第一章 第9話 ハダルの力
「200か……」
サルガスがセプテント領の西、クラスト村より西にある丘で魔物達を見渡し言った。
「サルガス様
申し訳ありません……
精霊どもに邪魔されてしまい」
エルナトが膝をつきそう言っていた、エルナトは精霊達の妨害に遭ってフランシスに直接魔物達を降下させることが出来なかったのだ。
「構わん……
よく無事に来てくれた
エルナトお前は
アル・スハイル様のもとに行け……」
サルガスがエルナトに言った。
「なっ‼︎
それではサルガス様はっ!」
エルナトが言う。
「エルナト
俺はこの星を甘く見ていた
アル・スハイル様に選ばれ
その手に変わる
手星がこの星に俺しか居ない
アル・スハイル様のそばに
いま誰もいないのだ……
この星の精霊が厄介なら
お前がアル・スハイル様の側にいろ」
サルガスが遠い空を見て言うと、エルナトは姿を消した。
「さて……
我が星の者どもよ……
まずはあの小さな村を
前菜として頂こうか……」
サルガスがそう言うと、クラスト村に魔物達は向かって行った。
クラスト村は直ぐに多くの先史の魔物に襲われ、衛兵達が村人を逃そうとするが、とてもじゃ無いが精霊が相手するべき、先史の魔物を倒す事など出来なければ、逃すことも出来ないでいた。
その知らせは西部砦にすぐに届き、西部砦からフランシスに精霊が飛んだ。
西部砦から兵が放たれ、クラスト村に向かうが兵達は僅かに逃げ延びた村人を助け隊を分けて西部砦に向かわせ、残る本隊がクラスト村に向かったが既に壊滅していた、魔物達が兵達を襲いはじめた。
やはり魔物には刃が立たずどうしようもなかった、兵達が以前見た巻物、この星が飲み込まれそうになった時を思い出し、逃げ出す者も現れたが、一頭の巨大なサソリが風の刃が切り刻まれた。
「何をしているのです‼︎
隊列を組み砦に退きなさいっ‼︎」
風の精霊シルフィがガイアの家から素早く駆けつけたのだ。
ユーファ達はフランシスから動けなかったのだ、ユーファを貫いた者を警戒しなければならないアル・スハイルの存在がここでも、大きくなっていた。
「ガイアッ急ぐわよっ」
ステラがガイアに言った、精霊の話を聞いてシルフィが飛び出し、ステラはこの数日で何が起こっていたのかをやっと知ったのだ。
全てユーファの指示で内密に進められていて、ステラ達には一切知らされず、隠されていたのだ。
「ったく……
あのガキ達は無事なのかっ‼︎」
ガイアもあの砦でステラとアルナイルに、花をくれた二人の子供を思い出して叫んだ、すでにその話で全身の筋肉痛が吹っ飛び、エントリアもシャドウも急いで家から飛び出そうとした時、アルナイルが大きな声で言った。
「待って!
今から行ってもクラスト村には
間に合わないよ‼︎
3日もかかるんだよっ!」
「だからって
ほっとけねぇだろ‼︎」
ガイアが叫び返した。
「私達はすぐに行きます
少しでも速く助けに行かないとっ‼︎」
エントリアが言った。
「だから
私が行くっ‼︎
私だけならっすぐに行けるからっ‼︎
みんなセプテント家に行って‼︎」
アルナイルが言った。
「セプテント家……
って精霊達っ‼︎」
ステラが気付いた、セプテント家の地下にある精霊術の魔法陣、それを使えば大勢を遠くに移動させたり、他の場所で同じ魔法陣を使えば大勢の人を移動させる事が出来る。
セプテント家が繁栄した秘密の一つである、だがそれをアルナイルが知ってるはずがなかった。
「つかちょっと待てっ‼︎
セプテント家の精霊を
信じていいのかよっ!
こんなことを黙ってたんだぜっ‼︎」
ガイアが思ったことを言い、アルナイルはその言葉に胸を痛める、それは自分が星海人であることを秘密にし続けている、大切な事だがアルナイルは秘密にしていた。
「ガイアさんっ!
