序章 第1話 ステラ・セプテント
「ねぇあなたは
なんで旅に出たの?」
不意に少年の頭にそんな言葉が聞こえて来た。
「まだ出てねぇよ……」
14才の少年は呟いた、その少年は魔法と剣、共に才能があり小さな村の中で将来を期待されていた。
それから二年が経った。
「何してんだ俺……」
16才になった青年が呟いた、彼はガイアと言い二年前に旅に出ていた、四年前から不意にあの声が頭に響くようになった。
「ねぇあなたは
なんで旅に出たの?」
また聞こえて来た、明るい女の子の声で何故か懐かしい感じがする、ガイアはその声の意味を知りたくて旅に出たのだが、なんの当てもなく、一本のみすぼらしい剣を持ちただ旅をしている。
その剣は完全なる安物である。
「解らねぇよ
お前は誰なんだよ……」
ガイアは呟きながら森を歩いていた、その森を抜ければフランシスと言う街に着く、だが明日になりそうに思えたガイアは、その辺から小枝など、集めて焚き火の用意を始めた。
ガイアは声の正体を知りたくて、そして意味を知りたくて、旅に出ないといけない気がして旅に出たのはいいが、なんの当てもないが南に行くべきだと感じ南に向かっていた。
薪になるものを集めていると、前の茂みで何か光った様な気がした、ガイアは気になってその茂みを調べると、サファイアのように青い石のついたネックレスを見つけ、拾う前にそのネックレスの上で素早く十字を切った。
「まぁ呪われてはいないか
いい値段で売れそうだし
貰っておくか……」
ガイアはそう呟き、それを腰につけた鞄に入れ、また小枝を集めそして適当な場所に置いて魔法を唱えた。
「ファイア……」
簡単な火の魔法を使い焚き火を起こし、カバンからパンを取り出してちぎりながら食べ始めた。
「二年か……
旅を続けて来たけど
何にも解らねぇ……
南に行くべきだと思ったんだけどな
あの声はいったい……」
ガイアはそう呟きながら空を見ていたら、真っ青な流星が流れたが、その後を赤い流星が追ってるように見えた。
「なんだ……あれ……」
ガイアは初めて見た光景を不思議に思い目を凝らしてみると、青い流星の中に人がいる様な気がした。
「オクルス」
ガイアは魔法を唱えると、視力が格段に上がり青い流星を見ると青い髪の人が逃げている様に見え、赤い流星には悪魔の様な姿をした魔物であった。
ガイアは何故か助けないといけない気がして、傍に置いた剣を抜いて、赤い流星に向けた。
(遠い……)
ガイアは距離を把握して唱えた。
「ウインドブレイド!」
その言葉と共に素早く剣を振り、風を巻き起こしその赤い流星目掛けて放った。
その風は一直線に赤い流星に向かい、加速しながら刃の様な形になり、そして更に加速し真空の刃になりその流星の中にいる様な赤い魔物の左足を切り裂いた。
その魔物が空で止まり、風の刃が飛んできた方を見てガイアを探してる様に見えた。
「効いてないのか?
