風が襲って来たがステラはそれを高く飛び躱した。


 ユーファが来たのだ。


「ステラ様っ‼︎

なぜこの様なことをっ‼︎‼︎」


ユーファが叫ぶがステラは答えなかった。



「もうっ!迷わないっ‼︎‼︎」


 ステラはそう叫び飛びかかってきたユーファにサーベルを振り、真空の刃を放った。


 ユーファはそれを鮮やかに躱し、落下するステラを捕らえようとした、精霊達を率いるセプテント家の壁が分厚くステラに襲いかるステラはそれを感じていた。


 ステラは素早く胸元から金色の羽を一枚取り出し、ユーファに目掛けて投げつけた。


 それはアルタイルの羽だった、その一枚の羽はまるでアルタイルが投げた様に、ユーファを襲った。




 昨夜……。



「それは解りました……

でもユーファから逃げられるの?」


 アルタイルがステラの部屋でステラの話を聞いて、そう言った。


 アルタイルの金色の翼が、まるでステラに希望を与える様にステラの暗い部屋を照らしている。



「逃げられるかなんて

やってみないと解りません


わたしは

ガイアから離れたくないんです


セプテント家の娘かも知れない

でも……」


ステラが静かにそう言った。



「でも?」


アルタイルが聞く。



「大切な人を……

愛してる人を追いかけたって

いいじゃないですかっ‼︎


セプテント家もいらない

地位も財産もいらない

名誉なんかも何もいらないっ‼︎‼︎


だからっ!

力を貸して下さいっ‼︎

お願いします!」


ステラがアルタイルに頼んでいた。


「……」


 アルタイルは少し考えていた、これはアル・ムーリフらしくない言葉で、そんな考えのアル・ムーリフを見たことが無かったのだ、今はステラとして生きていることに考えなおしてやっとアルタイルは気付いた。


 これがアル・ムーリフが本気で誰かを愛した時の姿なのでは?と……。



「仕方ないね

引き受けてあげる


でもちゃんとセプテント家に

帰ってくるんだよ


それは約束してね


今まで縛られてたんだし

反抗期ってやつかな?


それはいっときかも知れない

帰って来る家はここなんだから

忘れないでね」


アルタイルが優しく言ってくれた。





 そしてステラが放ったアルタイルの羽は、凄まじい速さで、ユーファ目掛けて襲いかかり、ユーファはそれを剣で弾こうと全力で振った。





(ユーファさんにはこれを使いな)


アルタイルが美しい羽を一本抜き、ステラに手渡した。


(これは?)


ステラが聞いた。


(いいからっ

気持ちをいっぱい込めて

投げるんだよ)


アルタイルが優しい笑顔で明るく言ってくれていた。

 ステラは昨夜のことを思い出していた。



 ステラが放ったアルタイルの羽をユーファの剣が弾こうと当たった時、その羽はユーファの剣を鮮やかに折った。


 ユーファは目を疑った、今までユーファの剣が折られたことが無かったのだ。



「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ‼︎‼︎」


 ステラが気力を振り絞り、ユーファの真上からそのまま斬りかかる。


 ステラは今までの苦しさを剣に乗せていた、それを全てユーファに知って欲しくて、そしてこれからの希望も剣に乗せすれ違い様にサーベルを振り抜いた。


 ユーファは体を風に変えそれを避けようとしたが、ステラの剣はユーファの風を斬り裂いた。


 ステラは着地しまた走り出した、ユーファは地上に姿を表したが、ステラを追おうとしなかった。



「ステラ様

申し訳ありません……」



 ユーファは静かに呟いていた、ユーファは傷を負わなかったがステラの苦しみをその剣から感じたのだ。



「ステラッ

早く来いよっ‼︎」


 その時、ガイアが馬車を走らせアルナイルと一緒に屋敷の前について叫んだ。

 ガイアはアルナイルとギルドに行っていなかったのだ、アルタイルに話を聞いて朝早くから旅の準備していたのだ。



「ガイア様っ!

アルナイル様もっ‼︎‼︎」


 エントリアが叫び他の精霊達が、ステラを取り押さえようと一斉に飛びかかった、ユーファとの一戦で、既に精霊達はステラを包囲していた。


 だがステラは走り抜けようとしていた。


 振り向くことなく未来へと走り抜けようとしているようであった。



(ステラ様……

行かせるわけには……


申し訳ありませんっ!)


 ユーファが手をあげ叫ぼうとした時、大量の金色の羽が精霊達を遮った。



「間に合ったねっ!」


 アルタイルが元気に言い空から勢いよく、地上に降りてきてエストックを抜いた。


 アルタイルの出現に精霊達は動きを止めた、アルタイルの行動からステラに手を貸しているのが解る、アルタイルは精霊達ではどうにもならない相手である。




「最初はさ

わたしも話し合う様に言ったんだよ?


でもステラ様は

絶対に話を聞いてくれないって

言うからこうしたのさ」


 アルタイルがあいだに入り話し始めた、ステラはガイア達の馬車に乗って、様子を見守る。



「力で押さえつければ

より強い力が敵になるもんなんだよ


それは星海でも同じなんだ

ユーファさんなら解るよね?」


 アルタイルがそう言ってる間に、街の人々が屋敷の周りに集まって来ていた。



「ステラッ

頑張って来なよっ‼︎」


鍛冶屋の主人がそうステラに叫んだ。



「ステラ様っ

留守は私達にお任せ下さいっ‼︎

良い旅をっ!」


ステラの部下の衛兵達がそう言ってくれた。



「ガイアッ!

ステラ様に怪我でもさせたら

許さねぇからなっ」


ステラファンの様な冒険者がガイアに叫んだ。



 アルタイルは街中を飛び回り、街の人々に声をかけていたのだ。

 そしてステラを見送る様に沢山の人々が、屋敷に集まった。



 ステラは感じていた、セプテント家としてこの街を守り続けていた、そのステラの行為を街の人々が見てくれていた。


 ステラを多くの人々が権力として見ていたのではない、ステラのそう言った行いの積み重ねで人々はステラに感謝し敬意を払ってくれていたのだ。


 全ての人がそうではないかも知れない、だが多くの人がステラを大切にしてくれていたことに気づいて、ステラが大きな誤解をしていたことに気付かされた。

 


「みんな……」



 ステラはその街の人々を見て呟いた。



「ユーファさん

これでもステラ様を

引き止めますか?」


アルタイルは微笑んで言った。



「みんな並びなさい」


 ユーファが静かに言い、精霊達は静かに門に向かって綺麗にならんだ。



「ユーファ……」


 ステラが静かに言う。



「ステラ様


かならずお帰り下さい


わたくし達は

ステラ様の街をお守りして

お待ちしております」


ユーファは静かにそう言って微笑んだ。



「ステラどうする?」



 ガイアが優しく聞いた、それは街の人々へのステラ誤解が解け、そしてユーファがステラを理解してくれた、そう感じてステラに聞いたのだ。



「ガイア……


どこまでもつれてってよ」



 ステラは明るく言った、まるで新しい世界に飛び出すかのように、それでいて胸の中ではかならず帰って来ると誓っていた。



 ガイアはそれを聞いて微笑んで馬車を走らせた、そして精霊達が美しくメイドとして礼を取り、街の人々から歓声が上がり、ガイア達の馬車を暖かく見送ってくれていた。



 ねぇあなたはなんで旅に出たの?ねぇあたなはどおして旅に出たの?。



 その二つの言葉が旅立つステラの胸の中に、はっきりと響いていた。

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