大切なことって
秘密にしちゃいけないんですかっ⁉︎
人には言えないことだって
あるんですっ‼︎
それが誰かを護ろうとして
言わないことだってあるんです‼︎
それくらい解って下さい‼︎
考えて下さいっ‼︎」
アルナイルが珍しく叫ぶ様に言った。
ステラはそれを聞いてユーファが、なぜそうしたのか考えた、簡単な答えだった。
相手が相手で人間のステラが太刀打ち出来ない、ステラも屋敷のメイド達が力の強い精霊達である事には気付いていた。
人に知れれば様々な混乱が生まれるかも知れない、そして要らぬ被害が出るかも知れないユーファは隊長としての心得もステラに教えてくれていた、今までユーファがステラに教えてくれた事の様々なことが当てはまって行くが、ステラは逆にユーファに怒りたくなった。
「アルナイル……」
ガイアが珍しく怒ったアルナイルを心配した時、アルナイルは言った。
「いいから……
みんなセプテント家に行って下さい
間に合わなくなっちゃいます……」
アルナイルがそう言った時、アルナイルの全身が光り輝いた、そしてアルナイルの背後に輝きの星が現れた。
「あの時の星海人……」
エントリアが呟く様に言った。
「えっ……
アルナイルがっ!」
ステラが驚いていた。
「私にだって秘密はあるんです……
内緒にしてたことがあるんですっ‼︎‼︎」
アルナイルがそう叫び唱え始めた。
「全てを照らし
全てに温もりを与える
大いなる光よ……
わたくしの力となり
わたくしを導きなさい」
そう唱えるアルナイルの瞳から一雫の涙が流れていた、ガイアはその涙を見て自分が言った言葉がアルナイルを傷つけてしまった事に気付いた。
「我輝く者の一星
アルナイル……」
アルナイルがそう呟いた時、アルナイルの輝きの星がアルナイルを一瞬で包んだ、ガイアはそのアルナイルを抱きしめようとしたが、既にアルナイルは居なかった。
「エントリア……
あの時の星海人ってどう言うこと……」
ステラが静かに俯いて聞いていた。
エントリアは隠さずに昨日の出来事を話してくれた。
「そうだったのね……
アルナイルは…私達を……」
ステラはそう呟いた。
(アルナイル……
お前…なんで隠してたんだよ……
仲間じゃねぇか
家族みたいなもんじゃねぇかっ‼︎‼︎)
ガイアは傷つけてしまったことと、話してくれなかったことにな涙を流していた。
「ガイアッ
セプテント家に行くわよっ‼︎」
ステラが言った。
「あぁ……
アルナイルに言いてぇことがあるっ!」
ガイアが言った。
「奇遇ですね
私達もアルナイル様に
言いたいことがあります」
エントリアが言った。
「ひどい…こんなに……」
アルナイルは一瞬でクラスト村に着いていたが、衝撃を受けていた……。
多くの村人が殺されてしまっていた、200体を超える、サルガスのサソリが街を埋め尽くし、村人の死体を貪っている。
「大いなる光よ
その光に熱をっ‼︎
灼熱の大光となり焼き尽くさんっ‼︎」
アルナイルが叫び、慣れない攻撃の光を放ち、そのサソリ達をその光線で貫き焼き払って行く。
「なんてことをっ‼︎
なんでことをっ‼︎‼︎‼︎」
アルナイルは感情がたかぶり無我夢中で光を放ち続けた、アルナイルは星海にいた時、ハダルがいつも戦っていた、アルナイルは後方で強力な光を放ち、ハダルの大地の力を輝かせていた。
星を助けに行くときも、ハダルが大地に降りて戦っていた、ハダルが戦場をアルナイルに見せたくなかったのだ、アルナイルはその訳を痛いほど気付かされた。
そうしてる時に、凄まじい勢いでアルナイルを鞭が襲った、アルナイルは一瞬で飛ばされ村の家に叩きつけられた。
「まさかお前が来るとはな……」
サルガスが歩きながらそう言い、アルナイルの前に現れた。
「あなたが
こんな酷いことを……」
アルナイルがスッと立ち上がる、さほどダメージは受けてない様だった、そして子供の様な姿から美しい大人へと変貌して行く。