まぁいい……
こっちだぜ」
ガイアはそう呟き、同じ魔法を連続で放った。
その魔物はガイアの位置を把握したのか、風の刃を躱しながら一気に近づいて来た。
「そうそう……
もっと近くに来てくれよな」
そうガイアは言い、焚き火を蹴飛ばし小さな火を撒き散らした、そしての小さな火が強く燃え出した。
みるみる魔物が近づいてくる、ガイアは風の刃を放ち続ける。
「十分だな……」
ガイアは距離が縮まったのを確認して呟き、焚き火の散らばらなかった中心に剣を刺してから、勢い良く魔物目掛けて振り抜き叫んだ。
「燃え尽きろっ‼︎」
次の瞬間凄まじい火柱がガイアの剣から、放たれ一直線にその魔物を直撃した。
「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
その魔物は凄まじい叫び声をあげ、その火柱に飲まれ落下していった。
「終わったかな」
ガイアはそう言い剣を鞘におさめて座り、焚き火を直し始めた、青い流星の方は気づかなかったのか解らないがそのまま行ってしまったので、大丈夫だろうとガイアはそう思っていた。
翌日、ガイアは目を覚ました焚き火は燻っていて煙の匂いが鼻をついた。
「あの魔物結局来なかったな……」
ガイアはそのまま寝た訳ではなく、暫くはあの魔物が襲って来ないか起きていたのだ、でも来ることは無かった。
「さてフランシスに行くか」
ガイアはフランシスに向かった、食べ物もお金もあまり無かった、ギルドに行って何かの依頼を探そうとしていたのだ。
暫く歩いて木がなぎ倒されているのを見つけた、その辺りで10本近くは倒れている、まだ倒された跡は新しくて木の匂いが漂っている。
「……」
ガイアは無言であたりを見回し、何かがこの場を去った跡を見つけた、それはフランシスの方に向かっていた。
「行き先は同じか」
ガイアはそう呟いてフランシスの方に向かって行った。
その日の夕方にフランシスの街に着いた、フランシスの街は大きくて、とても賑やかである、酒場からは騒がしい声が響いて、街の大通りは市場のようになっている。
「自由な街だな……
あの魔物は来なかったのか」
ガイアはそう呟きながら泊まれる宿を探した、手頃な宿を見つけて部屋を取ってギルドに向かった。
ギルドには冒険者が多くいて、半分酒場になっている、多くの冒険者が報酬のいい依頼を探しているが、取り合いになる様な時もある、そんな冒険者は関係なくガイアはギルドに張り出している依頼を見て回る。
ドラゴンの討伐やゴーレムの討伐など厄介そうな依頼には、お決まりのように高い報酬が提示されている、時間が遅いのか手頃な依頼は残っていない。
「まぁ……
また明日来るかな」
ガイアはそうぼやくように言い、その場を離れようとした時また声が聞こえた。
「ねぇあなたは
なんで旅に出たの?」
ガイアはそれを聞いて舌打ちをしてその場を離れた、宿についてベッドに身を投げ出してガイアは考え呟いた。
「帰るかな……」
ガイアは二年、南に向かい続けた、その声の答えを知りたくて意味を知りたくて、南に行くべきだと、ただ感じたままに南へ旅をしていた、だが答えどころか手掛かりもない今から帰ったとしても二年は掛かる、馬でも買えば別だが時間がかかることは変わらない。
そう考えていると、街が騒がしくなり始めた、ガイアが窓から見ると街の賑わいでは無く、衛兵達が道を走り抜けて街の外に向かって行った。
「オクルス」
ガイアは窓から身を乗り出し、オクルスの魔法を使い、街の入り口の先を見たとき、昨日の夜ガイアが落とした魔物がフランシスの街に向かって来ていた。
「あいつ……
やっぱり向かって来てたのかっ‼︎‼︎」
ガイアは宿から飛び出しその魔物に向かって走り出した、人並みをかき分け入って来た入り口に向かった。
その魔物は牛の頭を持ち黒い翼を持ち、ニ階建ての建物ほどの高さがある巨大な魔物であり、目はサイクロプスの様に一つしかなかった。
「ただの魔物じゃありません!
油断しないで下さい‼︎‼︎」
衛兵の隊長が叫ぶ。
街の入り口では兵達が隊列を作り、冒険者達が魔物に立ち向かって行く、腕に自信があるのか冒険者達は果敢に攻めるが、歯が立たない、衛兵達が一斉に弓を放ち分厚い毛皮に阻まれたのか、動じることなくその魔物が冒険者を襲った。
数多くの冒険者が必死に躱し逃げ始めたが、その中で叫ぶ者がいた。
「くっ……
前衛隊前へっ!
街に入れてはなりませんっ
街を守りなさいっ‼︎‼︎」
その声を聞いた衛兵達が魔物に襲い掛かろうとした時、無数の炎の矢がその魔物を襲った。
「サウザンドアロー‼︎・ファイア‼︎‼︎」
ガイアの叫ぶような声が、街の方から聞こえ衛兵の隊長は振り返り、走り抜けて来るガイアを見てすぐに叫んだ。
「退きなさい‼︎‼︎」
その声を聞いた衛兵隊は素早く退いて、隊列を作り始めた時、先程より凄まじい数の炎の矢がその魔物を襲った。
ガイアはそのまま、衛兵の隊列の隙間から走り抜け魔物の前に出て、そのまま魔物に襲いかかった。
「炎よ鉄を鍛えよ」
ガイアが呟き安物のただの剣が、炎に包まれそのまま斬りかかった、その魔物は身を包む赤い毛が燃え始め暴れ出していた。
(こいつあの炎の中で
焼かれ無かったのか……
いや違うっ!)
ガイアはそう呟いた、あれだけの火柱で焼かれたにもかかわらず、魔物の全身の毛が焼けた様子が無かっただが、斬り裂いたはずの左足に傷痕が全く無いことに気付いたが、そのまま右腕に斬りかかった。
ガイアの炎をまとった剣はその魔物の腕を、深くは無いが傷を与え、そして素早くガイアを殴り飛ばそうとした魔物の拳を躱した。
「そっちの方がタチ悪いぜ……」
ガイアがそう言いながら、斬り裂いた魔物の腕が再生していくのを見ていた。
「あれは
先史の野獣……」
衛兵達の隊長が呟いた。
先史の野獣はガイアを睨み、凄まじい勢いで斬られた腕を振り、ガイアを掴もうとした。
ガイアはその腕に飛び乗り走り出した。
「じゃあ
首はどうだか……」
ガイアはそう呟き一気にその刃を、全力で先史の野獣の首に振り下ろした。
「ねぇあなたは
どおして旅に出たの?」
その瞬間初めて聞いた言葉が頭に響いた。
(なっ‼︎‼︎)
ガイアは一瞬戸惑ってしまうがそれを振り払い、その剣を全力で振り抜こうとした。
安物の剣は先史の野獣の首を斬り裂く事なく、その剣は砕け散り一瞬、時が止まった様にその場の者全てが感じ衛兵の隊長が手を挙げ衛兵達が弓を構えたが、ガイアが笑っていたのを、衛兵を率いる隊長だけが気付いて手をそのまま止めた。
(笑った……)
「テメェ余裕じゃねえか」
そうガイアが先史の野獣に言った瞬間、まだ振り切ってない折れた剣が、折れた場所から一瞬で伸びる様に光の剣があらわれ、振り抜く腕の動きからそのまま貫いた。
魔物の凄まじい悲鳴が響き渡る。
「鍛えられし剣よ
その命の輝き散りし時
その全ての力を解き放て
汝は生まれしことにより
命を支えしものよ
徒花を咲かせよっ‼︎‼︎」
ガイアが最初は優しくそして最後に力強く叫んだ、まるで折れた剣の最後を送り出す様に。
ガイアの折れた剣は、その言葉に合わせ光り輝き、太くそして伸び先史の野獣の首を完全に貫き、ガイアはそのまま振り抜き、斬り裂いた……。
「そんな折れた剣を……
剣に魂があるとでも言うの⁈⁈
なに……」
衛兵を率いる隊長がガイアの言葉が詠唱だと気付いて言う、どうやら女性の様だがその人は見覚えがある様に思える。
ガイアはそのまま地上に飛び降りようとしたが、空中で振り向きざまにその剣を振ると、更に光の剣は伸び先史の野獣の首を完全に切り落とした。
ガイアは大地に落ちた魔物の瞳をその剣で貫いて呟いた。
「ありがとう
役目を果たしてくれて……
ヘルズファイアッ‼︎」
ガイアは魔法を唱え、魔物の内側から焼き尽くし光の剣は消え、ガイアの手元には折れた剣が残っていた。
ガイアは折れた剣の破片を拾い集め、蓋をする様に剣を鞘におさめ、軽く紐でしばり、宿に戻ろうとしたが、衛兵達の隊長がガイアの前に立ち青い兜を脱ぎ話しかけてきた。
「剣士様
魔物の討伐感謝いたします
わたくしはステラ
剣士様のご活躍により
わたくしの兵達にも
被害を出さずにすみました
本当にありがとうございます」
ステラは丁寧にガイアにお礼を言ったが、ガイアは折れた剣の鞘をステラに見せた。
「礼はこいつに言ってくれ
こいつが剣としての役目を
果たしてくれた結果だ……」
ガイアがそう言ったが、ステラが不思議そうな顔をしたのを見て、ガイアはその場をそのまま立ち去った。
街や村は魔物に襲われた時、魔物が群れで襲って来ない限り、大概は冒険者に任せる、それは冒険者達にも名をあげるチャンスであり、そのまま討伐出来れば、報酬も街から支払われるのだ。
翌日ガイアはギルドにいた、何故あの言葉が違ったのか解らずに、帰るか進むか悩んでいたのだ。
(ねぇあなたは
どおして旅に出たの?