(なるほど
光体となれるのか……
アル・スハイル様が
手星に加えたいと
以前言っていたのはこれか……)
サルガスがそれに気付いた、アルナイルの星は実体が不明なのだ、ただの光の固まりの星でコアがなんなのか解らないのだ。
そしてガス惑星を星として持つ者は体をガスに変換する者も中には居る、アルナイルはそれと同じで体を光に変換することが出来るのだ、そしてその能力は非常に珍しいものだった。
(まぁ……
様子を見るか……)
サルガスはそう思い、鞭で攻撃を仕掛けたアルナイルは光を放ち、その光に沿って同じ速度で移動して躱した。
サルガスは連続で鞭を振るが、光の速さに追いつくはずがない、アルナイルは光を放ちサルガスを照らすとその光線がサルガスの鎧を焼いた。
アルナイルは光の能力がいかに強力かを知っていたが、慎重に攻めようとしていたそれはサルガスが星を使わないからだ。
(なにかしら
鞭しか使わない……
確かに星を使わない星海人より
この鞭は重い……
でも……
アル・スハイルの手星の一人なら
こんなものじゃないはず……)
アルナイルがそう考えていた時、凄まじい鞭が大地から伸びアルナイルの足を捕らえた瞬間、全身を痺れが襲った。
(これは
うそ……体が光にならないっ‼︎)
アルナイルがそう思い、焦ってサルガスを見た時、サルガスの背後に赤く衛星を一つ従えた星が現れていた。
「我蠍の尾の一星
サルガス……
星の毒よ…心を蝕め……」
そう呟いた時、サルガスの星が怪しい真っ青な光を放ち始めた、その光に当てられたアルナイルは幻を見始めていた。
ガイアの家でアルナイルは目覚めたが、アルナイルの部屋にステラが冷たい顔で見つめていた。
「あれっ‼︎
クラストの村は?
サルガスは⁈
星海人はどうしたのっ‼︎‼︎」
アルナイルが慌ててステラに聞いた。
「アルナイル
あなたが星海人でしょ
何言ってるのよ……
解ってるの?
星海人は敵なの
あなたはこの星の敵なのよ
よくも私を騙してくれたわねっ‼︎‼︎」
ステラがアルナイルにそう叫んだ、あまりの急なことでアルナイルは混乱してしまって、大切なことを忘れてしまった。
そして重い衝撃が走ったと思った時、ガイアに殴られそして次の衝撃で蹴り飛ばされていた。
「ちっ!
だから秘密にしてたんだな……
言える訳ねぇよなぁっ‼︎‼︎」
ガイアにそう言われるがアルナイルは言った。
「違うよっ!
わたしはそんなっ
わたしは敵じゃないよ!」
「じゃぁ
なんで言えねぇんだよ!
なんで隠してたんだよ‼︎」
ガイアの叫びは先程のアルナイルの心の傷を、広げていってしまう。
「どうせてめぇら星海人は
俺らを餌にしか
思ってねぇんだろうがっ‼︎」
ガイアの言葉はアルナイルが隠していた理由に触れていた、かつて星海人がこの星を滅ぼそうとしたこと、アルナイルは地上に降りる前にそれを調べて隠していた。
「ガッカリだぜ……
仲間だと思ってたのに」
そうガイアの幻が言いアルナイルの顔を殴り飛ばした、アルナイルは涙が溢れ、もうどうしていいのか解らなかった。
「ふっ…意外と脆かったな……」
サルガスがアルナイルを殴り飛ばしていた、アルナイルが受けている衝撃は全てサルガスがなぶっていたのだ。
「さて……
終わりにするか……」
サルガスが言った時、アルナイルは幻の中でステラに言われた。
「あなたがそんなに卑怯だとは
思わなかったわ……
星海人だったなんて……
消えてくれない?」
「……っ!」
アルナイルは驚いた、そして幻を疑った。
「違うっ!
ステラさんは……
アル・ムーリフさんは
私に……言ってくれました……
(これは妾と
そちの勝負じゃ……
どうじゃ乗らぬか?)
そう言ってくれましたっ‼︎
誇り高いアル・ムーリフさんが
私にそう言ったことを
忘れるはずがありませんっ‼︎‼︎
あなたは誰ですかっ!
あなたがステラさんなら……」
アルナイルが必死になって言い返している。
(なんだと言うのだ
アル・ムーリフ様が
アルナイルと親しいのかっ⁉︎)
サルガスは戸惑い叫んだ。
「デタラメを言うなっ‼︎」
サルガスが叫びその鞭を振り、アルナイルの首を絞めるように巻き付け、首を絞め始めたがアルナイルは苦しそうに言った。
「ねぇ…あなたは……
どおして旅に出たの
そう……聞かれたら……」
アルナイルが首を押さえ、もがきながらも最後の力を振り絞り叫んだ。
「なんて言うんですかっ⁉︎⁉︎」
アルナイルが叫んだ時、無数の風の刃がサルガスを襲った、サルガスは素早くそれに気づいて躱しアルナイルから距離を取った。
「かかれっ‼︎
アルナイル様を
何としてもお救いせよっ‼︎
シャドウ
エントリアッ
二人はシルフィを探索せよっ‼︎」
ユーファが精霊術を使い精霊達を率いて助けに来てくれたのだ、味方になってくれる星海人を失う訳にはいかない、ステラ達の話を聞いて動いてくれたのだ。
「クッお前達っ
精霊を皆殺しにしろっ‼︎」
サルガスが叫び、魔物達が精霊と戦い始める。
「アルナイルッ!
アルナイルッ‼︎‼︎
大丈夫⁉︎⁉︎」
ステラがアルナイルに走りよって、抱き締めながら叫んでいる。
アルナイルはぼろぼろになっていたが、息はしっかりしている、だが虚な目で涙が止まらない。
「アルナイル様は大丈夫ですかっ」
ユーファが来てアルナイルの様子を見て、すぐに気付いた。
「これは…心の傷……」
ユーファはそう言うとアルナイルの額に口づけをした、するとアルナイルが目を見開いて、咳き込み意識が戻ってステラに直ぐに聞いた。
「ステラさんっ!
ステラさんはなんで旅に出るんですかっ⁉︎」
ステラはいきなりそう聞かれたが、驚きもせずに優しく微笑んで言った。
「大好きな人を
ずっと追いかけるためよ」
それを聞いたアルナイルは嬉しくて、また涙が溢れてきてステラに抱きついた。
その様子を見ていたガイアは微笑んでから、精霊達と戦うサルガスを睨みつけ、歩き出したが、その時ステラが疲れていたのか倒れてしまった。
「ステラ様……
やはりご無理を
なさってたのですね」
ユーファがそう言い、ステラを支えた。
「無理を?」
アルナイルが聞くと、ユーファが優しい顔で教えてくれた。
「ステラ様がセプテント家に
駆け込んで来て
アルナイル様を
精霊術で助けに行くと言われましたが
サラス様が屋敷に居なかったのです
それでステラ様が
精霊術を行ってくださったのです……」
精霊術は魔法と違い精霊自身の意識と、自らの意識を繋げて執り行うのだ、その為に精神負担はとてつも無く大きい。
それを聞いたアルナイルだが、特に心配はしなかった、それはアル・ムーリフの記憶がいるので何かあっても支えてくれるはずだからだ、そう解っていたが何故ステラにはアル・ムーリフの記憶がまるで意識を持つようにいるのかアルナイルは不思議に思えてきた。
「おいっ‼︎テメェェ‼︎‼︎
俺のだいじな仲間に……
なにかましてんだゴラァ‼︎‼︎」
ガイアが叫び、アルナイルの心にもその叫びは届いていた。
(お兄ちゃんだ……
やっぱりわたしのお兄ちゃんだ……)
アルナイルの収まった涙がまた流れ始めていた。
「やっと来たか……」
サルガスが呟き、相手にしていた精霊を鞭で叩き落とし、そのままガイアを襲った。
凄まじい速さの鞭がガイアを襲うが、ガイアはそれを右手で驚くことに素手で掴んだ。
「馬鹿なっ!
岩をも砕く俺の鞭を……」
サルガスがそう言い驚いていると、ガイアの腕が漆黒になっているのに気付いた。
「岩しか砕けねぇのか……
思ったより大したことねぇんだな……
教えてやろうか
鉄はどうやって掘るんだ?」
ガイアはそう言うとステラの剣を抜いて振った、すると真空の斬撃がサルガスの鞭を切り裂いた。
「鉄はな岩に含まれていれば
砂の様な鉄もあるんだが
大概は大地に埋まってんだ……
大地を操る俺が
鉄を集められない訳ねぇだろ……」
そう言った直後、凄まじい速さで走りサルガスに鋼鉄と化した拳で殴り飛ばした、サルガスは体勢を立て直して着地したが、更にもう一発、鋼鉄の拳でボディブローを入れる。
(ばかな
違いすぎるっ‼︎‼︎)
サルガスはガイアの変貌に対応しきれなかった。
「わりぃけど
剣は使わねぇよ……
アルナイルのあの傷……
散々殴ったんだろ?