ねぇあなたは
なんで旅に出たの?)
ガイアは依頼を見ながらその言葉を、違う声で言われた二つの言葉を思い出していた。
(なんで他のやつが
同じことを聞いて来たんだ……)
「こんにちわ」
ガイアはその聞き覚えのある声で挨拶をされた、それは前から聞いていた、ねえあなたは、なんで旅に出たの?、の声であった。
「ッ‼︎‼︎」
ガイアは驚いて振り向くと、白いドレスを着た金色の髪をした綺麗な女性が立って微笑んでいた。
「お前……誰だよ?」
ガイアはその女性に心当たりが無かった、そう言ったことにあまり興味なく、女性をよく見ないガイアは自然とそう言った。
「思ったより……失礼なんですね」
その女性が少しイラッとした様な顔で言うが、ガイアは本気で解らない様子だ。
「昨日
お会いしましたけど……
覚えていませんか?」
その女性が苛立っていることが解る口調で言ってくるが、ガイアは解らなかった。
(なんて言うことかしら
このわたし
ステラ・セプテントの美貌を
忘れるなんて……
まだ15時間程しか立ってないのに
なんて屈辱を……
王族からも婚約の申し出
貴族からも数多の求婚が来るこのわたしを………)
ステラはワナワナしながらも、冷静を装い上品に言った。
「少しこちらに宜しいでしょうか?
あなたに私はようがあるのです」
「おい……
あれステラ様じゃないか?」
「間違いない
フランシスの妖精
ステラ様だ……」
「あいつ昨日
先史の野獣を倒した冒険者か……」
ギルドに集まった冒険者達がざわつき始め、二人を注目し始めた。
「ここでは落ち着きませんので
場所を変えましょう……」
冒険者達の騒めきに、ステラを讃えるような言葉がまじりステラは気を良くして、微笑んで言う。
「チッ……
しかたねぇな……」
ガイアはそう言い、ステラの案内でギルドを離れ、少し歩いた所にある高級そうなレストランに入る。
ステラは身分が高いのか、私服姿の護衛らしい者が数人、衛兵が五人ついて来ていたが、衛兵はレストランの外に待機している。
二人は予約されてたような席に通され、ステラから話しだした。
「何か召し上がるなら
好きに注文して下さって構いませんよ」
「それより
俺になんの話だ?
こんな所に連れてきて……」
ガイアは従業員が差し出すメニューを断り、大きな態度を取る。
「せっかくこういった席を用意したのです
少しは合わせて下さってもいいのでは?」
ステラが言う。
「悪いな興味がない
だいたい名も名乗らないお前に
なんで付き合ってやらなければならないんだ?」
ガイアは機嫌悪そうに言う。
「本当に覚えてないのですね……
わたくしはステラ・セプテント
この街を預かるセプテント家の者です
昨日お会いしましたよね?」
ステラは少し苛立ちながらも仕方なさそうに、自己紹介をして聞き返した。
「ステラ……
昨日のあの……」
ガイアはやっと思い出し続けて笑いながら言う。
「ははははっ
まったく解らなかった
ごめん悪かった
俺はガイアだよろしくな」
ステラはやっと解って貰えたと思って、挨拶の様に微笑んだ。
「いやっ
甲冑姿のほうが
似合ってるんじゃないか?