テメェも味わってみろよ
ただ……
俺の拳は鋼だがなっ‼︎‼︎」
ガイアがそう言い、顔面を殴りつけサルガスの顎が砕ける。
「ぐぁぁぁぁぁぁ」
サルガスがアゴを押さえ倒れ込むが、ガイアは容赦なく蹴り飛ばし、巨大なサソリが助けようとしたのか、ガイアに襲いかかったがガイアはそれを紫の剣で斬り裂き、何もなかったかの様に立っている。
「ガイア様…
あれが本当の力……」
ユーファがガイアの力に驚いていた。
「ガイアさんが
本気になってる……」
アルナイルはそう思っていたが、その隣では……。
(さすが妾に相応しいのぉ
そもそもサルガスは気に食わん
存分にやるが良い
だがアルナイルがきっかけとはの……
妾が危なくなっても
覚醒してくれるかのぉ……)
ステラに眠るアル・ムーリフの記憶が、少し悩んでいるのをアルナイルは光を当てて自分だけ見ていた。
(あっ……アル・ムーリフさんが
ピンチになることって
無いと思うのですが……)
アルナイルはそう思っていた、そしてハダルがなぜアル・スハイルに食いつけるか、その強さを知っていた。
ハダルの星、大地の星を持つハダルは大地に存在する、ありとあらゆる物を取り込み増幅する事が出来る、増幅しなくても集めることも出来る、尚且つその下にあるマントルさえ操り、体内でマグマを利用し熱を使い、作った鉄にあらゆる鉱石を化合し合金まで生み出せるのだ。
ハダルからすれば、サルガスの星、蠍の尾の星は子供の様な物なのだ、大地はその蠍すら育むのだから。
「さっき岩をも砕くって
言ってたけどさ……
威張れる程じゃねぇぞマジで……」
ガイアがそう言い片腕で胸ぐらを掴み、また殴ろうとした時、真上から凄まじい速さで黒い槍がガイアに目掛けて投げつけられた。
ガイアはサルガスを離し後ろに避けると、エルナトが素早く降りて来てサルガスを庇う様に二人の間に立ち、槍をガイアに向けた。
「よくもサルガス様をっ‼︎」
エルナトが叫び怒りを込めガイアに襲いかかった、ガイアはエルナトの槍をその鋼鉄の腕で掴み、まるで動じない様に言った。
「お前はなんだ?
そいつの連れか……?」
「黙れっ‼︎」
エルナトが叫び槍に力を込めて振り払おうとした時、ガイアは手を離してそれを躱した。
「星鉄塊の槍か……」
ガイアは自分の鋼鉄の腕が、僅かに斬られている事に気付いた。
「な…ぜ……
アル…ス…ハイル様のもとに
行かなかった……
なぜここにいるっ‼︎」
サルガスが激痛に耐えながら言った。
「余が出向いたからじゃ……」
冷たい声が空に響き渡り、精霊達がアル・スハイルの放つ殺気を感じ鳥肌が立つのを覚えたが、アル・スハイルを見て、それでも武器を構えた。
「余はそち達と争うために
この場に来たのでは無い……
そのエルナトがのぉ
サルガスを助けるようにと
懇願したのでな
それを聞いてやったまでのこと
可愛いと思わぬか?
愛しく支え続けた者を
助けようとする気持ち
そち達なら解ろう?」
アル・スハイルがクラスト村の惨劇には、まったく無関心の様に言っている。
「どうじゃ……
そのサルガスを許せとは言わぬ
ただ見逃してやってくれぬか?
さすれば余も
このまま去ってやろう……
悪い話ではあるまい?」
アル・スハイルが静かにそう言った。
「アル・スハイル様っ‼︎
ですが私はまだ敗れてなどっ‼︎」
サルガスがアル・スハイルに叫ぶ。
(姉上……)
ステラの中でアル・ムーリフが呟く。
(なに……
こいつが全部しくんだの……
でも……
なんで…懐かしい感じがするの……)
ステラがそう感じ自分自身に困惑してしまっていた。