マジでわかんなかった
わりぃわりぃ」
ステラは一瞬でイラッとしたが、不思議に思った。
(なにこの人……
私のことを知ってるみたいな
自然に……
話してる……)
ガイアも不思議にそう思えていたが、ギルドで機嫌が悪かったのは事実だ、あの場はまるで見せ物の様な感じになっていたのが、ガイアの機嫌を悪くさせていた。
ステラは自然に話してくれるガイアに、気を良くした、セプテント家はフランシスの街で知らない者はいない程の家柄であり、親しく話してくれる街の者は数少ないのである。
「今日はガイア様に
こちらをお渡ししたくて
お誘いしたのです
どうぞお受け取り下さい」
ステラがそう言うと、それに合わせる様に私服の護衛がだいぶ膨らんだ袋を、静かにガイアの前に置いた。
「どうぞ中をご覧下さい」
ステラがそう言うと、丁度二人の前にアイスティーが運ばれて来る、ステラはミルクティーの様で甘いのが好みの様だ、ガイアが袋の中を確認すると金貨が入っていた。
「昨夜の魔物討伐の報酬として
フランシスの街から20万セル
用意させて頂きました
どうぞお納め下さい
あとこちらに
受け取りのサインをお願いします」
ステラが丁寧に言い、紙と羽ペンも用意していた。
二十万セルはそれだけあれば二ヶ月は何もせずゆっくり過ごせる額である、旅をしているガイアからすれば、野宿が多いので四ヶ月は旅が出来る額だ。
「なるほど……
その辺の依頼の報酬じゃ
こんな額にはならないからな……
だが少なく無いか?」
ガイアは昨晩の魔物はただの魔物では無い事が解っていた、再生能力を持つ魔物は滅多にいない、そしてかなりの速さで空を飛んでいたのも目撃している、二十万セルでは安いとガイアは感じた。
「そうですね
ですが街として用意出来る額なので
ご了承下さい」
ステラもそれは解っていたのだ、それで感謝の気持ちとしてこの席を用意したのだ、ガイアは少し考えているが、ステラは個人的に話したいことを話し出した。
「もしガイア様が宜しければ
私の近衛兵に加わって頂けませんか?」
ステラは昨晩の戦いの後、ガイアにお礼を言った時にガイアの言った言葉が頭から離れなかったからだ。
(礼はこいつに言ってくれ
こいつが剣としての役目を
果たしてくれた結果だ……)
似たような言葉を言われた事が無いのだが、言われたような気がしていたのだ。
「悪い
それは断る
俺は旅をしてるんだ
だから冒険者でも無い
ただの旅人だからな……」
ガイアがそう普通に言い、アイスティーを口にする。
「どちらまで行かれるのですか?」
ステラが聞いた。
「あてはない……
ただ南に向かって二年かな
旅をして来たんだ……
ここには旅費を稼ぎに寄っただけだしな」
ガイアはそうステラに言うと、ステラは少し考えてから言った。
「ねぇあなたは
なんで旅に出たの?」
ガイアだけが一瞬時が止まった気がした。
(間違いねぇ
こいつだ……
四年前から俺の頭だけに響いた声……
待て……
ステラが言い続けてたって
言い切れねぇ
この女……俺のなんだと言うんだ……)
ガイアが唖然とした顔でそう思っていると、ステラは首を傾げていた。
(わたし……
変なこと聞いたかしら……)
ステラがそう思っていると、ガイアは何かを決めたように言った。
「その言葉の意味を
知りたくて旅をしてるんだ」
「え……」
ステラはキョトンとした顔をしている。
「まぁ暫くはフランシスに居るから
ようがあったらここに連絡をくれ」
ガイアはそう言い、先程ステラが用意した受領書にサインをして隅の方に宿の名前を書いて渡した。
ガイアは自分の腕にそれなりの自信があったのだ。
「ありがとうございます」
ステラはそれを微笑んで受け取った、腕の立つ者が街に残ってくれるのは、どの街にとっても嬉しいことであり、ステラはガイアが悪い人じゃ無いと思ってくれていたのだ。